猫と暮らす


 僕の家は猫を飼っている。

 その猫はとてもかわいくて、賢くて、人懐っこい猫だった。真っ白な猫で、いつも毛並みは艶やか。目は凛々しく、いつもどこか遠くを見ているようで、口元は小さく、愛らしい。近所でもちょっとした有名人ならぬ有名猫で、色んな人に好かれていた。

 僕は縁側に腰かけて、その猫を膝に乗せ、お喋りをするのが好きだった。

「ねえ、僕は君のおかげで毎日がとても楽しいんだ。君を見ていると、素敵な気持ちになれる。明日も頑張ろうと思える。どうしてだろう。君は人を元気にする、特別な才能があるのかもしれない」

 もちろん彼女は答えない。眠たそうに外の世界を見ている。

「いつか」

 僕は猫に言う。

「いつか、僕ら離れ離れになってしまっても、僕は君のことを忘れないよ。毎朝、君のことを思って起きる。毎晩、君を頭に浮かべて眠る。約束だよ、どこへ行っても君は僕を忘れないでね」

 やはり彼女は答えない。気だるげな眼を僕に向けるだけだ。

 彼女は僕の膝から飛び降りて、塀に登った。

 僕の方を少し振り向いて、どこかへ行ってしまった。


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世界 春雷 @syunrai3333

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