ナンなのだ

ひなみ

パンだよ

 白く丸いモノ達とともに、この狭い場所へ放り込まれる。

 熱風が勢い良くこんがりと肌を焼くようだ。

 この灼熱は天国と呼べるような代物ではない。あるいは地獄と呼ぶに相応しい。

 そうであるならば、一筋の銀色の糸でも降りてこないものかと待ってみる。だがそんな事があるはずもないと、自嘲気味に鼻で笑う。

 現状は炎に巻かれ四面楚歌だ。ああこれはかの有名なノブナガ・オダの最期と似通っているなとやはり笑う。

 ついには遠のく意識と共に走馬灯が駆け巡ってきた。

 来る日も来る日もつぶあん、いちごジャム、メロンのようなものと並んで切磋琢磨。売れ残りをディスりディスられ笑い合い別れる。

 何だこれは。身に覚えがない。よもや前世の記憶なのか……。

 一体全体、これは何なのだ。ナンなのだ。ナンなのか?

 体内がスパイシーに燃える。

 オレの人生はナンだったのか。

 業火はオレを焦がす。

 ナンだったんだろうか?

 誰か! 誰か頼む、教えてくれ。

 オレはナンなのか――

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ナンなのだ ひなみ @hinami_yut

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