第14話 流れるでべそ

「えいっ えいっ」

 衣文さんがホタルさんに水を掛けます。ホタルさん応戦 大触腕に水をためて衣文に"みずでっぽう"をかまします。

「やったなー よしトウリちゃん ホタルさんに"すいりゅうれんだ" しっぽ使って」

「えっ あたし水技使えないよ。でもつたえもんの頼みなら仕方ないなぁ。くらえ"すいりゅうれんだ"」

 ホタルさん水の奔流を浴び、たちまち「やられた~」と触腕を天の方に向けて沈みます。

「やったー ホタルさんを倒した。経験値5151ゲット!!」

 衣文とトウリちゃんがおおはしゃぎ。プールサイドで様子を見ていたまいはさんとトモチカさんもこれにはニヤリ。

 元気でいいわね~。わたしたちも"ソウルビート"高めましょ。

 トモチカさんの傘をポンポン叩きます。「ふるいたてる」トモチカさんはそう呟きからだを起こし向かいます。

 トモチカさん・まいはさん戻ってきたよ。それじゃまたみんなで一緒に泳ごー

 トウリちゃん呼びかけます、流れるプール そうめんのようにまどろみみっくと衣文が流されます。そんなプールのひと時。今回は水着回?


 8月20日 10時「まどおーむ」メンバーは明け墨市南西に浮かぶ人工島にある屋内プール施設「」に来ていました。

 先月21日の真屋代高校の発表会以来1か月ぶりに全員集合です。みんな何していたかって?

 衣文さんは夏のまどおーむ広報文を提出しました。ホタルたちの好物や特技、一緒に発表会に取り組んでいく中で得た知見、新しく知った生態情報が書かれています。「前より情熱を感じる」「トモチカさんがスイーツ食べてる姿かわいい」「まいはさんって手作り好きなんだなぁ、一度だけでもいいからお話したい」同僚に広報文を見せたところ好意的な意見をもらうことが出来ました。上司に提出して添削してOK、広報記事は明け墨ジャーナル9月号に掲載されます。

 魚戸ホタル(みか)さんは新しいまどろみみっくが見つかったと報告を受け、実際に赴き対面しました。電気信号で会話して了解を取り、鳴き声を収録しました。持ち帰って妖力変換ライブラリを作ります。このライブラリからKibiTalkで発する音の波形パターンが決まります。忙しいや、でもKibiTalkを提げとかないと言葉が通じないので人間との生活難しい。トウリちゃんに向けて作ったときのように色んなパターンを試す。今日はみんなとプール楽しも~、そうホタルさんは気分を入れ替えてます。

 /* このまどろみみっくは来年以降登場します */

 まいはさんは電子工作で達成したい目標が決まり、せっせと向かい楽しく手作り進めています。明け墨市外の夏のファッションイベントで会社を上げて服の出店を行いました。「シースルーいい具合(^^♪」「生地が柔らかい 今からでも着ていい?」たくさんの反響をもらいました。作った服が売れるのが純粋に嬉しかったです。

 トモチカさんは暑すぎて外に出たくないと引きこもって読書やイラスト作成に取り組みました。秋イベントのポスター作成を複数依頼されており、送られてきた資料からこの場所に似合う色はどんな感じだろうと想像して1つずつ描きます。まどおーむにはリモートで参加していました。

 トウリちゃんは夏休みの宿題を順調に終わらせ、あとは毎日の絵日記を残すだけです。みんなと一緒のときに宿題が頭に残ってたら楽しくないじゃん。読書感想文はトモチカさんおすすめのミステリー小説です。時間あるからむずかしい本でも読んでみよっか→嘘、ここで殺されるの?怖いよ→いい人だと思ったのに…真犯人なの→面白かったな~カキカキ。そんなこんなで書き終えました。自由研究か自由工作か、自由研究っしょ。夏野菜であるトマトやナス、きゅうりに含まれる栄養素がどんな働きをするか?夏野菜と大好きなお肉と組み合わせたレシピを画用紙にデコリました。こんな感じでヨシ、あとは楽しも~ みんなと会えるプールにわくわくしていました。


 更衣室から出て おまちかねのプール!!

 ホシゾラコバルトプールは施設内に観葉植物が生い茂る屋内プールになっており、老若男女問わずたくさんの人が訪れる明け墨市内でも有数の人気施設!!

