恋は輪廻を越えて(仮題名)
@mirin712
第1話 目を逸らしたくなる再会
オンラインゲーム 《GROW DEAR》通称 ロウディア
5年前突如現れたアニメ絵のようなキャラクリエイトができる当時の時点でのPCゲームでは最高のグラフィックやプレイヤークリエイトシステムが実装され、オリジナルの武器や防具などを作れる最大サーバー数の自由型MMORPG
このオンラインゲームにはもう一つ特徴的な要素があった。
それはイベントの幻級レア報酬にONPC(オリジナルノンプレイアブルキャラクター)作成チケット
その名の通りNPCを一アカウント一体作成できるチケットがイベントのガチャから極低確率で排出される。
その確率の低さでもプレイヤーが度々狙う要因が高性能AI搭載型NPCを作成できるという所だ。
自分の思い描くキャラ設定を覚えさせたり、会話も可能機能やオート戦闘機能などが特徴的な機能。
これだけの機能付きAIとは、サーバーの負担がデカいため、イベント毎に1から多い時は最大で10枚先着順でイベントガチャから排出される。
もちろん自身で作成し、詳細まで設定しなければならないためたまにゲーム内オークションに出はするが、額もそれなりにして課金通過のみの出品となる。
それが今僕の前に……ある!
〈カイア〉 「な、なんてお宝を……!ありがたやありがたや」
〈クレイン〉 「おう!喜んでもらえてよかった!」
僕にこのONPC作成チケットを渡して来たのはクレイン
ガチ勢の多いサーバーで僕の唯一のフレンド、ゲーム内だけど親友的な人だ。
パーティを組んで2年と少し、同じ学生みたくログイン時間も合わせやすいからソロイベント以外は共にプレイしている。
〈カイア〉 「にしても、どうしたんだ?これ……確かに冬休みだろうが、そんな簡単に当たるものじゃないだろ?」
〈クレイン〉「いや、そのまさかだ、ちょうど俺がお前の誕生日プレゼント何にしようかと思って悩んでたら、今回のイベントガチャでまさかの一発大当たりでな!」
〈カイア〉 「ほうほう、それからチャットの合間にモーションってクレインはやはり器用だな!」
〈クレイン〉 「そ、そうか〜(照)まっ、話し続けるけど、前に街でONPCを連れた人に会っただろ?その時がすっごく羨ましそうに見てたからコレをプレゼントにしてみたんだけど……喜んでもらえてよかった」
ホッとするクレイン
〈カイア〉 「あ、貰ったのはいいけど、1アカウント1キャラだろ?そんな貴重なものを受け取っていいのか?」
〈クレイン〉 「いいんだって!コレで前俺に相談してた好きな子でも似せて作っちゃうか〜?」
〈カイア〉 「え、あ、えぇ……確かにそれもいいなと思ったけど、本当にいいのかな?」
〈クレイン〉 「いいんじゃないか?その子がこのゲームしてるとは限らないし、リアル寄りのMMORPGじゃないんだし大丈夫だ!大丈夫!」
(確かに、そうなんだよなぁ……言われたとおり彼女がやるゲームとは思えないし……)
〈カイア〉 「考えてみるよー」
〈クレイン〉 「よしっ!コレでカイアの好きな子の顔が拝めるぞ〜(笑)」
〈カイア〉 「まだ作るって決めたわけじゃないからな!」
〈クレイン〉 「わかってるって〜」
こんな何気ない会話も学校に馴染めなかった俺には嬉しすぎる!
