ホスト彼氏の取扱い説明書
狂果-kyouka-
第1章 始まりと終わりの姫より
第1話 私という人間
春麗らかな桜舞う4月。
制服に身を包む学生たちが新しい門出を前に緊張とわくわくで心踊らせ、両親と共に入学式へと向かっていく。
アイロンのあてられた綺麗なスーツに身を包んだ新入社員が緊張の面持ちでビルの中へと入っていく。
彼らに明るい未来が待っていますように…。
そう願いながら、私は肩まで下がった黒いニットの服にジーパンに高いヒール。ふんわり巻かれた長い髪にゴテゴテな化粧。長い爪にラメのはいった男受け抜群なネイルで出勤。
そんな格好で行く職場ってどんな職場なの?って普通の人は思うだろう。
私もこんな格好で働ける普通の職があったら逆に聞きたい。
なんていったって私の職場は、
「おはようございます」
「澪華さん、おはようございます」
キャバクラだ。
出勤すれば黒服の相沢さんが1番に挨拶を返してくれる。
今の時間帯は朝のキャバクラ、朝キャバだ。
夜に比べたら時給は安いが、一般社員よりは高い。
更衣室に行き、澪華と書かれたロッカーにバックを入れ、仕事用のハンドバックに持ちかえる。
ハンガーにかけられたドレスを取り出し着替え、ヒールも履き替える。
最後に化粧を少し直し、香水を降れば、
キャバ嬢 澪華のできあがり。
そして最後に可笑しいところがないか姿見の前に立ちチェックをする。
こうして鏡に向き合うと、いつも思うことがある。
あの時違う選択をしていたら、私も少しは幸せだったのだろうかと……。
思い返してみれば、あれは丁度1年前の出来事___。
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