俺のスキルは神級だが、無職だから仕方ない。〜世界最強の鑑定士だって嫁が欲しい!〜

あずま悠紀

第1話



「ふっふっふ。ようやく来たわね、私の出番よ」

ヒロインは金髪ツインテールな少女だ。見た目だけで言うならば年齢は十二~十三歳くらいか? まぁ年齢よりも容姿の方が問題ではあるが。とにかくそのロリっ子が自信満々に言ってきた。という事はこの子もメインヒロインって事でいいんだよね?さて誰なんだろう? 名前を見た感じではどうやら日本人っぽい。でも名前が読めないし文字化けしてるしで何が何だかさっぱり分からん! というか、この女の子の名前が知りたいんですけど。あーもうちょっと詳しく説明してくれないと分かりませーん!!

(あれ?)

はて。気が付いた事がいくつかある。今の状況って一体どういうことなんだ!? いやまぁそもそもこの状況っていうか物語そのものがよく分かんないというか。えっと、そうだよね、うん、そうだそうだ!まずはその話からしないと駄目だよね、はい、分かったから睨まないで!! ごほん。とりあえず落ち着いて考えてみようじゃないか! まず僕は自宅であるアパートの二階の部屋の中にいる。で、目の前には僕の机があって、その上にはノートパソコンが置かれていて、さらにその上に一冊のラノベが置かれていた訳だ。でまぁ、僕の名前は上坂真也って奴で、高校二年生。年齢は十七歳。趣味はアニメ観賞で、最近はラブコメ系の作品を見る事が多いです!以上! そして机の上に乗っている本の題名は「神様の贈り物~異世界への誘い編」って書いてあって、さらにその作者名を見てみると―――

――『山田正哉/Yamada Masaya』(ペンネームが山田まさよしだった)となっている。うん。確かにこの本を買った記憶はある。だけどこんな展開になるはずではなかった。少なくともこんな風に急展開になったりする事なんて全く想像していなかったのだ。いやマジで!!!

(これは夢か何かだろうか?)

とは思ったんだけどさすがに現実離れしているような気がしたんだよ。

でも頬をつねっても目が覚める様子もないんだぜ! という訳でとりあえず現状を把握しておくためにもう一度、パソコンの前に座った状態で、改めて自己紹介をする事にしよう!ちなみに名前は山田マサシって奴だ。よろしく!(ヤケクソ気味)

(ま、まさかこれってラノベ作家とかになれるかもしれないパターンじゃないのか! しかもあの山田先生の名前を借りているとか!?うおおおおおおぉ!!!)

よしきた、俺、ラノベ作家になってやる!ハーレムルート目指してやってやんよ!俺は小説家になってハーレムを築いてやるぞーーー!

「あ、ところで君は?」

とりあえず状況を把握するためには色々と聞かなきゃいけない事がある。特に君の存在についてね。何せここは現実世界じゃなくて、二次元の世界な訳だし。

そう思って質問をしたつもりだったんだけど――何故かその子はキョトンとした顔でこっちを見つめていたわけで。どうにも理解されていないみたいだね。あーもうどうしたらいいんだよ!

「なに? 私が分からないって言うの?失礼しちゃうわね!」

(おおう。いきなり喧嘩腰だな、この子は)

どう見ても十二歳以下の子供なのになんつー態度の悪さだよ!というか誰?この子?もしかして本当に山田まさよしが書いた作品のヒロインなのかよ?それならもう少し年上の女の子が出てくると思ったんだが。それかツンデレキャラとか。

ってそんな事はどうでもいいんだ。今はそんな事を考えている場合ではない。とにかく、この子が何者かって事とこの場所がどこか、それと何故ここにいるかを聞き出さないと。

まぁこのロリっ娘の正体については大体見当はついているけれど、一応本人に直接確認しておくべきだよな。だってほら、ここ異世界だからさ、常識が違う可能性がある訳だ。

そんな感じでいろいろ考えていたんだけど、彼女は一向に答えてくれないので仕方なく、僕から先に聞く事にした。このままでは何も話が進まないからな! という事で彼女にこう聞いたんだ。「えーと、君は誰か分かるかい?」ってさ。

そうしたらどうなったと思う?なんかものすごい怒られたんだよ!理不尽極まりなかったよ!どうしてそんな事が分からないんだ!って感じで罵倒されたよ。まぁ気持ちはよくわかるけどさ、それでも女の子が相手なんだったら言葉使いくらいどうにかして欲しいところだと思うけどねぇ~。まぁとにかくそういうやり取りがあった結果。彼女が怒って帰ってしまったのである。

いやでも、僕が悪かったとは思うけど、なんであれだけの罵声を浴びせる必要が有るんだろう。やっぱりラノベ作家の件に関しては触れない方がよかったか。あのまま放置して帰るのを待つべきか迷ったんだけど、それはそれで気になってしまうし仕方ないか。それにしても山田正志さんか。

確か彼はペンネームで活動をしているって言ってたよな。でも山田っていう名前で山田マサシの作品を知っているっていうとかなり絞られるんじゃないだろうか。いやむしろいないんじゃないか。いやまてよ、ひょっとすると僕と同じ境遇だったのかもしれんぞ。

「まさか山田まさしくの知り合いだとでもいうのか?」

いやまさかな。そんな偶然ある訳が無いだろ。うん、絶対に無い!そうだ、山田さんの本に書かれていた内容を思い返してみよう。そうすればきっとこの状況を理解してもらえるはずだ!山田さんの本によると、この世界には勇者召喚によって日本から異世界にやってきた人が存在するらしいんだよ。

で、この主人公もその一人のようだ。まぁ僕はラノベを何冊か買ってみた程度だから詳しく覚えていないけど、主人公は異世界に来たばかりの頃に右も左も分からず、途方に暮れている時に美少女と出会うって話だった。

そして主人公は彼女と共に旅をするうちに恋仲になっていき、最終的にはハッピーエンドで終わるって流れ。ちなみにその主人公の名前が上坂っていう苗字だ。うん、これ絶対僕のことだよね。同姓同名とかじゃないよね?いやそんな偶然ある訳が無いだろ。ある訳がない。あってたまるか!

――うん。そうだ、これは僕の本じゃない!断じて違うんだ。こんなに酷い内容の本を読んだりしていないはず!って事はあれだ、山田さんの書いた本を勝手に僕の本だと勘違いしてしまっただけって事か!はは、馬鹿だな僕って。はははは。いや、笑いごとじゃないって!

「くそっ、なんてこった」

どうしようもない現実を突きつけられた気がした。

山田正志さんに会えたとしても、自分の名前が上坂真也って分かったとしても、自分がどういう状況に置かれているか理解できても。そもそもこの状況はどうやったって変えることができない訳で。つまり何が言いたいのかと言うとだ。

(あーあ、これ完全に詰みましたわ)

いやもう、マジで絶望感しか残ってませんけど!?

***

僕は山田正史さんの本が置いてあったパソコンの前で、呆然としたまま動けずにいた。だってそうでしょ。もう何をどうしたら良いのかさっぱり分からないんだよ。

「あーもう、これ、夢じゃないよね?」

頬を軽く叩いてみてみる。普通なら痛みを感じる所だけど今の僕は何とも感じないんだよね。夢にしては感覚がしっかりしすぎているというか。これが明晰夢だったりするのだろうか?それだったら夢の中で寝るなりなんなりで、何とかこの場を切り抜ければいいんだけど、残念ながら意識を保っていられそうな気配が全くしない訳で。

(もういい、考えれば考えるほど混乱するばかりだし諦めよう)

これ以上何かを考えることに意味があるように思えなかった。だから、この状況を受け入れてこれからの事を考えた方がいいような気がしたんだ。で、まず何が起きているのかを確認していこうと思う。えーと、まずは山田まさよしって人が書いている作品の主人公である、山田マサシ君(僕)は、異世界にやって来ていた。そこは山田マサシ君の世界とは別の世界で――えーっと。ちょっと待って。整理していくから。

まず異世界転生系のライトノベルに良くあるパターンとしては、トラックに轢かれて死んだと思ったら次の瞬間には異空間にいて女神みたいな人に出会って。そして特別なスキルを与えられた後で「異世界に行くか」的な選択肢を迫られたりするんだよな。で、大概の場合「行くしかないじゃん!!」とか「行きたくないんですけど!?」とかってやり取りがあるんだけど。って山田正志の作品にもそれっぽい展開が有ったような記憶がある。で、山田マサシは結局「行かない」を選んだら、そのまま家の中に戻れたんだっけ?いや違ったか?あ、駄目だ全然思い出せない。

(でもなんでこのタイミングで思い出そうとするんだ。こんなことしている場合じゃないだろ)

こんな風に必死に頭を働かせていても状況は何も好転したりしない。ただ無駄に時間が過ぎて行くだけだ。とりあえず今の状況を把握するためには情報が必要なんだと思う。

だからパソコンの前に座りなおすと山田マサシ君に関する事を色々と調べてみることにしたんだ。とりあえず作品の題名を検索してみて。その結果が――

『山田まさしく/Yamada Masashi』で、作品名が『異世界への誘い編』『山田マサシの異世界冒険記(仮)』とか、そういう感じで、他にも『山田マサシの冒険譚』(これに関しては既に山田マサシ本人がネット上にあげてたりしていた。もちろん山田正志の名前は一切使っていなかったけれどね)とかもあったな。

『異世界への誘い編(第一巻)』『山田マサシの異世界生活(二〇一四年八月三日発行)』『山田マサシの異世界放浪日記~異世界に行ったらハーレムルートへまっしぐら!? 一万五千年後の未来編~

山田まさしく/著

上坂真也&山田マサシン/イラスト 出版社:富士見書房

レーベル:ファンタジアドラゴンノベルズ

発行日:二〇〇九年六月三十日 第01版第02刷 値段 七百二十円価格 各書店での予約受付中です。

異世界ファンタジー

/ 1位 / 6,208+100 =63,084部 2位 11日間 前 最終アクセス 2016-09-30 13:05:25 山田まさし先生の作品は、ラノベ業界ではかなり人気の高い作品みたいで、すでに複数の作品が商業化されていると書かれていた。その中でもこの作品、異世界への誘惑シリーズに関しては、この異世界に転移してくる前の主人公の日常風景を描いた作品なんだとか。

