第27話 狂乱と修羅場がブツかると凶悪な方が勝つ
その日の朝。
いつものように登校したヒロマルは隣の教室の前を通りかかった時、模擬店の材料が廊下の壁に立てかけているのを見かけて思い出した。
そういえば来月は緑ヶ丘文化祭だ。
(うちのクラス、今年も何か催しをするのかな)
彼はまだ何も知らない。クラスの催事が既に決まっていることも、そこで自分を結婚まで導く恐ろしい陰謀が隠されていることも……
教室に「おはよう」と入ったヒロマルは、しばらくの間ユウジとたわいもない雑談を交わした。
「ハイハイ、みなさん朝礼始めますよー」
まもなく、笑顔と共に担任のめぐ姉が教室に入ってきた。機嫌がいいところをみると、昨晩は彼氏と電話したか逢えたかのどちらだろう。
「冬村さん、もうすぐ文化祭だけどウチのクラスは……」
「めぐ姉、大丈夫だよ」
冬村蜜架は「放課後にクラス会開いて何するか決めるから」と頼もしく請け負った。
「頑張ってね。今日は助っ人も一人連れてきたわよ」
「助っ人?」
訝しんだのはヒロマルだけだった。彼を除いたクラスメイト全員が、それが誰か事前に知らされていたのだ。
めぐ姉は満面の笑みで「では、皆さんに転校生を紹介します!」と告げる。
「みんな、仲良くしてあげてね! いや、もう仲良くしてるから大丈夫かな。ふふっ、お入りなさい!」
は? と、首を傾げたヒロマルは次の瞬間「えええっ!」と、顎を落とした。何故なら……
「春瀬戸恋夢、今日から緑ヶ丘高校に転校して参りました! 皆さん、よろしくお願いします!」
扉から颯爽と現れたのは恋夢だった!
今まで見慣れていたフェリス女学院のボレロ風の制服ではなく緑ヶ丘高校のものを着ている。可憐なだけにブレザータイプの制服も似合っていて、ヒロマルは一瞬見とれてしまった。
教壇の上からペコリと頭を下げると、わあっ! と教室中が沸き立ち、拍手と歓声が起きた。「恋夢ちゃん大歓迎! B組一同」の横断幕が掲げられ、紙吹雪が舞う。
「恋夢、どうしてここに……」
「はいっ! 恋夢、とうとう来ちゃいました!」
ヒロマルの呟きに恋夢は花のような笑みで応えた。
「転校してきた理由なんて今さら説明するまでもないわよね。ヒロマルくんは恋夢ちゃんの面倒をしっかり見てあげるように」
めぐ姉のちゃちゃにクラスメイト達はどっと沸く。
彼等は次々立ち上がり「恋夢ちゃん、ようこそ!」「ついに来たかぁ!」「もう顔馴染みだから今さら感あるけどよろしく!」と歓待した。
ぼう然としているヒロマルは、すっかり置いてきぼり。
「春瀬戸さんの席だけど、一番後ろの窓側が空いてるから……」
「そこは私が行きます。恋夢ちゃんの席はここしかないでしょ。ね?」
ヒロマルの隣の席にいた本物河沙遊璃が立ち上がる。
「沙遊璃ちゃん、いいの? ありがとう!」
「どういたしまして」
笑顔を交わした沙遊璃は机の中を手早く片付けて席を立つ。すれ違いざま「落花流水……」とささやき、恋夢の頬を染めさせた。
こうして恋懸け少女は、想い人の傍らへ寄り添うように……
「恋夢ちゃん、よかったね! これから学校でずっとヒロマルくんと一緒だよ!」
「はい!」
「春瀬戸さん、勉強もしっかりね。ヒロマルくんにばかり見惚れてちゃダメですよ」
「それは自信がないです……」
恋夢が困ったように照れ笑いするとクラス中が笑いさざめいた。笑うに笑えないのはヒロマルただ一人。
「な、なんだよ、この自然な流れ! 恋夢が突然転校して来たのにみんな驚きもしねぇし……」
