後記

 さて、俺は果たして正常なのだろうか?異常なのだろうか?その振る舞いだけを切り取れば異常の範疇にあるだろう。しかし、そのなかにおいても一種の自覚、意識、そういったものは手放していなかったはずだ。だから、留めようと思えば留めることはできたはずなのである。これは肌感覚、というより内部感覚と言った方が適切なのか。さて今後どうすれば入院せずに生きていけるのか。俺には答えは出せていない。もう退院から一か月を超えたが、あれからあの時のような自暴自棄は起きていない。しかし、また起こるかもしれないと考えると怖くて仕方がない。俺は俺を制御できるのか?

 俺は今後も生きていく。恐らくそう短く終わる生でもないだろうという直感めいたものがある。なぜなら俺は生きたいから。今は、死にたくないという世人のような逃避ではなく、ただひとえに生きたいという意識が明瞭にある。俺はまだやりたいことがあって、まだ死ねない。生きなければならないのだ。

 生きるということは一本筋ではいかない。自らふらつくし、邪魔も入る。それが人生だ。25年間も生きてきてるんだからそれくらいのことはわかる。この自我でどうにかできることなんて限られてる。そもそも俺は世間にはびこるなんでも自我の意志の弱さのせいにするそういった悪性の幻想が嫌いなんだ。でも俺は俺の自我を信じている。これは一見すると矛盾だが不思議なことに葛藤なく同居している意識である。俺はきっと死ぬまで人一倍大変なんだろう。人にも多くの迷惑をかけるだろう。でも、それでも、やることがある。

 生きていこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

閉鎖病棟入院日記 てると @aichi_the_east

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る