まぁ確かに主人公が高校に通いつつアルバイトして生計を立てて生活をするって話が多いんだよな。でまぁそんな感じの内容の本が何冊か出ている訳なんだけど。まぁそんな山田正志の作品の中でもこの異世界への誘惑という作品は、結構人気があったようで、アニメ化までされていたらしいんだ。まぁそれに関しては僕は知らなかった訳でして。というか全くの無知な状態ですけど。まぁとにかく、山田まさしさんが書いた作品の主人公はみんな山田マサシという事になるのかな?山田まさしくさんもかなり人気があるらしくて、彼の書くライトノベルのイラストは女性が担当しているんだけれど、山田まさし先生のイラストのファンだと豪語して、山田マサシさんの同人誌も出しているんだそうだ。その同人誌の中には、山田マサシ先生が書いた作品だけではなく山田正志さんの描いたオリジナルの作品もあるというんだから驚きだな。

さて。これで分かったことは「このラノベは異世界からの訪問者である山田まさしさんだか山田まさしさんが書いているって事と。異世界には召喚された人間もいるんだよって事がわかったって事だよな」まぁ、うん。そんなもんだろうな。じゃあ次はどうやってここから出るかというか帰るべき方法を考えないといけないんだけど、どうしたもんか。

そんな感じで考えていると突然声が聞こえてきた。どうやらこの声は女の子の声だと思われるんだけど、いったい誰が喋っているんだろうか?そんな疑問を持ちながら周りを見てみるんだけど何もいないよな?うん、いないな。って思ってると目の前のノートパソコンが起動し始めたんだけど!いやこれどう考えてもやばいよね!だって電源を入れた訳じゃないのに勝手に動き始めた訳だし! 僕は恐怖に怯えながらも、パソコン画面に注目してみる事にしたんだ。で、そんな僕に対して話しかけてくる女の人がいる訳なんですよ!でもやっぱりそこには誰の姿も見えない訳でして。もしかして僕の頭の中身を勝手に読んでいる人がいたりするんですかね!?うぅっ!これはもしかすると僕のプライバシーがだだ漏れ状態なのかもしんないぞ!?でも今はそれどころじゃないからな、早くパソコンを操作してる人になんとかしてもらわないと困った事になるって。

「おい!こっちの話を聞けよ!」

と僕はパソコンに向かって叫ぶ。だけど、それでもパソコンの画面には文章が表示されるばかりで反応がない。だから今度はもっと大きな声で叫んでみた。

「だから俺の話を聞きやがれぇええええ!!!!」

そんな僕の叫びが効いたのか、画面が切り替わり「ステータス」「設定変更」「ヘルプ」といった文字が表示された。そこで僕は気がついたんだ! この表示されてるアイコン、これって山田マサシさんが書いた本のページの一番上に出てくるやつじゃないか?確かそうだった気がするんだよな!つまりこれは山田マサシさんが書いた本の中に出てくる機能の一つであって――うん、間違いないだろうな!きっと! 僕は急いでその「ステータス」って表示されているところをタッチしてみた。すると画面に説明文が表示される。

***

「ステータス」とはあなたの現在の能力値を表示する為の項目でございます。

「レベル」、「HP」、「SP」の三項目で表されています。

それぞれは以下の通りとなります。

*レベル あなたの強さを表す基準となる数値になります。

レベルアップすればするほど、強い存在になれます。

現在あなたが持っているポイントを使ってレベルアップさせることができます。

*HP(ヒットポイント)

あなたの命の値を表します。

これがゼロになると死に絶えてしまいます。

*スタミナ 身体能力や行動に制限を与えるパラメーターです。

これが0になってしまうと体が動かなくなってしまい動けなくなってしまうのです。

*攻撃力 攻撃に関係するパラメーターで、ダメージ量に関わります。

*魔力 魔法関係に関わる能力値で、回復系スキルを使用するのに必要なものとなっています。

*精神力 様々なスキルを取得するのに影響する能力値で、防御力を上げるのにも必要なものとなります。

以上が各パラメーターの詳細となっております。


***

どうやらステータスを閲覧することができるようだ。で、その画面を見た感じ、どう見てもこのパソコンで表示されているものは僕自身って感じだ。まぁ、山田マサシさんの作品の中の登場人物として存在しているって事は理解できたんだけどさ。

(えっと、まずは自分のレベルを確認すべきなんだろうけどどうすりゃいいんだ?)

自分のレベルを確認するためには、山田マサシ先生が作中で使っていたような「コマンドメニュー」みたいなものがないと無理ってことだろうか?でもそれが無い以上自分で考えなくちゃいけないのかもしれない。

(うーん。そもそもステータスなんて見なくても良いような気がするんだよな。だって今の状況を考えたら普通にヤバいだろ。このままだと餓死する可能性さえある訳で)

まぁとりあえず今は山田マサシさんの作品の中で主人公をやっていた時のように行動するのが一番良いんだと思う。

とりあえず山田マサシさんの作品の中で出ていたスキルを思い出す。その中で使えそうなスキルを思い返してみようと思ったんだ。確か山田マサシさんはスキルを手に入れる為に、冒険者の人達が居る場所に出かけて行ったんだよな。

それでその冒険者達が山田マサシさんを鑑定しているシーンがあったんだけど、その時に出た結果によると、山田マサシさんは『神の瞳』ってスキルを持っていた。そしてこのスキルの能力としては、自分が欲しいスキルを持った人を探せるんだそうだ。で、この『神の眼』っていうスキルを使えば相手の職業とかが分かってしまうみたいだ。

でもこれって使い方によってはとんでもない事ができそうだな。例えば悪い事をしようとしている奴を見つけることが出来るとか。いやまぁでもさ、それはそれで色々と問題が発生しそうな予感もしないではない。でも山田マサシさんの場合は、この『神の瞳』のスキルで悪事を見破ること無く悪徳業者とかを摘発したりして正義感を発揮していたよな。

(ってことはだ、今の僕の状況に『山田マサシの異能シリーズ』に書かれていた『鑑定スキル』の『サーチ』と『スキャン』を使うのが最適なんじゃないだろうか。もし本当にそんなことが可能ならば、この状況を改善するために使えるはずだ)

僕は早速、『山田マサシの異能シリーズ 第三弾 山田マサシの日常は異世界の日常(第二〇二五年三月二八日発行二〇〇九年十二月三〇日第一刷)』(以下山田マサシの日常)の『山田マサシの日常(三巻)』『山田マサシの冒険譚2巻』(一〇三二年三月二八日初版発行)、『山田マサシの冒険譚1巻』『異世界冒険記3巻』『山田マサシの旅編』の「山田マサシの日常3 勇者召喚に巻き込まれて異世界に転移してきたんだけど、なんかチートっぽいスキルが使えるようになっていた」を参考にして、スキルを発動させることにしてみたんだ。まぁ、こんな感じかな? そんな感じで僕が山田マサシの日常の文章を読み返しながら念じていると画面が切り替わり、「スキル発動しますか?」という表示が出てきたので、すぐに実行することにした。

(よし、いけるはず!頼むぞ!成功してくれ!『神の眼』、『スキャン』!これでどうなってもいいように準備しておこう。もしもの時の覚悟はできているからな!いざという時は逃げるんだぞ!!)

そんな決意をした僕だったんだけど。特に変化が起きることは無かった。というか、僕の視界は相変わらずノートパソコンの画面以外は何も無い空間が広がっているだけなんだよな。そんな状態で僕はただじっとしているだけだから正直かなり辛い。まぁとにかく今は待とう。

待つことしばらくすると、画面に変化が起きたんだ。「スキル使用を確認しました。以下の情報を登録しました」

画面上にそう表示されると同時にパソコン画面の一番下の部分。そこには何かのマークが表示されていて。さらにその下に「情報の修正が完了しました。この画面に表示されている全てのデータを元にあなたが転生する世界が自動的に決定されます」って表示されたんだ。で、その画面に表示されている内容が、以下の通り。

*山田マサシさんの異能力によりこの異世界への扉が解放される *山田正志さんは山田マサシさんが異世界へ旅立つ前に召喚されている *山田マサシさんは異世界へ召喚されてから山田マサシさんになる *異世界では山田マサシさんの容姿が元のままとなる *異世界の通貨がこの世界に持ち込まれることになるがこの世界で流通しているお金と変換する事が出来る どうやら異世界へと移動する事ができるらしいんだけど、これはいったいどういう事なんだろうな?まぁ、とりあえず山田マサシのステータスのページに戻って、もう一度ステータス画面を開いてみるとしよう。

(さて、一体どうなるんだろうな?山田正志として生きられるなら、それはそれで楽だと思うし、元の世界に戻れたとしても、僕は山田マサシさんになっている訳で、戸籍上は死亡扱いになってしまっている可能性が高いし、家族に合わせる顔もなくなるからな。あぁでも山田マサシさんが元居た世界を気に入っていたからそこに戻るというのはありなのかもな)

などと考えていると、パソコン画面に新たなウィンドウが表示されていた。そこには「あなたの異世界行きが決定致しました」って表示されていた。その瞬間に僕の体の中に今まで経験したことのない様な不思議な感覚が生まれたのを感じることができた。それが異世界に移動するためのプロセスなのだろうと理解した僕は、パソコンの前で「ありがとう」と言ってから意識を失ったんだ。

「うっ、頭がいてぇな。それに体が痛いし、これは夢じゃないよな?」

僕は痛みを堪えながら目を開けていくと、僕の目に最初に飛び込んできた光景は、薄暗く汚れが目立つ天井だった。それから周囲を見渡していくんだけど。やはりそこは見覚えのない部屋なんだ。壁紙とかを見ると西洋風の感じに見えるんだけど、ベッドの横に鏡が置かれているんだけれど、その姿を見て僕は思わず「えぇっ!?」と驚いてしまった。なぜなら僕が想像していたよりもずっと若い男の人が立っていたからだ。