 施設名の由来は「ホシゾラコウイカ」というイカとドイツ語で森を意味する「バルト」、青の種類の一つ「コバルト」を合わせたものです。20時からのナイトプールでは蒼い光が私たちを照らすと聞きます。今回はその時間までおらず17時には施設を出てみんなと一緒にごはんを食べる予定です。


 出てきてみんなとご対面。休憩場所に移動して設営した後、遊泳前の準備体操が終わりました。水着を見てみましょう、各々の性格が出ています。

 衣文さんは青色の無難な水着、いっぱいの人が来るからジロジロ見られないのがいいかなって感じが滲み出ています。

 トモチカさんはグレーのジャケットを羽織るだけ、下は何もはいていないシンプルな水着です。クラゲですからね、水着じゃなくてジャケット。

 まいはさんは赤紫色の水着、144cmと低身長ながらも艶やかな感じが漂ってきます。自分に術を掛けて、鳥型からある程度人間に寄せた体型になっていました。本鳥曰く「ヒトの水着をベースに私の体型に合わせるのは難しいものね。服が編めるまどろみみっくはいないものかしら」ホタルさん「いつか現れるかもしれないほたー」と言います。もしかしたら心あたりあるのかな、と衣文は思いましたが詮索はやめました。知ると探したくなっちゃうので。

 で、そのホタルさん、何なんですかねぇ あの赤色どぎつい水着は。曰くドラゴンフルーツをイメージした水着だそうで。こんなの目立ちますよって衣文さん言います、が「いっぱいの人に見てもらったらまどおーむのアピールになるほた~」とその大きなヒレに聞く耳はないんですかね。

 トウリちゃんパステルピンクのへそ出し水着を着ていました。既に人間形態に変化へんげ済みです。隠せない、特徴的な光るでべそも見えています。腰骨のあたりから隠している尻尾が出そう。それにしてもおしり大きいなあ~ウエストのくびれもきれいなアーチだなあ~、衣文は猥りがわしい目線をトウリちゃんに向けます。


 つたえもーん さっきから どーこーみてるのかな~

 であいがしらに衣文はたじたじ。目線をへその方に向けてひと言

 で、で、でべそ。きれいなでべそだよね。トモチカさん そう思わない?タヌキちゃんのぽんぽこでべそ

 突然話を振られトモチカさん 頭を揺らします。そして返事します、目に蔑みをこもらせながら

 衣文 お尻じろじろ見てた。どう見てもそう。トウリちゃんのお尻 まんまる…いいよね…張ったお尻を触ってみたいよね。お願いしたら? 触るまで一緒に泳がない。

 試されてる?ホタルさんもまいはさんも頷くだけで助け舟を出してくれません。みんなの目を見て、周りの目を見て、40秒ほど逡巡しました。もうなるようになれ。気をつけの姿勢を取った後、トウリちゃんに頭を下げます。目立ちたくないのに…周囲の目線が気になって仕方ない。

 嘘ついてごめんなさい。素敵なお尻だなあ~って思ってじろじろ見てました。トウリちゃん触らせてください!! まあるい まあるい ぽんぽこお尻を触らせてください!!

 トウリちゃん 真顔で3秒固まったあと9秒大笑い。あはははは と周囲に声が響き、息吸って吐いてひと言

 つたえもん 触っていいよ~。プールの前から毎日朝のランニングして、砂糖たっぷりのお菓子摂らないようにして、みんなにいい体見てほしかったんだ。変化したときの体型って体調によるんだよ。出不精な生活してたらあっという間に太るからね。あたしたちはそういう体質。でね、あたしの体をステキって言ってくれてありがと。誰にでもじゃなくてつたえもんだから嬉しいんだよ。ほれほれ~。

 トウリちゃんお尻を向けます。お尻を直接触りたかったところですが、人が見ています。お尻ではなく桃色のふわふわ尻尾を右手で触ります。

 ああ~すべすべ(もみもみ)→(左手でもお触り)左もすべすべ~

 桃色の尻尾を揉みしだき、揺れるお尻を楽しんでいました。尻尾に顔を近づけようとしたところバッテンが入りました。

 つたえもん ストップ。1分たった。続けてお触りするなら1分300円で。中学校の友達からも1分以上のお触りはお金とってるよ。

 衣文は手を止めます。ありがとうと礼を言った後に自分のかばんから財布を取り出したと思ったらトウリちゃんに3000円を渡します。トウリだけでなくホタル・まいは・トモチカもこれにはう~んと首をかしげます。

