9
ミラの運転する外車は、ガタガタと振動音を吐きながらゆっくりと停車した。こういうのって、ただ古い車だからなのか整備不良だからなのかどっちなんだろう?
ともあれ、俺の住むマンションはもうすぐそこに見える。俺はシートベルトを外しながら、ミラに尋ねた。
「質問、いいか?」
「ええ、どうぞ。」
「明日、研究所に行けばジジイに会えるか?」
「……。」
あの検査結果の事をもっと詳しく聞かなければならない。そして、今後の事も。場合によっては、ジジイのもとから逃げ出さなければいけないだろう。
「博士はずっと研究所にいるけれど、アポイントメントが必要よ。そうでないと中に入る事もできない。」
「あの入口のセンサーか。……あれって、強引に入ろうとしたらどうなるんだ?」
「セキュリティが発動して、蜂の巣になるわ。」
「……なるほど。じゃ、アポ取ってくれ。」
「聞くだけ聞いてみる。」
ミラは何か小さな装置を取り出して、それをスマホに接続した。研究所を守っている妨害電波をすり抜ける機械なんだろうか、あれこれと操作をしている。連絡を取るのもひと苦労だというのが見て取れた。
少し申し訳ない気もしたが、これしか方法が無いのだから仕方がない。何せ俺はジジイの連絡先なんて知らないんだ。
俺は車から降りて、煙草を吸い始めた。夜の乾いた空気の中で紫煙が踊る。そういえば、外で一服をするのはかなり久々な気がする。まったく、喫煙者の肩身は狭くなる一方だ。
そのうちに、ミラが車から降りてきた。
「午後1時から3時の間なら、いいそうよ。」
「分かった。」
「必要なら迎えにくるけど?」
「いや、いらない。」
「そう。じゃあ研究所の前で待っているわ。」
ミラは別れの挨拶もせずに車に乗り込むと、勢いよくエンジンをふかして走り去っていった。さっきまでの丁寧な運転とはエライ違いだ。
俺はちびになった煙草を携帯灰皿に放り込んで揉み消した。
「そういや、冷蔵庫になにも無かったっけ。」
確か飲み物すら無かったような気がするが、その確認のためにわざわざ部屋に戻るのも面倒くさい。ミラにここまで送ってもらっておいてなんだが、俺はマンションではなく、近くのコンビニに向かって歩き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます