第3話 上陸した日が記念日

5月1日 魚戸ホタルが初めてこの町に上陸した日


4月初めの顔合わせから2週間 蔦凪衣文は魚戸ホタル上陸記念祭の準備に駆られていました。

上陸記念祭はの皆さんが上陸を祝して宴会を開き、ホタルたちが日ごろの感謝を伝えようと踊る日です。

明け墨市あけすみしという名称が出てきました。

端的に言えば まどろみみっく1年生の中心地です。

(株)ホタルぽーたるの本社も明け墨市の南側にございます。

北側が丘陵、南側が海岸になっており、温暖な気候です。

明け墨駅からすぐ北側には 明け墨城と城下に広がる明け墨公園がございます。

名産品は新鮮な魚介を使った練り製品と地酒であり、ここ5年では魚戸ホタルグッズも人気になっています。

まいはさん、トモチカさん、トウリさんは他の土地からホタルたちに呼び寄せられ明け墨市に来ていますが、グッズが製作され売れ行きは上々。

魚戸ホタルの仲間として受け入れられているようです。


宴会で用意された舞台には代表して50匹のホタルたちが上がり、会場を水色、群青色、ピンク色、黄緑色などヒレから様々な色を発しながら対バンします。

著名な作曲家がこの日のために曲を書きおろし、当日披露する演出もございます。

他のホタルたちも暗闇の中、ヒレを光らせて応援します。

ボルテージが上がると一斉に墨を吐き、光のメッセージを伝える演出が好評を博しています。


さて魚戸ホタル(みか)はライブの舞台には上がりません。

理由は(株)ホタルぽーたるに直接雇われているためです。

3年前の3月に上陸しました。

現在は新製品開発に関わっており、機能の実装テスト中です。

2年間の成長が評価されて役員に希望を1つだけ伝える機会があり、「広報を増やしてほしい。自分たちの文化をもっと伝えたい。」と提案したところ通りました。


(株)ホタルぽーたるではKibiTalkきびとーくの機能向上および新製品のために協力者を必要としています。

情報公開すると席の奪い合いが予想されるため、KibiTalkを受け取るときに収集した個体ごとのデータを見て1年以内に上陸した個体から5匹ほどに推薦状を出し、直接願望を聞いて、2匹を新しく雇い入れるようにしています。

占いが得意な魚戸ホタルもおり、全長・ヒレの大きさ・発光色・誕生日から占い、5匹を選びます。

雇われなかった残り3匹も複数の仕事を紹介され、選ばないことも可能です。

明け墨市、または周辺の町であれば魚戸ホタルを雇い入れる企業もございますが、同種が運営している企業に落ち着くことが多いです。


ヒトではない変な存在ですが、受け入れられた理由は上陸する個体は選抜されており、ヒトとは一線を置いて自らの価値観をSNSやブログで公表しているためです。

最近は多様性(ダイバーシティ)が話の遡上に上がる時代、自分たちの活動に悪さを及ぼさないならこういう独立独歩の存在もまあいっかと思われています。

10年前に上陸した当時の話は記念日の話を書いた後で書きます。


5月1日当日、魚戸ホタル(みか)はライブ会場から5km離れた市民ホールでKibiTalkアップデート情報を発表する予定です。

衣文とはしばらく別行動になりますが週に3度、1時間ほど時間を空けて会っており、まいはたちが同席することもあります。

衣文は4月に顔合わせする前から5月1日の上陸記念祭のために別行動をとることはわかっており、当日の発表、地元の人々の声、ライブの盛況から広報記事を作る予定です。

もちろん衣文以外にも広報職はおり、地元・ネット上のキュレーションサイトを含む複数の視点から上陸記念祭についての話が並び立ちます。

衣文は自分を頼りにしているホタルさんは上陸3年目であることに注目し、明け墨市をどう見ているかに絞ろうと決めました。


さてどんなアップデート情報が出るでしょうか?

そして上陸記念祭のライブはどのような盛況ぶりでしょうか?

次の話で伝えられたらと思います。




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