猫のように鳴いてくれ

砂漠の使徒

もっと猫らしく

 これは私のわがまま。

 彼との日々はとっても幸せ。

 だけど、ちょっぴり刺激が足りないの。

 物語でよく見る、悪い男がたまに羨ましく見える。


「ねぇ……私の言うことを聞いて」


 私は人に催眠術をかけることができる。どんなお願いでも、受け入れてくれるようになるの。こんなことしちゃだめなのはわかってるけど、一回だけ。ダメな私を許して。


「う、うん……」


 彼の目が虚ろになる。ただ私の言うことに頷くだけの、私だけのお人形になっちゃった。いろいろイタズラしたいけど、だめ。あれをするって決めたから。


「あなたは私をイジメたくなる。猫のように鳴かせたくなる」


「イジメる……鳴かせる……」


「いい? わかった? はい!」


 私が手を叩くと、彼の目に光が戻る。

 いや、戻りすぎてる。

 こんなにギラギラしている目は初めてだ。


「来い! シャロール!」


「あっ! やぁ!」


 彼が私の腕を掴んで、ベッドまで引きずる。


「寝ろ!」


「きゃっ!」


 乱暴に寝かせられ、私は……興奮してしまった。

 これこそが、私が求めていた刺激。


「なぁ、シャロール。お前猫なんだろ?」


 馬乗りになって、ずいっと顔を近づける彼。

 近すぎて、呼吸まで感じ取れる。


「う、うん……」


「なら鳴いて見ろよ!」


「にゃあぁぁん!」


 敏感なしっぽを強く握られて、腰が浮いてしまう。


「いい鳴き声だ」


 ニヤリと悪魔の笑みを浮かべる彼が、スリスリとしっぽを擦る。


「あっ……! はぁ……。 んふぅ……!」


 まださっきの刺激も抜けてないのに……!

 抑えきれずに、熱い吐息が漏れ出てくる。


「もっと猫らしく鳴いたらどうだ?」


「らって……!」


「人間みたいに鳴くなら、お預けだ」


 彼がしっぽを離した。


「しょんなぁ、もっと気持よくしてぇ……」


 こんなところで止めないで。

 変に高ぶったまま、終わりたくない。


「ちゃんと鳴けるか?」


「うん、鳴く! 鳴くからぁ!」


「よし、わかったよ!!」


「にゃはあぁぁぁんんん!!」


 さっきは片手だったのにぃ!

 両手で握られて、もう……。


「すげーな、シャロール。僕が乗ってるのに、こんなに腰が浮いてたぞ」


「にゃ……にゃはぁ……」


 もうだめ……。

 普段の彼ならこんなに激しくしないから、慣れない刺激に体が付いて行けないよ……。


「きょ……今日はもう……」


「何言ってんだよ、これからだろ」


「んん!?」


 強く押し付けられる彼の唇。

 私の言葉は口から出せなくなった。


「んぅぅん! んぁ!!」


 こんなにディープなの知らないよぉ!

 彼の開けてはいけない扉を開いちゃったかもぉ!


「鳴け」


「んぶ! にゃぶぅ!」


 キスの最中にしっぽ掴まないでぇ!

 鳴けるわけないじゃん!


「かわいいな、シャロール」


 唾液を滴らせながら、彼が舌を抜いた。

 そして、私の口に両手を突っ込んでむりやり笑顔にさせる。


「鳴いて見ろよ」


 今度はしっぽを触られてない。


「ひゃ……ひゃあ」


「なんでニャアって言わないんだよ」


 彼が不満そうな顔をする。


「らって、口を抑えへるから」


「だめだ。言い訳するな」


 え!?


「にゃーって鳴く練習しろ」


「な、なにふるの?」


「僕が口を抑えてるから、自分でしっぽをイジってニャアって鳴け」


「ひょんな、むひゃらよ〜」


「やれ」


 うぅ……。

 彼は大真面目みたい。


「んっ……ひゃぁ……」


 まだ余韻が抜けてなくて、かなり敏感なしっぽ。

 自分でするときも、なかなか尻尾は使わないから変な感じ。


「はっ……ああっ……ひゃぁん!」


「まだまだだ。もっと全力で」


 もう!

 命令ばっかり!

 自分でするのって、怖いんだからね!


「あっ……んふっ……にゃぁぁん!!」


 ヤケクソでしてたから、想像以上に大きい声が出てしまった。

 これ、ご近所さんに聞こえてないよね?


「よーし、合格だシャロール」


 彼は私の頭を撫でた。

 ……唾液がべっとりついた手で。


「今のすごくエロかったぞ、シャロール」


「……どういたしまして」


 口を尖らせて、不満の意を表明する。

 しかし、彼は次の遊びを考えるのに夢中で全く聞いていない。

 もう、自分勝手なんだから!


「次は、そうだな……」


 でも、たまにはこんなのもいいなって……。


「こことか!!」


「あふぅ……んぅ!」


 まだまだ彼の欲求は尽きそうにない。

 長い夜が始まったのだった。


(了)

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猫のように鳴いてくれ 砂漠の使徒 @461kuma

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