髪の色は金髪に近い茶色で肩より少し長い位だ。目は緑色なんですけど。年齢は十五歳から十八歳の間といったところでしょうか?そして体格の方なんだけど結構引き締まっています。身長に関しては百七十三センチ位でそこそこ大きい。ちなみに服装に関してだけど白シャツの上に黒いカーディガンを着込んでいてジーンズに革靴を履いている。

それと自分の体に目を向けると胸が膨らんでいないのがはっきりと分かるくらいにぺったんこになっていた。一応は性別が変わったみたいだから当然の事と言えばそれまでなんだけれども、それでもやっぱりショックを受けてしまったよ。だってこの歳で女になることは無いんじゃないかと思ってましたからね。まぁとりあえずは落ち着くことを優先しようと思い、自分の気持ちを整理しようとした時に、不意に声をかけられた。「やっと目覚めたか。まったくお前ときたらいつまで寝ているんだ。もう昼前だぞ」

声のする方に視線を送ると部屋の中の入り口には白い服を着込んだ女性がいたんだ。背は一六〇センチ程度で年齢が二十五前後と思われるその女性は、美人というよりは可愛い系の顔立ちをしていて。髪の毛の色が銀髪だったので思わず見入ってしまったんだ。

そして彼女の瞳が銀色なので外国人のように見えるんだけど、日本語を流暢に話しているんだよな。

「おはよう。体調はどうだ?」

「はい、大丈夫です。ちょっと体のあちこちが筋肉痛で動かしづらいですが。それよりも、貴女の名前はなんと言いますか?そしてここって何処なんですか?」

「私はアリサという。この場所については教えることができないんだ。あと、君は今日一日安静にしていないとその症状は良くならないはずだ」

「それはまたどうしてですか?」

「それは君をここに運び込んだのが私たちの組織であり、ここは組織が所有している施設の一つだからだ。まぁ詳しくは後々説明する事になると思うが今は大人しくしていろ」

うーん、色々と謎だらけだよな。僕自身はどこで生まれてどんな生活をしてきたのかが全く思い出せない状態だし、このアリサと名乗った女性の言っている事は嘘とは思えない。それどころか彼女が僕に向かって言ってきた言葉の意味を考えるならば、彼女は何かしらの立場を持った存在なのではないかと思ったりもする。

しかしそれならばなおさら疑問が残る。このアリサと言う名の女性が僕を助けた理由が何なのだろうか。もし僕を騙して奴隷商人かどこかに引き渡すことが目的だとしたらかなり危険だろうな。

そしてそんな僕の考えを見抜いたかのように。「私がなぜお前を助けたのかが不思議で仕方が無いって顔をしているな。そうだな。私の事について詳しく知りたいというのであれば。もう少し時間をかけることになるが説明をする用意はある。まぁそれは良いとして、先に食事を摂る事にする。今すぐ用意できる物を食べるか?簡単な食事になるが、食べないよりも食べた方が治る速度は上がる筈だぞ?」と聞いてきたんだ。

そんな風に聞かれても困るというのが正直なところです。確かにお腹も減っているし空腹で胃もキリキリしてきそうで苦しいんですけど、正直何を食べられるのかという知識も無いんですよね。そもそもこの部屋に食べ物なんて無いんじゃないのかなぁって思って周囲をよく見てみたんだ。すると壁に掛かっている時計が置いてあった。その文字盤はアラビア数字が使われているようで僕はホッとしたよ。どうやらこちらの世界でも僕はちゃんと読み書きすることが出来るみたいだから。

僕はその腕時計を見ながら「時間は何時なんですか?」って尋ねた。すると彼女からはこんな答えが返ってくるんだ。「時間か、まだ朝になったばかりだ。今は朝の九時頃だな」

どうやら思っていた通り僕はかなり長く眠り込んでいたらしい。そうなるとこのアリサと名乗る女性の言うように食事を頂いた方が良いのかもしれないな。というか本当にどうすればいいんだ?そう思いながらも彼女に尋ねる事にする。「分かりました。ではお願いしても宜しいでしょうか?出来れば何かを食べたいのですが」そんな事を尋ねてみたところ、彼女は嬉しそうな顔を浮かべて僕に対して「分かった。すぐに持ってきてやる。待っていてくれ」と言って、小走りで部屋から出て行った。

それから数分後に再び戻って来た。手には大きな鍋を持っていたんだ。それをテーブルの上に置いて蓋を開けるとそこにはスープのようなものが入っていた。具沢山で肉団子のような物が入っていて食欲が湧く香りがしたんだ。「さぁ、温かいうちに早く食べるといい。これは栄養価が高いものだ。遠慮せずに食ってくれ」と言われたんだけど。僕は手渡されたスプーンを使ってその料理を一口口に運んだ。

「美味い!」

思わず叫んでしまったんだ。だってその味が今までに経験したことの無いような程美味かったからさ。僕は夢中でその料理を口に運んでいるとアリサが笑顔で僕を見てくるんだよ。で、しばらくしてからこう言ったんだ。「そうか。そんなに旨いか?良かったよ。私もこれを作っている最中は緊張していたから安心した」

「はい。とってもおいしいですよ。これは何という料理なのでしょうか?」

「これはカレーライスというんだ。君の世界で食べられていたらしいが知っているか?」

その問いに対する回答として僕は首を横に振って「残念ながら知らないです」と答えた。そうしたら彼女が教えてくれたんだ。

「まぁ、君の記憶は消えてしまっているようだし、当然の反応といえば反応なのかもしれんがな。だが、その前に確認をさせてくれ。君は自分が何故この世界にやってきたか覚えているか?」

「えっと。それはどういった意味で?」

僕としては質問の意図が分からなかったので逆に質問をしてみることにしたんだよね。

すると彼女からの返答がこれなんだ。

「言葉のままだな。記憶が残っているかという意味だよ。さっき私は君のことを『記憶を失った者』として扱いをすることにしたからな。君がどのような人物なのかを判断してから今後の扱いを考えようと思っているんだ」

あ、そっか。そういう意味なのか!なるほどなるほど、つまりアリサさんって人は非常に真面目で優しい人ってことだな。でもそうなると余計に僕の目的である山田マサシになる為に必要な情報を入手できなくなってしまう可能性が高い訳で、それはどうにかしたい所だなぁ。でも、どうやって情報を手に入れればいいのかさっぱりな訳なんだよな。

まぁ取りあえずはその辺は保留にしておいて、今の状況を打破する為には話を聞かないと始まらないって訳なんだよな。だから素直に答えておくことにしよう。「実は何も覚えていないんです。自分の名前も歳も性別すら分からないんですよ」

そう言い終えてから僕は黙ったままアリサさんの言葉を待っていた。彼女は僕のことをジッと見てきたかと思うと少しの間何かを考えていたんだけど。「そうか。それなら無理には聞き出す必要はないな。君はしばらくこの施設で生活することになるが。生活する上で必要最低限の事だけは教えていこう」と言ったんだ。そして彼女は続けてこんな言葉も言ってきた。「それでだな。私のことはアリサと呼ぶのが一番楽だと思うのだが。どうだろう?」

「はい。構いませんよ。では僕の事も真也と呼んでください」

「ああ、分かった。これからよろしくな」

こうして僕は異世界での第二の人生?を始めることになったんだけど。まさかこんなに美人で優しくしてくれるアリサが組織の長だったなんて思わなかったよ。でもまぁこれで異世界を生きていくための手段が見つかったと思って良いんだよな。そう思うと嬉しいな!そんな感じで喜びに浸っていたら「何を考えている?」ってアリサが聞いてくるんだよ。なので僕は自分の気持ちをありのままに話す事にした。

するとアリサは少し考える素振りを見せてからこう話してきた。

「そうか。自分の能力についてはどの程度把握しているんだ? その様子だと全く知らないのか?」

「えぇ。何も思い出せない状態です」

僕はアリサの問いかけに対しそう返事をした。実際この世界に関する知識がまるで無いわけだし、自分自身の現状が理解できているとは言い難い状態だったりする。ただアリサは何かを知っているみたいなのでここは教えを請うのが良いと思ったんだ。

そしてアリサは僕の方を見ると真剣な表情になりこんな言葉を伝えてきた。

「君は『鑑定』という異能の持ち主だ。その力は人のステータスを確認できるものなのだが、レベルという概念が存在していないんだ。つまりはどれだけ強くなってもその能力値は上限まで成長することはあり得ない。また魔法についても同じように、どんなに強くても使えるようになることはない。まぁそれでも一般的な人間が習得できるスキルであれば問題は無いんだが。君は神眼を持っている。この二つの力を使えばある程度までは成長できるはずだ」

「なっ!? それは本当ですか? でも神様から与えられたとかそういった話は無かったんですけど?」

僕が驚いてアリサの顔を見ながらそう言うと、彼女はゆっくりと首を振りながら答える。

「確かに君は誰かに与えられたという訳ではなく、生まれつき持ってた力でしかないんだよ。だが使い方を覚えれば強力な武器になる筈だ。それに、私も君の持つ力について調べる必要がある。まずは鑑定を行う方法を教える。この部屋の外に出よう」

それからしばらくの間、部屋の中に案内され、色々な道具を見せられた。

「ここにある物は全て使っていいぞ。この水晶球が鑑定を行えるアイテムだ。これは君が持つ『神の目』と同じように特別な素材で作られている。その為他の場所で鑑定を行うことは不可能な作りになっている」

「な、なんでですか?そんな事が可能ならばこの施設内で色々と実験したりすればいいと思うのですが」

僕の発言に対してアリサがため息を漏らしてこんな言葉を掛けてきた。

「君は自分の価値を分かっていないようだな。君は貴重な存在なんだよ。もしもその事を自覚しないのであれば危険な事になってしまうだろう。例えば、私の命を狙う奴が現れてしまうかもしれない。だからその辺はしっかりと注意してくれよ?」

