最終話 花火のように弾けて消えるまで

 私は全て思い出し、ウリッツァとのわだかまりは少しだけ解けた……と思いましょう。

 でなきゃ、私は、再びウリッツァ班の一員になれていないでしょうし。

 そうそう、ウリッツァに強引に迫ったあのとき、私を止めていたのはタケシさんだったそうですよ……まあ、私は止まらなかったのですが。

 ウリッツァ班に戻ったとはいえ、私は相変わらずタケシさんと同室だし、ウリッツァと二人だけになって、またあれこれすることは叶わないけれど。

 ……ウリッツァは私を嫌ってなかったし、私はちゃんとトロイノイをトロイノイと認識できるし、トロイノイにさわれて抱きしめることが出来て、今はそれで十分幸せです。


 今日は、私がウリッツァ班に帰ってきてすぐのウリッツァ班の当番日。

 いつものようにヴィーシニャさんの左後ろを歩く。

 この位置の右利きの人間が、手に刃物を持ったなら、その気になればいつでもヴィーシニャさんの心臓を刺し殺せる。

 そこまでしなくても、私が手を伸ばせば届く距離にいるヴィーシニャさん……。


 私は全て思い出した……私が、ヴィーシニャさんに何をしたのかも含めて。

 ああ……ずっと人形でよかったのに。

 よく見ている誰かの指摘がないと、違いが分からない程、普段と大差がなくて。

 私の前に肌をさらさず、私に抱きつかず、私からつきすぎず離れすぎず。

 いらない、いらない、いらないことばかり!

 ずっとシラを切り通していれば、魔法を解かなければ、あれを了承しなければ、あの温もりを知らなければ!


 こんなおもいは、おもいは、おもいは――――

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さよならを忘れて〜なにかのなく頃に、憂鬱に別れを告げる方法 霜月二十三 @vEAqs1123

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