第13話 まどおーむスピーチ 真屋代高校で!!(後編)
12話からの続きです。
/* まどろみみっく文化紹介:8分 */
「
ホタルぽーたるの紹介ありがとうございました。さてまどろみみっく文化紹介コーナーです。それぞれの特技を披露していただきます。それではどうぞ。
」
司会進行役の網干さんから橋渡しが行われ、まずはホタルさんから特技「ヒレ包丁」を披露します。
魚戸ホタル土産のひとつであるかまぼこ2つが机の上に置かれます。大触腕で両方掴んだ後に上空に放り投げ、まずは生徒から見て左側のかまぼこから弓なりのヒレを通わせると木の板ごとスパッと切れました。次に右側のかまぼこにもヒレを通わせるとこれもまあスパッと切れました。最後に生徒にわかるよう墨を吐いてかまぼこの切れ端を黒く染めると出来上がり。カンペキ、触腕をふりふり、ヒレをピカピカ蒼く光らせて大喜び。衣文さんマイクを取ります。
「
このように魚戸ホタルさんはヒレに特にパワーが宿ります。また感情が高ぶるとヒレや大触腕にある発光体から蒼い光を放ちます。魚戸ホタルを見分ける一番良い方法はヒレを見ることです。ヒレを褒められると大喜びするので覚えていてください。
」
脚触腕で傘を掴んでまいはさんに放り投げます。まいはさん回転して華麗に受け取り枡回しが始まります。ちなみに枡回しの途中に切ったかまぼこをパクっと食べていました。
まいはさん、まずは1個枡を乗せて回します。続けて2個目、3個目と乗せて回します。するとまいはさん枡を乗せたまま翼を広げました。翼が緑色に発光したと思ったら空中に飛び上がり、強風が吹いたように枡が回るわ回るわ。30秒ほど回した後に地面に降りてきました。衣文さんマイクを取ります。
「
このように色織まいはさんはまどろみみっくの中で一番パワーの使い方に長けています。また演技で使った傘や枡は手作りと聞きました。モノを大事にする種族なので、まいはさんのモノを買ったら魂が宿ってると思って大事に扱いましょう。
」
飛び跳ねてトモチカさんがやってきました。
トモチカさん、クラゲボディが上下重なった砂時計のような形をしています。上の傘をオレンジ色に、下の傘をピンク色に光らせた後、くるんと上下入れ替え。続けて光らせると上の傘がピンク色に、下の傘がオレンジ色に変化しました。次につなぎ目の体を小さくしてボール型にします。すると空中で飛び跳ね始めました。加えて上下左右に膨張、最後に生徒に向かって傘をビヨンとばねのように伸ばしてから降りてきました。衣文さんマイクを取ります。
「
このようにトモチカさんはまどろみみっくの中で特に得体がしれません。逆立ちしても動きが変わらないというのは不思議です。先ほど見たように伸縮自在で発光色も1色だけではありません。大きい体をしてますが中身は繊細です。会ったときは大きな音を立てないように気を付けてください。
」
最後にトウリちゃん、葉っぱ型の髪飾りを手に取り、中に入った指を手に取りいきなりへんし~ん。ヒト型に変化しちゃいました。
いっくよ~と叫んだあと、ネットでバズっている大人気バンドの音楽が流れ始めました。30秒ほど人間の姿で踊った後、指輪が光り、タヌキの頭と尻尾が生えてきました。尻尾をふりふり、投げキッス、しまいには尻尾の力を使ったバク転まで。
音楽が終わったあとマイクの近くに来て「真屋代高校のみんな~ありがと~」と叫びました。衣文さんマイクを取ります。
「
このようにトウリちゃんは人間に化ける能力を持っています。ただし種族の中ではまだまだ成体になる途中で、動揺するとあっさりと解けてしまいます。種族自体が人間の言葉でいうとパリピと聞いています。この踊りはトウリちゃんのSNSアカウントでも配信されていますので見逃した方はそちらからご覧ください。まどおーむのホームページで紹介しています。
」
全員のパフォーマンスが終わり網干さんがひと言
「
個性あふれるパフォーマンスありがとうございます。各々の特徴を活き活き伸び伸びとしており、素晴らしいパフォーマンスでした。最後にホタルさんから順にひと言感想をいただけますか?
