第2話 1年前の春


「俺、お前に色ボケした」



赤髪の彼がそう私に言った。


そもそも『色ボケ』とはなにか、それはホストがお客様に対して色営(ホストがお客様に気がある、好意を抱いている、恋人関係であると思わせる営業方法)をかけていたら、本当にホストがお客様を好きになってしまったという状態を『色ボケ』という。



そう言われた私は、その時になんて言葉を返しただろうか。彼氏に浮気され別れたばかりの時だった私は、人生初のホストに行って傷を癒したい、そんな軽い気持ちで足を踏み入れたと思う。



今は便利だ、マッチングアプリで男性に会える。



彼氏探しでマッチングアプリを始めた私は、プロフィール写真の彼に、彼の顔面に恋をした。



………しかし写真の赤髪の彼は、ホストであった。



私も付き合うとかはまったくもって考えず、人生初のホストクラブを体験したい、ただそれだけを……といったら嘘だ、下心もあった、1%でも望みをもつのは人の勝手というものだ。



そして、人生初のホストクラブに行く日、財布に諭吉を忍ばせ、リップにコンパクトミラー、身分証、ワクワクとドキドキを鞄に積め待ち合わせ場所に向かった。

待ち合わせ場所の駅につくと、彼は携帯片手に1人赤髪という目立つ髪に黒いカッターシャツ、黒のスキニーにゴールドのネックレスをつけていた。あぁ、本当にホストなんだなぁという実感が沸く。


「あの、キョウカちゃん?」


「………あ、はい、そうです。」


そして写真より私のタイプにドストライクの顔面をしていた。



「……本当に成人してる?」



「え?あ、はい。身分証も持ってます…。」



「へぇそうなんだ、なんか未成年に見えちゃって、ごめんね、なんでもないんだ。」



もう大学3年生の私だが、未成年に見えるのか。お世辞と捉えるべきなのだろうか、素直に嬉しい。



「じゃあ、いこっか!」



「あ、はい。」



はい、人見知り発動。


自分の今の格好がどう見えているのか気になる。どこか変なところはないだろうか。


お互い少し距離をとりながらお店に向かって歩いていく。


彼はいろいろ話してくれているが、私の頭のなかは自分が彼にどう見えているか、その心配で頭がいっぱいだった。

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