relive_the_end_of_world_12.txt
オンラインで公開されている機械学習ライブラリをダウンロード。
PCにインストールし、建物の座標データを入力してやる。
待つこと、数分。
「「どうだった?」」
姉妹が問う。
損失関数がどこまで行っても収束しない。
つまり、
「何の規則も無い……」
「へぇ。そうなの……」
「ボクたち頑張って手伝ったのになぁ」
「無駄骨だったんだ」
「がっかりだなぁー」
拗ねるような、責めるようなセリフ。
しかし、言葉とは裏腹に、二人の口の端には笑み。
「「残念だなぁ」」
微塵も残念そうではない。
鼻に掛かった声。
悪寒が走る。
「悪い。お手洗い」
言いながら立ち上がる、が
「「
二人が叫ぶ!
「あ、おい!」
どこに隠し持っていたのか。
二人が取り出したのはロープ。
(恐らく、母さんの登山用)
精緻な連携。
双子はさながら、四本の腕を持つ、一匹の生物のよう。
「よせ!」
と叫んだ時には腕を縛られ、
外そうともがいた時には足が縛られる。
かくして、気付いた時には身動きが取れなくなっていた。
ベッドに転がされては、二人を見上げることしかできない。
にやにやと笑みを浮かべる二人を。
「……こ、こんな芸当。……どこで覚えたんだよ?」
「「遠のお母さんに教えてもらった」」
「だろうな……」
訊くだけ無意味だった。
「一応、訊くけど、何のつもりだよ?」
「分からないの?」
と、詩が言う。
「遠が悪い」
と祈。
「ボクたち、1時間おきに遠を起こしたよね」
relive_the_end_of_worldの世界は、一度ダイブしたら6時間は抜け出せない。
しかし、何か異常が起きた場合は別。
ダイブは強制的に中断される。
例えば、強烈な揺れとか。
だから、二人に揺すってもらえば、6時間の時間制限を待たずにダイブを中断することができる。
「24時間」
と祈が呟く。
「2人分だから、48時間。それが、ボクたちが君に付きっきりだった時間」
1日8時間。
それが3日で、24時間。
双子なので2人分だから、48時間という内訳らしい。
「た、助かったよ。感謝してる」
「うん。別に良いんだ。ボクたち、相応の対価は貰うから」
こくり、と祈が頷く。
「貴重な夏をそれだけ、」
「私たちは遠の為に使った」
「だから、今度は遠が」
「その時間を私たちの為に使う」
「なるほど……」
つまり、彼女たちはこう言いたいのだ。
今から48時間。
お前は私たちの奴隷だ、と。
ふいに、ころん、祈姉がベッドに転がる。
横向きの彼女の顔が、目の前に有る。
「ね。今、どんな気持ち?」
などと問う。
「……ああ。最悪の気分だよ!」
瞬間、大きく息を吸う。
流れ込む空気。
胸が、腹が、膨らむ。
絡まった縄が、ミチミチ、と音を立てて伸びる。
人体の筋肉は、思うよりも強靭。
腹横筋、内肋間筋は、登山用のロープにすら抗いうる。
「え、遠?」
「どうしたの?」
とは言え、切るには至らない。
しかし、
「はっ」
一瞬で息を吐く。
萎む身体。
伸びたロープの分だけ、隙間が空く。
その隙間に身体をくねらせ、縄を外す。
縄抜け。
まさか、こんな技術が役に立ち時が来るとは。しかし、
「「残念」」
そんな声が聞こえた。
その声がやけに甘ったるくて、耳にこびりつく。
ちらりと見れば、姉妹はくすくすと笑っていた。
欠片も残念そうではない。
さらに激しく、身体をくねらせる。
それでも、一向に縄は外れない。
縄抜けで隙間は空いたはずなのに。
「そのくねくねするやつで、縄が外れるの?」
祈が言う。
微かに、笑みを浮かべながら。
「その技、遠は誰から習ったのかな?」
母さんだ。
「ボクたちも、この捕縛術は遠のお母さんに習ったんだよね」
背筋に寒気。
「そういうことか……」
つまり、縄抜け対策も万全ということか。
確かに、一見、雑に巻き付けただけのようなこの縄。
抜け出そうとすると、絶妙に身体のどこかかに絡まるのだ。
「お義母さん、言ってた」
祈が言う。
「遠が悪い子だったら
詩が言った。
「くっ……」
あの人、なんてモノを、なんてヤツらに教えてくれたんだ。
二人の顔が目の前に有った。
俺を覗き込んでいる。
「「ね。今、どんな気分?」」
姉妹は問う。
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