」
ホタルさんがマイクを取りました。順番に感想をもらいます。
「
"ホタル":{
ほたー、ヒレ包丁の切れ味はどうでしたか? ヒレは一匹ごとに違ってて、形によっては風を仰げたりヒレでもモノを掴めたりします。あと魚戸ホタルかまぼこ美味しいですよ。よければ食べてみて~。
},
"まいは":{
上手くいってよかったです。あと衣文さんが紹介したように傘も枡も手作りです。モノは自分の手で作るとより愛着がわくと思います。夏休み中時間があればチャレンジしてみてください。
},
"トモチカ":{
私たち見ての通りブヨブヨボディ。ヒトと似てなくて怖がられることもある。あと本が大好き、本を読むと友達…増える。特に恋愛小説はヒトの本性をうつすからおもしろい…おすすめの本あったらブログ持ってるから教えて…ね。
},
"トウリ":{
ああ~気持ちよかった~。変化の能力はまだまだ成長中、一度変身すると自由に解けなくて半日は指輪が外せないんだ~。あと投げキッスはSing So Swee't(シンソースイ)のマネ、ダンスだけじゃなくてアイドルも好きなんだ。あたしに伝えたいことあったらSNSアカウントにDM送ってくれると返事出すかもしれないよ。ありがと~。
}
」
4匹それぞれの感想をもらい、最後に衣文さんがひと言
「
パフォーマンスを最後までご覧いただきありがとうございます。まどろみみっくの特徴は変色・変態・電気通信と言われています。パフォーマンスでもご覧になったように姿かたちが一定ではなくクネクネしており、変わり続けます。でもそれは私たち人間もそうではないでしょうか?夏休みに部活動で力を高め合ったり、受験勉強に励んだり、クーラーの効いた部屋で涼んだりします。どれも同じ日だったことはございません。彼らは直感的に変わるので人間より分かりやすいだけです。人間は立ち止まるのに理由を付けたがる生き物です。進みたくないと思ったときはなぜそう思ったのか書き出してはどうでしょうか?文字や図にするとより単純になると思います。他の人に意見をもらうのもお薦めします。ありがとうございました。
」
網干さんがまどおーむの皆さんにそれぞれ一礼したあと、次のプログラムへ進めます。
「
貴重なアドバイスありがとうございます。それでは次は質問コーナーです。事前に質問を募集し、衣文さんに1つ、ホタルさんたちに2つ質問を用意しました。それでは最初の質問から。
『衣文さんはなぜまどおーむで広報を始めようと思ったのでしょうか?変な生き物と付き合うことになり迷いはありませんでしたか?』
」
/* 質問回答コーナー:8分 */
早速アイデンティティをくすぐる質問、衣文さん答えます。
「
まどおーむで広報を始めようと思ったきっかけは2年前の上陸祭で魚戸ホタルのパフォーマンスを見て愛らしい見た目に一目ぼれしたことです。最初はお近づきになりたいという下心で魚戸ホタルについて調べて、ホタルぽーたるの面接で魚戸ホタルが面接官だったらいいのにと思っていました。1年間会えずじまいでしたが、隣にいるホタルさんから広報のオファーが来て、待ち焦がれていた仕事がやっときたと思いました。ホタルさん以外にもまいはさん、トモチカさん、トウリちゃん、その他にも会ったことのないまどろみみっくが居ると知り心躍りました。迷いはなかったかについては、やってみようとエンジンを吹かせてて、迷う時間がもったいないくらいでした。まあいきなりチカチカしたり喋り始めたり変なところもありますが、面白い生き物です。新しい友人ができると新しい文化を知れる。私は広報を始めてそう思いました。この質問については以上です。私宛の質問が他にも来てて、中には答えるのに頭抱えてホタルさんと散歩してみて自分なりの解答がでた質問もあります。まどおーむ公式サイトに一部答えてて、12時に更新する予定なのでぜひとも訪れてみてください。それでは次の質問お願いします。
」
場内は拍手で包まれました。衣文に促され網干さんが進めます。
「
それではホタルさんたちに質問です。
『人間たちと暮らしていて困ったことは何でしょうか?』
この質問にはひと言ずつ答えてもらいます。先ほど衣文さんがおっしゃられたようにまどおーむ公式サイトでも質問への回答がございます。ひと言だけじゃなくてより細かい内容が見られますのでぜひともご覧ください。それではホタルさんからどうぞ。
」
ホタルさんから質問に答えます。
「
"ホタル":{