〈カイア〉 「それじゃ!明日も学校あるから寝るよ」
〈クレイン〉 「俺もちょうど、良いタイミングだから寝ようかね」
〈カイア〉 「それじゃまた、プレゼントありがたく頂戴致す!」
〈クレイン〉 「なにそれ(笑)それじゃまた明日!」
「って言ってもなぁ」
CNPC作成チケットを貰ってからどう作ろうかとどうしても悩んでしまう。
「ほんとに雛鶴さんを作っちゃおうかなぁ」
雛鶴 夢衣花(ひなつる ゆいか)無表情で前髪で目が隠れてるけど、俺が思うには学内一美少女だ
周りからは根暗地味っ子なんて言うけど、俺はそうは思わない。
そもそも集中して何かを書く時に髪を耳にかける瞬間に見えるその顔がとても整っているし。
「可愛い……」
じっと見てしまっていたのか、雛鶴もこちらを振り向いた。
唐突に気まずくなって目を逸らしてしまった。
(やっぱり雛鶴さんを作ろうかな……)
一度ちゃんと雛鶴さんの顔を見た事があると言えば、雛鶴さんが不良に絡まれているのを助けて入院し退院までお見舞いには来てくれた時に顔はしっかりと見た事あるけど、雛鶴さんとはほとんど話せずに退院してそれ以降進展なく、今に至るんだよなぁ……
色々と悩んでいるうちにいつものようにクレインと遊びながら時はすぎた。
二ヶ月後高校の卒業間近、雛鶴 夢衣花は死んだ……
轢き逃げ事故だった。警察は計画的犯行として見られ、目撃者や監視カメラの映像などで犯人を捕まえた。
轢き逃げ事故を起こした犯人は雛鶴に絡できた不良生徒だった……
とても悔しく、そしてとても今まで感じたことのないような怒りを覚えた。
雛鶴さんが亡くなって以来、ゲームにもログインしていない。そして、雛鶴さんの居ない高校の卒業式を迎えてしまった。
卒業後大学に進学するまでには期間がある為、少し長い春休み期間に入った。
特にやる事もなく、やりたい事もない。
最近は引きこもってばかりでろくに食事も取れない。多分両親は僕の心情を理解しているのかもしれない。
そこは親に感謝をしているし、雛鶴さんは僕が入院している時に両親にも会っているから、そこでわかっていたのかもしれない。
「これが……ロスト症候群って言うのか」
(一ヶ月以上ログインもしてなかったし……クレイン怒ってるかな。ゲームを離れる前に一言入れておいたけど)
不意に気になってゲームを開く、いつもは開くだけで現実逃避をしているのではないかと思ってしまって、ログインもせずに閉じてしまう。
謎の罪悪感、ふと思い出してしまうクレインの言葉、もう決心はついた。忘れない為にやらないままただ一分一秒悩んで無駄にするより、やって後悔した方がそれが自分のためになると思ったからだ。
ログインしてからの行動は早かった。
まずクレインのログイン状況を確認した。まだログインしていないようだ。
次にアイテムからONPC作成チケットを選択作成を開始した。
とにかく雛鶴さんに似せたくて卒業アルバムをみて作ってみた。種族は天使と人間のハーフという、ハーフエンジェルを選んだ。
とにかく雛鶴さんの個人的なイメージに似合っているからという理由からだ。目には特徴的な左目の下にある泣きぼくろと、左目に二つ並んでいるホクロを付けた。自分の記憶とアルバムをみながら日をかけて完璧に作り上げた。
(似ている……それもそうか、似せたくて何日もかけたんだから、流石に現実と見比べて顔の形とかはアニメ寄りにはなるけれど、それでもよく作れたと思う)
ただ罪悪感はやはりある。もちろん、亡き片想いの相手をそのままゲームで再現し、自分の思うようになんてやはり抵抗はあった。
万が一の可能性として、同じ学校の人がこのゲームに居たとして、もう会うこともないが雛鶴さんを意識して作ったなんてバレてしまう事もないように、髪型はメカクレ+ロングヘアから、ハーフアップにして前髪は目が見えるように、前髪の位置や分け目などを調節し、髪色を白髪にしてみた。
(雛鶴さんこんな髪型も髪の色も似合ってたんだろうな……)
なんとなく、完成した雛鶴(仮)を動かしてみる。
身体までしっかり見比べて作ってしまった。
「……雛鶴さん。ごめんなさい」
次に性格を指定した。
高性能AIが性格を判断し、それに沿った行動受け答えなどをしてくれる。
性格欄には クール
[備考 無表情 時々優しく笑う 寂しがり]
自分が感じた雛鶴さんを備考欄に書いた。
寂しがりと書いたのも、雛鶴さんは学校で1人でいた、けれど1人で居たかった訳ではないと思ったからだ。仲の良い子達を羨ましそうな顔で見ていたのも知っている。
僕は中央の席だったけど、雛鶴さんの事は机に突っ伏しながら見てた。
