チューリップと元ヤン風 🦀

上月くるを

チューリップと元ヤン風 🦀




 おだやかに晴れた仲春ちゅうしゅんの昼さがり。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ⚽🍓🥦🥎🧬🌸🍀🌱🏀

 元ヤンキーのシニア風が相変わらずの気まぐれ風をぴゅーっと吹かせて来ました。


 垣根の外にきれいに咲いていた7本のチューリップは、いっせいにふるえました。

 赤、白、黄色、紫、桃色、ツートンカラー……それぞれ異なる色合いのお花たち。


 仔スズメどもは脅かし飽きたし、小学校に慣れた1年坊主はまだ帰って来ないし、退屈でやりきれん……どおれ、ひとつ弱っちいチューリップでもからかってやるか。


 そんなつもりでメチャクチャに吹き荒れたので、首の長いチューリップはたまったものではありません。花が折れないよう、みんなけんめいに茎を踏ん張っています。



 ――こんな目にあわされても笑っていやがる。🪲

   まったくもって、おめでたいやつらだな。🕷️


 

 風は横1列に並んだチューリップのなかで、ひときわ背の高い桃色に言いました。

 あまりがんばって笑っていられると、なんだかムシャクシャしてならないのです。



 ――お気にさわったら、ごめんなさいまし。🥕

   でも、これがわたしたちの役目なので。☘️



 桃色チューリップがしずかに答えると、となりの黄色が代わりに気色ばみました。

 そのとなりの赤や白、紫、ツートンカラーの花たちだって、だまってはいません。



 ――教養のある風さんは当然ご存知と思いますけれど。🍃

   細見綾子さんという俳人が詠んだ俳句のことです。📝



 縦横無尽に吹き荒れて動植物を怖がらせることだけに熱心で、あいにく文芸に関心をもって来なかった(笑)元ヤン風は、俳句など、ほとんど知らなかったのですが、



 ――ああ、カナとかケリとか、うぜってえやつだろう。🤪

   この全能のオレさまが知らねえわけがねえだろう。👿



 わざとそんな言い方をしてごまかそうとしたことがチューリップたちには分かってしまったのですが、めんどうなので(笑)、そのことには触れないことにしました。



 ――チューリップ 喜びだけを 持つてゐる 綾子 🌷

   あたしたちといえばこの一句に尽きるわよね~。🖌️



 そう言って7本がいっせいにうなずいたので、元ヤン風も一応は知っているフリをしておいてから、プライドを傷つけられた仕返しにさらに憎まれ口をたたきました。



 ――ははあん、だからいつも笑ってるってえわけか。😚

   へん、忠犬ハチ公もびっくりの忠義ものだわな。🐕



 すると、7本のなかでも一番こぶりで、ふだんはいたっておとなしい性質たちの白い子が鈴のように澄んだ声を放ったので、ほかの花たちも口をそろえて応援しました。



 ――わたしたちは、子どもたちの画用紙に笑顔を咲かせたいだけなんです。🎨

   そうよそうよ、顔から口がはみ出ている楽しい絵を見たいだけなのよ。👏



 それを聞いた元ヤン風は、自分のなかにふしぎな風が生まれたことを知りました。

 いい歳をしてロクでもないイチャモンをつけた自分が急に恥ずかしくなりました。



 

      ****




 元ヤン風との押し問答から数日後、桃色の花のがくが1枚、ぱらりと剥がれました。

 それを合図に、赤、白、紫、黄色、ツートンカラーの花の孚も、つぎつぎに……。


 それでも7本のチューリップたちは、満面の笑みをさいごまで崩しませんでした。

 そして、来年も笑顔の花を咲かせられるように、土の布団で眠りについたのです。



      *



 ゆっくりおやすみなさいね。🌙

 やさしいチューリップたち。🌌



      *

 

 

 画用紙いっぱいにチューリップを描いた子どもたちはなにがあってもポジティブに生きていかれるでしょうし、笑顔は、さらなる笑顔を増やす力をもっています。🍀


 ただ一度きりの人生、たったひとつの命ですもの、せっかくならカニさんのように(知らないですけど、たぶん(笑))ほがらカニ、生きてゆきましょうよ、ね。🦀

 

 

 

   











 


 



 


 


 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

チューリップと元ヤン風 🦀 上月くるを @kurutan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