しかし、そんな弱々しいヒロマルの抗議に涼美ヶ原瑠璃が「あんだよヒロっち。転校してきてくれたっつーのに嬉しくねーのか。あ?」と目を剥く。
「……まさか迷惑だなんて思ってやしないだろうな!」
凄んだ涼美ヶ原瑠璃に気圧されたヒロマルは「いや、その……嬉しいけど、いきなりだからさ」と、モゴモゴ言い訳した。
「だったら素直に喜ぶし! 嬉しいんならノープロブレム! な?」
「……」
「な!?」
「お、おぅ……」
押し切られた格好でうなずくと「よかった。もしヒロマルくんが迷惑だったら恋夢、不登校になるしかないって……」と恋夢が涙ぐむ。慌てて「イヤ、不登校はイカンだろ。学生の本分は勉強だし」と、宥めに回るしかなかった。
すかさず、めぐ姉が「ヒロマルくん、いいこと言いました。学生の本分は勉強ですよ! さぁ授業始めます!」とパンパン手を叩く。生徒達は「はぁーい」と机に教科書やノートを広げ始めた。
「うう……何かこう、流されてしまった感が……」
しかしヒロマルのボヤキに同情する者は誰もなく、そのまま講義が始まってしまった。
横目で隣を見ると彼女はノートに熱心に講義を書き留めていた。
しかし時折、手にした教科書で半ば顔を覆うようにしてヒロマルをポーッと見る。目が合うと、蕩けそうな顔で笑いかけた。
「ほ、ほら、授業ちゃんと聞けよ」
「はい! えへへ」
「トホホ……」
嬉しそうな恋夢とは対照的にヒロマルの苦悩は深まるばかり。モテる奴は全て悪と高らかに宣言した自分がどうしてこうなった。
だけど……正直嬉しいと思ってしまう。このままずっと自分の傍にいて欲しいと思ってしまう。
(いっそ恋夢を本当に彼女にしてしまおうか……)
ふらふらとそんな気持ちになりかかり、慌てて自分を叱りつける。
(しっかりしろ。このままだと本当に『リア充に寝返った裏切者』になってしまう……流されてはイカン、寝返ったら死んでしまうぞッ!)
別に寝返ったところで死ぬ訳じゃあるまいし、そもそも誰が裏切ったと思うのか。
しかし、ヒロマルは眠ったら凍死する雪中の遭難者のようにしきりに自分の頬を叩き、己を厳しく保とうとするのだった。
☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆
「さて、間もなく緑ヶ丘高校は文化祭を迎えます! 我々B組は何をしましょうか?」
放課後。
机をコの字に並べ替え、B組のクラス全員が「文化祭の出し物を何にするか」を決める会議を開いていた。ちなみにここでもヒロマルの隣に恋夢が座っており、誰もがそれが当然のような顔をしていた。
「お化け屋敷はどうでしょうか?」
「C組がするそうです。先約アリで却下!」
「去年好評だった占い館はどうでしょうか?」
「馬路くんの鼻毛占いは確かに的中率高かったけど、彼からは二度とやらん! と既にオファーを断られています」
「メイド喫茶はどうでしょうか。恋夢ちゃんや本物河さん等、ウチの女子は綺麗どころ多いし」
「ナンパされるリスクがあります。特に恋夢ちゃんが」
ヒロマルが「で、でもそれがイケメンで優しくていい男だったら……」と言いかけたが……冬村蜜架は重戦車の砲塔のように重々しく首を回し、女心をこれっぽっちも汲み取れない男を睨みつけた。
「却下ッ!」
数々の提案が挙げられては蹴られてゆく。その割には特に揉めることもなく、提案した者は「アッハイ」と引き下がった。
それもそのはず。実はこれ、全て事前に打ち合わせた台本通りの進行なのだ。
