第10話 それから……

スタンピードの発生から数ヶ月が経ち、各地で復興が進んでいた。


イエリも積極的に、被害を受けた西に赴きその強大な魔法力を役立てている。

ローベルトは今回の復興に使えそうな、荒地をならす魔道具を開発し、各地を回って地を整えた。


それが落ち着いた頃、ローベルトとイエリは結婚前の同居を始めていた。

さすがに寝室はまだ別だが、同じ家で過ごせることで二人は幸せを感じている。




あれから、シュナは伯爵家を追い出された。


成人までは面倒をみようとしていた一家だったが、イエリの婚約者としてやってきて一泊するというローベルトが寝ている部屋に、あろうことかよばいをかけたのだ。

当然誘惑されるようなローベルトではなかったが、それでもイエリは大事な婚約者を守るため(それと、相当嫉妬したから)、従姉妹を切り捨てる決断をしたのだ。


その後、公爵家に慰謝料を請求されたシュナだったが当然払えるわけもなく、自らを担保として売られていった。

シュナが売られた先は、娼館なんて生易しいものではなく、医療の研究開発所だった。そこで使われる、人体実験材料として売られたのだ。



「これはイキのいい奴が入りましたね。」


「これで新薬の研究もはかどるぞ! さっそくこの薬を……」


「な、なんの薬よ?! やめ、やめて、いやあぁぁぁ!!」



まっとうな研究機関ではあるので、死ぬことはないだろう。ただ、借金のかたに売られているので投薬の拒否権はない。どれだけ嫌がっても、実験は続くだろう。




ジンナムのいる公爵家は、シュナのせいでいろいろ言われたことはあったが、そこはさすがの公爵家、大したダメージは受けていなかった。


しかしその後、王宮より毎月発行されている『全貴族網羅! これを見れば誰が何を成したか丸わかり大全』に、今までの影のイエリの功績が全て伯爵家イエリの功績だったと訂正する記事が掲載されたのだ。


そこからは大変だった。


公爵家という大きな家だから、過去にはたくさんの功績があった。しかし当代の公爵家の功績は、ほぼイエリの成し遂げたことだったのだ。

それを我が物顔で語っていた現当主は当然白い目で見られたし、婚約者に頼りきりだったので今は新たに功績を上げることも出来ずにいる。周りの貴族たちは、これでは甘い汁が吸えない、と離れていった。


次期公爵であるジンナムにも、大した期待はできないだろう。

このまま、このひとつの公爵家は、だんだんと廃れていくのだった。






「これで一件落着だな。君の名誉は回復してうなぎ登りだ。」



嬉しそうなローベルトの発言を聞いて、イエリは頷いた。



「ええ、大満足よ。伯爵家と事業を興したいって家が殺到しているわ。」


「慎重に相手を選んでいこう。」


「そうね。」



その後、イエリとローベルトの伯爵家には大量の資金が流れ込み、それとイエリの先見を使って、この国をどんどん豊かにしていくのだった。



「二人でならどんなことでも乗り越えられそうだ。」


「私もそう思うわ。これからもよろしくね、ローベルト。」


「ああ。こちらこそ、イエリ。」





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わたくしと婚約破棄して妹と新たに婚約する? いいですけど、ほんとうにその子でいいんですか? 井上佳 @Inoueyouk

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