「え?どうしてそこでアリサ様の命を狙ったりするような事になるんですか?」

僕はそんな風に尋ねた。そうしたらアリサさんは再び大きなため息をつく。

「やはりそうか。これは私が思っていたよりも重症なようだな。良し。まずはそこから改善していかなければならないな。君は自分に関すること以外にももっと興味を持て。知識が足りなさすぎる」

それから僕は部屋で一通りの訓練を受ける事になった。そしてその結果として僕は『無知の知』を手に入れたんだ。これによって自分が知りえないことを知ることが出来るようになった。この能力を上手く使う事でアリサに説明された様々な事実についての知識を得られるようになっていった。

「どうやら君は知識が足りないだけじゃなく危機感にも欠けているようだな。その辺に関しては時間をかけて学んでいく事にするか」

それからアリサに言われるままに、様々な場所へ連れまわされることになったんだ。最初に連れて行かれたのは図書館のような所だ。そこで僕に色々な本を読むように指示を出してくる。どうやらこの世界についての一般常識や歴史などを学んでもらう必要があるんだそうだ。

それと並行して、僕自身のことも勉強することになったんだ。これは僕自身が強くなれるかどうかの判断の為でもあった。この世界で生き残る為の最低条件であるレベルが、僕の場合には最初から存在しないみたいで、アリサが僕を強くするためには何かをしなければならないらしい。

「ふむ。では君の力を詳しく見てみるとするか。私には君の能力が見えるんだ。まぁ正確には見る事が出来るんじゃなくて感じ取れるっていう言い方の方が正確かもしれんがな」それから暫くすると、僕の頭の上から声が聞こえてきた。その言葉を聞いた途端に目の前に画面が出現したんだ。その画面に書かれている文章を読み解いていくと。こんな事が書かれていた。

***上坂真也 Lv.01/99/100(MAX)

生命力

:3/1050

魔力量:

3020/4300 筋力 :515

耐久 :655

精神力:252

俊敏性 :1265

スキル1『超幸運』Lv.1 / スキル詳細: 発動中、幸運補正+50%。更にスキルの経験値が獲得出来るようになります。

効果時間:一日×1ポイント分=最大1時間 備考欄 運がとても良くなる。

ただしこの能力は運がとてもよくなるだけであり、決して実力があがる訳ではないのでご了承ください。スキル2『鑑定Lv.3』/

スキル内容:相手のステータスが数値で分かるようになる 消費魔力量が少なめなので使用回数は多め。

スキルLvがあがっていくと詳細情報までわかるようになっていきます。

また鑑定は対象が生き物の場合は自動的に表示されるようになるので、視界に表示されている状態であれば相手の名前と体力が分かります。但し相手が死んでいる場合は名前が空白となります。

***

「なっ!? なんだその異常なまでのレベルの上がり方は!」

僕が頭の上に出てきたステータス画面を確認しているとアリサから驚いたような大声が上がった。そして僕と視線を合わせる為にかがんだ後、僕の顔をマジマジと見ながら質問を投げかけてきた。

「君の能力というのはこれだけなのか?」

「いえ、違いますよ。まだ表示されない部分もありますが、今のステータスで間違いありません」

「そうなのか。だがこのレベル上限の低さが気になるな。だがまぁ、こればかりは鍛えて上げる以外にないから、地道に努力をするしか無いだろう。それにスキルのレベル上昇は本人の行動次第で上昇するので問題にはならないだろうが。それにスキルは本人の意思によって変更が可能なのだ。その辺りについては問題ないだろう。後はスキルの詳細を確認させてもらっても構わないか?」

僕はアリサに言われた通りに『神眼』を使ってみる。すると今まで見えなかった情報が次々に追加されていった。それを見たアリサが目を輝かせていたんだ。そして僕の方に近づいてきて僕の頭をなでなでしながら嬉しそうにしている。でも何が嬉しいのかはよく分からなかった。だってさ。僕は今『無知の知』を手に入れてから得た情報と自分の記憶を頼りにして情報を確認したんだけど。

どうやら僕がアリサに伝えたステータスの情報は全て真実であり、偽りはないという判定が出ただけだったんだよね。しかもその判断基準がいまいち分からない。ただアリサにとってはとても都合がいいって話だったけどね。どうやら僕は彼女の予想していたステータスの数倍のステータス値を持っていたようで「この能力なら私に付いてきてくれるな」なんて言っていたんだ。どうも僕はアリサに拾われていなければ野垂れ死ぬところだったようだね。

でもなんでそこまでしてくれたのかなぁって疑問だったんだよ。まぁその理由を聞いちゃうと後戻りできなくなりそうな気がしたから聞けていないんだよなぁ。

アリサからの説明で僕は自分がどんな人物なのかを知ることが出来た。でもやっぱり自分の過去についての記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっていたのは変わらなかった。それに、僕が持つ『無知の知』についてもアリサに聞いてみたんだけれど。彼女は「神眼については調べておくが、それ以外に関しては自分で考えるんだな」という冷たい言葉を返されてしまったんだ。

なのでとりあえず今はアリサに言われている事を一つ一つこなしていくことに集中することにしたんだ。ただこのアリサという人物。僕に対してやたら甘い言葉を掛けて来るという困った癖を持っているみたいで、僕がお願いをするとなんでも叶えようとしてくるみたいなんだよな。そんな事をアリサに対して伝えると、少し怒った様子で僕にこんな事を伝えてきた。

「君は私の事が好きではないのか?それとも君は好きな人に対してそんな事をいう奴だという事なのか? もし後者であれば君は私にとって許せない相手となる。それはつまり君の命を貰う事になるんだが、覚悟は出来てるか?」

アリサから放たれた強烈な威圧感を受けた僕は何も答えられなかった。

僕の名前は山田まさし、年齢は22歳だ。

僕は先ほどから部屋の片隅で正座をして固まっている状態だった。何故このような状況になってしまったかというと、目の前にいる女性に説教を食らっている最中なのだ。その人は黒髪をショートカットにした凛々しい顔つきをした人だ。身長は高く細身だけどスタイル抜群、目つきはキリッとしていて鋭い。そして胸は残念ながら大きくない。その女性はアリサというこの施設の責任者でもある存在で名前は『リリス』と言う名前の女性だ。ちなみに僕は彼女にアリサさんと呼びかけているんだ。何故かというとこの人の機嫌が悪くなるからだ。

「それで、だ。君は一体どうしてあんな無茶なことをやっていたんだ? いくらスキルを持っているといっても、あれはあまりにも無謀過ぎるだろう」

「いや、ですがあの時が一番上手くいきそうな手段を選んだだけで、実際に上手くいったんですよ? それにアリサさんの鑑定の結果では、僕にスキルを与えればレベルも上がる可能性が高いって話じゃないですか」

「それでもだよ。私が言いたい事はそこじゃないんだ。私が怒るのは、だ。君が死にかけたという事実が気に食わないんだ。君が死んでしまえば私の命が失われてしまうだろう。だから私の為にもっと慎重に行動してほしいと言っているんだ」

「アリサさんの命? それどういう事なんですか? そんな危険な場所に居たんですか?」

「ああ、そうだ。私は魔王を倒すべく、ある場所に向かっている途中なんだ。だからもしも君が死んだりしたら元の世界に帰る方法を失ってしまうかもしれないだろう?」

アリサの言葉を聞いた僕は思わず首を傾げてしまった。だってその説明が本当だとすると。僕がこの異世界に来たのはそのアリサが向かっていた場所の近くであって、そこに僕は飛ばされて来たことになる訳で。そしてこの異世界には『勇者召喚の儀』と呼ばれる儀式が存在していて、その術式は失われており、その魔法が発動しない状態になっているらしい。なのでその失われたはずの『勇者召喚の儀』によって、なぜか僕がこの場所へと呼び出され、その結果アリサが巻き込まれる形で一緒にこちらへやってきたんじゃないかというのが、このアリサの話だ。

ただ僕自身には『無知の知』があるので、この話が全部本当かどうかを判断することは出来ないんだけど。

僕が戸惑っている表情を浮かべているのを見たのだろう。アリサがため息交じりでこう言った。

「どうやら信じてはいないようだな。まぁそれも無理はないとは思うが。そうだな。ならばこの世界での『ステータス』について教えておこうか。まずは自分の持っているスキルの確認から始めるぞ。そうすれば私が言っている事が嘘かどうか判断がつくだろう。『超幸運』を私に見せてみてくれ」

それから僕は自分のステータスを確認する。そして『鑑定Lv.3』を使用してアリサにステータスを見せることにした。

山田マサシ 年齢 18 性別 男性 Lv.1/99/100(MAX)

生命力

:3/1050

魔力量:3020/4300

筋力 :515

耐久 :655

精神力:252

俊敏性 :1265

スキル:『超幸運』Lv.1/

『鑑定Lv.3』Lv.1/

詳細: 発動中、幸運補正+50%。更にスキルの経験値が獲得出来るようになります。

***

「なるほどな。これはなかなか面白い能力を持っているようだな。それに君のレベルは100を超えているんだな。普通に考えれば、これほどの力を持った人間は滅多に現れないだろう」

僕の能力を確認し終えたアリサはそう言って笑っていた。確かにステータスの数値だけ見れば、かなり凄いのかもしれない。でも僕から言わせてもらえば、まだまだ全然足りないってのが正直なところなんだよな。

アリサは僕の方を見ながら楽しそうにしていたけど。でもアリサが僕を見る視線の中には何か違う感情があるように思えたんだ。

その日の夜。アリサが夕食を用意してくれた。メニューはカレーライスでとっても美味しかったんだけど。でもなんだかアリサからの視線がちょっと気になって仕方なかった。僕が何度話しかけても上の空っていう感じだし、僕がアリサの顔を見ようとしても視線を逸らされちゃうし。どうしたもんかと思って悩んでいたんだ。そして僕が食事を終えた後に部屋に戻ったところで、僕の方をじっと見つめてきたんだ。僕は少し怖かったけれど、頑張ってアリサに声をかけてみた。そしたらアリサから思いがけない言葉を聞く事になった。

