このラブコメ部はラブコメができない！

第7話 冗談は顔だけにしてくれ

「……行ったみたいだぞ……」

「そう、だね」

　二人でアイコンタクトを取って、ゆっくりとロッカーから脱出する。

「はぁ、はぁ……危なかったぁ！ごめんね。変なのに協力させちゃって」

「いやいや、別にいいよ！俺で力になれるなら何でもするからさ！」

「……ほんとに？今何でもって……」

「ああ！任せてくれ！俺にできることなら何でもやってみせる！」

　当然である。こんな困っている美少女を目の当たりにしてそれを無視する男がどこにいようか。

「ありがと！ほんっとうにありがとう！」

「いやいや。いいってことよ」

「すごい！ボク君のこと好きになっちゃいそう！」

　俺が胸を張りながら宣言すると、彼女は勢いよく俺に抱きついて、何度も胸に顔を優しく擦り付けてくる。

　にゃはぁぁぁぁぁ！この子、スキンシップ激しい！

　ヤバい！新手の兵器だよぉぉぉぉぉ！

　この可愛さはダメだって！

「で、でさ！頼って？」

「ああ。そうだったね」

　話を脱線させたことに気がついたのか彼女は小さい舌を覗かせながら右目を瞑った。

　もう、可愛すぎて話が進まないヨぅ！

「あのね。ボク、しつこく部活に勧誘されて困っててね……」

「ほう。それで？」

「今日入部できる部活を一緒に探して欲しいんだ！今の校舎には魔物が潜んでるから……」

　確かにさっきみたいな変な輩がしつこく絡んでくるのであれば満更ではないだろう。

　とりあえず部室に行くのが最善か……。

「ふむ。となれば、ついてきなよ」

「心当たりがあるの！？」

「ああ。もちろんさ。この手を離さないでね？マイプリンセス……」

「やっぱり好き！」

「うぐぅ！」

　プリンセスというよりも、子犬に近いな。この子。

◇

「ちょっと、遅いんですけど！」

「うるさいなぁ……パシらせたくせに俺が扉を開けた瞬間にそれかよ」

「はぁ？あんたが勝手にでてったんでしょ？」

「いや、お前が喉乾いたっていうからわざわざ買いに出たんじゃねぇか！そんなことも覚えてないのか？胸のデカさと頭の良さは比例するらしいな！」

「はぁ！？誰が貧乳女よ！大体ね――」

「あ、あの！ケンカは、よくないと、思うのです……」

　部室に入るなり即座に繰り広げられた言い争いに後ろにいた天使さまが俺と甘寧の間に割り込んで仲裁しようと頑張ってくてた。

　しかし、甘寧の圧に負けてしまって語尾にいくにつれ声のボリュームは下がっていった。

　間に入った天使さまを甘寧はじっと見つめている。

「何だよ、甘寧。俺の天使になにしようって……」

「あれ、もしかして、綾井君？」

「いやお前失礼だろ！どっからどう見ても女の子……」

「うん！ボクは同じクラスの綾井綾香！よく、わかったね……甘寧ちゃん」

「分かるよ！だって綾香君すっごく可愛いもん！」

　あれぇ？全く理解できないぞ……。

　色々とごちゃごちゃで理解が追いつかない。

「な、なぁ、それってつまり……」

「改めて自己紹介するね。1年2組3番。綾井綾香。性別は男の子です。よろしく、ね？」

「ち、ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

　僕の理想のヒロインは、男の娘でした！