第46話 エピローグ 守るべきモノ
突然現れたイリーナによって、何故か「宇宙アイドル」にさせられそうな、桜夢。
目的は兵士達の士気高揚だとか。
なんでそれがアイドルでなきゃいけないんだと思う。
そもそも軍需産業のトップを行く、ヘルメス社が立ち上げるようなプロジェクトなのだろうか?
けどこれって超時空的なアレだよな?
歌の力でなんちゃらなのか?
やっぱ
まともに対話もできない連中に歌の力が通じるとはとても思えない。
いや、それよりもだ。
「イリーナ、いきなり言われたって……桜夢だって困るだろ?」
「カムイ、貴方は黙ってなさい。サクラ、言ったわよね? 人類の未来のために戦うって。これも立派な活動じゃなくて? パイロットとして、そこそこ有能なようだけど所詮は訓練生レベル。はっきり言ってカムイやガルシア家には遠く及ばないわ。であれば貴女のできることを今するべきじゃなくて?」
「確かに……社長の仰る通りです。今のわたしじゃカムイくんの足を引っ張るだけ……」
おい、桜夢! 洗脳されてんじゃないぞ!
普通に訓練頑張ればいいだろ!?
そもそもアイドルとパイロットなんて、どう考えてもリンクしないと思うぞ!
だが意外にも桜夢は乗り気になってしまう。
「――わかりました。どこまでやれるかわからないけど頑張ります!」
「成立ね(これで少しはカムイとの距離が置かれ、サクラはより私の監視下に入るわ。それに
イリーナはニヤリと唇を吊り上げ不敵に微笑んでいる。
絶対に何か企んでいると見た。
桜夢に変な真似をさせるようなら全力で阻止してやるぞ。
「あ、あのぅ……ちょっといいでしょうか?」
俺の背後で、セシリアが怖々と挙手している。
「何よ、古鷹艦長?」
「は、はい。腐れ悪役令嬢、じゃなかった……イリーナ社長とカムイくんはどういう関係なんですぅ?」
セシリアが声を震わせながら聞いている。
密かに「腐れ悪役令嬢」っと失言を吐きながら。
やばいなぁ、今までの会話から当然そうなるよな……。
もう誤魔化しようがないじゃん。
この状況どうするんだよ、イリーナ?
お前が出てくるから、ややっこしくなったんだからな。
だがイリーナは上から目線でセシリアを見つめながら、強気にフンと鼻を鳴らした。
「弐織カムイは我がヘルメス社で密かに雇っている専属パイロットよ! “サンダルフォン”のッ!」
「ええ!?」
包み隠さず堂々とぶっちゃける、イリーナ社長。
ついにやりやがった……極秘扱いしていたのは自分の癖に。
そのセシリアは案の定、大きな瞳を見開き声を荒げて驚いている。
だよな……今まで散々「サンダルフォン、ムカつくわ~」って愚痴っていた
けど、イリーナは尚も強気な姿勢で両腕を組む。
「ええっじゃないでしょ? すっとぼけも無駄よ、艦長……貴女はそんなに愚鈍じゃない筈よ? その年齢で艦隊の指揮を任される程の卓越したキレ者。カムイのこと大分前から気づいてたわよね? けどあえ言及しなかった、違う?」
え? そ、そうなのか?
