Episode:18 吹き荒れる決戦兵器
『なんて火力だ!? 側面だ! 散開して背後に回れぇぇぇ!!!』
“エクシアFAT”に搭乗する隊長機から指示が飛び交い、各
『――愚かな人間共め! それこそが浅はかだと言っているだろ!』
今度は“シンギュラリティ”の腰部から隠し腕こと《ギミック・アーム》を彷彿させる両腕が生えるように出現した。
上腕部と思われる個所から、中型ミサイルのような何かを射出し、各
それは
『うわぁ! 助けてくれぇぇぇ!』
『ひぃぃい、やめろ! やめてくれぇぇぇ!』
『死にたくない、ぎゃあぁぁぁ!』
撃墜されるパイロット達から恐慌した阿鼻叫喚の悲鳴が木霊した。
その地獄絵図のような光景に誰もが絶句し戦慄してしまう。
『おのれぇ! この悪魔がぁぁぁぁ!!!』
唯一、隊長機である“エクシアFAT”は己を奮い立たせる。
幾条もの強烈な閃光を掻い潜り、“シンギュラリティ”の懐へと突撃した。
“エクシアFAT”の背後から3機の“デュナミスGカスタム”を駆るガーゴイル隊が援護する形で続いている。
別部隊とはいえ熟練者あるいはエース同士だからか、特段訓練なしでも連携が図れているようだ。
また各
『無駄なことを!』
ヴォォォン!
“シンギュラリティ”の脇腹より無数の触手が出現し、後方から急速に迫る。
『不味い! 各機回避行動を取れぇ!』
ユイバンが真っ先に叫んだ。
エルザとリックは瞬時に反応し、3機の“デュナミスGカスタム”は後方から襲ってくる触手群を見事に躱し切る。
しかし、
『うぐわぁぁぁ!』
“エクシアFAT”だけが回避できず、高速に撓る鞭如きの強襲に巻き込まれてしまう。
まるで激流に巻き込まれたように機体が何度も弾かれ、無残に大破して散った。
その勢い止まることを知らず、ガーゴイル隊にまで及ぶ。
『いかん! ワシらも巻き込まれるぞ!』
『やっべぇ! 逃げろぉ! シャレになんねーぞ!』
『ああ、ルドガー隊長ぉぉぉぉ!!!』
3機の“デュナミスGカスタム”は強化された
逃げ際に
このままでは部下達が殺られてしまう!
その時だ。
『――ルドガー大尉ッ、大変お待たせいたしました! “ツルギ・ムラマサ”出撃可能です!』
整備員から、ようやくOKサインが出た。
「了解した――“ツルギ・ムラマサ・ドラグーン”、ルドガー・ヴィンセル出るッ!」
戦艦“ウリエル”に固定された特殊ワイヤーが外され、“ツルギ・ムラマサ”とドッキングした“ドラグーン”が出撃する。
巡洋艦に匹敵する巨躯を誇り、見た目もよく酷似した外殻ユニット。
細長い三角錐の両舷が変化し、主翼が広々と展開される。
8基に及ぶ大型スラスターは戦艦を大きく上回る推進力を発揮し、圧倒的な機動力で加速し疾走した。
中心となる芯の先端部辺りには、“ツルギ・ムラマサ”がバイクに跨るような前傾姿勢でドッキングし収納され、頭部から胸部に掛けて露出されている。
その装いは、まさに高機動で移動する三角錐型の巨大要塞と言える風格を秘めていた。
“シンギュラリティ”取り込まれなかった
その数は事実上、全勢力である150体に及ぶ。
先程まで他の
しかし関係ない、どちらにせよ。
「殲滅する!」
俺はコンソールパネルに浮かび上がる、管制システムから使用可能なウェポンを選択して操作する。
“ドラグーン”の底面装甲が開かれ、2基の大型ミサイル弾が射出された。
敵集団へ突き進むミサイル。まだ被弾してないにもかかわらず、その場で弾け飛んだ。
否、それらはクラスターミサイルが収納されたユニットである。
1基に300発が収納されており、合計600発のミサイル弾が解き放たれ飢えた猛獣と化し
ドドドドドド……ォォォォン!
