第21話 男装がバレる時

婚約指輪の大きさによる将来の恋人の決定。

それで良いと2人は話してから。

俺は.....結果。

詩織と付き合う事になった。

俺は俯いたままの詩子を見る。


「本当に.....本当にこれで良かったのか。詩子」


泥だらけの手を見ながら詩子は頷く。

それから笑顔を浮かべる。

えへへ、的な感じの笑顔だが。

今はその顔に柔和になれないのだが。


「お姉ちゃんが選ばれた。この事は事実」


「.....」


「.....詩子.....」


「私は.....サポートしたい。お姉ちゃんを」


「.....」


そんな感じの会話をしていると。

目の前から、お兄ちゃん。お姉ちゃん達、と声がした。

顔を上げると.....そこには心配そうな顔の恭子ちゃんが居た。

俺はビックリしながらその顔を伺う。

どうしたの?、と聞いてみると。


「どうしたのってこっちの台詞。もう18時を超えている」


「.....ああ。そんな時刻だっけか」


「そうだね」


「うん」


「.....何でそんなに手が泥だらけなの」


「ああ。えっとね」


詩織も詩子も全部を説明した。

それから.....恭子ちゃんは涙を浮かべて泣き出す。

そうなんだね、と言いながら。

俺はその初めての姿を見ながら唇を噛む。

でもそう決めたのなら私は何も言わない、とも。


「お姉ちゃん達とお兄ちゃんが決めたなら。それに従う」


「.....」


「.....私からは何も言わない。決意の表れ」


「.....有難う。恭子」


「恭子。有難う」


それから俺達はハグし合った。

そして手を繋いで帰る。

泥だらけの手だったがそんなの気にもならないぐらいだった。

そうして.....帰宅してから何日か後。

つまりクラスマッチの当日になった。



「それじゃあ頑張ろうな」


「あー.....まあそうだな。怠いとしか言いようがないけど」


「ハハハ。お前が弱くてもカバーすっから」


「そうは言ってもなお前」


「ハハハ」


周りが笑う。

俺は盛大に溜息を吐きながら体操服に着替える。

因みに当然だが詩織と詩子もこの場所で着替えている.....のだが。


よく見れば赤面で詩織が硬直している。

俺の身体を見て、だ。

何だアイツは?いつもずっと着替えていたじゃないか一緒に。


「耕平?どうした」


「.....え?.....あ、いや.....何でもない.....」


男子生徒が聞く。

すると慌てる詩織。

俺は、何やってんだか、と思いながら体操着に着替えていると。


詩織が何か落とした。

それは.....生徒手帳.....の中から出た写真。

つまりワンピース姿の女である詩織の姿が.....うぁ!?マジか!?

俺は見開いて愕然とする。


「え.....これって何だ.....?」


「え?こ、耕平って女なの?」


「耕平.....!?」


有り得ない事態になった。

詩織はみるみる真っ赤になって行く。

そして駆け出して体操着のまま駆け出すが。


丁度その時に詩織の胸のサラシが外れた。

体操服からズルズル落ちる。

俺は大慌てでサラシを拾ったが。

クラスメイトに見られてしまった様だ。

顔を見合わせる一部。


「おいマジか.....」


「見たかあれ?サラシだよな?」


「え?じゃあ女の子.....?」


そんな混乱が生じる中。

平松が、みんな!今はそんな事を考えている場合じゃないだろ!、と言う。

みんなが見ると平松は笑顔を浮かべた。

それでもまだ混乱が生じている。

その事に平松は詩子を見る。


「.....話す時.....なのかな」


詩子そう言いながら、みんな、と言いながら顔を上げる。

するとみんなは詩子に注目が集まる。

詩子はヘアゴムを取ってから髪の毛を解く。

それからみんなを見据えた。

えぇ!!!!?


「.....え!?」


「おいマジか!?」


そんな声が広がる中。

俺は耳打ちを詩子にする。

良いのかこれで!?、と言いながら。


すると詩子は頷いた。

それからみんなを見つめる。

青ざめているが大丈夫なのか。

俺は考えながら見つめる。

震えている。


「実は.....私達は姉妹。兄弟じゃない.....の」


そんな感じで言うが.....っていうか。

みんなの反応が怖いと思う。

俺は考えながらみんなを見るが。


シーンとした中。

一部の奴らが含み笑いでクスクスと笑い始めた。

それから言ってくる。


「まあ知ってたけど?」


「だよ。流石に騙せないよ。成長する部位も身体も全部違うし」


「だよなぁ」


オイマジか。

と思いながらそれでも騙されていた男どもは顔を見合わせながら。

そして元から全てを知っていた男達は歩み出して、言い出そうと思ったけど訳有りなんだよね?、と聞いてみる。

詩子は頷いた。

それから申し訳無さそうに顔を上げる。


「騙すつもりは無かった。だけどこうするしか無かった」


「.....そっか。なら良いんじゃないか」


「だよな。平松」


「.....俺かよ!?」


そして教室中が爆笑する。

俺は衝撃を受けた。

何でかといえば簡単だ。


こんなにすんなり受け入れるとは思ってなかった。

コイツらが、だ。

まさか.....こんなに優しいとはな。


「でもこの後どうするんだ?」


「そうだよな?戸籍とか」


「だよな」


そんな会話になるみんな。

詩子は、えっと.....何でそんなに積極的に.....、と聞くが。

クラスメイト達はこう答えた。

そりゃまあクラスメイトだからな、と。

その言葉に詩子は涙を浮かべる。


「.....」


「.....オイオイ泣くなよ。康太」


「そうだってばよ」


やれやれ。

クラスメイトを正直恐れていたが。

こんなにもすんなりにに受け入れてしかも嫌がらないとはな。

数年前とは大違いだな.....あのクラスとは。

考えながら詩子の頭を撫でる。


「詩子。頑張ったな」


「.....うん.....こんなに良いクラスだとは思わなかった」


「ん?その娘は詩子ちゃんって言うのか?」


「可愛いねぇ!アッハッハ」


各々はそう言いながら笑顔を浮かべる。

詩子は満面の笑顔でそれに反応した。

教室に詩織が戻って来たが驚愕するぐらいに。


結局この日をもってして男装がバレた。

しかし気の利くクラスメイトのお陰で.....受け入れられた。

全くな.....コイツらが数年前から居れば良かったのにな.....、と思う。

そう考えながら囲まれて笑顔を浮かべる詩子と詩織を見ていた。

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男子と思っていた兄弟が居ました。信じられませんがラブコメが始まりました.....。 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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