時々悲しそうな寂しそうな顔をして窓の外を眺めているのが見えていたからだ。
何を見ていたかは分からないけれど、雛鶴さんの横顔も風になびく長い黒髪もとても綺麗だった。
「なんで、話しかけなかったんだろ。なんで何もしてあげられなかったんだろう……雛鶴さんごめん」
キャラ作成をするたびに自分の事が嫌いになって来そうだった。ただ作り終えれば後戻りできない、後悔は残るが作らなかった後悔は残らないと信じ、最後の項目の属性やスキルを選択し、離れてほしくないけれど、一定の距離で接したいと思い。メイドという設定をつけたして作成終了した。ただやっぱり名前は決められなかった。ONPC1と名前は初期ネームのままに、名前は後一度のみ変更可能と書かれていた為思いついたら変更しようと考えた。
アレから、クレインのログインは無い、メッセージの返信も一ヶ月の時間は長すぎたと反省してる。
もしかしたら腹を立ててゲーム自体やらなくなってしまったのかもしれない。
(何か詫びの品を用意して待とう)
ONPC1のレベリングの最中、ダンジョンの隠しステージに居た。ディヘルミュードという、このゲームで唯一無二のエクストラボスのドラゴンをONPC1と共に倒せたので、大剣を武器職人に創ってもらった。
「すまんクレイン、コレでお詫びの印になるか分からないけど……」
武器職人のプレイヤーからは、ディヘルミュードの大剣は魔剣レベルのチート武器に仕上がったとお墨付きだ。
『ご主人様……』
「ん?どうした」
『ご主人様はきっと、やり直せます。人の関係も』
「あ、いや喧嘩したわけじゃなくて、前に愚痴ったけど、そこまでは……」
『失礼しました。私の勘違いでした』
「分かればいいんだ、分かれば」
ゲーム内のONPC1と話す、たとえAIだとわかっていても、雛鶴さんと話ができるのだから。
「はは……なんて、AIと話しててもなんだか、人間味がないというか、完全に雛鶴さんがそこに居るわけじゃ無いんだよな……」
――ONPC1を作成して、半年が経った。
大学生になり、勉強もアルバイトもするようになり、ゲームの時間は合間でするようになった。
ただロウディアにてONPC1をレベリングするだけのゲームと化していた。クレインもログインしないし、どうしようもなかった感情もNPCに吐いてばかりの自己満足でしかないと感じ始めだんだんと自分から離れて行った。
[ごめんなさい。雛鶴 夢衣花さん、亡くなった後で、こんな所で僕の趣味で色々好き勝手してしまってごめんなさい。本当はこの気持ちは直接伝えたかった。けれど伝える前に……だから、届くか分からないけど、好きだった。またどこか会えるならその時は是非お付き合いしてください。ONPC1も最後まで名前を付けられなくてごめんなさい。離れるけど、マイホームをよろしくお願いします。それではさようなら]
ONPC1しか開けられないメッセージを送って僕はその日ロウディアを辞めた。
(僕ってきもちわるいな……)
「亡くなった人をゲームで作って、少しでも喜びを感じて、とても人間じゃないな」
ゲームを離れてから周りの事もよく見え始めて、急激な変化ではないが少しだけ大学生活は順調だった。ただ一瞬の油断で陸橋から足を滑らせて命を落とすまでは……
(次こそ好きな人を守れる様に近くに居れたら……次こそは雛鶴さんにちゃんと自分の気持ちを伝えたい。こんな不誠実だけど、私欲のためにゲームで雛鶴さんを作っておきながら、また雛鶴さんに会いたいなんてわがままだよな……)
「やあ、と言っても君は知らないだろうよ。ボクの事は……」
「……??」
「そうだよな、君は魂だけ口がない、ただ君の前世も君の好きな人の前世だって知ってる。今は言えないけれど……それでどうだい?君は異世界転生に興味はあるだろうか?」
(何を突然、僕は死んで……誰だ?この人は)
「あぁ、その補足とボクの説明を忘れていた。今度は君の願いを叶えられると思ったけれど、失敗だった。ごめんなさい……ボクの注意不足だった。そして君は死んでここにいる」
彼女は悲しそうに、そして淡々と話していく、周りを見渡すとこの空間はやはり見たことのない部屋の様なものだった。光が包む暖かな部屋神殿の様な柱に囲まれた部屋はまるで……
「神の間、ボクはいわゆる神様だ、色んな名前で呼ばれているからとりあえずは死と転生の神"リンネ"とでも呼んでほしい。」
(リンネ……様、やっぱり神様だったんだ、この世の人ではないくらい美しかったから)
「様は付けなくていいよ、それからありがとう……その言葉何度も言われた……」
(何度も?それってどういう?)
