第12話 まどおーむスピーチ 真屋代高校で!!(前編)
「ほた~ 私もです。緊張してきましたね。」
発表20分前、衣文はまどおーむメンバーだけでなく舞台裏周囲の生徒にも聞こえるようにつぶやきました。
初の正式な団体活動 少しでもピリピリするのは避けたい。
そこで指を組んで伸びあがり背筋を伸ばして息を吐く。するとホタルさんたちも空に伸びあがりリラックス。
衣文は「ホタルさん、皆さん円陣組みませんか?」と提案しました。
まどおーむメンバー、そして手の空いていた生徒5人、合計10人そのうちまどろみみっく4体の円陣ができました。
「
私たちは成功する。そのイメージを持って発表に臨みましょう。いらない心配はいりません。ありのままを伝えましょう。それではまどおーむ オーーーーープン!!
」
オーーーーープン、と変わった掛け声でしたが合わせてくれました。
真屋代高校でのスピーチがもうすぐ始まります。
7月21日8時00分に真屋代高校にメンバー全員到着し、当日スクリーンに映し出すスライドおよびプロジェクションマッピングの最終確認をしていました。
すると人影が向かってきてこちらに挨拶してきました。
「
初めましてまどおーむの皆様。本日司会進行を務めます
」
網干さんでしたか。衣文にあいさつしてきたので返します。
「
始めまして網干さん。蔦凪衣文です。司会進行役を引き受けてくださりありがとうございます。こちらこそよろしくお願いいたします。
」
衣文の方から手を出して網干さんと握手しました。大事な方とあいさつできたので俄然やる気が出てきました。
11時40分には終業式が幕を閉じて、12時30分に解散になります。10時30分から登場するゲストとして体育館の舞台裏に居ました。
保健主事、生徒指導主事の話が終わった後に自分たちが壇上に上がります。保険主事は夏季休暇の健康注意について次のように話していました。
「
新型の感染症が波に乗って押し寄せてきています。人通りの多い中心地やショッピングモールでは必ずマスクを付け、歩道では周りに人が居なければマスクを外してください。熱中症にも気を付けましょう。特に今年は35℃以上の猛暑日が続きます。水分と一緒に塩分を補給できる飴を持つことをおすすめします。命を守る最善の行動をしてください。
」
それを聞いてトモチカさんの様子を見てみると扇風機に当たってぐったりしていました。まどおーむメンバーの中で特に高熱に弱い種族です。クーラーボックスに入れて持ってきていた清涼飲料水を差し出しフタを開け「飲む?」と提案しました。「ありがとう」とトモチカさんはグビグビ勢いよく飲み干し「トイレ」とつぶやきました。それは大変、時間がもう迫ってきていたので生徒に「トイレ行ってきます」と告げて急いで行きました、まいはさんも一緒に。
7分前、衣文たちがトイレから帰ってくると生徒指導主事の話が終わる頃でした。ホタルさん曰く詐欺を受けない、関与しないように最近の詐欺の特徴紹介やSNSトラブルの事例を紹介して起こさないようにしましょうという話でした。
生徒指導主事の話が終わり教頭が壇上に上がり私たちを紹介します。
「
さて本日は私たち先生方だけでなくゲストの方々がお越しになっています。株式会社ホタルぽーたる様から派生した団体まどおーむの方々です。皆様、魚戸ホタルという生き物を明け墨市内で見かけることが多くなったと思います。こーんなに大きなヒレが特徴のイカのような生き物です。もともとは明け墨の海で暮らしていましたが、陸上に上がり始め、ホタルぽーたる様から1万体を突破したとご報告が上がっております。今や彼らも明け墨の住民の一人。まどおーむはそんな彼らの文化を企業では行き届いていない草の根レベルで広めるために作られた団体です。責任者の魚戸ホタルさん以外にもトリ型の色織まいはさん、クラゲ型のトモチカさん、タヌキ型のトウリさん、そして私たち人間向けに広報を務めていらっしゃる蔦凪衣文さんという面白いメンバーで構成されています。ただいまよりまどおーむのメンバーが壇上に上がります。温かい拍手でお迎えください。
」
教頭のお話が終わり「まどおーむの皆様、どうぞお上がりください。」と網干さんに促され開幕しました。
さあリハーサルの成果を見せましょう。壇上に上がり全員が中央に来たところで全方向の生徒に向かって一礼。生徒たちから拍手とともに「ホタル以外にもいたんだなぁ」「フードコードで叫んでたクラゲじゃん。SNSで見た、面白くて覚えてる」「ピンクのタヌキ尻尾かわいい」と声が聞こえてきました。ホタルさん以外も知ってもらうチャンス、蔦凪衣文はそう心に秘めました。
「