そうとは知らずヒロマルは自分もと手を挙げた。
「無難なところで模擬店なんかどうだろ。A組はクレープをやるみたいだから、被らないようにヤキソバなんかいいんじゃないかな」
「あ、あー、ヤキソバね……悪くないけど、その、なんかありきたり過ぎない?」
冬村蜜架が困ったように口ごもる。ヒロマルはニヤリとした。
「だろ? そこで『客によって値段が変わる焼きそば』なんてどうだろう」
「客によって?」
「一人者の男か女の子なら通常価格、カレカノのいる奴は倍の値段で売りつけるんだ。カップルで買いに来た奴等は販売禁止! どう? いいアイディアだろ!」
ドヤ顔のヒロマルに対し、冬村蜜架は「却下!」とまたもやバッサリ。そりゃそうだ。
ブスくれたヒロマルは「あれもダメ、これもダメじゃ何にも出来ねえじゃん。催し物、一体どーすんだよ!」と不貞腐れた。恋夢が「ヒロマルくん、明日のお弁当はヤキソバ作ってきますね!」と、あさって方向に慰める。
「いや、そうじゃなくて……」
「委員長、そんなボッタクリ店よりいいアイディアがあります」
いかにも「埒が明かない」といった様子で本物河沙遊璃が手を挙げた。
「模擬店ではなく模擬結婚式なんてどうでしょう」
「結婚式?」
クラス中がざわめく。めぐ姉に至ってはそれまでニコニコ聞いていたのが、細めていた目をカッ! と見開いた。
「結婚式ですって?」
面白いこと言い出したわね、という顔で冬村蜜架が「詳しく聞かせてちょうだい」と促す。クラスメイト達も身を乗り出した。
「先日、衛星放送のクラシック映画で『卒業』を見たんです」
「ああ、知ってる。確か最後に結婚式場に駆け付けた主人公がヒロインの花嫁を攫ってゆく奴ね!」
「そうです、あれを文化祭でやるんです。ただの結婚式ごっこじゃつまらない。思いっきり本当の結婚式みたいに豪華にして、最後は花嫁が連れ去られるドッキリで観客の度肝を抜くんです」
これも事前に打ち合わせた台本通りの芝居なのだが、クラスメイト達はオオ! と感嘆する。モブ役のみんなもなかなか役者振りが身に付いてきたわね、と本物河沙遊璃は含み笑いした。
「さて、緑ヶ丘高校で今もっとも有名なカップルといえば『カレカノいる奴絶対ゆるさないマン』として有名なヒロマルくんと元・超人気アイドルの恋夢ちゃん。この二人が結婚するという触れ込みではどうでしょうか?」
「ええっ!?」
自分の名を挙げられ、ヒロマルはびっくり仰天飛び上がる。
「模擬結婚式で花嫁になった美しい恋夢ちゃんを見て、ヒロマルくんにはきっと嫉妬と羨望が集まるでしょう。ところがその恋夢ちゃんは途中でイケメンの誰かに攫われ、ヒロマルくんはポカンとして取り残される。嫉妬していた人達はみんなザマァ気分で留飲を下げ、爆笑で盛り上がったところにアナウンスを入れて式を終了する」
どう? と沙遊璃が周囲を見回すと「面白い!」「やろーやろー!」と大ウケしたクラスメイト達から一斉に賛同の声があがった。
「待て待て、イヤだぞオレは!」
「でも、他に衆目を集めるカップリングって誰かいる?」
「それは……」
ヒロマルは懸命に「とにかく他の誰かで!」とか「結婚式じゃなくて別の催しを!」だの言い立てたが。
「恋夢だって嫌だろ? こんな晒し物みたいな花嫁役」
てっきり自分の味方をしてくれるだろうと思って振り向いたヒロマルは、恋夢が黙って首を横に振ったので驚いた。
「な、なんで……」
「晒し物でもいいんです。攫われるまで恋夢、ヒロマルくんのお嫁さんになれるもの……」