「君に話したいことがある」

僕はそのアリサの口から放たれた一言で一気に緊張してしまったんだ。なぜなら今までに聞いたことがないほど、真剣でどこか寂しそうな口調だったからだ。もしかしてこの世界に来てしまったことでアリサとの関係が崩れるのかなって思って少し不安になった。でもアリサの口から告げられた内容は僕が想像していなかったものだったので安心したんだ。

アリサは僕が思っていた通りこの施設の『マスターキー』という役職を与えられていて。施設内を自由に行き来することが出来る権限を持っているんだって。なので僕の部屋の様子を見にきたついでに僕の世話をしようとしてくれていたみたいだ。まぁそれはいいんだけれど。それよりも僕としては聞き捨てならないことがあったんだ。

アリサはこの施設を仕切る立場に居るらしく。アリサが僕のことを気に入ったのであれば施設で働く人達全員から好かれる可能性があるという。なので僕はそれを信じてもいいかどうかを迷ったんだけど、最終的には信じることにした。だってここで変に断ったりしたら逆に面倒くさくなりそうな気がしたからさ、ここは素直に従うことにしたよ。そうしたらなんとアリサから「私のことを信じて欲しい」なんて言葉を貰ったんだよね。もしかして脈有り?いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、そんな事を考えちゃダメだって!相手は年上なんだよ? そんな訳無いじゃん。でもなんか嬉しそうにしているような気がするけどね。もしかすると僕って騙されているんじゃ?でもまぁ今はそんなことを考えていてもしょうがないかな。

それにこの施設って結構大きいんだけれど、アリサ曰くここはまだ『入り口』のような場所でしかないんだって。これから先にどんどん施設は大きくなっていくらしく、最終的に『魔城』みたいな見た目になってしまうらしい。なので、今は施設がここまででとまっているんだとか。そしてアリサの目的は『魔王を倒すこと』だというんだ。だからそのために僕は必要だと思っていると伝えて来た。

魔王ねぇ。一体どんな人物なんだろ?というかさっきの説明だとその魔王とアリサは戦おうとしているみたいな言い方だよね?しかも一人で魔王を倒しに行くつもりみたいだし。それなのにアリサってこんな小さな女の子でしょ? やっぱりこの子はおかしい子なんじゃないかって僕の中で疑いが深くなってきたんだ。

それから数日間、アリサは僕に対して色々と説明を続けてくれて。僕をここに呼び寄せた理由や、どうしてこんな状況になってしまったのかなどを教えてくれているんだ。僕を呼び出したことに関しては魔王と敵対関係になってしまったから助けて欲しいということなんだそうだ。だからアリサと一緒に魔王を倒してくれないかと言われているんだ。魔王を倒す為の手伝いとして。僕は『無知の知』を発動してアリサから聞いた情報を全て確認した。その情報はどれも本当だと感じたんだ。

それに僕自身の『鑑定』を使って改めてアリサを見てみたんだ。そして『無知の知』によって手に入れたアリサの能力を確認したところ、彼女は僕が見たことのない職業に就いている事が分かったんだ。この『マスターキー』という職業に就いていてレベル99のアリサの能力はというと『神剣の使い手』『無職を極めるもの』というものだった。ちなみにレベルがカンストしている理由はというと『無知の知』の効果が働いているかららしい。『無知の知』がレベルを上げるとステータスが上昇するので、それを利用して『マスターキー』のレベルを上げた結果らしい。

つまり『無知の知』のレベルが1上昇するたびに、アリサのレベルも上昇していったということになる。その結果レベル99になったというんだ。アリサのステータスを確認している最中に気付いたんだけど、アリサにはスキルが存在しないようで、そのせいで『超幸運』の効果を得ることができない状態になっているんだ。それでステータスも大幅に減少しているようだ。だけどスキルが使えなくなった代わりに『聖属性魔法』や『無詠唱』等の魔法を使えるようになったので、それで戦うことができるのだとか。あと『鑑定』などの基本的なスキルは使うことが出来るそうだ。ただこの異世界では『勇者召喚の儀』が使えない状態で。そのため『魔王を倒すための仲間を自分で集める』必要があり、その為の条件として、僕に『鑑定』能力を与えたと言っていた。だから魔王を倒す為に僕が必要なのだというのだ。

ただその話には疑問点があった。なぜその『魔王を倒すための仲間を集めるための条件』が、僕がこの施設にやってこなければ達成されなかったのかということだ。それに『超幸運』が発動していないアリサにはこの世界で生き残ることが難しいのではないかと思ったんだ。アリサの話から察するにこの世界のモンスターはかなり強い存在になっているはずだし。僕自身にアリサを守るだけの力は無い。なのでこのアリサの話を聞いて僕には一つの仮説が生まれていた。

このアリサが言っている仲間を集めるためという条件。実はそれこそがアリサにとって都合の良い『勇者召喚の儀』なのではないかと。このアリサはきっと『勇者召喚の儀』で呼び出されて、この異世界にやってきたんだろう。

『勇者召喚の儀』というのは本来なら魔王に対抗するために必要な『魔王を討伐するための戦力をこちらの世界へ呼び出すための術式』なのだ。それをアリサは僕という『偶然にも巻き込まれた形』でこちらの世界にやって来たのではないだろうか。だから僕に『超幸運』の力を与えて、この異世界で生きるための準備を整える必要があったのかもしれない。そしてこの異世界に存在する『勇者』は恐らく既にこちらの世界で亡くなってしまっているか、もしくは行方不明の状態になってしまっているのだろう。

だからこそアリサが言っていた、この異世界で生き残っていくためには『僕のような人を見つける必要がある』という話になったのではないかと考えられる。

まぁ結局はそのアリサの考えが合っているかどうかを知ることはできないんだけどね。とりあえず今のところアリサに敵対する意志はない。むしろ彼女の願いである『魔王を倒せるだけの人材を集めて一緒に戦うために僕に手伝って欲しい』という言葉に嘘はないようなので信じようと思っているんだ。それにこの施設は僕の知っている世界とは違って色々な意味で常識外の存在だと思うし。それにアリサが言った「私が君を選んだ」っていう台詞も凄く気になるんだよね。だから今の段階で僕は、このアリサのことをある程度は信用してもいいんじゃないかなって考えているんだ。

「あーあ、僕もラノベ作家になりたいなぁ。あっちの世界じゃ、僕がどれだけ必死に書いたところで売れるわけがないんだよなぁ。でも僕がラノベ作家として生活するためにはこれくらいの覚悟が必要だったのかもしれない。でももう僕には無理なんだなぁ。諦めて仕事を探すしか道は残されていないんだな。はぁ、本当になんであんなことになったんかなぁ」

僕が異世界に来た翌日。朝起きて食堂に行くとアリサの姿が見えなかったので僕はアリサを探してみたんだ。そうしたら昨日案内してくれたアリサの部下の女性に声をかけられて僕はアリサの部屋まで行くように指示されたんだ。僕は指示されるままにアリサのいる部屋の前まで行ったんだけれど、そこにはなぜかアリサが立っていてさ。僕を見るなり抱きついてきたんだよ。「えっ!?ちょっと!?ちょっとちょっとちょっと!?な、なにしてるんです!?離れてくださいよ!!」って言っても全然離してくれないしさ。

アリサは僕の胸に顔をうずめながら、小刻みに震えているんだ。でも僕の胸からはアリサの心臓の鼓動は聞こえてこなかったんだ。

もしかして幽霊だったり?とか一瞬考えたんだけど。どう考えてもこの施設のマスターが、僕に対して好意を持っているなんてことはありえないと思うんだよね。だって僕だよ?そんなの信じられる訳が無いじゃん。でも僕の目の前にいる少女が『マスターキーのアリサ』だという事を考えると、彼女がマスターキーと呼ばれる存在で。『魔王』を倒す為の重要な存在だと考えれば一応納得ができるような気がしたんだ。まぁそんな事は絶対にあり得ないんだけれど。

僕とアリサはそのまましばらくお互いに何も言わずに、ただ立ち尽くしていたんだけど。アリサは僕から身体を放すと、何かを言いたそうな表情をして僕に視線を向けてくる。僕はなんで急に抱きついて来たのか理由を尋ねてみることにした。

そしたら

「ごめんなさい。貴方のことを見たら何故か無性にこうしたい衝動に駆られてしまった」

なんて言い出してさ。僕は正直困惑してしまったよ。そんな事言われても、いきなり女性からこんな事をされて喜ぶ男はいないだろう?しかも相手は見た目は幼い女の子なんだよ? そんな風に僕が思っている事など全く気にしないかのように、アリサは真剣な眼差しで語り始めたんだ。僕を呼び出した本当の理由についてね。

アリサは言うんだ。僕のスキル『無知の知』が欲しかったんだって。そしてそれは僕の想像通りのものだった。アリサ曰く、僕の持つ『無知の知』を使えば、魔王と戦うための仲間集めの方法が見つかるかもしれないと考えていたんだって。だから僕のことを探していたんだって。

僕はアリサの言葉を聞いて

「なんだか大変なことに巻きこまれてしまったんじゃないか?」

と改めて思った。だって僕はこの施設に来てまだ二日目だぜ?

