第73話 デカラビアとアンドレアルフス
突如出現した
襲ったのは
これら2体は先に俺が言った通り、遠距離から全方位攻撃を得意とする厄介な連中だ。
まず“デカラビア”だが、外観は巨大な五芒星のようでヒトデとも思わせる形状であり、背部と思われる裏側に小さな白い双翼が生えていた。
身体の中心部に蒼白い瞳に模した『
また五つの角隅から、同じ姿を模した小型の遠隔誘導攻撃義体を射出して、
そして“アンドレアルフス”は、色鮮やかな装飾に魚類の
背鰭と思われる個所には、九つ大きな棘のような
どちらもタイプは異なるが、強力かつ幅広い戦術を得意とする
通常、奴ら1体につき中隊規模の
それほどまで、脅威かつ厄介な相手。しかも双方の機動力が高い。
「このまま俺が撤退したら、奴らは間違いなく“セフィロト”に向かうだろう……ゼピュロス艦隊が到着するまで、おおよそ5分くらいか……」
俺はコンソールパネルのサブモニターで宙域座標を確認しながら思考を巡らせる。
『マスター、何を?』
「……
『その条件での成功率50%、危険デス。お勧め致しまセン』
「しかし、“セフィロト”に近づけさせるわけにはいかない。特に多彩な広範囲かつ遠距離攻撃を得意とする、あの2体はな……わかるだろ、ホタル?」
『イエス、マスター。ですガ……』
「大丈夫だ、“ガルガリン”もある。イリーナだって、こいつの実戦データが必要な筈だ」
『COPY。“デュミナスJBカスタム”及び“ガルガリン”はこれより戦闘態勢に入りマス。敵との距離約100㎞デス』
「――
俺はロックオンされた照準に目掛け、操縦桿のトリガーを絞った。
“ガルガリン”の
「ぐっ!」
機体越しに振動が伝わり、コックピットを激しく揺らした。
これは……“サンダルフォン”が持つ
一直線に伸びていく、蒼白い火箭の閃光は次第に細くなり途切れていく。
同時に、コックピット内の振動も沈静化した。
「やったのか!?」
『イイエ、直前で回避されておりマス。既に“デカラビア”と“アンドレアルフス”は、本機を捕捉し、自分らの射程内に入れるため接近しつつありマス』
「確か得意の遠距離も自分の視界内でなければ使用できないんだよな?
『今の一撃のみデス』
「はぁ? 嘘だろ……チュートリアルじゃ、3~4発は撃てるって……」
『この“ガルガリン”はテスト中の試作機なので……申し遅れましたスミマセン』
そうなのか? まぁホタルが謝ることじゃない。
てか戦闘前に確認しなかった俺のミスだ。ストレスにならないよう、この子なりのフォローのつもりだろう。
「仕方ない。なら相応の戦い方をしてやる。ホタル、機体の戦闘データをバックアップしておいてくれ。でないとイリーナが後でうるさい」
『COPY……マスター、何を?』
「これより敵陣に向けて突貫する――GO!」
俺はアクセルペダルを踏み込んだ。
“ガルガリン”の大型スラスターから蒼白い
超高速により、ほんの一瞬で2体の
「――来る!」
俺のフル稼働した脳内で、そう直感が囁き疼いた。
ドウッ!
後方から
「ぐっ!」
『
「“デカラビア”の方位射撃だな!? だが想定内だ! “ガルガリン”の機体制御は俺がマニュアルで行う!」
俺は片手で操縦桿を握り機体を操作しながら、さらに片手でコンソールに浮かぶキタッチパネルを打ちこみ、“ガルガリン”のOS設定を書き換え始める。
すると、“ガルガリン”は旋回を繰り返しながらも、ブーメランのように着実に
何度も過ぎていく視界で、巨大な五芒星の形をした“デカラビア”を捉えた。
“デカラビア”は五つ角の部分から小型遠隔誘導攻撃義体を射出して、“ガルガリン”の全方位を包囲する。
「――いまだ!」
一斉射撃する瞬間、俺は“デュナミスJBカスタム”を“ガルガリン”との連結を解除させ、引き離した。
刹那、
ドォォォォン!
“デカラビア”の包囲斉射により、“ガルガリン”は撃墜された。
搭載された
しかし、これこそ俺の計算通りだ。
『マスター! 敵
「よし、目眩まし作戦成功だ! ホタル、武装セレクト! ジャイアント・ガトリングに装備移行――“デカラビア”に向けてロックオン!」
『COPY!』
「――もらったァ!」
“デュナミスJBカスタム”の代名詞とも言える、ジャイアント・ガトリングが蒼白い閃光を撃ち放ち炸裂する。
長大な砲身を誇る六連装の銃口が高速に回転し、“デカラビア”に向けて
ヴヴヴヴヴヴヴ――ッ!
全ての弾丸が“デカラビア”の中心にある瞳のような『
心臓部といえる『核』を破壊されたことで、巨大な五芒星の肉体は制御を失い、煮え滾るように膨れ上がっては泡のように弾け飛び消滅した。
当然、切り離していた分身である小型な攻撃義体も同様の現象を見せて散開する。
――まずは“デカラビア”の撃破に成功した。
「残る1体ッ!」
俺は機体を操作し、“アンドレアルフス”に銃口を向ける。
が、
――斬ッ
「うおっ、クソォッ! 得意の遠隔誘導斬撃か!? 武装解除――《
『COPY!』
“デュナミスJBカスタム”はジャイアント・ガトリングを放棄し、
切り札である
メインモニターから、離れた距離で浮遊する“アンドレアルフス”を捉え、突撃を仕掛けようとスラスターを噴射させる。
その瞬間、全方位360度から
「チイッ!」
俺は舌打ちをして攻撃から一転し、回避行動を余儀なくされてしまう。
直感力を研ぎ澄ませ、複雑かつ独自に飛来してくる九つの
刹那。
――マズイッ!
本能で自分の危機を予見してしまった。
真下からの攻撃に、俺は察知し操作するも、《
結果、脚部に斬撃を受けてしまい、両足を切断されたことで体制を崩してしまう。次の斬撃で右腕と左腕までもが斬られてしまった。
“デュナミスJBカスタム”は四肢を失う無惨な姿となり、完全にコントロールを失ってあらぬ方向に回転を繰り返している。
「もう駄目だ――脱出する!」
咄嗟にそう判断し、このまま機体を放棄することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます