第9話殺意の実験
「六代目、黒井川警部がおみえになってまます」
「通して」
「中村さん、今回の事件の謎が解けたのでお伝えに」
「だんだん、黒井川さんと話しているのが楽しみでね。今日は大勢でどうかされましたか?」
「単刀直入に言いますと、弟の秀樹さんを事故に見せかけて殺害したのは六代目・中村さんあなたです」
「何だと思えば、面白いじゃないか」
「土曜日の夜から秀樹さんとシュノーケリングに行きましたね」
「私は行ってない。アリバイがある」
「従業員は皆さん、あなたを慕っています。みんなで口裏を合わせたんです」
黒井川はテーブルの上に酒を置いた。
青島ビールの小瓶、スミノフアイス、ジーマ、缶チューハイ、烏龍茶、ミネラルウォーター。
「中村さん、これは全部海岸に残っていたお酒です」
「これがどうした。若いヤツらが飲む酒だ。弟は若いヤツラとつるんでいたからな」
「亡くなった秀樹さん、最後に飲んだモノはどれだか分かります」
「もちろん、知っている。青島ビールだ!彼は甘い酒が好かん。これで、睡眠薬を飲んだに違いない」
「川崎警部補、今の言葉録音した?」
「はい」
「堀君、今の話し聴いた?」
「はい、聴きました」
「黒井川さん、一体何を聴いたんだ?」
「あなた、自分が殺したと証言したんだよ」
「何だと?」
「昨日、聴いて解ったんですが、何故、弟さんのビールに睡眠薬が入ってることご存じなんですか?」
「それは、黒井川さんが言ったじゃないですか!」
「私は睡眠薬を飲んだ事までしたか話していません。今の実験では躊躇なく瓶ビールを掴みましたね。普通、クスリ飲むのはミネラルウォーターでしょ?」
「……」
「あなたが、秀樹さんを殺害したんです」
六代目は、
「認めましょう。この酒蔵は私の命より大事なんだ」
「堀君、川崎君もいいよ!パトカーだけ一台待機させておいて」
「はいっ!」
「六代目、【星の雫】を持参しました。先ず一杯」
「黒井川さんも、一杯」
2人は並んで酒を飲んだ。
「黒井川さん、この酒は別れにふさわしい酒だ。良く勉強されましたな」
「六代目、最高のお誉めのお言葉です」
「さっ、黒井川さん行こう」
「はい、あちらへ」
了
六代目の犯罪 羽弦トリス @September-0919
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