そばにいて ~disappearing lover~ (限定公開)

塚田誠二

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 俺の名前はくすのきしん。ここは愛知県最南端にあり、三重県とのちょうど県境に位置する弥富市だ。俺は生まれてこの方ずっとここに住んでいて、家からは桑名市長島町にある日本有数の大型遊園地が見渡せ、ジェットコースターと観覧車がいつもそこにある。子どもの頃よく遊んだその遊園地は、橋を渡ってすぐそこだから、三重県の方が親しみ深く、大学は三重県津市にある、江戸橋駅から徒歩で二十分ほどの場所の国立大学に通っている。現在大学院二年生になり、年齢はもうすでに二十五歳になってしまった。

 一応文学研究をしている。一応と言ったのは、学校に通っているのは、社会に出て働くのが嫌だからという理由であり、モラトリアム期間を延長したというただそれだけで進学したのだ。

 文学研究者になる意欲はもうなくなった。初めは自分には鋭い感性があると思い込み、先生になれば学生に面白い授業を展開できるはずだという気持ちがあり、自己陶酔していたものの、すぐに教授に鼻っ柱を折られて断念した。

 精神にどこか弱さがあるのも少しずつ自覚し始め、子どもから大人になれない自分を認め、自分を情けないと思う時もある今日この頃。ここまでくると、どこかに自分にメンタルの欠陥があるとしか思えない。

 身長は百七十五cm、六十三kg。顔は普通。かっこ良くも悪くもない。中の上といったところか。いたって普通の男と言いたいところだが、悔しいことに女子から全くモテない。さらに一度も女子と付き合ったことがない。

 思いつくままその理由を言ってみる。男らしくない、面倒なことはやりたがらない、堂々としていない、遠慮がち、声も小さいから存在感もない、どうぞどうぞと道を譲って、これまでずっと生きてきた人生。一つ挙げようとしたら六つも見つかってしまった。これはもう笑うしかない。女子にだって、全く相手にされていないのかもしれない。周りの同級生の男子は女子と付き合っている奴らばかりで、結婚し子どもがいる人もいる。俺だって当然女子にモテたいのだが、やはりここまでくると、もう無理に女子にアプローチせず、一人でのんびり暮らす日々も、穏やかでいいかなと思い始めていた。

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そばにいて ~disappearing lover~ (限定公開) 塚田誠二 @Seiji_Tsukada

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