とーとーバージョン6(おやつ編1)

進藤 進

進少年のウチは、何と・・・・!

以前にエッセイで書きましたが。

うちの母ちゃんが作るおやつは、ちょっと、特殊です。


美味しいには、美味しいのですが。

ちょっと、違うのです。


プリンはドカベン(バカでかいブリキ製)弁当箱に。

ホットケーキはフライパンいっぱいのお好み焼きサイズ。


幼心に「母ちゃん、これ、ちょっと、違う」と思っているのですが。

アニキ達2人が気にせず、ガツガツ食うので。


特にそのままでスクスク育った進少年でしたが。

小学校五年生頃から。


やっぱり、ちょっと、違うんじゃね?

と、思うようになりました。


プリンなんか、テレビのコマーシャルでは。

綺麗なクリスタルの容器に「プリンッ」と滑るように盛り付けられて。


可愛い男の子が、美味しそうにスプーンですくって食べてます。

決して、弁当箱ではありません。


進少年は考えました。

昼下がりの厨房で。


言い忘れましたが。

私の実家は飲食店を営んでおりました。


田舎の町の片隅で。

つましいものでしたが。


なので。

普通のご家庭の台所よりは、さすがに広い。


ガス台は3台。

冷蔵庫も大きめなのが2台。


食器も売るほどありました。

どんぶりや皿でオシャレなものではありませんが。


話を戻して。

厨房です。


食器が並べてある棚を進少年は眺めながら。

ハタと、手をたたきました。


かき氷の皿というか、器(一応、ガラス製)。

何か、良いんじゃね?


テレビのプリンの皿に似てなくもない。


というか。

弁当箱よりは、はるかにマシです。


次は型取りです。

プリンのパッケージにある円スイ形。


これが、重要。

プリンと震えるシルエット。


弁当箱でなくても。

カップからほじくるのは。


テレビとチョット違う。

進少年には、こだわりがあったのです。


ようやく、本題です。(やはり長い)

しかも、前半。


進少年は一つの解決策を見つけました。


それは。

(ためます)


そ、それは~。

(更にためます)


そ、そ、それは~。

(もう、ええっちゅうの)


アイスクリームのカップゥー・・・。(≧▽≦)


ダイソー等、100円ショップも無い時代。

オシャレな食器等、田舎で持ってるのはお金持ちの家くらい。


普通の家はうちの母ちゃんと、それほどは変わりません。

プリンの型等、どこにも売ってなく。


まして、小学生が手に入るものではありません。


そこで、アイスクリームのカップ。

円すい形まではいかないけど、円筒形にはなります。


まずは食べて空にしようと。

スプーンを突き刺そうとして。


ハタと、手を打ちました。

(何回目や?)


いずれプリンを型から抜く時。

カップからうまく外せるのか?


進少年は少年ながら、予想したのです。

テレビみたいに簡単に外せる筈がないと。


きっと、くっついて。

グズグズになるに違い無い。


そこで、予行演習として。

アイスクリームをくり抜こうと思ったのです。


どうやって?

スプーンやナイフだと削りすぎてしまう。


何か、ないか?

円筒の形をくずさず、削りすぎないもの。


ハタと、手を打ちました。

(3回目です)


「つまようじ」が良いんじゃね?

それなら、綺麗にくりぬけるでしょう。


ウチのつまようじは、少し太くて。

ちょっと、普通のとは違いました。


早速、アイスクリームをくりぬいてみると。

なんと、みごとに。


円筒形にくり抜けたのです。

ドンドン、パフパフ~!


かき氷の皿に置いてみると。


「オオッ・・・。」

進、感激~!


まるで、レストラン(デパート屋上しか知りません)のよう。

少なくとも、弁当箱よりは遥かにオシャレ。


ウキウキして。

さあ、食おうと・・・。


ハタと、手を打ちました。

(4回目です)


フルーツ蜜豆の缶詰!

買い置きに確か、あったような・・・。


ありました~!(^◇^)


アイスクリームが溶けないうちに。

半分ほど盛り付け、大好きなトロリとしたお汁をかけて。


遂に、完成!

フルーツ・クリーム・ポンチ~!(^o^)


味も、見た目も最高!

とーとーバージョン(この頃は概念ないけど)新メニュー。


これが、前半。

さて、後半は。


定番になった進少年のおやつは。

とても充実したものになりました。


たまに、お小遣いをはたいて。

アイスとフルーツ蜜豆を買って。


一人、悦に入って食べてました。


ある日、食べようとスプーンまで用意したところで。

母ちゃんが、僕に言いました。


「悪いけど、兄ちゃんの友達がきてるので、それ、もらえない?」

母なりに見ていて、結構イケてると思ったみたいでした。


食べる楽しみよりも、自分の作品がうけて嬉しいみたいな。

僕は素直に母に渡し、急いで2個目も作ったのでした。


詳しくは覚えていませんが、アニキも友達も喜んでいたみたいです。


それからは。

厨房でゴソゴソしてる進少年のオヤツは、色々バリエーションを増やしていったのでした。


めでたし、めでたし。


・・・・えっ?


プリンはどうしたのって・・・?


しょ、しょれはぁ・・・。


グチャグチャでした~!(^o^)


キレイにカップから取り出せず。

これなら、弁当箱よりひどい。


進少年の夢のプリンは・・・。


「プッチンプリン」の出現まで封印されたのでした。


チャンチャン・・・。(^o^)

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