困ったこと いきなり腕掴まれてぶっちゃって謝ったことかな。注意だったかもしれなけど掴むなら声かけて、敵と反応しちゃうから。いたずら感覚でちょっかい掛けたら手加減しないから注意してほしい。街の人も優しくしてくれて、困ったことはあんまり思い浮かばないほた~。といっても他のホタルたちがお利口なだけかもしれないから、ぐれたホタルいたら怖がらず声かけて注意してほしいほた~。
},
"まいは":{
困ったことねぇ、雨の中、車から跳ねた水で羽がびしょ濡れになったことかしら。重くなって飛べなくなってどんよりしました。車は急に止まれない、わたしは安全運転を心掛けています。皆さんの中に夏休みに免許を取る予定がある人がいたら聞いて。雨のときはゆっくり運転をお願いね。
},
"トモチカ":{
困ったこと…体が大きいのでぶつかることが多いこと。気にしなくていいよ…と言ってくれたら嬉しいけど…舌打ちされたりわざと肘を打たれたときはどうしたらいいのってパニックになります。怯えたまま…変わらないのは嫌…だから外に出るようにはしています。ぶつかることがあっても一呼吸置いてほしいです。
},
"トウリ":{
困ったことかぁ~あ、そうそう同調圧力って あるよね。学校の仲間に「え~トウリちゃん見てなかったの」って言われて一日仲間外れにされたのは辛かったかな。自分はみんなとは違うって見ているから自分のスキ追い求めてる。だから「え、タヌキなの?アイドル好きなの?いいじゃん」って言ってくれる友達ができたときはほんと嬉しかった。周りとは違ってても自分の好きをどんどん追い続ければいいと思うよ。
}
」
困ったこと、場内からは「気をつけよっ」や「うんうん」と共感する声が出てきてました。次の質問に移ります。
「
続いての質問です。
『人間たちと暮らしていて嬉しかったことは何でしょうか?』
この質問も同じくホタルさんからどうぞ。
」
網干さんから促されホタルさんから質問に答えます。
「
"ホタル":{
初めて上陸祭りの準備を進めていた時に展示物をうっかり壊してしまって怒られる~と思ってたら「いいよ、でもホタルさんも一緒に直してくれたら間に合うかも」って言われて許可取って一緒に直したことほた~。日が浅くてたどたどしく喋っていた僕に明け墨市で暮らすアドバイスや言葉遣いを教えてくれた 嬉しかった。今でも1か月に1回は電話して、ちょっとした世間話をしてるほた~。最近はまどおーむの話で持ち切り、今回の訪問も「フレッシュな高校生が知ったらもっと輪が広がるかもしれないね」ってワクワクしてるのが伝わってきました。
},
"まいは":{
わたしがロハスミーツで売っていた木の枝のヘアアクセサリーを手に取って自分と友人用にと4つも買ってくれて喜ぶ顔が嬉しくてついつい名刺を渡しました。すると1週間後にメールで「一緒に作らない?」ってお誘いが来て、思わず飛び上がって「もちろんよ」と返事しました。当日一緒にブレスレット作って見せあいっこして嬉しかったわ。一緒に出店したときはお互いの商品を買うように約束してるわね。
},
"トモチカ":{
ブログにコメントが付いたことが嬉しかった。些細なこと…かもしれないけど誰かに認知されたって思ったらもう…。私はホタルさんに呼ばれて住み始めたけどヒトには怖がられて…何をすれば自尊心が満たされるのかわからなかった。本を読むのが好きだからホタルさんから教えてもらったブログで本の感想を書きましたが…2か月間コメントが付きませんでした。自分なんてって思った時に「Tomorieさんこんにちは、僕もヒロインの困難にも挫けない性格に惹かれました。今後も楽しみにしています。」ってコメントが来て床がびしょ濡れでホタルさんに心配されました。それくらい嬉しかった。
},
"トウリ":{
あたしは桃色のふわふわ尻尾を「カワイイ」って言ってくれたのが嬉しかった。正味メイク時間の半分くらい尻尾のふわふわに注いでいるくらいあたしの中でお気に入りなんだ。コイバナ聞いてドキドキしてうっかり尻尾が出ちゃってどうしようって頭に手を置いてたら「すっごいキレイ ふわふわ~ トウリちゃん撫でさせて~」って言われて撫でさせたらふにゃってなっちゃった。それから尻尾目当ての人が集まってきたから尻尾撫で料1回100円取るようにしてる。でも友達が私の似顔絵描くときに尻尾も描いてくれるようになったのは嬉しかったなぁ。
}
」
場内はほっこりムードに包まれました。「自分の頑張りを誰かが見てたらそりゃ嬉しいよな。」「私もお気に入りを褒められて嬉しかった」と自分事のように呟いていました。最後、創作ダンスです。私たちのリズムで踊りましょ。
/* 創作ダンス:5分 */
「