まどおーむの皆様初めまして、司会進行役を務めます生徒会副会長の網干と申します。本日はお忙しい中お時間いただきありがとうございます。生徒一同心より歓迎申し上げます。夏休み、勉学以外への取り組みも積極的になることでしょう。新しい友人ができる、新しい文化を知るとはどのような気持ちになるのか。またどうやったら伝わるのか。そのヒントをお聞かせいただければ嬉しいです。まず最初にまどおーむで広報を務めている蔦凪衣文さんよりご挨拶、その後各メンバーの自己紹介が合わせて10分ほどございます。今回まどおーむ様には40分ほどお時間をいただいております。ご清聴のほどよろしくお願いいたします。
」
網干さんのあいさつが終わった後、拍手が静まり一時の静寂に包まれました。
/* 初めのあいさつ:5分 */
衣文が応じるまま拭かれたマイクを受け取ってひと言、場内の時が動き始めました。
「
真屋代高校の皆様、初めまして。教頭先生、網干さんよりご紹介に与りました「まどおーむ」です。私は広報を務めております蔦凪衣文と申します。私から見て左手には魚戸ホタルさん、色織まいはさん、右手にはトモチカさん、トウリちゃんが居ります。ただいまより40分ほどお時間をいただき、「まどおーむ」という団体の活動、ひいてはまどろみみっくのことをより知ってほしいと思っています。
皆様の中に変な生き物引き連れてきたって思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。大丈夫、平気です。基本的に危害を加えようとしなければ危ない目に遭うことはありません。まどおーむはまどろみみっく文化普及を目的にした団体です。ここまで話に出てきたまどろみみっくとは何でしょうか?私はこう考えます 「よく分からない、正解がない」。ここ10年で地上に現れた未解明の部分も多い不思議な生き物です。私はまどおーむメンバーとは分かり合えない部分はありのままの姿、通じ合える部分はお互い尊重すると決めて接しています。みんなそれぞれ得意なこと、苦手なことがありますが、互いにフォローしあい、頼りになるメンバーです。この場に姿形を見て苦手意識を持った方がいらっしゃるかもしれません。ですが大した理由もなく嫌いにならないで欲しいと願っています。私は最初、お近づきになりたいと興味本位で思っていました。実際に広報として彼らと接するうちに私たち人間も生物の一つであり、自然と協力することでみんなが輝ける持続可能な社会を作ることができると思いました。
さて挨拶はこのくらいにして「まどおーむ」メンバーの自己紹介を始めさせていただきます。名前・特技・マイブームを30秒程度で話します。名前だけでも覚えていって興味を持った方は実際に文献に当たってもらえると嬉しいです。期末テストを受けてお疲れのことでしょう、頭に凹みがあるとイメージして知らなかったことで埋めて頭をほぐすのもいいと思います。まずはまどおーむ発起人の魚戸ホタルさん~よろしくお願いします。
」
早速拍手が飛んできました。カフェでリハーサルしたときよりずっと大きい音に気圧されそうになりましたが姿勢を正します。掴みは上々、自己紹介に入ります。練習してきたんですもの、上手くいくと念じます。
/* まどおーむメンバー自己紹介:3分 */
宙に浮かんで演台の前に立ったホタルさんに別のマイクが渡り、私は生徒会の方にマイクを渡して拭いてもらいます。ホタルたちは
「
ほた~ 初めまして魚戸ホタルです。まどおーむの代表をしています。普段はホタルぽーたるでKibiTalkといったガジェットのシステム作りに関わっています。まどおーむは僕たちの文化をより知ってほしいと思い立ち上げました。特技はヒレ包丁、マイブームはCSSの新機能を試して便利になったと感じることです。次まいはさん、お願いほた~。
」
「
真屋代高校の皆様、初めまして色織まいはです。まどおーむではスケジュール管理、金銭管理をしています。頼られることも多いですがわたしだけではこのような発表を企画して進めることができなかったので助かります。特技は枡回し、マイブームは電子工作です。マイコンにプログラムを書き込んで手作りの観葉植物に時間差付けてLED光を当てるとキラキラして楽しいのよ。次トモチカさん、お願いします。
」
「
はじめまして…トモチカと言います。まどおーむでは…サイトやチラシのデザインを任されています。皆さん…廊下に貼られていた「まどおーむ」のポスターは実は私がデザインしました。先生から褒められたと聞いて嬉しかった…。特技はボールになること マイブームは恋愛小説。本を読むのが好き…最近は「おてまえロマンツェ」を読んで はまって そればかり見てます。次トウリちゃん お願い…。
」
「
ほいきた、はじめまして~トウリちゃんだよ。まどおーむじゃ動画作りやアイデア出し任されてまーす。あと
」
「
