寝なければならないのについつい読み進めてしまう、そんな作品です。
第二章が終わったところでさすがに寝ようと思い、星を入れようとしたところで作品の面白さに対して星が少ないことに気づいたの少しばかりレビューをば。
まぁ、わかります。
スライムを題材にした作品なんて正直あまり期待してませんでした。スライム作品なんて星の数ほどありますし、そのほとんどがうっすーい内容でチートで俺スゲーして降って湧いた美少女とイチャコラする内容が多いです(個人の主観的意見)
それに日記(というか週報や月報に近い)のような体裁で進む文章は、端折られすぎてるように思えて味気なさもあります。
しかし、この淡々と進むのが良い。
領地開発なんて数日で成果出るわけないし、そんなトントン拍子で大きく成長するわけないんです。
それを日記風にすることでぎゅっとコンパクトになり、いくら読んでも飽きる間も無く次へ次へとページをめくってしまいます。
それでいてしっかりと盛り上がるところは盛り上がります。
主人公のキャラクターも良い。好きなことを好き勝手やる。そんな性根は子どものようでありながら、感情に任せに行動せず理性的で清濁合わせ飲む必要性もわかっている。自分の置かれた立場を理解して着実に地力をつけて上級貴族や王族からの圧力に対して盤面を変える知性もある。
そういう主人公だからストレスもありません。
この小説を上手く評価できているかはわかりませんが、眠くなってきたのでここらへんで。
強いて難点を挙げるとすれば、転生人ではない現地人にしては先見性がありすぎるように思える点ですかね。
領地開発に興味があれば読んで損はない作品だと思います。
結論から言うと、素直に、普通に面白かったです。
スライムを召喚するしかスキルの幅がなくて冒険者ギルドから戦力外通告&追放された主人公が『最後に自分の全能力を捧げて召喚したスライム』を使い「なんかもう気づかいや面倒ごとはいいや」とばかりに自分がしてみたいと思っていたことを自分の能力が及ぶ範囲でやってみようと動き出す、ストレスなき軽快な辺境開拓譚!(17話時点)
以下、レビュー要綱に従い良かった点と期待する点を挙げていきます。
①【境遇を悲観しない天才肌の主人公がするすると開拓の展望をもたらす!】
追放されてしまった主人公だが、(読み進めれば分かるが)発想が自由で天才肌であるためにあまり悲観しない。する必要がない。召喚したスライムを周りの人間が思いつかないような視点で存分に活用して道を切り開いてゆきます。
一度切り捨てられたためか飄々としている主人公がもたらす言動&成果と周囲の温度とのギャップに小気味よく笑えてしまう場面も多々。
主人公の周囲の人間はどちらかと言えば主人公に対し冷遇気味なはずなのに、とにかく危うげのない主人公の世渡りに安心感を持ってつき合えます。
②【スライムがかわいい】
このスライムが汎用性高くて地味に強さの底が見えてこない。天才肌な主人公をして「スライムだけどこんなことさせちゃって大丈夫かな、あれ、できちゃってるな、まぁいっか」というようなノリでなんとなく乗り切ってくれちゃう小気味よさ。そしてとにかく寡黙で従順。けれど主人公を気遣うようにうかがってくるという絆も見せる。これがカワイイ。
ペットや従魔はしゃべる方が可愛い派? いやいや、それもたしかにいいけれど、『こういうの』もイイもんですよ。試しに読んでみてください。スライムがかわいいです。
③【投稿を目論む作者勢もフォローする価値があり!】
そして、この作品は【書籍化経験あり】の作者氏が「バズる小説の要素を分析して詰め込んで書籍化を目指す」とする意欲的な実験作(らしいです)。
自分はその宣言を聞き興味を持って久しぶりにカクヨムのアカウントを掘り起こしました。
サクサク進むことを念頭にしているとのことで、実際に非常にテンポよく話が進みます。書きなれた文体と面白おかしい一人称語りでスルスルと喉に滑り込んでくるように読み進められます。
紙の本とweb小説はそこそこ読んできましたが『文章力』と『軽快さ』のバランスはかなり取れていると思わされました。文章力の参考にもできると思います。無料でこれを読めるのは大きな価値です。
なのでむしろ、現時点での17話では物足りなさを感じるかもしれません。自分は50話ぐらい一気に読みたかったなと思いました(誉め言葉)
一方で豊富な知識に裏付けられていると分かる舞台描写も随所に散りばめられており、そういった単語ひとつを取っても検索などを併用駆使すれば、web小説の作り方や一歩踏み込んだ創作のきっかけになり得るのではと思わせてくれるポテンシャルを感じます。
意識的に書籍化を目指す!というチャレンジは多くの人が目論んでもなかなか口にできることではなく、それでいて実際読んだ時の面白さもしっかり出してぶつけてきてくれているので、ここはさすがプロだなと思います。
それだけに、おそらく作り手側にも学びが多く得られそうな作品というわけです。
④【期待するところ】
他の方のコメントにもありますが、現時点では主人公の一人称語りメインで話が進むために会話が少なく、登場人物の『人となり』や『キャラクター性』はやや薄味ぎみです。
主人公の一人称語りも基本的に冷静であるためか、感情を交えない学術的コメントの連続を見ているような気になる時もあります(逆にそれが定速による読み進めの軽快さにもなっており、17話時点ならさほど気になりません。これは実際に皆さんが読んで確かめてみてください)
しかし今はまだ序盤の基盤づくりもいいところなので、これから物語にとっての中心キャラクターの参入や人物像の掘り下げ、彼らとの関わりやかけあいの場面などが増えてくるのではないでしょうか。これが期待点です。
総合して、繰り返しですが、面白かったです。
領地が拡大を果たした時、または国ができた時、きっと私たちはまた「コイツらは……w」とクスクス笑っていることでしょう。
作者氏の「意識的に書籍化できるかどうかの実験」という側面もあることなので、書籍化を目指す作者の方はこの挑戦的なメソッドを見届け、知見と恩恵を得るために、フォローと応援をしてみるのも一興なのではないでしょうか。
以上です。皆さんの作品選びの一助になれば幸いです。