第9話 スーパームーン通信
7月13日から14日にかけてスーパームーンが夜空に浮かぶ
ホタルたち 夜空の下で怪しい踊りをしてケタケタ笑う
スーパームーンとは月が1年で最大の大きさになることを意味します。
それでは本作の舞台 明け墨市ではどうでしょう?
なんと実際にスーパームーンが見えました。
今回のお話は魚戸ホタルたちの煌びやかなスーパームーンの物語
/* 作者の地域では雲隠れしていました。悔しいので書きます 。*/
衣文は魚戸ホタルに(株)ホタルぽーたるの西側徒歩10分にある公園に呼び出されていました。
21時に予定通り到着しました。既に33匹ほどのホタルさんが集まっています。
「まどおーむ」というプロジェクトで一緒に活動しているホタルさん
どこかなどこかな?あっ あそこに居ました!! 弓なりのヒレが特徴でしたね。仕事帰りでそのまま来たのかワイシャツのままです。
衣文たちが手を振って「ホタルさ~ん」と呼びかけると触腕を4本使って振り返してきました。
首に着けていたKibiTalkは外しています。公園のベンチの近くに鍵付きの大きな箱があるので、あそこに電子機器を入れているのでしょう。
一匹のホタルさんが近づいてきました。まいはさんが通訳します。
「
ほた~ ここはヒトが近づくところじゃないよ。まいはさんも居るってことはゲストで呼ばれてるのかな? 貝殻の護符を見せてほしいほた~
」
衣文はホタルさん(みか)に事前に渡されていた貝殻の護符を取り出しました。他のホタルさんも集まってきます。まいはさんが集まってきた声の一部を衣文に伝えます。
「
いい護符だね~ お仲間お仲間。もうすぐお祭りが始まるから座って待ってるといいほた~。他にヒトが来るなら教えてほしいな。
」
少なくとも知り合いは来ていなかったので次のようにまいはさんに伝えました。
「
「他のヒトが来るかはわかりません、お気遣いありがとうございます。」ってホタルさんたちに伝えてほしい。
」
どうやら伝えたようで「それなら安心」という感じで喜んでいました。
公園には魚戸ホタル33匹、衣文、まいは、トウリがいます。トモチカについては海に入って顔を出しています。
ホタルたちは月が1年で最も大きくなるスーパームーンの夜に輪になって踊ることでエネルギーを集め、海底と通信します。海洋生物由来のまどろみみっくはホタルたちが発したエネルギーを一部分けてもらえるので、トモチカは公園ではなく海に居ます。
持っていた電子機器は電源を切って鍵付きの箱に入れています。ホタルさんたちの通信妨害になるだけでなく、出していると踊りの熱量で破壊されます。
ん、どうしてさっき衣文はまいはさんと話してたの?KibiTalkを首に提げていない状態で。
それはまいはさんはテレパシーが使え、人間が頭痛を起こさないレベルに調整することができるためです。ホタルさんやトウリちゃん妖力を発散する傾向にあり調整が不得意です。まいはさんやトモチカさんは妖力を粘土のようにこねて形にすることができます。まいはさんはKibiTalkを使わなくてもいいのでは? 本鳥曰く「妖力調整に気を取られなくて済むからラク」だそうです。テレパシー能力は普段はノイズが混じるという理由で使っていません。
公園の時計が21時30分を指しています。「そろそろね」とテレパシーが聞こえ、衣文とトウリの体が緑の光に包まれました。何したの?と訝しむと
「
減光の術を掛けたの。これから始まるホタルさんの踊りを直視できるようになるわ。効果は3時間、といっても3時間も経たずに踊り終わるはずよ。目に焼き付けといて、なかなか見れるものじゃないから。
」
と返ってきました。まいはさんを通じトウリちゃんも
「
ホタルさんの踊り楽しみ~。あたしも混ざりたいけど別の種族が混ざるとうまくいかないって言われてるからなぁ~。連られて踊るならOKってことだからつたえもん、一緒に踊ろ踊ろ♪
」
と楽しみにしていることが分かりました。トウリちゃん口調のまいはさん、面白い(笑)。「うん、一緒に踊ろ♪」と返しました。
少し経ってホタルさんが踊り始めます。公園の四方に集まって青色にチカチカし始めました。後日聞いた話ですが、結界を作る踊りです。結界があることで公園の外のヒトから見えなくなり、入ろうとすると立ち眩みを起こします。公園の四方に貼り紙で「7月13日 魚戸ホタル貸し切り」と書いているので気づく人は気づきます。
/* 魚戸ホタルはホタルイカをベースにしているので発光します。 */
結界を貼り終わった後にS字になってうねるように踊ります。左右の触腕を上げ下げしながら笑って踊っています。楽しそう♬ 衣文とトウリちゃん、一緒に踊ってみると愉快な気分になり自然と笑みがこぼれました。連られてまいはさんも一緒に踊りました。
うねうね踊りが止まって30秒くらい経ってから公園内に離散し、それぞれ違う動きを始めました。
・ボディビルのように筋肉を膨張させて発光色で一層テカっています。
・流行りのアイドルの踊りを真似ています。触腕から光を発しています。推し色のサイリウムかな?
