‐ if ‐ こんな人生だったら…

鯛 仲

第1話


  ~ 序章 ~  ‐ if ‐


” 今までの人生、幸せだった? ”  そう問われれば首を傾げ…

” それでは不幸せだった? ”    そう問われても首を傾げる…


世間一般からすると不幸だったのだろう


” 大変だったでしょ?辛くはなかった? ”  ” 今までよく頑張ったな… ” 等と言われるような状況なのだろう…


しかしそれはあくまでも他人から見た感想であり自分自身は只々普通に…

理不尽に世間を恨むでなく、また自分を蔑み羨むでもなく…


それでもふと頭を過る…自分が変わっているのではなく少なからず皆が想い願うこと…


‐ if ‐ ” こんな人生だったら… ”


まったく違う人生を想い、考え、泡沫の夢をみる…







真っ白な光りに満ちた世界が広がっている。

静寂が支配し時間さえも停止したかの様な…


なんな中ぽつんと…


ちゃぶ台を挟み向かい合って座布団に座る白い着物を纏った男女


「ようやく見つけた…」


「ようやくですのね…いつこちらに?」


「まだわからん」


「ではもう少し…少々時間かかりそうですね…」


「時間はあるしのんびり待つとするかの…茶でも啜りながらの」










  ~ 第一章 - 1 ~


「あさくん、早く食べてください。遅れてしまいます」


時計の針は午前の8時前を指している…


「ねぇ…早くない?まだ十分と余裕があると思うんだけど?卒業式11時からだよ?」


そう返ってきた言葉に…


「はぁ…何度同じ事を言えばいいのですか?あさくんの頭は飾り物ですか?朝は…」


続く言葉を遮り


「しっかり食事を摂る。何事も余裕をもって行動する。でしょ?」


「わかっているなら実行してください」


「了解です」


 “ 本当にもう…いつまでも子供なんですから… ”

返ってきた答えにため息をつきつつ聞こえるように独り言を呟く。


朝食も終わり、後片付けの為に流しの前に立つ人物の後ろ姿は…

体格は小柄、腰まである艶やかでストレートのさらさらの黒髪…一見すれば女子高校生に見えるが成人している男である。

かたや少そんな彼に ” あさくん ” と呼ばれ小言を言われていたのは大柄で筋肉質な男。

少女のような方が27歳、大柄の筋肉質が21歳。よく似ている二人。

それは当たり前で兄弟なのだから似ているのである。

…ただ誰が見ても兄と妹にしか見えないのだが…



二人っきりで過ごすこの朝ももう何年になりますかね…



6年前…突然の事故で両親を亡くした。施設育ちの両親だったので他に身内はおらず残されたのは弟の朝陽だけだった。

すでに調理の専門校を卒業し働き初めていた自分とまだ高1の朝陽…

両親が残してくれたもので生活に困る様な事は無かったが、多感期だった朝陽は突然の出来事に感情が振り回されてしまい周りが見えなくなってしまった


” 自分がしっかりと支えなくては ” 


奮い立ってみたものの途方に暮れた事もあったけど、両親の幼馴染の家族が何かと支えになってくれたおかげで今までやってこれた。


 “ もう6年ですか…朝陽の就職も決まりこれで一つ肩の荷が降ります。両親にも胸を張って顔向け出来ますね… ”


「あさくん、準備出来てますか?出掛けますよ」


「ん?まだ早いよ…それより兄ぃも一緒にいくの?」


「ええ 一緒に行くつもりですが何か問題でも? 時間が早いのは墓前に報告に寄ろうと思っているからですが」


「そうなんだ…」


「身内が行ってはいけない決まりでも?それとも来てもらっては悪い事でもあるのですか?」


「え?そんな事はないよ」


「では問題無いですね。せっかくの晴れの日なんですから」



墓前への報告も終わり、その足で会場に向かい式は滞りなく終了した。


今夜の予定の確認と仕事に行く旨を伝えようと朝陽を探した。

大勢の人の中に頭一つ抜けた朝陽を見つけ声を掛けようとした時、気づいた朝陽が人を掻き分けながらこちらに手を振りながら笑顔で向かってくる。


そんな朝陽の姿を見た周りがざわついてるけどどうかしたのだろうか?


「どうしたの?」


「改めて、卒業おめでとうございます。今晩なにか予定はありますか?無いのであれば祝いの席を設けようかと思っていますが?」


「え?お祝いしてくれるの?」


「ええ。お隣さんも誘って少々豪勢に…大切な門出の日ですから」


その言葉を聞き満面の笑顔で


「何も無い。で、何時までに帰ればいい?」


大きな返事に少々驚きながら


「そうですね…お隣さんの都合もありますし9時頃にしようかと思います」


「了解 それまでには帰るよ 手伝いは?」


「主賓なのに手伝って貰わなくて大丈夫です。腕によりをかけて作るので楽しみにしていて下さい」



その場で朝陽と別れて仕事に向かう。

職場で嬉しくて上機嫌で話をしたら “ それなら早く帰ってあげないとね ” と気を利かせて早上がりさせてくれた。


 “ 皆さん親切ですね。ありがたいです。さて、プレゼントも用意しましたし、時間に余裕が出来たので豪華いきますか。 お隣さんにの都合も確認しないと。一応先にメールで知らせて帰る前に寄って顔出しすればいいですね… ”


そんな事を考えつつメールをしようと携帯を取り出して…

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