【5千字版】二刀流~ダブル・バーニングソード~
シカンタザ(AI使用)
【5千字版】二刀流~ダブル・バーニングソード~
二刀流を使い、攻撃する。その動きは俺の目でも追いつくことができず、剣で受けても衝撃が走り、後ろに飛ばされる。そして着地と同時に、また攻撃を仕掛けられる。回避しなければ、と頭では理解していても体がついていかない。一撃目を受けた時点で、既に俺は満身創痍だ。何度攻撃を受けたのか分からないほど、斬られ続けている。
「もう、やめろよ!これ以上やったら、本当に死んじゃうぞ!」
「…………」
俺の言葉に、リリアナは反応しない。ただ無言のまま、俺を攻撃し続けるだけだ。なんなんだよこれ……。どうしてこうなったんだ? そもそも、なぜ俺を殺そうとしているんだ? 訳が分からず混乱しながらも、必死になって攻撃を避け続けた。
しかしいくら避けても攻撃の手を止めることはなく、俺の体はどんどん傷ついていく。このままじゃマズいと思い、思い切って反撃に転じることにした。――パシッ! まずは一閃。だがそれを簡単に受け止められてしまう。やはり力の差がありすぎて、全く歯が立たない。
だがそれは予想していたことなので、特に動揺することはなかった。すぐに次の手に移るため、体勢を整えようとしたところで異変が起きた。
「ぐっ!?」
急に胸から腕が生えてきて、そのまま心臓を一突きされたのだ。あまりの出来事に頭が真っ白になる中、今度は背中に何かが刺さったような感触があった。振り返るとそこには、剣を持ったままこちらを見るリリアナの姿がある。
どうやら背後からの不意打ちだったようで、完全に油断していた。まさかこんなことをやるなんて思っていなかったので、驚きと恐怖が入り混じった感情を抱く。そんな俺を見てか、リリアナは静かに口を開いた。
「私はお前を殺すために、この世界に来た」
突然聞こえてきた声は、間違いなくリリアナの声だ。だけど今目の前にいる彼女は、いつものように喋っているわけではない。まるで脳内に直接語り掛けてきているかのような感覚を覚える。
「私がここに来た理由は二つある。一つはお前を殺すこと。もう一つは、私自身の目的を果たすことだ」
淡々とした口調でそう言うと、リリアナは俺に向かって歩いてくる。
「待てよ! どういう意味だよそれ!」
リリアナは答えない。仕方ない。俺はここで二刀流奥義を繰り出した。
「ダブル・バーニングソード!!」
炎を纏わせた二本の剣を交互に振ることで、広範囲に火炎放射を放つ技だ。直撃してリリアナは倒れた。結局リリアナは何が目的だったのかわからない。だからせめて、話だけは聞きたかったんだけど……。
だけどそこで、俺は気付いた。
倒れていたはずのリリアナが、ゆっくりと立ち上がっていることに。今の今まで、確かに倒れていたはずなのに。
「なぁリリアナ……一体何を……」
「言ったはずだ。私はお前を殺しに来たって」
「……」
話にならない。俺はもう完全にリリアナの息の根を止めることにした。
「これで終わりにしてやる」
そう言って俺は、両手に持つ剣を振り上げる。そして振り下ろそうとしたその時、俺の視界には信じられないものが映っていた。
リリアナの体中の傷が塞がり始めているようだ。これは明らかにおかしい。魔法を使っているように見えないし、それに何よりリリアナからは魔力を感じられない。
「お前、いったい……」
「まだ分からないのか?」
その言葉を最後に、リリアナは再び動き始めた。俺は慌ててその場から離れる。先ほどまでいた場所には無数の穴が開き、地面が大きくえぐれている。
「くそっ! なんだっていうんだよ!」
もうわけが分からなかった。とにかく今は戦うしかないと思ったけど、正直勝てる気がしない。このままではジリ貧だし、どうにかしないと……。
そう思った時、リリアナの動きが変わった。どうやらようやく本気になってきたらしい。
「はああああっ!!!」
リリアナの全身から、赤いオーラのようなものが立ち上る。そして剣を振るうたびに、地面に巨大な亀裂が入った。
(まずい!)