その二日間で『勇者召喚の儀』によって呼び出され、魔王を倒そうと戦ってきたはずのアリサと出会った上に『仲間を一緒に集める』ための手伝いをするって言われたんだ。普通なら絶対について行かないよね。

アリサの説明によると僕をここに呼び寄せた理由は三つあったんだ。

一つは『無知の知』を発現させることにより、僕のレベルが上昇させるため。

二つ目に、レベル上昇の際にステータスが上昇することにより『勇者』としての力を開放してもらえるからだと言うんだ。

そして三つ目はアリサと一緒に『勇者』達を『召喚の陣』で呼び出してほしいというものだった。

『無知の知』を発現させる方法だけど。まず最初に『神眼』を持つ人間に対してアリサの『マスターキー』が持つ『鑑定のスキルカード』を使用させてもらうことで『無知の知』の『解析者』を発動することが出来るようになるらしい。その『無知の知』というスキルを使用する為の方法は、『神眼』の能力を使って『鑑定』を発動すると現れる『情報窓』という欄から情報を確認することが出来る。その情報をタップすることで『情報』として保存しておくことが出来て『情報表示機能』によっていつでも閲覧することができるらしいんだ。だから『神眼』を発動させて『情報窓』を開き、僕に触ったままスキル『マスターキー(仮)』を使って僕の中にある情報を読み取ってほしいらしいんだ。

この施設の中でレベルを上げていくうちに、僕の能力が進化していく可能性があるんだそうだ。ただそれはあくまで『希望的観測に基づいた予測』でしか無いんだけれどね。まぁとにかく今は僕のレベルを上げる必要があるみたいだ。僕にはそれがどういう事なのか分からなかったんだけれどね。

「そうか、それじゃ仕方ないか」

「うん、分かってくれて嬉しいわ。でも大丈夫よ、きっと何とかなるわ」

アリサは僕に抱きつきながらそんなことを言うんだ。きっとこの子にとっては当たり前のように言っている言葉なんだろうけど。この子の話を聞く限り、ここは異世界なんだぞ?僕には何も分からないんだし。それに『魔王を倒すための戦力』を集める為に『勇者召喚の儀』でこちらの世界へ来ているんだろ?そのアリサに僕が手伝う必要あるの?という疑問もあったんだ。だけど、アリサのその笑顔を見ていると。なんだか僕もどうにかなるんじゃないかという気持ちになってきてしまって。だからこの施設にやってきて初めてのお願いを叶えてあげることに決めた。

まぁぶっちゃけちゃうとね、このままだと本当に仕事を探すしかない状態になりつつあったのでアリサに協力するのは悪い選択じゃないなって思っていたんだ。それに異世界へ来る前の僕には友達なんて一人もいなかったんだよな。僕がこちらの世界にやってきたのは昨日の事ではあるんだけど。その時、僕のことをずっと心配して待ってくれていた家族に電話する事も出来なかったし、そもそもお金が無くて携帯すら買えない状態で連絡を取ることが出来なかったんだよな。でも、今考えてみるとあの人達は僕の身に起こったこの異変を知ってしまっているかもしれないんだ。もし僕が行方不明になった後に警察へ届けが出されているのであれば、捜索願が出ている可能性は高い。だから早く家に帰って事情を説明してあげたいっていう想いもあって。だからこの異世界で『勇者召喚の儀』で呼ばれた勇者達の協力をするのは悪い選択ではないと思えるようになったんだ。そして僕はこの施設にやって来た最初の日から、このアリサと共に行動するようになったんだ。

それからの日々は本当に色々な出来事があった。

『勇者』が『魔王』を倒す為の人材を集めるためには、この異世界では『魔石』を集めないといけないらしくて。僕はその魔石の採掘を手伝うことになったんだ。まぁ、アリサと二人だけの秘密にしたいって理由でアリサから『秘密の工房』を貸してもらったおかげで、アリサの作業場に行くことなく『鉱石探知機』が使えるようになったのは大きかった。

それにアリサも『魔王』討伐の旅の準備をしている間。僕がこの世界の事について詳しく知りたいと言っていたので色々な事を教えてくれた。例えばこの世界に『魔王』が誕生した経緯だったり。この異世界にある七つの王国の内、今現在この世界に存在する国は六つで。その全てを支配している『魔王』の治める国が『帝国グラン』で。『勇者』が魔王を倒す為の手助けをしてもらいたいという話をしてきた『アルクス共和国』がある『連邦ルイン』を支配する魔王が『魔王バルザック』という名前である事も分かった。

他にも『世界地図帳』、『魔物大全』、『魔王伝説集』、『古代竜の伝説』などなど色々見せて貰った。

そして、僕はそれらの知識を使いながら『神眼』で得た『解析者のスキルカード』『解析者の魔導書』『情報検索画面機能』などを利用して、僕の持っている能力をさらに進化させるために研究を続けていた。その過程で僕の持つユニークアイテムは僕と深く関わりのある存在だということも判明した。つまり僕は自分の持つユニークアイテムの特性を理解しなければならないということになるんだけれど。それは思った以上に困難な道程となった。

まぁ、簡単に言えば。アリサは僕の『情報検索の魔法具の杖』のことが気に入ったようでね。僕に貸して欲しいと言われたので渡そうとしたんだ。ただその時には『鑑定』で僕の『解析者のスキルカード』で僕の所有する全てのスキルを調べてから渡すようにと言われてしまった。まぁ『解析者』が『情報表示機能』で僕のステータスを閲覧できるのだから当然なんだけどさ。

そして僕の持つ武器についても『鑑定』によって調べることが出来た。僕の所持する全ての武具の詳細を見る事が出来たんだけど。この世界に来て初めて知った事実なんだけどさ。僕のステータスってば凄いことになっていたんだ。僕はそれを実感するために、『神剣エクスカリバー』を取り出したんだ。そしてステータスを確認してみたら。こんな感じの文章が表示された。


***

上坂真也

職業:無職

年齢:15歳 性別;男性 Lv.40 HP 4200/4201 SP 5100 MP 50000000 STR(力)

206(500)

INT(賢さ)

100 DEX(器用)

50 SPD(素早さ)10 MPR(魔力)

1 EXP3999(上限まで残り1000ポイント)


***

うん、意味不明すぎる!なんだこれ!?どう見てもおかしいよね? ちなみにアリサのレベルと能力値は『勇者召喚の儀』を行う前に確認できたものと同じで、アリサに聞いたところによるとアリサのレベルは42で、能力値は『STR(力)252』に設定されていたらしいんだ。僕のステータスの数値が『3』だったのでその異常性が際立つ結果になっている。僕の場合だと、普通の人が一生かかっても得られないくらいの強さを持っていそうに見えるのだ。しかもその異常な数値のせいで、僕は『無職』扱いされている。

しかも『無知の知』のおかげで鑑定系のスキルが強化されており『情報閲覧機能』というスキルが新たに獲得されていた。これによって鑑定対象の項目を自由に選べるようになっていたので。僕が『無知の知』で獲得した『情報窓』で表示されている文字が『日本語』になっていたことに気が付けた。だからアリサにも教えてあげられたんだが。僕には『無知の知』という称号スキルがあり。これは僕に関係した事柄が記された情報が表示されるようになる効果があったんだ。ただ『神眼』による説明は表示されるのだけど。『解析者』による詳細な解説は表示されなかったのが不思議といえば不思議なんだけど。おそらく僕の『無知の知』が持つ固有特性の影響だろう。だってアリサが『解析のマスターキー』を使用して僕に触りながら鑑定した結果。アリサは僕のステータスを見た際に驚きを隠せない表情を浮かべていたからね。

あと、アリサと一緒に行動するうちに、僕が『勇者召喚の儀』に巻き込まれた際に手に入れた装備についての説明も受けることができた。僕が最初に身に付けていた『聖銀の騎士鎧』についてはアリサ曰く。

『聖銀の勇者』が持つに相応しい防具だということが分かった。なんでもその『聖なる加護』を持つ『聖銀』で作られた武具を身につけているだけで、その効果は計り知れない物となるそうだ。そして『神眼』の能力を使って僕のレベルとスキルの『神気』を確認すると、『聖気』という項目が存在したらしい。アリサが『マスターキー』の能力で確認したところ『勇者』と『無職』の違いは、『聖』が付くか否からしい。つまり僕はレベルを上げることで、いつかは『神気』を習得することができるらしいんだ。

次に僕が身に付けていた装備品なんだけどね。これが問題なんだけど。僕にはこの世界において特別な能力を持っている『アーティファクト』という代物が与えられていたらしいんだ。それが『魔石融合の法具』と呼ばれるもので。これは『無垢なる賢者の指輪』の『無属性魔法の極意』と同じような機能を持っており。僕が魔石に触れればそれを吸収し、様々な種類の『魔石融合の法具』を作成する事が出来るというものだった。で、その作り方についてなんだけど。この世界に現存する魔石に、僕が所有しているユニークアイテムやこの世界で僕が入手し、所持している素材などの情報を組み込む事で、魔石を魔道具化する効果があるんだ。つまり僕はこの世界で僕が持っている『アーティファクト』を作り出す事ができるという事になる。ただ、それだけじゃなかった。僕がこの世界に持ち込んだ物品も『魔道具』として作り出すことが出来るようなんだ。この施設には、この世界に存在しない物質の加工ができる『錬金釜』も用意されている。僕にこの世界の技術で『魔道通信装置』を作るように指示された。

『魔王』の討伐の為に戦力を集める為に『世界転移の門』でこちらの世界へ呼び寄せられるのが、『異世界からの召喚』だ。だから『勇者』の僕にその資格がないというのはあり得ない事だった。だから『勇者』ではないものの。この世界では僕のことを戦力として扱う事が可能な『魔導師』にしようという話だった。

で、話を戻すけど。『解析者の魔導書』は、僕が所有する『魔石融合の宝具』である『魔法銃』の情報を知ることができた。その魔法銃だけど。この魔法銃の威力がヤバかった。僕の魔法と相性がいいのか。それとも魔法剣のような使い方をすることで、攻撃力を増すことができるのか。それとも魔法を使う際の燃費効率が良すぎて。僕のMPを消費しながら発動させた場合でも、僕自身の消費MPがほとんど無くなっていた。

それからこの魔法銃は僕のユニークアイテムでもある『魔導師の手袋』と併用する事が可能となっていた。

僕はこの施設に来た時に『魔石融合の魔杖』、『魔石合成の杖』、『魔石分離の杖』を手に入れていて。これらは魔法杖としても使用することが可能だったので。魔法攻撃を行う時はこれらを装備していればよかったのだが。僕の『解析者の魔導書』によって、これらの魔法杖の性能をさらに上げることが可能だということも分かった。で、これらの魔法杖と『魔石の指輪』、『神装の盾』を組み合わせればいい感じに使えるんじゃないかなって思っているんだけどね。