・フィギュアスケートのように回転しています。場面が変わるように発光色が移り変わります。音楽もあればもっとそれっぽい。
・橙緑青紫 不規則に光りながらロボットダンスをしています。
後日聞いた話ですが、それぞれ好きなものを触腕と光を使って表現しているそうです。
うちのホタルさん(みか)はどんな動きをしているでしょうか?
なんと両触腕を使って蝶ネクタイを描くように青色の光でKibiTalkの形を描いていました。仕事で開発しているのでそれが好きということなのでしょう、きっと。
それぞれ適当に踊った後にホタルさんが輪の形に集まりました。
何が起きるのかな?と衣文とトウリちゃんが思っていると、まいはさんが
「
さっき海底から合図が送られたわ。今からホタルさんたち海底と通信するのよ。あとベンチに座ったまま、近づいちゃダメ。消し炭になる。わたしでもひとたまりもない。減光の術が効いてるから視神経が焼けなくて済むけど、輪の中心にスーパームーンで増幅したホタルエネルギーが満ちて一気に海底へ放たれるわ。まあわたしたちにできるのは黙ってホタルさんたちの通信を妨害しないことね。
」
静かに「分かりました」と両者うなずきました。
ホタルさんが手を繋いで円を回りながら踊ります。少し雲に隠れていたスーパームーン くっきりと見えるようになりました。ホタルさんが回って回って回り続け、青にも緑にも光るカラフルサークルが出来ていきます。さながらキャンプファイヤーのようです。
「
ほったった ほったった ほーたほーたほったった
ほったった ほったった ほたたたたたたたたった ほったった(3回斉唱)
」
まいはさんが不思議な呪文を送ってきます。ホタルさんたち楽しく唱えている様子が見えてきます。衣文とトウリも初めは心の中で、唱えるうちにヤミツキになり実際に声を出して唱え始めました。
笑いつかれるくらい唱えて、ホタルさんたち70周くらいしたでしょうか。輪っかが見えないくらい煌々。するといきなり踊りが止まりました。そしてカラフルサークルから5・4・3・2・1・0 光のロケットが打ちあがりました。
「たまやー」打ち上げ花火でお約束の言葉を思わず言っちゃいました。ふふっと笑った後にまいはさん・トウリちゃんは打ちあがったロケットを見て手を合わせます。
「
流れ星にお願い事。わたしたちにはロケットに見えるけれど、ヒトには流れ星に見えるって去年までのスーパームーンが伝えているわ。わたしのお願いは「まどおーむの皆が健やかでありますように」 衣文さんはどうかしら?
」
まいはさんがそう伝えると衣文も手を合わせ「ホタルさん・まいはさん・トモチカさん・トウリちゃん、みんなの理解者になれますように」とお願いしました。七夕で短冊に書いた内容と同じです。
ホタルさんたち一斉に目をつぶり動かなくなりました。2分くらい経ってキーボードを打つようにピコピコ明滅を繰り返します。ロケットが打ちあがって20分くらいたち、1匹のホタルさんが起きて触腕を伸ばすと、他の個体も伸びあがりました。
ストレッチをしてから再び四方に集まって今度は緑色にチカチカし始めました。すると少し青みを含んでいた空が元に戻ります。結界が解かれたということでしょう。
ホタルさんたち、やりきったのか鍵付きの箱に預けていた電子機器を取った後に公園から出ました。公園の時計は0時10分を指していました。
この日はお疲れということで次の日、仕事終わりに電話でホタルさんに「海底にいる仲間とどんなこと話したんですか?」と聞いてみました。すると
「
同年代の友達、あとトルノスさんともお話したよ。元気そうで良かった。新しい仲間が増えたり色々あるけどこっちも元気してる、と言ったよ。衣文さん 初めてのスーパームーン通信はどうだったかな?
」
と質問で返してきたので面白かったという感想、疑問に思ったことを伝えました。
時には面白おかしい、ホタルさんの神秘にまた一つ触れることができました。
衣文は布団に入り、踊りの様子・テカテカの状態で送られてきたトモチカさんの写真を心に浮かべてケタケタ思い出し笑いをしましたとさ。
[あとがき]
前話で次はカフェでリハーサルの話と書きましたがスーパームーンを題材に話を書きたいと思ったので実際に書いてみました。
きっと魚戸ホタルたちスーパームーンで狂喜乱舞、酔っ払ってる様子を思い浮かべると話の流れがすっと決まりました。
今回の話は以上です。
読んでいただきありがとうございました。ほたー。
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