直感的に危険を感じた俺はすぐに逃げようとしたが、すでに遅かった。俺が逃げた先には、いつの間にか移動してきたリリアナがいる。
「チェックメイト」
そう言いながら、リリアナは俺に向けて剣を突き出した。咄嵯に身を捻ったが、それでも完全に間に合わず胸元に大きな傷ができてしまう。
「ぐふっ!」
口から血が流れ出た。体が重い。意識が薄れていく。俺はその場に膝をつくと、そのままうつ伏せで倒れ込んだ。
「……」
リリアナは何も言わずに俺を見下ろしていたが、やがて興味を失ったかのように視線を外す。
「私の勝ちだな」
そう呟き、俺の横を通り過ぎていった。
「……んっ」
目が覚めると、そこはどこかの建物の中らしかった。周りを見るとベッドがいくつもあり、他にも何人かの男女が横になっている。状況がよく飲み込めないまま、とりあえず起き上がることにする。体のあちこちが痛むが、我慢できない程ではない。ひとまず周囲を確認するため、部屋の外に出ることにした。するとそこには見覚えのある顔があった。そこに立っていたのは、アメリアさんだ。彼女は俺に気づくと、こちらに駆け寄ってくる。
「良かった、目を覚ましてくれたんですね」
心底ホッとした表情で、嬉しそうな笑みを浮かべる。だけど俺は、すぐに違和感を覚えた。彼女の様子が少し変なのだ。まるで別人みたいに見える。
「あの、すみません。ここはどこですか?」
「ここは病院です」
「病院? どうして俺はここにいるんです? 確かリリアナと戦っていて、それで……」
そこまで言うと、俺はあることに気付いた。あれ? なんだろう? なんか頭がボーッとする。なんでこんなに眠いんだろうか?
「あなたは、リリアナと戦いました」
……そうだ。思い出した。俺はリリアナと戦ったんだ。そして負けた。その結果、こうして入院しているということなのか?
「俺がここに運ばれてからどれくらい経っていますか?」
「そうですね。もう三日は経ちますよ」
「そんなに!?」
驚いた。そんなにも時間が経っているなんて思わなかったからだ。
「そんなことよりも、本当に大丈夫なんですか?」
アメリアさんが体の調子を聞いた。
「はい。問題ありません」
「そう……なら良いのですが」
「それより、リリアナはどうなりました?」
俺の言葉を聞いて、アメリアさんの表情が曇った。
「それが……」
「何かあったんですか?」
「はい。実は……」
アメリアさんの話によると、俺がリリアナに敗れてからすぐのことだったらしい。リリアナが俺にとどめを刺さずにそのままどこかへ行ってしまったというのだ。
「リリアナの目的は達成されて、この世界にいる意味がなくなったということですか?」
「いいえ違いますよ」
俺の質問に対して、アメリアさんはすぐに否定した。
「リリアナの目的はまだ達成されていません。むしろこれからが本番と言ってもいいでしょう。リリアナの目的はなんなのか私にはわかりませんがね……」
「ある人って誰のことですか?」
「それは……」
そこで、病室の扉が開いた。そこから入ってきたのは、意外な人物だった。
「……母さん」
そう。現れたのは俺の母である美波だった。
「やぁ、真也。久しぶりだね」
いつものように優しい笑顔を見せる。でも俺にはわかる。今の母は、明らかに普通じゃない。
「……何しに来たのさ?」
「もちろん、お前に会いに来たんだよ」
「……嘘つけ」
「ふふ、相変わらず口が悪いね」
そう言って、俺の元へ近づいてくる。
「元気にしてたかい?」
「……ああ」「そうか。それじゃあ……」
次の瞬間、俺は腹部に強い衝撃を受けた。あまりの出来事に一瞬何が起きたのか理解できなかったが、どうやら俺は殴られたらしかった。
「ぐっ……」
「お前は何をしてるんだ!」
怒声と共に、再び拳が飛んできた。今度は頬に当たる。
「私は言ったはずだ! 必ず帰ってこいと! なのになぜ約束を破った! 答えろ!」
「くっ!」
「やめなさい!」
アメリアさんが止めに入った。
「離せ!」
「ダメです!真也さんは怪我をしているんですよ!」
「うるさい!こいつのせいで!こいつがいなけりゃ、リリアナは私の元に帰ってきたはずなんだ!だから私が代わりに……」
「ふざけないで!」
今まで聞いたことがないような、強い口調でアメリアさんは言い放った。その迫力に圧されたのか、美波は動きを止める。
「今あなたがしようとしていることは、あなたの子供を苦しめることなんです!」
「どういうことだ!」
「あなたは自分の息子を道具として見ているだけです!」
「なんだと!」
「あなたの息子は、あなたにとって都合の良い存在ではないんです!」
「黙れぇ!!」
美波が叫ぶと、突然周囲の空気が変わった。肌がピリつき、体が重くなる。そして目の前にいたはずの母の姿が消えた。
(なっ!?)
