第21話 神は細部に宿る
すばらしい作品に触れると、ディテールがいいなぁとよく思います。
数日前、「リコリス・ピザ」というアメリカ映画を観ました。舞台が1970年代の米国で、2020年に撮影したなんて信じられないくらい、完璧に70年代を再現していました。
ファッションやインテリアだけなら、低予算でもなんとかなるかもしれません。でも、街並みや路上に走っている車など、どうやってあそこまで70年代にできるのか、どこまでCGでやってるのか、私にはちっともわかりません。
さぞやお金かかってんだろうなァ……と思って調べてみたら、制作費が4000万米ドル(今日のレートで約57億円)でした。うへえ。「トップガン マーヴェリック」の制作費(1.7億ドル=約243億円)と比べたら大したことないですが、アメリカ映画の制作費ってすごいですねぇ。(ちなみに、「制作費が10億円を超えると、邦画としては『大作』と言えるレベル」とどっかのサイトに書いてありました)
アカデミー賞にノミネートされ、評論家には好評だった「リコラス・ピザ」、興行収入的には赤字だったみたいで、一般受けはあんまりしなかったんですかね。
非常に平均的な一般人の私には、ストーリーとしてはイマイチ良さがわかりませんでした。コメディなんだけど、爆笑するわけでもなく、泣ける要素もあまりなく、目立った山もオチもない。そもそも、この物語が70年代である意味あんのかな、舞台を現代にしたら予算もかなり低く抑えられたのでは……と思ったのですが、たぶん、70年代を見事に再現したってとこが、鍵だったんだろうな、と思います。
とりわけイケメンでも美女でもなく、知名度もない二人が主役だったのですが、すばらしいキャスティングでした。チョイ役に大御所を採用してたのも、評論家にはグッとくるツボだったのかもしれません。
うわあ! と目を引く作品じゃないのかもしれませんが、ディテールがすばらしかったです。
「となりのトトロ」も、時代背景のディテールがいいという意味では共通しているなぁと思います(むちゃくちゃ一般受けしましたけれども)。昭和ののどかなニッポンの描写が、あの世代を知らない私にもグッときます。桜デンブとメザシのお弁当とか、かんた君がお父さんの大きすぎる自転車を片足で乗ってるとことか、細かいところが魅力的で、何回観てもいいなと思います。
こういうとき、「神は細部に宿る」という言葉をよく思い出すのですが、この言葉について、チラッとググったところ、語源は諸説あって定かではないみたいです。
「神は細部に宿る」から派生した「悪魔は細部に宿る」という表現も聞いたことがあります。
どちらも、「ディテールって大事よ」という意味なんだと思うのですが、「神は細部に宿る」は、細かいところにこそ表れる、芸術品などの真価への賞賛があり、「悪魔は細部に宿る」は、細かいところをおろそかにすると痛い目みるぜっていう、戒めのニュアンスがあると思います。
で、今書いている短編、ちょっとしたセリフとか、キャラの背景とか、ディテールがいいやつにしたいなぁって思って書いてるんですけど、そこを最初から目指すと、一向に進まないですな! 「木を見て森を見ず」ってこういうときに使うのかしら(←たぶんちがう)
「一稿目は叩き台」「質より量」「完璧を目指さない」といった、以前から自分に言い聞かせているスローガンを思い出して、再挑戦しているところです。
前の自分のエッセイを読むと、私ったら、何回も同じ壁にぶち当たって、同じこと思ってる(そしてエッセイに書いてる)なァって思います。
カクヨムを始めて早二年目、前に進んでいるようで、ぐるーっと回って同じ場所をウロウロしている感じです。
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