伝えきれてなかったありがとう
数分泣いて少しだけ落ち着いてきたらしい。泣きじゃくった顔をこすりながら話しかけてきた。
「愚痴ったらなんか落ち着いたよ。ありがとう。もう出来ないんだから話せるだけ幸せだよね。ねえそろそろどこかに行かないと行けないんだ。ここじゃないどこかに。だから私の事はもういいから幸せになってね。」
そんなことを言うと日花の透明になり始めて段々と見えなくなってきた。
「日花最後に伝えるね。僕は日花がいてくれて良かった。僕の人生にいてくれてありがとう。出会えて本当に良かった。」
日花は嬉しそうな顔をしてこちら側に近づいてきた。日花は肩に手を置いた。感じた温もりは一年前と何一つ変わっていなかった。
「健司ありがとう。そんなに私を大切にしてくれて。もう思い残すことはないな。元気で過ごしてね。来世も同じ時を過ごしたいな…今度は家族として。」
日花は消えかかっていた。もう時間がないのは痛感していた。
「悲しまないから元気でこれから過ごすからだから日花も元気でね。」
これでさよならだから僕は笑った。僕たちは時間が許す限りお互いの温もりを感じていた。大好きな人に悲しい顔で別れを告げるよりも笑っていたほうがいい。そんな見送りで日花は成仏した。日花の最後の笑顔は何にも縛られていなかった。その笑顔は悲しい過去を照らしてくれた一筋の生涯消えることのない光なっている。
最後に… 楓 紅葉 @sperk
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます