第101話 超大型FESM
桜夢が駆る最新型
たった1機がもたらしたとは思えない、凄まじい戦果だと言える。
しかも、まだ敵影すら見えない位置からだ。
これが“アナーヒターSP”に搭載された《SASシステム》の賜物だと言うのか。
「どうやら今のサクラじゃ、2機の《サリエル・スポッター》しか扱えないみたいね……仕方ないけど」
イリーナは戦果よりも、桜夢の技量レベルについて懸念している様子だ。
「2機? 俺には3体の
「実際に照準を捉えたのは2体よ。最後の一撃は山勘でしょうね。一応、あの
「
「機体のリアスカート部分に外付けの
す、凄いアイデアだ。これも
それに山勘とはいえ、1体の
イリーナじゃないが、桜夢と“アナーヒターSP”の相性が抜群ってことだな。
『よくやった、星月。一旦退いてくれ! 今度は我らが鉄槌を与えてやろう!』
『了解ッ!』
“アナーヒターSP”が後退すると同時に、“デュナミス”を搭載した10機のエアバイク型支援機“ガルガリン”が合流し、レクシーが乗る“カマエルヴァイス”と横向一列に並び陣形を組み始める。
“カマエルヴァイス”は背部ユニットである4枚の翼のうち、副翼の一枚が《
『――間もなく有効射程距離に入りマス。発射タイミングは、レクシー少尉へ』
『あいわかった、ホタル殿ッ! 全機、
レクシーの号令と共に、“カマエルヴァイス”と“ガルガリン”は一斉に火を噴く。
漆黒の宇宙に蒼白く高出力エネルギーが数条の奔流となり疾走した。
遥か彼方から眩い閃光が弾け飛び大きな広がりを見せている。
『全弾命中ッ! 敵の損失拡大しておりマス! 初弾の先制攻撃を含め、200体以上の撃沈に成功しまシタ!』
『うむ……予想以上の戦果だ。これなら“サンダルフォン”がいなくてもいけるな!』
ホタルの報告に、レクシーは微笑みそう確信した。
彼女の言う通りだ。
少し前と比較し、大幅に戦力が増強されていると感じる。
今回ばかりは、俺が休んで正解だったかもしれない。
見せ場を奪われた感じで、ちょっぴり複雑な心境もあるけどね。
それから、他の
既に勢いづいている友軍は危なげのない、安定した戦いぶりを見せていた。
次々と
13体いたとされる、
それ以降も“アナーヒターSP”と“カマエルヴァイス”、“ガルガリン”隊の連携と集中攻撃で次々と撃破した。
『ん? あれは――』
レクシーが逸早く何かに気づく。
まるで餌を求める小魚のように、
さらに互いの肉体が重なり合い融合し始める。複数存在した敵数が一つの個体へと変貌を遂げようとしていた。
『な、なんなの……一体?』
桜夢を含む、他の
「あれは……そうか――“奇態
モニター越しで眺めている俺は、その異様な現象の正体に気づく。
仮面メイドの操作で映像は拡大され、よりそうだと確信した。
以前は
したがって、その大きさはあの時の比ではない。
煌々と紅く光る巨躯、おそらく戦艦“ミカエル”を有に超えるだろう。
全体が幾つも腫脹のような隆起で覆われている醜悪さは前回と変わらず、いやより歪さを増している。
無数に生えた触手をくねらせ、顕現した進化を誇示するかのように見えた。
『怯むな、撃てぇ!』
“ガルガリン”に跨る“デュナミス”の隊長機が叫び鼓舞する。
全機が一斉に《
“奇態
しかも
『だ、駄目だ! 攻撃が通じない!』
『しかも弾切れだ! クソォッ!』
『各機退けぇ! ここから離れろ!』
隊長機が指示した。
すると、“奇態
『不味い! 《
レクシーが叫んだ瞬間、無数の触手から超高出力のエネルギーが放射された。
その熱量と威力は間違いなく、主力戦艦の《
レクシーと桜夢が駆る
“ガルガリン”隊も高機動性を活かし、各機が散らばりながら射程から離れて退避する。
『ぐわぁっ!』
『駄目だ――!』
しかし周りにいた通常の“エクシア”と“デュナミス”は躱しきれず、その出鱈目な凶砲に巻き込まれ、儚く散っていった。
より巨大になった分、放出されるエネルギーの破壊力が増した印象を受ける。
唯一の欠点らしき部分は、戦艦“ミカエル”に比べ射程距離が短く攻撃範囲が狭いことだ。
おそらく、触手同士が巻き添えにならないよう何かしらの制御が施されているのだろう。
『おのれぇ! このまま好きにやらせんぞ――ホタル殿、例の《
『NO。レクシー少尉、現状で《
“カマエルヴァイス”は“サンダルフォン”の兄弟機とはいえ、超高性能電脳AIであるホタルを必要とされる機能はカットされた機体だ。
まだ使用したことのない《
ホタルが懸念する気持ちもわからなくもない。
『大丈夫だ、ホタル殿! 私は一人じゃない! 星月、フォローを頼む。その機体なら、まだ《
『はい、少尉! こちらは問題ありません! ライフルの冷却モードも終わり、6発撃つことができます!』
“アナーヒターSP”は実質、“サンダルフォン”と同じ
『よし! 後は“ガルガリン”隊にお願いがあるのですが……』
レクシーは隊長機に作戦内容を伝えている。
その内容を聞いた直後――。
「なぁ、なんですってぇぇぇ!!!?」
真っ先に驚愕したのは現場のパイロット達じゃない。
俺の隣で観賞していた、イリーナがソファーから立ち上がり叫んでいた。
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