 そんなに触りたいの? 泳いだ後にしようよ 時間取るからさ。流れるプール 待たせてるよ。

 トウリちゃんに手を引かれてみんな一緒にプールに入りました。


 ホタルさんもうプールに適応してます。ある程度空いた場所を選び、一度潜水してトビウオのように水しぶきを上げて飛び上がります。円状に水の波紋が広がります。見た人から拍手をもらっては触腕を振って「ほたーほたー」とあいさつしてました。他にも同族が来てました。一緒に息を合わせて触腕をたなびかせて次々とポージング、まるでアーティスティックスイミング。まどおーむメンバー、ホタルさんたちに拍手。ダンスに自信ありのトウリちゃん、一緒に混ぜて、とホタルさんたちにお願い。願い叶ってトウリちゃんセンターで一緒にダンス。水も滴るホタルさんの腕、もちもちにピカピカが加わったトウリちゃんのお尻、いいですね~。見ていた衣文は右手でまいはさん、左手でトモチカさんと手を繋ぎ、一緒に腕を振って応援。ホタルさんだけでなくこちらにも拍手を送る人がいました。ありがとうございます、と感謝の言葉を伝えました。

 衣文 水を得た魚。海の中で私プランクトン専だった。衣文はもっと大きい魚を食べようとしてる。私を食べるならどうする?

 衣文は30秒ほど間を置いた後、返事します。

 トモチカさんは水分多いから干物にしてから食べるかな。でも今は楽しんでる、水分たっぷりのトモチカさんを見ていたい。これからも干さないよ、約束する。

 トモチカさん、少し光が強くなります。

 衣文なら約束守ってくれそう。うん、これからもよろしく。

 いいわね~、とまいはさんが約束の証人になってくれました。プール楽しい!!


 イカは淡水に適応できないはず? 魚戸ホタルはイカ型まどろみみっく、イカだけでなく淡水中で過ごす蛍やモノアラガイ・タニシといった巻貝の性質も持っているのかもしれません。イカと魚戸ホタルは10本足という点では同じですが、大きく性質が異なる生き物です。

 あとKibiTalkは無論電子機器なので水が入ると故障の原因になります。そこはまいはさんの妖力でコーティングしてます。居場所探知にも使えるので便利。衣文には使えないのでまいはさんと並んで泳ぎます。


 そのまいはさんはビート板を持って泳いでいます。トリ型まどろみみっくなので基本的に空が活動場所で水に適応する必要がありません。まいはの速度に合わせて泳ぎます。流れ着いた先にはウォータースライダーがありました。行きましょとまいはさんに促され衣文・トウリ・トモチカは階段を上ります。飛べばいいのでは?順番を守って並びましょう。一番上に到着しました。衣文とまいはが横に並びます。足を伸ばして下を見て鼓動が早くなりました。まいはさんは平気、それどころか横目で笑っています。「大丈夫よ、落ちたらわたしが拾いあげるから」と声をかけられ、まいはさんは味方と安心しました。監視員の合図でスタート!!

 きゃーと衣文が叫ぶとまいはさんも合わせて ぴゃー と叫びます。カーブでうにゃーと叫び、流れにタジタジ。終点が見えてきた、空中に放り出されると勢いよく水の中に入りました。水中にしては明るいなあ、と違和感を感じ目を開けると目の前にホタルさんが。目を全開にして口を少し開け、ヒレを光らせていました。震えて水の中から飛び出し、うやぁーーーーーと周囲にも聞こえるくらいの絶叫を響かせました。ホタルさん「驚いた 驚いた」と言ってあざ笑っています。こぶしを握り締めてからひと言

 どこ行ってたか と思ったら ホタルさん 何 やってるんですか。

 ホタルさん、自分が想像していたより怒っていたので

 ごめん そんなに驚くとは思わなかった。一緒に泳ごう!!