そんな理由でと狼狽するヒロマルをよそに、クラスメイト達からは「いい覚悟だ!」「恋夢ちゃん、なんて健気な……」と賛美と同情が集まる。
「それに比べてヒロマルと来たら……」
「うぐぐ……」
「はい、では賛成多数、反対はヒロマルくん一人、ということでB組は『ハプニング付き模擬結婚式』開催で採決しまーす!」
「ま、待て! 待ってくれ……」
「待ちません」
お前の泣き言など知ったことかと言わんばかりに会議は進む。全て、事前に計画された『落花流水』作戦の筋書き通りの流れだった。
そう、そこまでは良かったのだが……
惨劇の発端は「さて、恋夢ちゃんをヒロマルくんから攫うイケメン役ですが……」と冬村蜜架が言い出したことだった。
本来ならここで本物河沙遊璃がユウジを推挙するところだったのだが……
次の瞬間、ほとんどの男子達が「ハイハイ立候補!」「これはオレしかいないな」「僕に任せてくれ!」と手を挙げた。……思わず、挙げてしまったのだ。
ちなみにB組男子は例の恋愛格差バトルロイヤル後の取り組みによって全員このクラスに「彼女」がいる。
男子達はハッと我に返ったが、時、既に遅し。
「……」
クラス中がシーンと静まり返る。
次の瞬間、嫉妬に怒り狂った女子達の間から怒声や泣き声が上がった。
「陣也、付き合って半月でもう浮気なの!?」
「慶伍! てめぇ、そんなにお仕置きして欲しいのか……」
「見晴、私より恋夢ちゃんを取るの? 信じてたのに!」
男子達は、さっきまでのヒロマルと同じように、今度は自分達が周章狼狽する羽目になってしまった。
「ま、待て! 待ってくれ。どうか話を……」
「言い訳聞く耳なんかないわよアホンダラァ!」
よせばいいのに、そこへ誰かが「ヘッ、悔しかったら恋夢ちゃんより可愛くなってみろよ!」と大暴言。火に油をぶっ掛けてしまった!
「ンだと? もういっぺん言ってみろコラァ!」
怒号が飛び、掴みかかる者が現れると、嫉妬に狂った女子達をもう誰も止められなかった。手当たり次第に物が投げられ、雄叫びが上がる。地獄のバトルロイヤル、修羅場編開幕である。
泣き叫んだり、殴りかかったり、無言で平手打ちしたり、目を覆わんばかりの修羅場があちこちで繰り広げられる。
「みんな、乱闘は……乱闘だけは……」
それまで「結婚式」と聞いて涎を垂らしそうな顔をしていためぐ姉が修羅場の周辺を為すすべなくオロオロしたが「すっこんでろ!」と蹴りだされ、しゃがんでシクシク泣いていた。
「みんな、落ち着いて! 落花流水を忘れたの? 結婚式の段取りを……」
冬村蜜架が必死に叫ぶが誰も聞いていない。
「ああもう! どうしてこうなっちゃうのよう……」
頭を抱えた彼女をそのとき、「危ないから下がってなさい」と言うように後ろへ押しやった者がいる。
「本物河さん……」
緑ヶ丘高きっての美少女が笑っている。
裂いたまなじりを立てんばかりに上げ、血走った眼を羅刹のように見開き、悪魔のように唇の端を吊り上げ……
そうか、そんなに地獄が見たいのかと言わんばかりのその凄惨な表情に、冬村蜜架は震え上がった。
そして、次の瞬間……彼女は絶叫じみた奇声を上げて手当たり次第に飛び掛かった!
「このクソ野郎どもがァァ! 全員ブッコロしてやるーーー!」
「あわわわ、本物河さ……」
殴る! 蹴る! 噛みつく! 引っ掻く! 椅子を振り上げ、逃げ惑う男子へ打ち下ろす! 倒れた男子の襟首を引っ掴み、女子の顔面に叩きつける!
