第7話 “カタコイ”の行方

 片想いと聞いたら、皆さんは恋愛ソングや少女漫画又はその派生の何かを思い浮かべるだろう。けれど俺、浅野あさのなぎは、そんなものに興味は、全くない。もう一度はっきり言おう、全く興味がない。こんな気持ちになった原因は、俺の大学時代の身の回りの人達のせいである。

 俺の男友達の、青谷あおたに颯大そうたは、幼馴染の女の子の嘘の「大丈夫」という言葉に気づいていながら、その子と自分を守るために、嘘をつき続け、今では、たまに連絡を取り合うぐらいで、ほぼ疎遠だとか。俺は、そんな青谷は頭がいいのに、「颯大ってさ、案外馬鹿だよね。」って、よく言ってる。その意味はもちろん、自分の気持ちぐらい伝えて何が悪いのか、俺にはさっぱりわからないからだ。こんな、自分の気持ちを押し殺して何が良いのかさっぱりわからん。

 でも、コイツ、水野みずのひびきは、話を聞いた時本当に苛立った。響は、周りの男子が、テレビゲームやら鬼ごっこをしたりしているのをどこかで羨ましがっていた。しかし、自分は、ピアノがおもちゃであり、一緒に連弾する人は相棒でもあった。だが、思春期を迎えた響の心には、ピアノを続けることにいい兆しを見せなかった。そして、今ではピアノをたまにたしなむ程度にしかやっていないそうだ。俺は、いまだに響がピアノに未練があるのか聞いてみたら、「俺と同期でピアノを始めたやつに、演奏で告白してきて、またピアノ一緒にやろうって誘われたから、いつかアイツが天才とか、プロのピアニストになった時、アイツと少しでも連弾していて違和感がない様にするため。」って答えた。俺はふとこう思った、ならばまだ続ければいいだろうと、でも響の決めたことが間違っているとは言い切れない。

 そして、行動に移せなく今も引きずっている、涼屋すずやのぞむは、幼馴染が先生の事が好きだってことを知っていても、アニメやドラマのような「俺を見て」的なことが言えず、幼馴染は、今も先生を想い続けて、前に進んでいってしまったとか。

 先生と言えば佐藤さとう碧月あおいって奴に関しては、かわいそうにとは思ったね。碧月は、自分の事を気にしてくれる人が、実の姪っ子に告白されることになり、夢だった教師になった立場でもあり、教師としての一線を越えたくなくて、姪っ子からの気持ちに応えることができなかった。おまけに、家の都合上、縁談を組まされて、完全に疎遠になり、会うことすら、身内なのに出来なくなってしまった。「自分の立場に、抗えていたら変わっていたのかもしれないと思った。」と、碧月は、よく言っていた。

 そうやって俺たちは、皮肉なことに訳アリの片想いの気持ちを伝えきれなった奴が俺の身の回りにいた。この話を、大学の卒業旅行と、称し男子5人、女子2人で旅行していた。俺たちは、予算の都合上、ホテルなんかよりもコテージがいいと多数決をして、とある県の、森林に囲まれたコテージに泊まった。近くには、大きい温泉やゴルフ場、BBQ所などのアクティビティ施設があった。時間によれば無料送迎バスがある事から色んなことに追われていた俺たちにとって、最高の場所だった。

 宿泊した夜の事。俺たちは、中学生や高校生の修学旅行の夜にやるような、恋バナをして楽しんでいた。男子勢は俺以外、先の学生時代に好きだった子の話や、幼馴染についてだとか話していた。

 そして、順当に進み、女子勢の恋バナの番になった。

 最初に話始めたのは、如月きさらぎ日向ひなただった。彼女は、クラスの大人しい男子の事が好きだった。彼は、誰とも喋らないと言う訳ではなかった。彼は、人前に立つ自信がなかっただけだった。如月は、そんな彼の背中を押そうと尽力したが、最終的に、しつこく告白してきた別の男子の姿を見た彼自身から距離を置かれてしまい、それ以上進めなくなかったらしい。如月は「あたしから、彼に告白していたら変われたかもしれない。いや、彼と同じように過ごせていたら、もっと距離が詰めてあったら、違ったかもしれない。」と、酷く後悔していた。

 次に話始めたのは、福元ふくもと瑞希みずきだった。福元は、自分より遥に重圧をかけられていた人を好きになってしまった。しかし、彼は重圧がかけられる家だ。つまり、家の人の差し金で、関係を強制的に切られてしまったのだ。今では、福元にとって、という、扱いになっていた。福元は、話し終えると「仕方がない」、「しょうがない」と言い続けていた。

 最後に俺の番になった。俺は、こう言った。

「俺は、正直恋愛とか、あんましわかんねぇから、こんなこと言っても怒らないで欲しいんだが、お前らの話には、一つの共通点があった。なんだと思う?。」

 みんなが痛いところを突かれているのを分かっているかのように、下を向いていた。そんなみんなを見ながら俺は続けた。

「それは、自分の行動力が無かった為にとか言う、己への失念。平たく言うなら、だ。だから、前に進もうとすると、その人に対して自分ができなったことへの後悔の念を勝手にその人に押し付けて、勝手に逃げて本当に進もうとしないからだ。」

 俺が言い切った時、みんなは、何とも言えない顔をしていた。福元に関しては、今すぐにでも涙がこぼれ落ちそうな表情だった。それを、碧月が、心配そうに見つめていた。最近知ったことだが、福元と碧月はから、許嫁同士だとか。この二人は前に進もうとしているのかもしれない。他の奴らは、何かを悟った様子ではあった。

 それから数年後。俺は未だ彼女なんていないが、アイツらはそれぞれの道に進めたようだ。碧月と福元はちゃんと互いの傷を支え合い生活している。響は、プロのピアニストになり幼馴染ちゃんと再会し上手くいき始めたらしい。颯大と希は、それぞれの恋路を酒のネタにしていて、未だ進めていない。


 “カタコイ”それは、それぞれの想い、立場、価値観、夢があるからこそ出来るものなんだろう。そしてそれの結末は、二択だ。前を向き乗り越えて進む人。自分への自信を無くし、立ち止まるもの。この二択だろう。俺の大切な友達だ。どうか乗り越えて欲しい。その時、俺は思った。この道には、模範解答はないが、己の答えが出た時“カタコイ”の旅は終わるのだ。と。だからこそ、この物語はそれぞれの想いを込めて幕を閉じるのだろう。答えがしっかりと見つけたからだ。

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“カタコイ”の行方 江藤渚 @IceRose234

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