そんなこんなで、僕も少しずつ準備を整えていき、遂に旅立つことになったんだ。

僕はアリサの工房を後にして『魔石の洞窟』に向かったんだ。そこで『鉱石探知機』を使い『ミスリル鉱石』を探し始めた。すると、すぐに目的としている『鉱石』を発見する事ができた。

『鑑定』

『鉱石』

詳細不明の鉱物。


***

僕は目の前の岩に目を向ける。見た目的にはただの岩なのだが。僕の持つユニークアイテムの一つ。『情報検索機能』によると『解析者の魔導書』で検索した所。

『神鋼』と呼ばれる鉱物の塊であり、非常に硬度が高いうえに魔法に対して高い抵抗値を持ち魔力の通りもいい為、武器に使われることが多く。更には特殊な金属を精製する材料として使われることもあるのだという。ちなみに僕の持っている『魔導具生成』で作り出した魔法杖の材料に『魔法銀』というものが使用されている。この二つの合金を作ることで、魔法武器が完成する。ただし、作成する場合にはかなりの技量が必要となり、熟練の職人でさえ成功させる事が困難なほど難易度が高くなっている。ただ『解析者』によって解析した結果。その製法のコツは理解できていた。そして、今僕の手元には、その魔法杖を『魔道融合の杖』に変えるために使うための『鉱石』が存在する。

「よし!早速やってみるか」

僕は自分のステータス画面で『解析者の魔法杖』の詳細を確認した後。『解析者のローブ』を『魔道士服』へと変化させ。そこに『神鋼』を組み込み、『神気』の力を込めることで『神鋼』を魔法杖に変化させる作業を開始した。その結果、僕の『情報検索機能』が起動され僕の頭の中に一つの情報が表示されるようになった。僕はそれを参考にしながら、『解析者の魔法杖』に魔力を込めたんだ。すると僕の視界には複数の項目が表示されて。その中には『MP』や『魔素』などという言葉もあり。それらは全て『解析者』による解析により数値化されているものだった。MPに関しては『解析者』による解説で簡単に言うと僕の保有するMPのことを指し示しており、これはレベルアップによって増加されるようだ。SPについても『解析者』による解説で説明するのであれば、スタミナの事を指し示しているようだ。そして僕のSPの上限値は99で止まっており。その数字を増やす事で僕の身体能力を向上させることができるらしい。『解析者の杖』が生成することのできる魔法杖の種類についてだけど。『情報検索』の能力で確認できる限りだと『炎』に関する『属性』『風』の二つが存在し、それ以外にも色々な種類の魔法杖を作り出す事が可能となっている。僕はそれらの説明を見ていて、まず試すべきなのは何の属性の『魔導器』を作り出すべきなのかという疑問が生じたので、僕はアリサに相談をしようと思い工房へ向かったんだ。アリサが僕と行動を共にしてくれているという安心感があったので。一人で考え事をするという行為に躊躇いを覚えてしまったからなんだよね。

工房には相変わらず誰も居なかったので僕はアリサの居場所を探してみたんだ。でもアリサはどこにいるか分からないので。アリサの持ち物に何か連絡手段になるようなものがあるのではないかと思った僕はアリサの私室へ向かうことにしたんだ。アリサは『情報検索』を使って確認した所、どうやら僕の泊まっていた宿屋の部屋に居るようだったので部屋に向かう事にしたんだ。

アリサは僕の顔を見ると驚いたような表情を見せながら僕の元に近付いてきた。アリサが手に持っていたのは一枚のメモ書きのようで、それを見た僕の胸は締め付けられるような気持ちになっていた。その手紙の内容とは『勇者召喚の儀式』に巻き込まれてこちらの世界に来ているはずの僕の仲間達が行方不明になっており。『魔王』を倒す為に必要な存在である僕を仲間達の元に帰す方法を探る為に、僕がここに来るまでの時間を稼ぎたいという内容のものが書かれているのであった。

僕の胸に去来するのは不安と焦燥。そして後悔の念だった。

アリサの表情は必死になって冷静さを保とうと心掛けているが、その頬を流れる涙がアリサがどれだけ辛くて苦しい心境にいるのかを表しているような気がしていたんだ。アリサの口から語られる言葉には嘘偽りがないのであろうことは疑いようがなく。その事実が、余計に僕の心を蝕んでいたんだ。僕の心の中にあった感情は罪悪感でいっぱいだった。僕は自分が巻き込まれている『召喚儀式』に巻き込まれた際に『勇者』になってしまったという事実を告げることができなかったからだ。『解析者の魔導書』の能力を知っていたなら僕もすぐに真実を打ち明ける事が出来たはずなのに。

僕の『魔石融合の法具』を作る能力と、僕のレベルが上がっていることによって新たに手に入れた『アーティファクト』の素材を合成する能力を利用して『魔導融合の法具』を作る事ができれば僕のレベルを『無職』のレベルに戻すことが出来るかもしれないという話を聞いた時に、僕はそのことを真っ先に伝えておくべきだったのだ。『無垢なる賢者の指輪』を素材として使い、『賢者の指輪』を作り直せばいいと伝えただけで僕は、その先にある問題を伝えずにいた。僕は、そんな自分自身の浅はかな行動のせいで大切な仲間たちを失う事になりそうになっている。僕も覚悟を決める時が来ているようだ。『魔石融合の宝具』を作り出すためには『解析者の宝玉』が必要になるが。それをどうにかすればきっと何とか出来るはずだと僕は考えていたんだ。僕には、まだ希望が残されているんだ。『解析者の宝玉』さえあれば僕だってこの世界で戦って行けるし、皆の手助けもできる。だから絶対に『解析者の魔導書』を完成して見せる。僕はそう決意を新たにしてアリサの部屋を後にしたんだ。

僕の工房に戻った僕を出迎えてくれたアリサは、工房内を物色していて。僕の装備品を勝手に弄っていたんだ。

「なにしてるんだ?僕の大事なものなんだけど」

僕はアリサの行動に若干イラつきを覚えたけど。まぁ別に大したものは無いしいいやって思ったんだ。でもよくよく考えてみれば。アリサはこの世界の人じゃないんだから、僕の『解析者の宝具』とかを見てもなんのこっちゃだもんね。それに僕は、今の自分のステータスを確認していたから。アリサが何をしているのか気になったのもあって少しの間放っておいたんだ。僕は僕の『解析者の魔導書』が作り出す『魔石融合の宝具』の詳細を改めて見ていたんだけど。そこには、こう書かれていた。

名称:『魔導融合の杖』

詳細:魔力効率の良い『魔導杖』を作成する事が出来る

効果 :MP+10/STR+1 DEX+1 AGI-1(装備者の魔力依存)

備考

:『魔導師』専用。MP消費1/100。MP消費量に応じて魔法の威力が上がる。

この杖を魔法銃の杖の代わりに使うと。この魔法銃は僕のレベルに依存する事になるだろうけれど。威力もかなり高くなっているのではなかろうか?僕はまだこの世界にきて一か月ほどしか経っていないから。正確な事はわからないが。それでも僕はアリサに声を掛けたんだ。そして僕は『情報検索』を使い『ミスリル鉱石』を取り出すとアリサに見せてみたんだ。するとアリサはその『魔導融合の杖』を使うために、僕の作った『魔法銀』のインゴットを取り出して。僕の目の前で魔法武器に変化させたんだ。その魔法武器の名称は『神鋼』というらしい。ただ、アリサの『解析者』の力を持ってしても『神鋼』の性能を正確に把握することは出来なかったらしく。それは魔法杖としての機能だけに特化した存在であり。その性能は僕の使っている『魔法銀』より数段上の性能を誇る魔法杖となるのである。

この『解析者の杖』が僕のステータスが反映されるものであるならば。僕にも強力な武器が作れるということではないだろうか?僕のステータスの魔力は500で止まっているが、この武器のスペックが、僕が元々持っていたMPの量を参照するとしたら魔力を500注げば、僕の魔力値に応じた威力の魔法を放つことができるはずだ。もちろん僕が持っている『魔導具生成』の『技能』によって生み出された魔杖のランクは僕の魔力で左右されてしまうので。僕の魔力を常にフルの状態で発動させるようにしないとならない訳だが。

そんな事を考えつつ。僕は、アリサの魔法武器が作り出した魔法杖『魔法銀の杖』をじっくり観察することにする。

その『魔法銀の杖』の詳細画面を見ていくとその機能は多岐にわたっており。杖の先端部分と柄の部分に異なる素材が使われていることが見て取れるのだが。まずは、先端部分に存在している魔石を加工して杖内部に組み込み強化しているようだ。その魔石の属性が火や水のような属性変化ではなく。純粋に攻撃のための属性に変化させられるようになっているようで、例えば火の玉を撃ちだすことが可能になったりするようだった。ちなみにその杖は、魔素を取り込むことにより、攻撃力が増加するような機能があるようで。これは僕の持つ『解析者の法具』『解析者のローブ』『神鋼』や魔素を吸収し蓄積する機能を有する素材『オリハルコン鉱石』の粉末を使用することで実現できている機能であるようだ。

次に柄の方なのだがこちらも凄い技術が使われていた。なんといっても、僕のレベル上昇によって得た新たな能力により強化された『解析者』の能力で表示されていた『情報検索機能』により、僕の視界上に表示される情報の中には、『解析者』で解析された結果が表示されていたのだ。

名称は、アリサの魔法武器と同じく『神鉄』と言うようだ。その情報には、このような内容が記載されていた。『魔力親和性に優れ、魔法への干渉力が高いため様々な魔法との併用が可能な万能金属。また硬度も高い為、武具の作成に適している』『加工が容易く。魔法道具の材料に適しているため、魔法杖に使用されることが多い。その為に魔法杖に使われることも多いようだ』と記載があり。アリサの魔法杖が作り上げることが出来る魔法武器がこの魔法銀の杖と酷似していることから考えると。この『解析者の宝玉』は僕の知る範囲での全ての知識を収集することが出来て、なおかつそれらの情報を自由に閲覧することが可能なのだろうと推察できるものであった。

