第73話 モテる女の条件

 モテる女性って往々にして、顔も性格もかわいいじゃないですか。私の人生で見てきた中で、モテるなと感じた女性の半数以上はこれに当てはまります。


 顔がかわいい。スタイルもいい。社交的で頭もいい。男子が笑いを取ってくると、声を上げて笑ったり、時には絶妙な返しをしたりして場を盛り上げる。でも、自分から積極的に笑いを取りに行くヨゴレキャラではない(←ここ大事)。


 このタイプのモテ女は、同性からも人気なタイプと、同性からは嫉妬されて疎まれてしまうタイプに別れる気がします。


 典型的な美人ではないけど、個性的で圧倒的なカリスマがあるモテ女もいますよね。他の人にはない魅力に溢れている女性。恋愛の泥沼に引き込んで行くのはこのタイプが多い気がします。私が惹かれるのもこちらのタイプです(←誰も聞いてない)。


 そして、『なんでこの女がモテるんだろう?』っていうモテ女もいませんか? コレ、口に出して言ってしまうとモテない女のひがみにしか聞こえないので、普段は誰にも言わないんですが、今、身近にいるんですよ、謎のモテ女が。


 年齢はおそらく四十代半ば。オーストラリア在住の日本人で、小学生の娘さんがいるシングルマザー。仮にAさんとします。出会った当初からとにかく強烈でした。


「私、今ちょっと大変なんですよ、聞いてもらえます?」

 と、まだ会って数分しか経っていないのに、グイグイと会話を振られまして。


 なんでも、離婚した元夫の実家が大変な資産家で、金に任せて子どもの親権を奪おうとしていると。自分は身ぐるみ剥がされてお金がなく、弁護士同士の戦いになったら勝ち目がなさそうだから、日本に逃亡してしまおうかと思案中。でも、元夫の同意なしに帰国してしまうと、誘拐犯として罪に問われる可能性もあるからどうしよう……。


 うへえ! 小説のプロットですか!? それはシャレにならない。どうしよう……って聞かれても、本当にどうしたらいいんだろう。私がオタオタと動揺していたところ、その場にいた他のママさんの一人(仮にBさんとします)が法律に詳しく、無料で受けられる国選弁護士サービスの話をしてくださいました。


 希望の光が差して、ひとまずホッとしたのもつかの間、「でも、向こうとは財力が違う」とか「元旦那は狡猾だからみんなだまされる」とか、『でも』『でも』の嵐。


 そんなやりとりを見ていて、ピーンときました。Aさん、いろんな人に相談しているけど、心の底から解決したいと思っていなさそう。シャレにならない問題を無意識に自ら招いて、ドラマの渦中にいたい人かも……。


 子どもの習い事関係で、Aさんとは定期的に会う機会があるのですが、会うたびに重〜い悩みをその場にいる全員に披露する彼女。こういう人って、ずーっと何年経っても、何かしらのドラマチックな問題を常に抱えてそうだなァと思っていたら、Bさんと飲みに行く機会がありました。


 なんと、AさんとBさんは高校時代の同級生だったのです。メルボルンで再会したのは全くの偶然とのこと。

「Aは、昔からああだから」とBさん。

 つまり、高校時代から、シャレにならない問題が次から次へと起こる人だったそうです。


 謙虚なBさんは何もおっしゃらなかったけど、いろんな人から頼りにされている、優しくて能力の高いBさんのことなので、Bさんも、昔っからAさんの相談に乗って、あれこれ手を差し伸べてきたんだろうなと想像できました。


「今日は気持ちの良い天気だね〜」とか「先週、妹に赤ちゃんが生まれたんだよ」とか「職場のお局に意地悪されて困ってるんだ」とか、他の人が明るい話題を提供したり、悩み相談をもちかけても、Aさんがその場にいると、数秒でAさんの話に引き戻されます。そして、Aさんの話題は常にヘビー級の人生問題。


 一緒にいて非常に疲れるので、彼女が視界に入ると、私はコソコソと逃げるようになりました。


 そんなAさん、昔からすごくモテるらしいんです。今でも複数の男性からアプローチを受けているけど、忙しすぎて恋愛している暇がなく、みんな断っているとのこと。自己申告なので真偽のほどは確信が持てませんが、ウソをついているようには思えません(ちょっと盛ってるかもしれないけど)。


 中には、二年間ずっとAさんに片思いしている二十六歳の男性がいるそうな。

「出会ったころは二十四歳だったから、さすがに年下過ぎて全く対象外だったんだけど、最近大人になって、かっこよくなったんだよね」とAさん。

「どうしよっかなぁ。忙しいから恋愛してる余裕とかないんだけど。一回くらいデートしてもいいかな、と思わなくもないんだよね。どう思う?」

 

 Aさんにそんな質問をされて、『私の人生で、そんな悩みを抱えたことがあっただろうか、いやない(反語)』と非常に複雑な気持ちになりましたよ。くそう、うらやましくなんかないぞぅ。

 

 性格に難アリなのにそれだけモテるんだから、さぞや色気のある美人なのだろうな、と思いますよね?


 それが、そうでもないんだー(爆)!


 顔立ちは、整っているほうかもしれません。でも、いつも愚痴と自慢話しかしないので、表情が意地悪に見えます。髪がモワモワで清潔感がありません。


 さらには、体のラインが強調されるような、ピタピタの薄い生地を着ていることが多くて、脇からはみ出ているお肉とか、お腹の段々とかがですね、服の上から目視できるんですよ。ノーブラなのか、お胸のほうもですね、こう、年相応な位置にいらっしゃるのが、よく見えるわけです。


 ふくよかでタレ乳でも、魅力的な女性っていっぱいいますよ? でも、彼女の場合は肉感が生々しくって、見ちゃいけないもの見ちゃった感じがするんです。


 そんなAさん、魚屋さんへ行っても、スーパーでお買い物をしても、はたまた旅行中でも、男性からすぐに声をかけられるらしいです。


 ご自分では、「私って運が強いのよ。悪運って言ってもいいんだけど。いろんなものが、向こうからやってくる運命なのよ」とおっしゃってました。


 あー、なんかわかる気がするな、と思いました。強力な磁石のような女性。こんなことを裏で書いてる私でさえも、彼女の言動はおもしろすぎて、恐いもの見たさちゅうか、目が離せないですからね〜。


 みなさんのまわりにもいませんか? 『なんでこの人がモテるんだ』と首をひねってしまうモテモテの人。


追記:短編連作、食堂『まどか』のふつうのご飯、チョコレートパフェ編の連載を開始しました。今度は既婚男性が主人公です。

https://kakuyomu.jp/works/16817330657517850145/episodes/16817330661175441383


もしよかったらのぞいて見てください〜。読んでいただけたら、とても嬉しいです。どんな感想も感謝です♡

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