最終話 月明かりが問う永遠の愛
そして、溶けそうな程の暗い沈黙が過ぎ、日記が終わる。
その頃には、皆の心の縁には私への心配とマリアへの憎しみで溢れていた。
「おい、マリア、お前どの面下げてそこに立ってるんだ?」
サルバドールさんの厳しい言葉が放れる。
その姿はとても頼もしく、再度惚れてしまった。
私はマリアの方に目を向けると、マリアの顔は今にも潰れそうで様々な感情が滲み出ている無表情だった。
その顔は絶望と後悔を物語り、目のやり場が無さそうだった。
「嘘...だろ......?」
マルクが小さく嘆く。その驚く姿から本当にマリアのことを知らなかったんだと分かった。
「おい、本当か?嘘だよな!こんなの嘘だよな!?」
必死に真実を曲げようとマルクは叫ぶ。
「...........」
マリアは何も喋らない。というより喋れないの方が適切だろう。ただただ現在の状況に絶望している。
それ以外に出来ることは彼女にはなかった。
こんなにも盛大に式を挙げたにも関わらず、その主役の傍がこんなにも非道であると知られたことで、互いの両親、親戚、友人は皆顔が真っ赤で受け止めきれない面々だった。
ミミックは騙し続けていた人生が終わり、魂が抜けたように、椅子にもたれかかっていた。
そんな中、平静を保っているのは私とサルバドールだけだった。
互いに知っている情報を吐き出し、全てがスッキリしたような顔で前を向いている。
会場は地獄みたいな空間だが、私とサルバドールさんがいるところだけは明るかった。
そんな時、焦った様子のマルクが私を向いて早口で捲し立てた。
「み、みんな聞いてくれ!マリアが監禁したアノンは俺の幼馴染なんだ!それは日記にも書いていただろう!?だから本当は俺、アノンのことが好きなんだよ!だから今から俺とアノンとの結婚式に切り替えさせてくれよ!!」
その言葉で会場の静けさは増した。
皆がマルクに冷たい視線を送る。
誰もがその提案に賛成することはできなかった。
あまりにも滑稽すぎた。
マルクはまだ自分の状況に気づかず、私が結婚を了承するという前提で話を続ける。
その頃、私のマルクへの一本の花色の線は完全になくなっていた。
ただ一本だけ、長く、そして太く伸びている線があった。
それは紛れもなく、サルバドールに向けてだった。
私は思っていることをそのまま口にした。
「サルバドールさん、もう一度言います。私と付き合って、いや結婚してください!あなたがビリオンの息子とかそんなのは関係ないです。私はサルバドールさんが好きなんです!だから今から結婚式を挙げさせてください!」
私は一気に話した。思いの丈を、今朝よりも深く、ずっと真剣に。
サルバドールさんは私をまっすぐ見ながらこう言った。
「アノンさん。俺はあなたとの永遠の愛を誓います」
一筋の光が差し込み、辺りは明るくなる。
自然と巻き起こる拍手、自然と流れでる涙。
私の視界にはサルバドールさんしかいない。
大窓から見える満月が私たちの結婚式の牧師役だった。
悪役令嬢に○されそうです。助けてください…… 夢病マッキー @makkii
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