第3話 1つ目の過ち
「いらっしゃいませ」
赤髪の彼、渚くんに連れられて来たのは彼が働くホストクラブ。
どうやらこうやって一緒にお店に来ることを同伴、というらしい。
お店の入り口の受付のところには、少し若めのメガネをかけた30代くらいのイケメンの男の人が立っていた。
「あ、どうも。」
もともと人見知りの私は、どうやら店長さんであるその人に笑顔で「いらっしゃいませ」と言われたのに対して、うまく笑顔を返すことができなかった。
人見知りだからって、飲食店とか雑貨屋さんとか行ったとしても、人並みに他所向きの笑顔なんてものはできる。
でも、なんかこの空間は、少し緊張するというか怖い。
店長さんがいるこの受付は、金色と黒色でデザインされ、嫌らしさがなく、上品にきらびやかだった。消して、嫌悪感とかはない。けど、あまりにも現実離れした空間である。
こんな空間、見たことない。
左にあるお店のフロアと受付を区切る自動ドアは、役目を果たしているのか、店内で流れる大きめの音楽が受付にいても聞こえてくる。
フロアの様子に気をとられていると、
「……ますか?」
「ヘ?」
何かを話しかけられていたが、反応ができず、すっとんきょうな声をあげてしまった。
やってしまった。
顔にどんどん熱が集まるのを感じる。
はっずかしいいいい。何今の声……。
「えっとぉ、ご指名の方はおられますか?」
「あ、ヘ?あ、指名、指名……えっと、渚くんでっ////」
ホストクラブにおける指名がどんなのかわからないが、とにかく恥ずかしく早口にそう言った。
するとビックリしたようにこっちを向いた渚くんは、
「え、いいの!?」
と、よくわからないが驚いていた。
驚かれてしまった。
なぜかまったくわからないが、「え?いいよ?」と答えておいた。
なぜ驚かれたか、それは後々知ることになる。
ホスト彼氏の取扱い説明書 狂果-kyouka- @harukanaomi
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