やっぱりリンネはどこか辛そうに話を続ける。
「まぁそれはそれとして……じゃあ、手早く次の世界の話をしよう。君もよく知ってる世界だ、その世界は君が君にとっていいものだとは思わないけれど、コレしか時間内に考えれなかった。大丈夫だよ君のことを知ってる人も愛しの人もそこにいる。君自身で探すんだ……時間がない!輪廻を始めるよ!」
光が僕を包む、リンネが言う転生が始まった。
(まだ聞けてないことがたくさんあるんだけど……まだ色々と詳細が分からない!教えてほしい!僕の知ってる世界って、知ってる人や愛しの人ってまさか!)
「……次会う時は笑ってボクも話せたらいいな。でも早く来ちゃダメだよ。ちゃんと次の人生を楽しんでほしい。じゃあね……バイバイ」
リンネの顔が険しい表情をしたところで僕はリンネの前から姿を消した。
〈輪廻完了 異常なし 身体融合成功 五感異常なし……以上で輪廻プログラム終了〉
目を覚ますと、そこはリンネに言われた通りに知ってる光景だ。ただ直接見たわけではない、映像……画面上で見ていた光景にそっくりというよりそのまま目の前に広がっている。
「ここは、グロディアでの僕のマイルーム……?僕の知ってる世界ってグロディアの事だったのか、凄いこれってもしかして、アニメやゲームその他諸々の作品でよく見る異世界転生と同じだ」
(リンネが言っていた僕にとっていいものではないってこういう事……か)
ガチャリと扉が開く……開いた先に居た彼女は、とてもよく知っていて、彼女にとにかく似ている。
彼女は最初不思議な表情をしていたが、だんだんと表情を変え僕に駆け寄って抱きついてくる。
「……お、おか……おかえりなさい……おかえり……なさい!」
彼女はぼろぼろと泣き始めた。僕の事をずっと待っていたかのように、その表情はとても安心した様なそんな表情をしている。
(おかえりなさい……かそうだよな。半年以上も居なくなってたもんな)
「うん……ただいま、名もない君」
そっと頭を撫でる。
彼女は涙を拭いて柔らかな表情で改めて言う。
「はい……おかえりなさいご主人様……!」
コレは喜んでいい再会なのか、雛鶴 夢衣花ではない作られた彼女が生を受けた事を喜ぶべきなのか僕にはまだ分からなかった。
リンネの言っていた僕を知っている人はこの子だったのか……
「さてと、とりあえずリビングで話しを聞きたいかな……それからお茶用意してくれないかな?」
「あ、す、すすみません!」
彼女は言葉の意味を理解してくれたのか、すぐに離れてくれた。
「すぐにご用意しますので、リビングへ来てくださいね!」
少し急足で階段を駆け降りる音が聞こえた。
「ありがとう」
彼女からしたら、感動の再会なのだろう。
まるで何年も待っていたかのように限界を迎えていたかのように強く抱きしめられていたから、けれど僕には探さなければいけない人がいる。
(ごめんなさい……雛鶴さん必ず君を見つけに行くから)
恋は輪廻を越えて(仮題名) @mirin712
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