先ほど挨拶しました蔦凪衣文です。つたえもんというのは友人から呼ばれたあだ名です。まどおーむでは人間向けの広報文を書いています。5月の上陸祭明けて書いた広報文が新聞サイトに載ったときはどうなることかと思いましたが反響大きくホッとしました。特技というより趣味は未踏の場所へ行くこと、マイブームは勉強会に参加することです。別の職種とお話してホタルさん知りたいって言葉が聞けたら儲けものです。魅力を伝えるのが今の私の使命です。
」
自己紹介が終わりスクリーンにスライドが映し出されます。特に画面に乱れがなくて良かった。
/* (株)ホタルぽーたる紹介:5分 */
「
続きましてはまどおーむの起点となりましたホタルぽーたるの紹介に移ります。ホタルぽーたるは本校の北側にございます会社です。ここ明け墨市に本社があり、蔦凪衣文さんと魚戸ホタルさんはこちらに在籍しております。本校の卒業生も8名在籍していると聞いています。生徒諸君、スライドをご覧ください。準備が整いましたので、お二人より紹介をお願いいたします。
」
網干さんが橋渡しをした後、衣文と魚戸ホタルがマイクを手に取りました。スライドはトモチカさんが動かします。
(株)ホタルぽーたるの紹介で伝えることは主に4つでしたね。(第10話参照)
・上陸した魚戸ホタルたちを人間が支援、調査する目的で設立されたこと
・代表製品KibiTalkについて
・人間向けの製品・サービス
・本校の卒業生も在籍していること
/* ホタルと衣文が交互に話しますのでJSON型のような表現で会話で書きました。"\"が入ると次のスライドに移ります。 */
「
"ホタル":{
ほたー、まずは僕と衣文さんが在籍しているホタルぽーたるについて話します。ホタルぽーたるは2012年9月、魚戸ホタルが上陸して4か月後に魚戸ホタルと友好関係が続くことを願って設立されました。その後、2014年9月には初代KibiTalkが発売され、僕たちは人間と言葉でコミュニケーションを取れるようになりました。"\"僕たちが発する妖力への反応速度向上、歌唱機能、モバイル認証など様々なアップデートが行われ、できること増えた!!と感じてます。"\"スマートフォン、自動車、電気圧力鍋、人類が何十年も掛けて手にした便利さを僕たちも実感しているところです。ことばを読み取り、伝えることで繋がります。"\"僕は3年前に海の底からやってきまいした。海の底では地上の暮らしが噂になってて、地上から帰ってきた同胞の話を聞くと、居場所づくりが面白いと聞き、知りたくなりました。"\"便利さへの行き詰まり、格差の拡大、富の集中、ヒトの社会には様々な問題があります。僕たちがまどろみみっくと分類されていることはヒトでも動物でもない、生きても死んでもいない浮ついた存在だなぁと思います。そんな存在と友好関係を持ったからこそ出来ることをホタルぽーたるでは取り組んでいます。"\"またヒト向けに技術を転用した製品も作っており自然環境に影響が出なければOK、喜んでとしてます。衣文さん製品紹介お願いほた~
}、
"衣文":{
代わりました。ホタルぽーたるがリリースしていて私たちが使えるサービスと言いましたら代表的なものはWeb会議ツール「
}、
"ホタル":{
ほた、うおすたっくは僕たちまどろみみっくに特化した電子書籍サービスです。今年5月1日の上陸祭で発表され、翌週からサービスが始まりました。僕も開発に関わっています。1日1冊ごとに説話・民話の要約が紹介され、面白かった、お母さんから聞いた昔ばなしに似た話があったよと評判です。KibiTalkによる読み聞かせ機能もございます。"\"ただアクセス数が月2000程度と少なく、知名度が低いのが現状。そこで皆さんにも、特に図書館で新しい本を借りている人にも読んでほしいと思っています。夏休みの読書感想文に使ってもいいよ。"\"衣文さん、本校の在籍生もいることを紹介お願いほた~
}
"衣文":{
代わりました。ホタルぽーたるで活躍している方の中に本校の卒業生も8名在籍しています。真屋代高校で発表すると伝えたところ、大学で経営や生物学を学び、弊社で活かしたいと面接で話した方がいたと教えてもらいました。その方はチームのリーダー的存在になっています。私とは別チームの方ですが、6月に実際に話して本校で生物の面白さ、読書で世界が広がることを教えてくれた先生がいて、今の自分があるとおっしゃっていました。嬉しいですね。高卒の方の採用枠もございますが、私には説明する権限がございませんので、ホタルぽーたるが気になる方は問い合わせフォームよりご連絡をお願いします。それではホタルぽーたる紹介の紹介を終わります。
}
」
後編へ続きます。
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