 と謝りました。まいはさん付け加えます。

 ホタルさん、悪気はないのよ。ただ衣文さんと一緒に楽しみたかっただけ。というより自分も周りも、周りの海も楽しませるのが魚戸ホタル族の性格よ。ホタルさん人間と一緒に楽しむだけじゃなくて文化も知ってほしいと思って"まどおーむ"を作ったことは知ってるよね。  許してあげて。

 トウリちゃんもトモチカさんもウォータースライダーの終点に到着しました。ホタルさんが頭を下げているように見えたので急いで駆けつけます。どうしたの?とトウリちゃんにせがまれ、「ホタルさんいいですか」と前置きした後にひと言

 ホタルさん 許します。まいはさんもホタルさんに悪気はないと教えてくれてありがとうございます。でも怖かったです。焼きトウモロコシ1本おごってください。

 おごるおごる、とホタルさん頷きます。それにしてもウォータースライダーはスリル満点で楽しかった。ホシゾラコバルトプールの人気No.1の施設なのも合点がいきます。


 13時、泳ぎ疲れ休憩場所に戻りました。みんなで昼ごはんにします。衣文は売店で焼きそばと焼きトウモロコシ1本を買いました。戻るとまいはさんとトウリちゃんは弁当を開いており、ホタルさんとトモチカさんはアミノバイタルゼリーを2本飲み終えていました。水分だけでいい彼らは衣文たちが食べ進める中「美味しい」と相槌を打ちます。醤油が香ばしい、おごりの焼きトウモロコシをジャキジャキ食べながらそう思います。

 つたえもん 茶色ばっかりだね。玉子焼き食べて。早起きして作ったの

 と、トウリちゃんの手作り玉子焼き!! スッと自分の箸でとりササっと口に運び堪能。うみゃい、うみゃい、舌で細かくつぶして唾液と黄身を混ぜてごっくんちょ。顔がほころんで

 トウリちゃんありがと~たぬさま~

 と喜びを露わにしました。そんなに美味しかったら、と次はシュウマイを差し出され喜んで口に運びます。肉汁うまっ、体がほっこり温まります。

 つたえもん 今度私の家に来てよ。そんなに喜んで食べる姿見てると夕食ごちそうしたくなっちゃった。

 もちろん、と答えました。付け加えて

 今は広報文やホタルぽーたる主催のイベントもあって時間が取りづらいけど9月になったら時間空くよ。そのときごちそうになります。

 トウリちゃんも「うん、いいよ」と返しました。喜んだところであのお願いを切り出します。

 ところでトウリちゃん。まだ10分使ってないんだけど食べたらしよ?

 トウリちゃん、眉をひそめます

 つたえもん デブになるよ。

 衣文は自分の欲深さにため息をつきました。

 /* 16話で衣文がトウリの家でごちそうになる話を書きます。 */


 食事が終わった後に人目に付かない場所でトウリちゃんのぽんぽこお尻を3分、尻尾を3分、くびれや腕・髪を4分お触りしました。あまりにトウリちゃんで摂取したカロリーが多く、デブるという言葉の意味を体感しました。胸は触っていません、男女問わずそこに触るには友情以上の関係が必要だと思います。

 トウリちゃんとプールに戻った後、ホタルさんを見つけました。次は私から驚かせてやろう。

「えいっ えいっ」

 ホタルさんが衣文にやり返し、プールサイドで見ていたまいはとトモチカも水かけの一部始終を楽しんでいました。


 なんだかんだでプール楽しかった。17時に外に出てみんなと夕食。プールで撮った写真を見せ合いっこしました。私が撮った写真送るわね、とまいはさんから衣文に送られてきた写真。そこにはホタルさんに驚かされ顔が崩れる衣文が映っていました。

 どうして撮っているんですか。

 衣文は語気強めでまいはに迫ります。

 KibiTalk 私の術でコーティングしてたのは覚えてる? わたしは自分のスマホにコーティングしてたの。20mの高さのウォータースライダー滑り終えたときの顔を撮影したいって楽しみにしてたわ。近くにホタルさんが来たから「ウォータースライダーの近くに来て」って合図を送ったらホタルさん水中で驚かせてしまって。ごめんなさい。

 はあ__と息が漏れて

 まーいーはーさん 予告なしにそういうことされるの私は嫌いです。でも写真は消しません。それも含めて楽しかったですから。みなさんありがとうございます。

 他のメンバーも「ありがとう」と返しました。

 店を出て別れ際にトウリちゃんが衣文にひと言

 大きいお尻、好きなんでしょ。人目の付かないところだったら触ってもいいよ。1分無料で。オプション付けとく?

 衣文は今日の行動を反省してひと言

 また私が触りたくなったときによろしくお願いします。でも私がトウリちゃんのお尻を好きになって揉みくしゃにしたことはこのメンバーだけの内緒にしてほしい。トウリちゃんお願い。

 もちろんと返り、こうして今日2つ目の約束を交わしました。

 ぽんぽこお尻はいいものだ。腰が据わっている証拠。








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