第22話 神は細部に宿る その2
コロナの4回目のワクチンを打ったところ、副作用で熱が出てしまいました。頭痛も腕の痛みもひどかったのですが、イブプロフィン(解熱剤・痛み止め)を飲んだらすぐに熱も下がり痛みもなくなりました。
イブプロフィン、すごい! こんなにいい薬が安価でどこでも手に入るって魔法のようです。家族ともども、何度もお世話になっておりますが、昔はこんなのなかったんですよね。虫歯が多かったらしいヘンリー八世も、イブプロフィンがあったら、あんなに性格が曲がらなくて、歴史もだいぶ違ったんじゃないかって思います。
↑本題と関係ない話でした。さて、先週ディテールの話をしましたが、みなさまのコメントからインスピレーションを受けて、追加で思うことがあったので、書いておきます。
映画などで、カメラワークから衣装からサントラから、凝りまくった傑作があり、そういうの大好きなんですけど、そればっかり好きってわけでもないんですよ。低予算で素朴だけど、キャストやセリフがむちゃくちゃいい、とか、いろいろダサいんだけどそこがチャーミング、とか、作品の魅力は千差万別で、完成度の高さと作品のおもしろさは必ずしも比例しないと思います。
小説も、描写が凝っているものが特に好きというわけではないです。必要最低限の描写で物語がどんどん進んでいく作品も好きですし、シンプルでわかりやすい文章は、読者が気づかないような工夫がたくさんされているんだろうなぁと思います。
ディテールの良さって、目に見える部分に凝ってるか凝ってないかっていうのとは、また別の話な気がします。華美なもの=ディテールがいいってわけでもないですよね。
物語として切り取るのは、ほんの一部。ディテールが光る作品というのは、作中に出てこない部分の力が大きいのだろうなと思います。そこには、実体験を元にしたリアリティやら、徹底した取材による圧倒的な情報量やら、作者さんの性格や哲学なんかがありそうです。そういうのが、ぽろっと細部に出てるのを見つけて、グッとくるんだと思います。
でね、ここで、私ったらバカ真面目な性分なので、「〇〇しないと××できない」という罠に引っかかりそうになります。「実体験したことじゃないと、リアリティのある物語にはできない」とか「きちんと取材・調査しないと、いい作品にならない」とか。
ちょっと話が変わるんですけど、過去にこの罠にハマって、今でも後悔してることがあります。
前の職場で、売り上げが下がっていたとき、マーケティングの予算が削られ、リストラでチームが半分になったことがあります。商売で売り上げが低迷してきたら、一番最初に削られるのがマーケティング費用です。
予算は前年より少なく、チームの人数は半分。でも、売り上げを伸ばさないといけない。「無茶言うな」って思いました。最終的にその会社は倒産し、私も職を失ったんですけど、今でも後悔しているのは、なんであのとき発想の転換ができなかったのかなぁというところです。
「予算や人員が減らされて、売り上げが伸びるはずがない」と思うんじゃなくて「前よりも少ないリソースで、売り上げを伸ばすにはどうしたらいいか」って、なんで必死で考えなかったんだろうって後から悔やみました。
どんなにがんばったところで、負けるときは負けるんですけど、最初から諦めている人に勝ち目はないですよね。
すばらしい作品に出会うと、創作のインスピレーションになると同時に「オラこんなの一生書けねえ」って打ちのめされることがあります。そして、どうして私には書けないのか、理由がすぐに何個も見つかっていやんってなります。「こんなに頭良いこと考えつかない」「ここまで取材する時間も根性もない」「作者は天才だな!」ってな感じで。
でも、そこに囚われず、発想を変えるように努めています。
「才能がないと書けない」と思う代わりに「普通の人が書けるおもしろい物語ってなんだろう」と考えてみる。
「まとまった時間がないと書けない」んじゃなくて「隙間時間をどう有効活用するか」と工夫してみる。
実体験の乏しい部分は、リサーチと想像力でなんとかするしかありませんし、調査・取材に裂く時間やお金が限られてるのだったら、身近な材料をネタにしてもいいわけです。
それ以上に、「好きに書けばいいじゃない」ってセリフ突っ込みが入ります。趣味だから! 書きたいから、書きたいものを、書けばいいのよ。あんまり難しく考えないほうがいいですね。
ってことで、今、短編の一番書きたかったところを書いています。きゃー、すごく楽しい〜。ものすごーく時間かかってますけど。自分が胸熱になるシーンを書ける喜び。悦に入りながら自作を読み返して、チョコチョコ推敲を繰り返す無限ループにハマる楽しみ(←だから進まねえんだよ)。楽しいって一番大事ですね(←個人の見解です)。
少しでも、ディテールが光る作品にしたいので、できる範囲で調査・取材も進行中です。こちらも、楽しいです。
追記:私の熱いリクエストに応えて、ちありやさんが、岡田斗司夫さんの爆笑エピソードを、ご自身のエッセイで再現してくださいました。一人でスマホ見ながら声に出して笑ってしまいました。
ツッコミどころ満載のディテールがすばらしいんですけど、そんなの超越してました。アホすぎるエピソードですが、ここに岡田斗司夫さんのすごさの根源を見た気がします。
ほんっとにおもしろいので、興味がある方はぜひ読んでくださいませ〜。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897740702/episodes/16817139558556447069
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