第21話 魔の森といえば触手の生える木だよね、知ってた

 目の前に広がるは、気持ち悪い色の沼地と、吐き気を覚える醜悪な魔獣の気配が絶えない薄暗い森。

 数年前まではただの私もカガも知っている誰もが通りやすかった都への通行ルート。何ならここには森のエルフという高貴を自称するエルフ達が暮らしていて治安は守られここら一帯では魔物なんて一切見なかった。うちの聖堂や他の商店もだが、エルフとは情報や物資交易をして、うちの聖堂は魔除けの葉や壊れにくい聖水瓶などのお得意様になっていた。エルフの作る武器はどれも職人技以上に命が編み込まれているんじゃないかというほど精密かつ、能力がずば抜けていた。ただ、近頃入手が難しい、ストックが少なくなってきたと聖堂協会で噂にはなっていたが…。


「森のあの高飛車エルフたち…どこ行ったんだろ。こんな沼地に生息地変更したとからしくないどころか闇落ち魔落ちもいいとこじゃないかなぁ?」


「黙れアリア」


 シッと言われ、口に手を添える。

 カガが剣を抜き、剣に火を灯す。ただの簡単な魔法の一種だ。カガのこれは、火の魔法を無詠唱で灯す先を敵などではなく聖剣に宿らせるということだ。簡単そうに見えるけど、人間や普通の人がやるには体力消耗がすごいから松明使った方が楽なのだが…カガはその辺が化け物クラスというか、感覚がガバっている。そこも狂ってるのか、それともただの訓練、経験のたまものなのか。


 でも、かっこいいよなぁ。便利だなぁ…私も、神になったんだし今持ってる短剣に火つけてかっこよく化け物払ったりしたいな……


 カガの剣の火力は最大にも達したにもかかわらず、足元がほんの僅かしか照らされない。光が吸い込まれている。足元の泥濘の液体が黒色だというのが分かった程度だ。


「うわぁ、ぐっちゃぐちゃ…これ何、てか、この木も粘液すごいなぁ。手に着いたら全然取れないんだけど、服で拭いたら…え、拭いたとこ溶けて……」


 液体を拭おうと拭いた服の布がドロッと融解しはじめた。

 手でどれだけパンパンっと払おうとしても、叩けば叩くほど布はボロボロと無くなっていく。


「アリア!この森のエルフは絶えた!すぐにこの森すべて焼き払うぞ!!」


 カガが真剣な表情で、服を叩きまくってる私に声をかけてくる。


「なんでそんなことわかるのさ?!」


「足元の黒い液体の中に白い骨があるだろ!良く視ろ!」


 服が溶けながら大事な部分だけ手で隠し、カガが火の剣をかざし照らしてくれたところを良く視る。

 人骨が沼の中に浮いている。そして、その頭蓋にはエルフの特徴である耳の骨がしっかりと残っていた。

 一つだけではなかった。もっと先まで目を凝らせば、幾百幾千のエルフの亡骸があった。


「これ、ほんとに壊滅…? あのエルフが?何かよくわからないこの腐った何かによって?エルフ見ないって聞いてたけど……」


「あのエルフども、驕ったか…いや、女王ネルフェシアの髪飾りとあの長いウサミミみたいな骨が無い。生きている可能性があるかもしれない」


「あー、居たねぇ、確かに女王だけは先に逃がしてあるとかありそう。じゃないと、ここのエルフってたしかナタリィとかとはエルフはエルフでも花を司るとかの種類違いで世帯数もそんなに多くなかった気がするし……」


 大事な場所を隠して、いると何か黒いものが体を覆ってくる。

 あぁ、カガのマントかなーと思って受け入れようとしていると、カガは視線の先で弓矢に火をつけてこちらを射抜こうとしている。


「カガじゃないってことは、敵ですか?!」


 自分を覆ってくる黒いものを斬ろうと短剣を上に降り上げるも、ヌチュっという音とともに短剣は黒い何かに捕らわれてしまった。奪い返そうにも、少しずつしか抜き出せない。

 奪い返そうと地面についてる足に力を入れているとその足がフワッと浮いて、股間部と腰、胸に黒い触手が這ってきた。

 そして、乳首と中に触手がべたぁと付いたと思った瞬間、身体の生命エネルギーを根こそぎ持ってかれそうな"ドレイン"の技をかけられる。


「いやぁああああああああああああああああ」


「うるさい黙れ、お前ごと燃やすぞ」


 先ほどからヒュンヒュンとカガの放つ火矢が気に刺さっていくも、ドロドロとした幹には効果が無いのか火は消えてただの矢が刺さっている。そして、その矢もドロドロした何かと共に地面にそして沼地に落ちていった。


