2013.4.11

2013.4.11 - 入学式①

 プルルプルルッ! ……第一声はあまりにも騒がしかった。続いて、母親の「いい加減にしなさい!」という声で飛び起きる。今思えば、小学校の時もこうだったよな。顔を洗い、歯を磨き、転校後に慌ててかき集めた制服に着替えた。この時の慌てっぷりは母に「明日夢、ボタンずれてるよ。しっかりしなさい」と指摘されるまでミスに気付かないほどだった。

 「じゃあ、行こうか」

 スーツ姿の父がドアを開けた。僕は母に促され、いつもの後部座席に座った。寝癖は少し残っているが、このくらいは許容範囲だろう。車窓から見える星海町は、この町に来た時よりも鮮明だった。郊外型のショッピングセンターに、どこにでもあるようなチェーン店に、公園に、ちょっとした雑貨屋に、ランドマークとしてそびえ立つ星海山の天体観測所。徒歩か自転車で行ける距離にすべてが揃っている。変わったものが欲しければ神戸へ行けばいいし、ちょっと足を伸ばせば史跡もある。この数日で色々と巡ったので全く知らなかったわけではないが、素直に「悪くない町だな」と感じた。

 両親も引越し当日よりは悪態をつかなかった。仕事や足を伸ばさないと行けない専門店の愚痴は吐くものの、絶望感はない。あの嫌味な上司を除けばご近所さんも良い人ばかりだったのが気に入ったのだろうか。しかし、渋滞にぶつかると機嫌が悪くなるのは相変わらずだ。

 「危なっ」

 「あのクラウン、どんな運転してるのよ……」

 「新入生全員クルマで来てるのかってぐらい混んでるな」

 僕はその姿を見ながら、ただ外を見つめていた。普段ならクルマでの移動は苦痛そのものだが、新しい景色がその苦痛を和らげてくれる。

 そのうち、渋滞はなくなった。どうやら自然渋滞だったらしい。新しいアスファルトが敷かれているから、きっと新しい道に戸惑ったドライバーでもいたのだろう。渋滞がなくなると、クルマたちはガソリンの大食いを始める。僕たちもナビゲーションに従い、学校へ急いだ。元々遅刻寸前だったが、もはや完全に遅刻だ。

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