relive_the_end_of_world_16.txt


確かに、最初から壊れてるビルも在った。

終末世界だ。

崩れた構造物が在っても不思議ではない。


「……あ、いや。ちょっと待てよ。これ、おかしいぞ」


思わず呟く。

すると、


「「えぇ……。また?」」


姉妹が眉をひそめた。





ここは終末世界。

だから、倒壊しかけた建物が存在するのも当たり前。

雰囲気を造るための一種の「装飾」のようなものだと考えていた。

単なる背景なのだと。


しかし、この世界はどこまでも精緻に造り込まれていた。

それこそ、当時の生物相すら再現するくらいに。

だからこそ、建物の位置が変わっているだけでも、これだけ違和感を覚えたのだ。


つまり、ビルが崩れていることだって不自然なのだ。

その倒壊した建築物が、あまりに馴染みすぎて見落としていた。




現実世界に戻る。

倒壊した建物の位置データだけを入力。

機械学習にかける。


「やっぱりだ……」


街の配置はあまりにランダムで、無秩序に見えた。

そして、実際、それは無秩序に配置されていた。


ただ、倒壊した建築物だけは違う。

一見、複雑に見えた。しかし、


「――回転と対称操作を繰り返してるだけだ!」

「どーしたの?」


左右から、詩と祈がモニターを覗き込む。


「ああ。例の謎なんだけど」

「建物の座標がどうとか、ってやつ?」

「そう。解けたかもしれない」

「「へー」」


心底、興味が無さそうに二人は答える。


「……いや、まあ、その反応は予想してたけどな」


二人が顔を見合わせる。


「詩。かわいそうだから、聞いてあげる?」

「つまらないと思うけど……」

「私たち、お姉ちゃんだから」

「ガマンするか……」

「ん」

「いやー、ボクたちみたいな良くできた姉、なかなかいないよね」


会話が終わったらしく、俺に二人は向き直る。


「ほら。ボクたちに話してみ」

「やかましいわ!」


見上げるほどの上から目線が、いっそのこと清々しい。

もう面倒なのだが、ここで話さないと


「ボクたちの厚意を踏みにじった!」


と文句を言われるので、説明してみる。


建物の座標に規則は無かったこと。

しかし、廃墟だけは回転、対称というシンプルな規則で配置されていたこと。

それにも関わらず気が付かなかったのは、全体の無秩序さのなかに紛れてしまっていたから。


「「ふーん」」


心底、興味が無さそうな反応が返ってくる。


「まあ、その反応は予想してたけどな……」


銀色のブレインマシンインタフェースを手に取る。


「ん? 遠、何するの?」


詩が問う。


「relive_the_end_of_worldに潜ってくる」

「なぞ、解けたんじゃないの?」


祈が首を傾げた。


「一応、建物の座標の規則は分かったな。建物の座標はランダムだけど、廃墟だけは回転と対称を繰り返してる」

「「で?」」

「回転と対称。それには、中心が有る」

「どゆこと?」

「あー、つまり、回ってるモノには軸があるだろ? 風車しかり、観覧車しかり、台風しかり」

「「ってことは?」」

「廃墟群にも、中心が有る」


二人もブレインマシンインタフェースに手を取る。


「ボクも行くよ」

「私も」

「どうしたんだよ?」

「有るかもしれないじゃん!」

「何が?

「「埋蔵金!」」

「あー……」


夏になると、どうもその手のコンテンツが消費されがちだ。何故だろうか。昨日の夜も遅くまで、その手のオカルト系ブログを読み漁りながらはしゃいでいた。


確か、徳川埋蔵金だとか。

彼女たちが言うには、徳川家の建てた主要な寺院を結ぶと、六芒星ができるのだとか。

そして、その中心に莫大な金塊が埋められている、らしい。

知らないけど。


今回の件と、似ていなくもない、のだろうか。


「いや、でも、ねえたちの欲しいようなモノは無いと思うぞ」


ゆず葉も言っていたことだ。


「あそこには何も無いよ」


と。


しかし、


「早く早く!」

「ほかの人に、とられちゃう」


この姉たちは聞く耳を持たない。

BMIを被りながらベッドに倒れ込む。当然のように俺のベッド。


「まあ、良いけどさ……」


何も見つからなくて起こるんだろうなぁ。

そんな事を思いながら、BMIを被る。

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