19
激しい雨が、もうずっと続いている。それに加えて、時折、カミナリまでするようになった。
俺はこの雨をてっきりゲリラ的なものだと勘違いしていたけど、どうも2~3日はこの天気を覚悟しなければならないようだと、テレビの天気予報が教えてくれた。
ミラの電話はまだ繋がらない。何度呼び出しても「おかけになった電話は……」の一点張りで、俺はついに電話をかける事を諦めた。向こうから着信があるのを待つしかないと思ったからだ。
俺はスマホをちゃぶ台に置き、座布団の上にあぐらをかいて座った。着信を待つためというのもあるが、ミラの状況が分からないのに自分だけ布団でぬくぬくと寝るというのに抵抗があったのだ。
夜の2時を過ぎた。今、この世界を支配しているのは、この雨音だけだ。その、激しすぎてもはや単調だとも言えるようなリズムは、俺に考える事を促していく。
(そう言えば、いつからか俺は、こんな風にしてあいつを心配するようになったな……。)
まだ殴られ屋としての日々を過ごしていた頃。あいつは俺にとって、本当にただの世話係でしかなかった。それも、こちらの邪魔ばかりする、はた迷惑な世話係。
自分に出来ない事はないとでも言いたげな雰囲気を身にまとって、それでいてそんな雰囲気が最高に似合う、冷たい目をした美人で。
こういう女を一度はモノにしたいもんだと思っていた。恋人である必要はない、ドライな関係でいいと、そんな身勝手な事を考えたりもした。
それが今では階段を何段もすっ飛ばして同居人だ。しかしそれは、ボロアパートの一室で逃亡生活を共にしているというだけの、ただの同居人。色気のある話なんて一切ない。
今の生活を傍から見れば、まるで隠居した老人の営みのようで。それが影響しているのか、あいつの雰囲気も心なしか柔らかくなったような気がして。だけどこんな生活は、俺の望んでいたものじゃないはずなんだ。
( なのに。)
( なのに、なぜ。)
( なぜ、俺は今のこの関係に、微かな安らぎを覚えているんだろうか?)
( 家族に飢えているからか……? )
( いや……違う。親が蒸発した時に、家族なんて幻想だと分かったじゃないか。)
( 俺が求めるのは、安らぎなんかじゃない……。俺が求めるのは……。)
いつしか、俺の思考は暗い闇の奥底へと沈んでいった……。
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