気付いた時には、すでに遅かった。背後から首筋に強烈な痛みを感じる。そしてそのまま意識を失った。
目が覚めると、そこはベッドの上だった。
(ここは……)
意識を失う前のことを思い出そうとするが、上手くいかない。頭の中にモヤがかかったように、はっきりとしないのだ。
(確か、母に攻撃されて……)
ここは病院のベッドなのか?
「目が覚めたみたいですね」
ベッドの横にある椅子に座っていたのは、アメリアさんだった。
「ここはどこですか?」
「病院ですよ」
「俺の体は?」
「治療しました」
「母さんは?」
「……」
アメリアさんは、無言のまま視線を落とした。
「……母さんは?」
「……」
「おい、アメリアさん」
「すみません……」
「謝ってほしいわけじゃない」
「……」
「教えてくれ。俺は、どうなった?」
「……」
アメリアさんは俯きながら、ゆっくりと話し始めた。
「あなたは、美波さんに殺されかけました」
「……」
「彼女は、あなたを自分の息子だと認識できなくなっていたようです」
「つまり、記憶喪失になったということか?」
「いいえ違います」
「違う? じゃあなんなんだよ?」
「彼女はあなたを、別の誰かと勘違いしているんです」
「……誰と?」
「それは……いえ、これは私の口から言うべきことではありませんね」
「アメリアさん、何を言ってるんだ?」
「とにかく、あなたは一度死んだと思ってください」
「死ん……」
「でも安心してください。あなたの魂はまだ死んでいません」
「本当か?」
「ええ。だから今は体を休めて、回復に専念して下さい」
そう言われても不安は拭えなかった。母さんは俺を息子と認識していない。もしかしてこのまま会えないんじゃないかという恐怖心が湧き上がってくる。そんな俺の心情を見透かすかのように、アメリアさんが微笑む。
「大丈夫です。必ずまた会えますよ」
「どうしてそう言い切れる?」
「それは秘密です」
「なんだそりゃ?」
「ふふ、それよりも今はゆっくり休みましょう」
そう言われると、急に眠気が襲ってきた。俺はそれに抗うことができず、眠りについた。それから二日後、ようやく動けるようになったので退院した。俺は家に行き母さんと対面した。
「母さん、俺はあんたの息子だよ」
「……」
返事はない。ただじっと俺の顔を見るだけだ。
「俺は真也だ」
「……」
やはり何も答えない。まるで人形のように、虚ろな目をしている。
「父さんのことも覚えてるよね?」
「……」
「母さん、頼むから何か喋ってくれ……」
すると、母はゆっくりと口を開いた。だが、その言葉に俺は耳を疑った。
「お前など知らない」
「え……」
「お前のような奴、私は知らん。早くどこかへ行け!」
「そんな……」
ショックだった。まさか母がここまで変わるなんて……。
「さぁ出ていけ!」
「待って!」
母が手を振り上げ、呪文を詠唱した。
「バーニング・スフィア!」
炎球が爆発した。俺は爆風を受け、壁に叩きつけられる。
「ぐっ……」
全身を強く打ち、骨が何箇所か折れていた。
「ちっ! 仕留め損ねたか」
「どう……して……」
「黙れ!」
再び母が魔法を放つ。今度は雷球が飛んできた。衝撃で体が吹き飛ばされる。
(くそっ! 一体どうなってやがんだ?)
母さんは明らかに俺を殺そうとしていた。もう訳がわからない。
「ちくしょう……」
「ふんっ。所詮はゴミクズか」
「なんだと!」
「お前は私の息子ではない。この世界に必要のない存在だ。リリアナの言うとおりだったな」
「リリアナ?あんたはリリアナとなんの関係を持っているんだ?」
「それはお前にはもう答えることの必要ないことだ。ここで死ぬんだから」
母が手をかざすと、そこから黒い魔力弾が現れた。
「ダークネスボール!」
(まずいっ!!)
俺はなんとかそれを避けようとするが、体が動かない。そして直撃してしまった。
(ああ……ダメか……)
そこで意識を失った。
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