鼻っ柱をヘシ折られた男子が鼻血塗れの顔で床をのたうち回り、髪の毛を引きちぎられた女子がベソをかいてうずくまる。
「しねぇぇぇぇ!」
「うぎゃあぁぁぁぁ!」
「てめぇもだァァァ!」
「ゆ、許して下さ……ぐぇあ!」
両手を合わせて許しを乞う男子の顔面に容赦なく蹴りが飛び、抑えようとしがみついた女子が振り払われ、壁に激突して伸びる。
ちなみにヒロマルと恋夢といえば、壁の端で抱き合ってガタガタ震えていた。
「本物河さん、お願いです! ど、どうかお鎮まりを……」
「ハンッ! 筋書き無視して暴れ出しやがったのはてめえらだろうがァァァ! 今頃になって『お鎮まり下さい』だァ? 寝言は寝て言え! もう遅い!」
怒号に続いて机が宙を飛び、悲鳴が上がる。
「あっ、私のカード!」
とばっちりと言うべきか。ポシェットから床に零れ落ちた友音雪奈のゲームカードを見た本物河沙遊璃がエヴァンゲリオンみたいな四足歩行で掴みかかり、引きちぎってしまった。
「よ、よくも私のレアカードを!」
「知ったことかァ!」
目の前で大事なカードを破られたガチャ姫様の怒りたるや推して知るべし!
「て、てめぇが今破ったのはポニテ男子のレアカードだぞ! ゲットするまで何回ガチャをブン回したと思ってんだコラアァァァ!」
激昂したガチャ姫様が「てめぇの有り金、てめぇごとガチャに溶かしてやる!」と机を蹴り倒しながら、狂乱して暴れる本物河沙遊璃へ近づいていった。さながら破壊された大都市を舞台にした二大怪獣大激突! といった様相である。
「あわわ、ユッキーまで怒り狂って暴れだしちゃった……」
「いや、ここは狂乱をもって狂乱を制す! 友音さんなら本物河さんを抑えられるかも知れな……」
言い終わらないうちに本物河沙遊璃は、掴みかかった友音雪奈へ振り向きざま強烈な頭突きをお見舞いし、雪奈は声もなく崩れ落ちた。敢え無く瞬殺。
「緑ヶ丘のガチャ姫も所詮この程度か、手応えねえぞ! ヒャッハハハァー!」
髪を振り乱して狂笑したバーサーカー少女は、目についた男子に「今度は貴様だァァァ!」と飛びかかる。もはや、悪霊が取り憑いた妖怪少女。逃げ惑う男子の襟首を掴み、泡を吹いて気絶するまで締めあげ、逃げ惑うクラスメイト達へ「おゥらァァァー!」と投げ飛ばす。
「だ、誰か止めて! 本物河さんを止めてぇぇぇ!」
冬村蜜架は叫んだが、止められる者など誰もいない。
男子達の軽はずみで始まった修羅場は、かくしてブチ切れた本物河沙遊璃の狂乱無双によってまったく別の地獄絵図と化してしまう。
結局惨劇は全員が沙遊璃の前に震えながら土下座し、許しを乞うまで続いた。
そして……
「……恋夢ちゃんをさらう役だけど、ヒロマルくんに近しくてイケメンの菅田ユウジくんが適当と思うので彼にしようと思うの。複数の女の子と付き合ってて特定の彼女がいるようでもないし。ユウジくん、頼めるかしら?」
「ハイッ!」
「恋夢ちゃんもいい?」
「ハイッ!」
逆らえば生命はない。みな、恐怖に震えながら沙遊璃の問いかけに即答で応える。全員が彼女からの殴打や蹴り、噛みつきや引っ掻き傷でボロボロだった。
「みんなも、異存ないわね」
「ハイッ!」
「あと、くれぐれも私を怒らせないで。次はマジでブッコロすから……いいわね」
ドスの効いた本物河沙遊璃の念押しに、担任のめぐ姉からヒロマル、転校したての恋夢まで、全員が「ははぁ!」と声を合わせてひれ伏したのだった……
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