第2話 握手しましょう

魚戸ホタルたちはほっとした。

僕たちを見る目線から、立ち方、歩き方から自分事として捉えていこうという意思が感じ取れ 少なくとも敵 ではないと思いました。

蔦凪衣文(つたないふみ) はホタルたちが自分に注目しているのを確認してから続けてひとこと

 拍手ありがとうございます。

 居ていいんだ、って思うと胸がほっとしました。

 提案ですが、皆さんのことをよく知るために、これからホタルさん、まいはさん、トモチカさん、トウリさんと呼んでもよろしいでしょうか?

それぞれの目を見てホタルたちに提案を投げました。

聞いてホタルさん、ヒレを揺らし、ヒレについた光の玉を光らせ始めました。

続いてまいはさん・トモチカさん・トウリさんの体がぴくぴくして、首に装着した機械が光り始めました。

おそらく人間にはわからない波長でおしゃべりしているのでしょう。

ぴくぴくが収まった後、ホタルさんが手を挙げました。

それから首元にある栗色の機械に妖力を通し、音を出し始めました。

 はじめまして 魚戸ホタルです。

 ぼくたちこそ 緊張の糸が ほぐれました。

 これから 忘れられない付き合いになると ヨカンしています。

 提案は もちろんOKです。ありがと~。

途切れ途切れ ゆっくり話しました。

時折触腕をぶらぶらさせるジェスチャーを入れながら。

続けて

 衣文さん 友達になってほしい。

 ぼくたちはもっと 街の人々に 自分たちの営みを 知ってほしいと思っています。

 ホタルぽーたるの役員に 広報を増やしてほしいと 提案しました。

 ほくたちでも発信活動はできますが どうしてもヒトの目線になりきれないところがあります。

 助けてもらえると ありがたい。

 友好のしるしに握手しませんか。

衣文は腕を少し持ち上げる仕草をしてから一旦落ち付かせて返事

 友達、なんて素敵な響き。

 ホタルさんたちはホタルさんたちのままでいいです。

 もっと知りたい、応援してくださっている方々には私から伝えます。

 大船に乗ったつもりで どん と任せてください。

 握手、私もしたいです。しましょう。


ホタルさん、まいはさん、トモチカさん、トウリさんの順で握手しました。

体温は人間より冷たいですが、目線から温かみを感じ、ほっこりしました。

ホタルさんはふくらはぎのようにぷにぷにした柔らかさを感じました。握手した後に触手を新体操のリボンのように伸ばしアピールしていました。

慣れているんですかね。

まいはさんは手の先端が鉤爪になっているため指をひっかける感じで触りました。

"これからもよろしくお願いします。"と深々とお辞儀。こちらもお辞儀。羽は触っていませんがいつか。

トモチカさんは液状の体のため、手が内部に入りました。表情が変わらず、他の方よりはまだ距離があるなあ。

トウリさんはタヌキ型ということで獣毛がふわふわしていました。配信業をしたいということで毛がピカピカになるように手入れしてしました。

性格もハキハキして、距離が近く感じました。

本日は顔合わせ その後自己紹介を行いました。

互いの好物を聞きあって、食べ比べ😋。

そんなこんなで本日は2時間で解散。

自己紹介は個別回の最初に掘り下げよう、と考えています。


衣文は予習としてこの町に暮らすホタルたち「まどろみみっく」を映した動画を見ていました。

先入観を持たないように あえてどの「まどろみみっく」とも話していません。

耳学問で知ったことの一つに野生の彼らは相手が強い敵対心を持っていれば煙幕のように姿を隠し最初からその場にいなかったかのように見せます。

姿を隠す前に体をピクピクさせるという特徴があります。

逆に友好的な感情を見せると手ぶりでジェスチャーします。

彼らとて人間社会が常に味方というわけではないということを肌で感じ取っているのでしょう。味方に引き入れようする性質を持っています。

きっとジャスチャーから放つ緊張を和らげるフェロモンの効果もあるでしょう(効果には個人差があります)。


実際 初めて地上に現れてから2年、街のとある議員が次のようなネガティブな発言をしました。

 今、街中に魚戸ホタルなどという新種の生物が徐々に増えています。

 彼らは地上の、人間の社会を覚えようとしており、知的な生命体です。

 もし力をつけて好条件を引き出そうと闘いを仕掛けてきたらどうしますか。

 言葉が通じているかもわからない ヘンな生き物に私たちと同じ位置に立ってほしくありません。

 野生に帰す活動を始めたいがどうでしょうか皆様。賛同する方は拍手を!

議員の発言を拍手で受け入れる聴衆が多かったと記録に残っています。

その頃(株)ホタルぽーたるではホタルたち、そして協力した合成音声会社とともに居場所づくりのために妖力を合成音声に変換する装置の開発が進んでいました。

地上に現れた当初よりホタルたちの希望で提案され、1年で開発にこぎつけました。

ホタルたちが呼び寄せたトリ型の「まどろみみっく」"まいは"は 妖力の扱いに長けており、開発のペースが進みました。

開発から2年、結実として合成音声変換ガジェット「KibiTalk」誕生。

現在ホタルたちが首に着けているのがそのガジェットです。

ホタルたちが海から上がってきたときに着けることが推奨されているので個体数把握にもなります。

1万匹以上確認されていますが、もちろん着けていない個体もおり、人目のつかないところに電波を貼りインターネットの海を泳いでいるとか。


次回以降は魚戸ホタルの個別話を数話書きます。

魚戸ホタルは正確には種族名であり複数匹存在していると書いていますが、この魚戸ホタル(みか)は結局何者なのか。

どうしてまどろみみっくのリーダー的存在なのか。

どうして(株)ホタルぽーたるの役員と話ができるのか。

そういった話がボートのように浮かぶといいなと思います。

ありがとうございました。


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