ばけもの子供の物語 星

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 とある世界に、星を食べて人々を困らせる化け物がいました。

 そのため人々は、夜の間は真っ暗で何もできません。


 その世界には月がないため、夜になると何も見えない時間になってしまいます。


 このままでは、ちょっとの先も見えません。


 人々は、どうにかこの化け物を退治しようと思いました。


 ですが、夜空にあるすべての星を食べた化け物は、とても巨大になってしまいました。

 強い武器も力も持たない人間達では、どうやっても化け物を倒す事ができません。


 そんな中、一人の少女が生贄になる事を決意しました。

 自分が化け物に食べられて、体の中から腹を切り裂く事で、化け物を倒すと言います。


 人々は反対しましたが、少女の決意を変える事はできませんでした。


 そして当日。

 大きくなり過ぎた化け物にまるのみされた少女は、中から体を切り裂いていきます。


 体の中は暗そうでしたが、化け物の胃の中にはたくさんの星があったため、明かりに困る事はありませんでした。


 少女が小さな手で少しずつ巨大な化け物を切り裂いていくと、化け物は自分の体の異変に気が付いてしまいました。


 化け物は体内にある異物を放りだそうとして暴れまわります。


 少女はそのたびにあっちへ転がり、こっちへ転がり、大変な思いをしてしまいました。


 けれどそんな少女をささえたのは、大昔に食べられた月でした。


 人々が歴史を綴るより前に食べられた月は、ずっと化け物のお腹の中にあったのでした。


 浮き上がった月に乗った少女は、もう転がる事がありません。


 少女は順調に化け物の腹を切り裂いていきました。


 裂け目が十分な大きさになった頃、化け物の腹からこぼれ落ちた星達が夜空へと戻っていきます。


 そして傷のせいで命を落とした化け物も最後には星になって、空に昇っていきました。




 それからその世界の人々は、ほんの少し明るくなった夜の中で、生活する事ができるようになりました。




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ばけもの子供の物語 星 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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