「カガ!こいつ!循環が早い!胴体には剣でも刺さんないと思う!森燃やした方が早いてか、ここ日の光も入らないから余計に黒魔法が効きが良くなってるんっ、あっ」


 叫ぶ声を抑えるように口にも黒い触手を入れられ、カガに情報を伝えられなくなった。

 カガは先ほど伝えたにもかかわらず、軽装になり火を灯した聖剣で私に巻き付く木の胴体を斬ろうとしたが粘液が邪魔になり本体へ全く刃が通らない。

 諦めたのか、カガが後ろに下がる際に、私に魔力をいくらか供給してくれた。

 その魔力に載せられた言葉は



 <熱いだろうが冷たいだろうが、耐えろ>



 それだけで何をしようとしているのかわかった。伊達に、何度も旅に出てない。

 カガの作戦は、森を全部燃やして、その後が沼地が残ってしまうのでそれも良くないものだとみなしたのだろう。水で流して薄める作戦だ。

 つまり、火炙りと水に身投げに近いものを両方耐え抜けという話だ。


 それは一向に構わない、っけど…

 待って、職種の感想だけ言わせてくれ。

 私の体の中に入ってるこの触手…ドロドロしててただただ気持ち悪い…

 もっとエッチな感じになると思った…正直に話すと。

 ちょっとでも「うそっ、やだっ、感じちゃう…あぁんっ」とかいう言葉出てくるかと思ったら感想が「気持ち悪い」と「うねってる」「ドレインのレベルだけMAXで、テクニック初期レベル実質童貞」という言葉しか出てこない。

 

 胸も、くるくると乳首を責められて乳首から魔力を吸われている搾乳に近い何かのはずなのに全くその気配はなく、ただただ気持ち悪い…。むしろこんな、衛生面気にさせてくるんだ触手って。

 もっと、薄い本やゲームで見たあの『嫌々だが本当は感じちゃうッ!!』みたいなのを想像してちょっと触手に捕まってみるものありかも~とか思ってた夢を壊されたーーーー!

 くそったれ。

 燃やせー!この木も森も燃やしてくれー!私の夢を壊した罰を与えろーー!カガー頼むーーー!


 


 パチパチ…パチパチ……

 ゴゥゥゥ……


 段々と熱くなってきた。周りが。

 そう、森が燃えてきてる。木の焼ける良い匂いがするわけがない。こんなドロドロの黒い泥が付いている木からいい匂いしたらそんなん他の木に謝ってほしいくらいだわ…。まて、木から声がする…?私の心の声じゃなくて、何か別の声だ…


 耳を研ぎ澄ませ、私!


「…した…い……おっぱい……吸いたい…ショタの…おっぱい……永遠に……」


「……」


 聞き間違いかな。


「ショタの…おっぱい……吸い…たい、これじゃ……ない……BBAのおっぱいもあそこもちがう……ショタぁ…ショタぁ……」


 口に入っていた触手に両手をぐっと力入れて持ち、口から引き剥がす。

 カガが居るであろう上空、少し空が見え、煙の逃げ道になっている場所に向かって叫ぶ。


「カガー!!!ここを、私を掴んでる木を燃やしてくれ!コイツショタコンの木だ!やべぇことしか言わねぇ!!!」


「よくやったアリア、そいつがネルフェシアを取り込んだか魔の木になってしまったネルフェシアだ!!!」


 カガは火の勢いを良くすると森の頭を勢いよく燃やしていき、泥地には流水を流し続けた。

 魔の木は徐々に根っこが剝がれていき、水の流れに逆らうことなく流されてく。

 木ごと私は、魔の木こと森のエルフの女王ネルフェシアと呼ばれたものと食らい魔の森を抜け歩いてきた街道へと流されドスンと石畳の街道に倒れた。


 私は、触手から解放され素っ裸。


 魔の木は日の光を浴びてどんどん木の表面が枯れ始め、人の形が浮き出てきた。


 その姿は、見目麗しいエルフの姿だった。



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この異世界の神は私よ~好みのカプとハーレムゲス神話~ 紅茗ミヨ-Koutyamiyo- @Koutyacoffeenomunomu

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