数字を順番に大きくするメロス
お望月さん
あなたなら数字を大きくして王を倒すことはできますか?
メロスは激怒した。必ず、あの邪知暴虐の王【984】を除かねばならぬと決意した。
メロスには数字が分からぬ。メロスは、村の牧人【1】である。スマホゲームはあまりやらないが、10年くらい前にThreesを朝までやっていたことがあるくらい、数字がどんどん増えていく快感に対しては人一倍に敏感であった。Threesはヤバイと思ったので、その後すぐに消した。
きょう未明、メロスは村を出発し野を越え山越え、シラクスの市へやってきた。メロスには父【1】も母【2】もない。内気な妹【16】と二人くらしだ。この妹【16】は、村の或る律儀な若者【8】を花婿として迎えることになっていた。結婚式は間近なのである。メロスは、それゆえ、棍棒【2】やシールド【4】を手にして、結婚式前に若者【8】をぶちのめすつもりなのである。
妹【16】と若者【8】が結婚をすると【24】になる。こうなると【1】のメロスでは手も足も出ない。まず、棍棒【2】を入手してメロス【3】になった時点で、老爺【2】を打倒することでメロス【5】まで成長し、シールドナイト【4】を倒して、メロス【9】になるというルートを想定していた。
メロスは市場の入口で若い衆【6】が通過するのを見送った。最近の若い衆は体格が良く、怖い。今度は親友のセリヌンティウス【999】と一緒に市場に来ることにしよう。次に通りがかった老爺【2】に、この近くに棍棒【2】はないか、と尋ねた。
「なぜ棍棒【2】が必要なのだ」
「お前【2】を殺します」
「なぜ殺すのだ」
「手始めに妹婿【8】を殺すためだ」
「そのためにたくさん人を殺すのか」
「俺は【1】だから棍棒【2】を手に取り、お前【2】を殺せばメロス【5】になるので、シールドナイト【4】を倒してメロス【9】になる。そして妹婿【8】を殺せば妹を越えるメロス【17】になる、やがて王様【984】をも殺すことができるだろう」
「しかし、それでは王様【984】は殺せません。」
「なにっ」
「王様【3】は、はじめは妹婿【2】さまを。それから、御自身のお世嗣よつぎ【4】を。それから、妹さま【8】を。それから、妹さまの御子さま【16】を。それから色々あって、皇后さま【951】を殺しました。」
「驚いた、王【984】は乱心し
「いいえ、乱心ではございませぬ。数字しか信じることができぬというのです。この頃は臣下の数字をも疑いになり、城門に小さな数字から並べていくのは意味がないのではないかと」
「飽きれた王【984】だ生かしておけぬ」
メロス【1】は単純な男であった。棍棒【2】を手に取ると老爺【2】を撲殺し、メロス【5】となるとシールドナイト【4】からシールド【4】を強奪してメロス【9】のまま、王城へ突入しブーメラン拳士【299】に捕らえられた。
(画面に大きなバツ印が表示され、画面隅から老爺の幽霊が顔を出す)
老爺
「あなたなら数字を大きくして王を倒すことはできますか?」
いますぐ画面にタッチ!!
いまなら期間限定でセリヌンティウス【999】を
数字を順番に大きくするメロス お望月さん @ubmzh
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