じゃ……。
「セシリア、前から俺の正体に気づいていたのか?」
「えへへ、まぁ……薄々だけどね。そうだろうなって思ったのは、“ベリアル”戦くらいからかな。ほら、
「あ、ああ、あの時ね」
やばい……ついセシリアに抱きしめられた記憶が鮮明に思い出してしまう。
豊で柔らかかった胸の密着に艶髪の良い香、とても素敵な感触だった。
いや、こんな所でぶり返している場合じゃないぞ、俺。
「ごめんね、カムイくん。でもそんなのどうでもいいでしょ? あたしはカムイくんの傍にいるだけで癒されるんだからぁ!」
短い舌をペロっと見せながら、セシリアは俺の腕にしがみつき寄り添っている。
またそんなに胸を押し付けて……やばい、ガチで破壊力抜群なんだよなぁ。
にしてもセシリアは俺の正体有無より、あくまで「弐織カムイ」として慕ってくれているのか。
それはそれで嬉しいかも……凄く。
しかし隣で見ていた、桜夢は「あーっ!」と声を張り上げた。
「ちょっとセシリアさん! そんなに、カムイくんにくっつかないでください! 学生同士で不謹慎ですよ!」
如何にも潔癖症っぽい、優等生の桜夢らしい言動。
そう言うわりには、彼女も決戦前に背後から俺を抱きしめてくれたよな……やばい、その時の記憶まで蘇ってきたわ。
「まったくしょうがない艦長ね……(この女は私の手のひらでなんとでもなるわ)」
桜夢が止めに入る一方で、イリーナは何故か余裕の笑みを浮かべている。
「そうか。どうやら強力なライバルが多いようだ。ならば私も本気で挑むしかあるまい」
妙な気合いを入れて見せる、レクシー先輩。
「……先輩、本気ってなんですか?」
「決まっているだろ、こういうことだ――カムイ」
レクシーは微笑みながら、俺の腕を絡めて組んできた。
ぷにゅっと誰もが憧れる豊満な胸を押し付けてくる。
セシリアも反対側の腕で同じことをしているだけに、これが本当の「両手に花」状態だ。
いかん……刺激が強すぎて、また頭がくらくらしてくる。
「レクシー教官までぇ! 駄目ですぅ、カムイくんから離れてください!」
「そうよ! ガルシア家は許さないわ! 貴女はカムイから離れなさい!」
桜夢だけでなく、今度はイリーナまでブチギレている。
そういや、彼女は普段からガルシア家のこと、やたら嫌っていたっけ。
もうなんなのこれ……何の修羅場?
その時だ――
ギュルルルルっというタイヤの摩擦音と共に、赤いスポーツカーが猛スピードでドリフト走行しながら急ブレーキを掛けてくる。
揉めている俺達の前にピタッと止まった。
運転手側のウィンドウが開かれる。
やっぱり、「長門 シズ」先生だ。
相変わらず胸の谷間がぱっくり開いたセクシーな服装である。
「あら~、カムイ君じゃない? これから先生とドライブにいかない? 二人っきりでね」
「え? え、えーっと……」
確かに一刻も早くこの場から離れたい。
だって女子達が物凄い眼光で睨んでくるんだもん。
『マスター、ノルアドレナリン分泌値上昇中。危険を察知した模様』
「ホタル、頼むから黙ってくれぇぇぇぇぇ!」
俺は悲鳴を上げながら、女子達を振り切ってその場から逃走した。
「ちょっと、カムイ! どこに行くのよぉ、なんで逃げるのよぉぉぉ!!!」
遠くでイリーナの声が響いている。
俺は振り向かない。ひたすら明日に向かって疾走した。
みんな、ごめん……。
このままだと、俺の脳が耐えきれなくてオーバーヒートしてしまうんだ。
じゃなくても
しかし、あれだ。
なんだか随分と……俺の周りが騒がしく賑やかになったもんだ。
でも不思議に悪い気がしないんだよな。
寧ろこれまで欠けていた大切な何かを得たような気がする。
そうだ。
みんながいれば、俺はどこまでも強く進化できると確信している。
俺は最強の
第一章(完)
──────────────────
《あとがき》
ここまでお読み頂きありがとうございます。
当初の予定としては、第一章で完結し幕引きを考えていました。
ラブコメではありますが、SF要素の強いマイナーな作品でもあるので、万人ウケしない覚悟で、作者の趣味全開にて執筆に至っていた経過があります。
ですがご愛読して頂ける読者様方の温かな応援のおかげもあり、第二章の執筆を決意するに至りました。
インターバルなしで、このまま更新を続行いたします!
第二章ではこれまで明かされていない伏線の回収を目指していきます!
FESMの目的や正体など、新たな真実が浮かび人類がどのように立ち向かって行くのか、またラブコメ展開などお楽しみください!
これからも他作品共々、これからもよろしくお願いいたします<(_ _)>
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