まどろみみっく1年生
ふぶきづき
第1話 まどΩ(まどおーむ)
「
ほた~~~~~
」
頭から生えた2本の触腕を伸ばしてリラックス。
隣の席から
「
ホタルさん、ずいぶん伸びていますね~。
よっぽど新しい広報に期待しているんでしょうね。
」
と高くなだらかに通る声でつつかれる。
緑青色の羽が生え、落ち着いた雰囲気を醸し出しており、仲間です。
さらに向かい側の席から
「
ホタルさん、私たちに初めて会うと聞きます。
一目見るや不気味に思って目をそらしたり逃げるかもしれませんよ。
」
とひんやり、少し疑りを含む声で撫でられる。
胡粉色の透き通った体に橙色の目を覗かせており、仲間です。
続いて斜め前の席から
「
そんな心配しなくてもいいっしょ。
どんな人でもいいとこ見つけて好きになればいいし。
早く会いたーーーい。
」
と快活な、なんでも突破しそうな声で掴まれる。
腕と足があかね色の毛むくじゃら、まあるい尻尾を生やして、頭に葉っぱが乗っかっており、仲間です。
163cm、栗色に大きく目立つヒレ、ヒレについた10個の光の玉、上半身6本・下半身4本つまり合計10本の腕、浮遊移動、首に装着した栗色の機械
腕を伸ばしてリラックスしているのは 魚戸ホタル。
魚戸ホタル自体は種族名でヒトの学名「ホモ・サピエンス」のようなもの。
仲間内からは「みか」と呼ばれています。
個体名より種族名の方が通りがよく、他に同種がいなければ魚戸ホタルでも問題ないことになっています。
将来の目標は同士たちで落ち合う集落づくり。
好きな食べ物は水まんじゅう。
水のような潤いに甘みがあり、初めて海底から種族のリーダーが陸にあがった際に女子供から「食べてみて、おいしいから」と勧められ食べてみると、なんと口にあったことでしょう。
その出来事以来、種族間で共通の好物になっており、ヒトとの共通認識になっています。
魚戸ホタルと同席している仲間の名前は次の箇条書きの通りです。
・隣の席に座っているのは"まいは"さん
・向かい側の席に座っているのは"トモチカ"さん
・斜め前の席に座っているのは"トウリ"さん
似た志を持った仲間です。
苗字は今のところ特に決めていませんが、想っているうちに丁度いい名前が浮かんでくるでしょう、魚戸ホタルのように。
さて魚戸ホタルたちはどこにいるでしょう。
海の中?森の中?火の中?気になるあの子の頭の中?
もしかしたら あなたの近くに潜んでいるのかもしれません。
噂話をしているとドアを3回ノックする音がしました。
「
魚戸ホタルさん、まいはさん、トモチカさん、トウリさん、お待たせしました。
入ってもよろしいでしょうか?
」
ホタルは待ち焦がれていた感情が高まり、栗色の機械に妖力で信号を送り、いつもより爆音で歓迎を伝えました。
「
入っていいよ♪。ぼくたちこそあなたを待っていました。
」
ドアが開かれ、中に入り魚戸ホタルたちと目を合わせました。
ヒトとは違う何者でもない生き物、しかし無限の可能性を秘めていると広報職を紹介してくれた先輩から聞いていました。
私は環境を変えたかった。なので応募しました。
よくわからない、数が少ない生物を世に知らしめるという特殊な業務ということもあり競争率は低かったです。
実際目を合わせてみると、キャラクターグッズやイベント張り紙のイラストとは違う、輝きをはなつ生物が期待のまなざしで私を見つめていました。
魚戸ホタルたちから見て真正面、真ん中に立ち、ふぅ~と深呼吸してからひと言
「
はじめまして、蔦凪衣文(つたないふみ)と申します。
これから広報職として魚戸ホタルさんたちの魅力を広めたいと思います。
友達からはつたえもんと呼ばれています。
宜しくお願いします。
」
聞いたホタルたち、それぞれ違う形の腕で、けれでも確かな音で拍手しました。
会えてよかった、と私は思いました。
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