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 ミラの運転する外車は、ガタガタと振動音を吐きながらゆっくりと停車した。こういうのって、ただ古い車だからなのか整備不良だからなのかどっちなんだろう?

 ともあれ、俺の住むマンションはもうすぐそこに見える。俺はシートベルトを外しながら、ミラに尋ねた。

「質問、いいか?」

「ええ、どうぞ。」

「明日、研究所に行けばジジイに会えるか?」

「……。」 

 あの検査結果の事をもっと詳しく聞かなければならない。そして、今後の事も。場合によっては、ジジイのもとから逃げ出さなければいけないだろう。

「博士はずっと研究所にいるけれど、アポイントメントが必要よ。そうでないと中に入る事もできない。」

「あの入口のセンサーか。……あれって、強引に入ろうとしたらどうなるんだ?」

「セキュリティが発動して、蜂の巣になるわ。」

「……なるほど。じゃ、アポ取ってくれ。」

「聞くだけ聞いてみる。」

 ミラは何か小さな装置を取り出して、それをスマホに接続した。研究所を守っている妨害電波をすり抜ける機械なんだろうか、あれこれと操作をしている。連絡を取るのもひと苦労だというのが見て取れた。

 少し申し訳ない気もしたが、これしか方法が無いのだから仕方がない。何せ俺はジジイの連絡先なんて知らないんだ。

 俺は車から降りて、煙草を吸い始めた。夜の乾いた空気の中で紫煙が踊る。そういえば、外で一服をするのはかなり久々な気がする。まったく、喫煙者の肩身は狭くなる一方だ。

 そのうちに、ミラが車から降りてきた。

「午後1時から3時の間なら、いいそうよ。」

「分かった。」

「必要なら迎えにくるけど?」

「いや、いらない。」

「そう。じゃあ研究所の前で待っているわ。」

 ミラは別れの挨拶もせずに車に乗り込むと、勢いよくエンジンをふかして走り去っていった。さっきまでの丁寧な運転とはエライ違いだ。

 俺はちびになった煙草を携帯灰皿に放り込んで揉み消した。

「そういや、冷蔵庫になにも無かったっけ。」

 確か飲み物すら無かったような気がするが、その確認のためにわざわざ部屋に戻るのも面倒くさい。ミラにここまで送ってもらっておいてなんだが、俺はマンションではなく、近くのコンビニに向かって歩き始めた。

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