続きましては創作ダンスになります。私たちからまどおーむ様に「5分間どんなことをしていだたいても構いません」と伝えてました。すると「一緒に踊っているところを見てほしい」と返事がきました。体の大きさも形も違うメンバーがどんな踊りを見せるのか、とくとご覧ください。
」
網干さんが場を繋いでいる間にセンタートウリちゃん、左側にトモチカさんとホタルさん、右側に衣文さんとまいはさんのフォーメーションが出来上がりました。
/* 書き手はダンスにリアリティを持たせるほどの技能はありません。雰囲気だけでも味わってもらえると嬉しいです。 */
音楽が流れスクリーンにプロジェクションマッピングが映し出されます。日が差し込み鹿やリスなど野生の動物が集まった場所をイメージしています。トウリちゃんの出身地をイメージしているそうです。音楽は野球界で話題になっているあのダンスです。最初にトウリちゃんが両手を挙げて聴衆全員の注目を集めてから踊り始めます。くねくね腕を左右に揺らしたり胸を突き出したり吠えたり、基本は人間のダンスを再現しています。異なる点としてホタルさんやトモチカさんは指がなく、まいはさんは指が3本なので狐マークを再現できません。ですが気にせず向かい合って触腕をグラ〇アル選手のパフォーマンスのように打ち合ったり、吠えるところでまいはさんが衣文さんを風で打ち上げて発光しながらパフォーマンスしていました。
後半は今年の魚戸ホタル上陸祭のテーマソング「リトルルミナス」を1番だけ流しました。1分40秒くらい。次は衣文さんがセンターに立ってトウリちゃんと入れ替わります。横一線で手をつなぎ、1・2・3・4のリズムでステップを踏みます。曲の中盤に差し掛かって円形になってからホタル、トモチカ、まいはが宙に浮かびます。衣文とトウリが向かい合って頷いたあと、大きく体を傾けてハートマークを作ります。仕上げに全員発光してまんまるのお月さまを照らし出して完成です。フォーメーションは次の通りです。
ホタル
トモチカ まいは
衣文・トウリ
パフォーマンスを見て場内、一斉に拍手で湧きました。ありがとうございました。
/* 終わりのあいさつ:2分 */
「
創作ダンスありがとうございました。メンバー同士の友情を心臓でひしひしと感じました。さて皆様、まどおーむの方々とのお別れの時間が近づいてきました。お一方ずつ終わりのあいさつをお願いいたします。
」
楽しかったときは過ぎ、閉幕します。最後にまどおーむメンバーそれぞれで生徒たちに伝えたいことを伝えました。
「
"ホタル":{
楽しかったほた~。企画したときは何かしなきゃって焦ってたけど、メンバー全員で組み立てて、こうしてみんなに受け入れられて発表した甲斐がありました。僕たちに少しでも興味を持ってもらえると嬉しいです。これから魚戸ホタルはどんどん増えてけます。「友達になって」って言われたら喜んで受け入れて。僕たちにとっては心が許せるということだから。ありがと~。
},
"まいは":{
本日はこのような機会を持たせていただきありがとうございました。今回できたご縁は忘れないように記録します。まどおーむはまだまだ生まれたての雛鳥。羽ばたけるように応援のほどよろしくお願いいたします。
},
"トモチカ":{
みんながいたから人前に出て発表できました。恥ずかしいよ…でも嬉しいでいっぱい…今日の出来事は忘れません。
},
"トウリ":{
正直今の自分じゃ真屋代高校受かるのは難しい。でも自分は変われる。せっかく縁ができたしもっと勉強頑張ってみるよ。ありがと~。
},
"衣文":{
最後に私から。皆さん夏休み期間中に勉強でも遊びでもいいので、これまで未体験のことに挑戦してみてください。新しい出会いがこうなったらいいなという想像力を育みます。それが将来進路を決めるときにきっと役に立ちます。私はホタルさんたちに出会えて、今回真屋代高校の先生方、生徒の皆さんと協力して発表できましたことを心から喜んでいます。真屋代高校の皆様に自分らしさが発揮できる未来が訪れますように。まどおーむ広報 蔦凪衣文より締めのあいさつといたします。
}
」
締めのメッセージは届いたのでしょうか? それは数年後に見えてくることでしょう。魚戸ホタルたちの文化がより広がりを見せる中で近くに発表を見ていた人がいる。そんな未来図を描いていました。
最後に「まどおーむの皆様ありがとうございました」と網干さんが促し、生徒一同「ありがとうございました。」と締めて壇上から降りました。
真屋代高校での発表は無事成功に終わりました。ありがとうございました。
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