圧倒的な数の
「敵
暴風が過ぎ去ったような余韻を残し、“ドラグーン”は前進していく。
まだ“シンギュラリティ”とは距離が離れていた。
ガーゴイル隊も迫り来る触手攻撃を
不幸中の幸いか。敵の懐に入り込んでいることもあり、それ以上の特殊攻撃は見られていない。
だがそう長く逃げられるわけもない。そろそろ限界が来るだろう。
「ここからでは間に合わん。これを使う――射線上にいる
そう僚機に指示し、標的に向けて照準を定めた。
管制支援OSが瞬時に演算し、戦況に適したウェポンが幾つか表示される。
俺は機体を操作しながら、浮かび上がるタッチパネルを押した。
“ドラグーン”の甲板部が大きく開かれる。
ターゲットの軌道上に味方機が引き払ったタイミングを見計らう。
「そこだぁ、ファイヤ!」
トリガーを引いた刹那、激しい振動が移動中の機体を襲う。
――
主力戦艦並みの膨大な高出力を誇る
『な、なんだと!?』
“イヴFESM”の驚愕する声。
だが、
ギュオォォォォォン――!
蒼白い光は“シンギュラリティ”に接触される寸前で歪曲されてしまう。
弾かれ飛び散る形で分散される高密度の
それは“シンギュラリティ”の背部で扇状に幾つも連なって広げられる両翼――対エーテル兵器用のバリア・フィールドの効果であった。
しかし、直撃には変わりない。
“シンギュラリティ”の姿勢は大きく乱れ、その巨躯が後方へと吹き飛ばされた。
ガーゴイル隊の“デュナミスGカスタム”は攻撃に巻き込まれることなく、持ち前の回避術を駆使して脱出する。
3機はそれぞれのルートで高速に飛び交い、その場から離れていった。
「エルザ少尉、リック少尉、ユイバン中尉――待たせたな! よく頑張ったぞ、全員無事か!?」
『ルドガー隊長ッ! あたしは大丈夫です! ずっと隊長を信じていましたのでぇ!』
『ガチ、隊長は典型的なヒーローっすか!? 遅すぎっす……ってデケェ、なんじゃそりゃ!?』
『……まったく、グノーシス社はとんでもないものを造ったわい! 乗りこなす隊長のパイロットセンスも驚異としか言えませんがな……』
「それだけ口が聞ければ問題ないな……全
何せ、この“ツルギ・ムラマサ・ドラグーン”は単機で戦う方が、最大のパフォーマンスを発揮する
俺の指示に、各
そして命令通りに撤退し始めた。
『……ルドガー隊長、どうかお気をつけて!』
エルザが開かれたメインモニターのウィンドウ越しで敬礼して見せる。
若干瞳を潤ませ、俺の安否を気遣ってくれているようだが……そう見せないようにしているのは、彼女も決意と覚悟を秘めたプロのパイロットだからだ。
「了解。これが終わったら食事にでも行こうか、エルザ少尉?」
『は、はい! 喜んでぇ!(やったぁ、ついに隊長からのお誘いだぁ! 超ラッキ~、きゃっ!)』
少しフラグっぽい言い方をしてしまったが、彼女が喜ぶならいいだろう。
こんな俺に愛想を尽かさず、いつもついて来てくれるからな。
前回助けてくれたお礼も兼ねてだ。
“ツルギ・ムラマサ・ドラグーン”はさらに加速する。
その超高機動力を発揮し、一気に“シンギュラリティ”と距離を詰めた。
「今度こそ決着をつけてやる! “イヴFESM”ゥ!!」
『その声は、ルドガー・ヴィンセルか!? 忌々しい人間風情がァ!!』
“シンギュラリティ”は体制を立て直した。腹部の肉塊が両開き状に割れ、巨大な筒状の物体を見せてくる。
それは砲身だった。
「あの大きさ……まさか、奴も
『この距離では躱せまい! 我が鉄槌を食らうがいい!』
超高出力の破壊エネルギーが、“ツルギ・ムラマサ・ドラグーン”に襲い掛かった。
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