ただ、これらの情報を読み解いて行くと。僕はとんでもない事に気が付いてしまったんだ。そう、つまりは――

この魔法金の棒は、僕の魔力をそのまま変換して、魔法の行使に必要な要素に変換して放つ事ができるということだ。

『アーティファクト級:魔導具作成の宝具

製作者:上坂真也』

名称『アーティファクト』:神が作りたもう奇跡の品。世界の法則を無視してその現象を引き起こすことが出来るが。それ相応の代償を必要とする。

これこそが『解析者の魔導書』に隠された機能の正体であったのだ。僕には、僕の持つこの『解析者の宝玉』を使って作ることの出来るアイテムの全てを解析することができるようで。この杖についても詳細に鑑定が可能になっていた。その結果、僕は自分の予想していたことが全て的中していたことを知り驚愕することになった。僕の考えは間違っていなかったんだ。僕はアリサに対して『魔石融合の法具』を作るためには必要なものが『賢者の指輪』だと伝えたのだが。アリサはそんなものは不要だという。アリサは、『賢者の指輪』を作る為に必要になる素材がミスリルだと思っていたようだった。しかし僕はそんな素材を使って『賢者の指輪』を作るつもりはないとアリサに伝えたんだ。アリサは『賢者の指輪』を作る為に必要な『ミスリル』は『魔石融合の宝具』を作り出すために必要な素材と同じ物だと言い出したので。僕は慌ててそれを否定してしまったんだ。僕は、その材料にミスリルを使用するつもりではなかったからなんだけどね。僕がミスリルで作るつもりだったのは。もっと別な物だったんだよ。僕が作ったことのある魔石を融合させた『アーティファクト』で『魔導融合の法具』を作れるかどうかを確認してみることにした。僕の頭に浮かんだのはある一つのアイディアだったんだ。そのアイディアを実行に移すために僕はアリサを一旦自分の工房から追い出してしまうことにした。アリサには悪いと思ったけど。今は誰にも見られたくないんだよね。

工房のドアを閉めようとした時にアリサが何か言っている声が聞こえたが、僕はその扉を締め切った。工房の奥には僕の作業台があり、そこには僕がこれまでに作り出した武器が並んでいるんだ。僕が最初に作り出した魔法剣の宝具から『魔導融合の宝具』へと進化した杖の宝具まで並べておいたんだけど、その中でも僕が取り出してきた魔法杖が異彩を放っているんだ。僕はそれを、アリサに見せないようにしながら『解析者の魔導書』を取り出し、僕は魔法を発動させる。すると僕の周りに光が渦巻き、僕は『魔法銀』で出来た杖を手にした状態で現れた。そう、僕がこの工房で生み出した最初の『魔導師の法衣』を着て『魔導融合の宝具』を手に持って『魔法銀』の杖を携えた姿なんだ。そうして、僕は杖の機能を試すことにしたんだ。

僕の作った魔杖に『解析者』を使い詳細を調べた結果。僕のレベルに合わせて魔力を込めなくても魔法を放つことができ、更にMPの消費も1/100になるという事がわかったんだ。そう『解析者の魔導書』によって生み出されたこの杖は、僕の『解析者の魔導書』のスキルと連動し、僕のステータスを参照し僕のステータスから消費される魔力量を算出し、MP1を消費しても発動することが出来るようになる杖のようで、消費MP1につき、MP1000相当分の威力を発揮することになる。

僕の『魔法銀』の杖で放った場合。MP10を消費すると威力が10倍に跳ね上がる。この世界の一般的な冒険者が使用するMPが平均20と言われているのだから、その効果の恐ろしさがよくわかるというものだろう。ただ、魔力を込めない状態の僕ではその魔法を100回程度しか使うことが出来ないのだけど。でも、その100回の魔法を1回放つごとに、僕のレベルが2上がり、僕のMPも徐々に上昇していくわけだから。その効果は大きいと言えるのかもしれない。

僕は『神銀』で作られている杖と、アリサが作り出した魔法武器を見比べてみた。アリサの『神鋼』で作られた魔法武器は『神銀』で出来ている魔法武器とは少し形状が異なっているのだが、それは僕の知らない『魔法武器の型』が存在していてそれが関係しているのではないかということが想像できた。おそらくその『魔法杖の型』と、アリサの作った『魔法武器の型』の形状は似ていることからも推測ができると思う。その『魔法杖の型』という物がどのような形状の物かは不明だが、その魔法杖が、魔法を使うための道具である以上、杖の機能に違いはなく、そしてその魔法杖の形は、この世界の冒険者が持っているような普通の杖では無いのではないだろうか? 僕はそう考えながら『魔法銀の杖』を観察していた。すると気が付いたのは。僕が作成した魔法武器は杖の形をしているが、『神鋼』で作られている武器は剣や槍のような棒状の物をイメージしていることに気付かされたのだ。

アリサの話を聞く限りではその魔法武器の形状は杖型の武器ではなく、そのように認識されている武器が存在しているのだという事だ。まぁ僕が作った魔法武器には、アリサのような武器を作成する為の要素が無いことも影響してそうなっているだけのような気もしなくもない。『解析者の魔杖』は確かに特殊な能力を有していることは間違いがないのは事実なのだが、それ故に僕が作らなければならない武器が特殊で複雑な形状になってしまうということも否めないのだ。

僕はアリサの『魔法金の杖』の詳細画面を見つめて、アリサが作り出した魔法武器を眺めていくと不思議なことが起こったんだ。『魔法銀の杖』と表示されている項目が点滅し始めたんだよ。まるで僕に話しかけてくるかのように。その表示はしばらく消えず僕は困惑したけれど、その表示に従って『神鉄のインゴット×3』、『ミスリル鉱石×2』を用意し、『解析者の魔導書』のアイテム生成機能を使用していくと、僕の目の前にアイテムボックスが表示されその中にあるアイテムを選択することで僕の手の中には先ほど作成した魔法銀の杖と全く同じものが出現したんだ。

僕は驚きながら手に持った『神鉄の魔導師』という称号の魔法金属の杖の性能を確認させて貰ったんだけど、僕の知っている通りのものだった。この魔導具の効果である魔法攻撃力増加の数値が凄まじく。しかもこの杖でならMP1で10倍と言う数値で発動することができるようだった。僕の予想通りだ。僕の作った魔導具が魔法杖として使用できると言うのは僕の仮説を裏付ける結果となった。僕はこの実験でアリサに嘘をついていたことが発覚したのだ。アリサには悪いと思いつつ、アリサにこの魔道具を鑑定してもらうことにしたんだ。その結果は――

『アーティファクト級:魔導具作成の宝具』

:『賢者の石』によって作られた魔法具。製作者:上坂真也:使用者が魔導士であれば、全ての魔法を使用可能とする。この魔法武器は使用者のステータスに応じた魔法の力を使用することができるが、一度使用した魔法を再度使用することは不可。ただし魔石を使用することで魔石の魔法は再使用する事ができるようになる』

僕は、その鑑定結果を見た瞬間。『解析者の宝玉』の事を思い出したんだ。その宝玉は所有者の能力値や、装備などを解析し表示するだけではなく、その人物が覚えたことのある魔法の一覧を表示することができたはずだからだ。

僕がそのことを思いつくのと同時に、この魔導具についての詳細を閲覧することが可能になったんだ。そうするとどうなるかというと、この杖がどういうものなのかを理解できてきてしまう。この魔導具は僕の作った杖のように、杖の形をしているのではなく、僕が所持していた『解析者の魔導書』に内包されていた『魔法書』と同じように魔法を行使することができる魔石がセットされ、その魔石には『解析者の魔導書』が組み込まれており、使用者が『魔法書』を開くだけで、自動的に発動してくれるようになっていたんだ。

その『解析者の魔導具』の杖を鑑定してみると、僕の考えた通りの事が書いてあった。これはまさに、僕の予想通りに使える魔法杖だったわけだ。まぁ『解析者の魔導書』から作り出された魔導具なので当然なんだけどね。ただ問題は僕自身のレベルで使用可能な魔法の種類がそこまで多くない点だ。僕は『解析者の魔導書』で表示される魔法の一覧を見て考え込んでしまった。僕は自分が扱える魔法を全て使うことができる魔法書が欲しかったんだけど。この杖の機能はそういうものでは無かったんだよ。

この魔導具は僕の作り出せる魔導具よりも遥かに性能が高く。MPの消費も少なく済みそうなので非常に優秀な魔導具だと思う。ただ僕が今欲しいのは、この魔導具で発動可能な魔法が僕の使える魔法よりも少ないということだ。まあそれでも十分に強力だとは思うけど、僕は『神鋼』で作った魔法武器が作れるんじゃないかって思ったんだけど、この魔法武器じゃ作れなさそうなんだよね。残念。

ただ僕はここで閃いてしまった。『解析者の魔導書』を使って、僕自身が新しい『アーティファクト級の魔法道具を作り出すことが出来ればいいんじゃないだろうか? 僕には『解析者の魔法書』がある。『解析者』の異能で『神鉄』を解析し作り上げることが出来た。だから『魔法銀の杖』を作る時に必要だった、神鋼を素材として使い『解析者の魔導書』で作ることが出来るのではないか?と。そんなことを思って僕は早速『アーティファクト』の宝具『解析者の魔導書』を使い『魔法銀』『神鋼』を解析して、宝具の作り方を確認することにした。

この魔法道具が僕が想像している宝具になるかどうかは分からないんだけど、僕は期待しながら画面を覗き込む。そこには僕の期待どおりの言葉が書かれていた! 僕は思わずニヤけながらその言葉を確認して行く。するとそこには――

【魔法銀の杖】:この魔法杖を使えば魔法を使用する際にMP消費が1/50に抑えることが可能となり、MP消費による魔法攻撃力の増加は2倍に強化される。この魔法杖を装備した時、MPの最大値が上昇し、魔法の使用回数も上昇する。また魔石の特殊効果を使用することで魔石を触媒とした攻撃魔法の使用も可能。なおこの魔導具の本来の性能は発揮されない。

(中略)最後に製作者である『神銀の魔術師』によって生み出された武器であるため他の人間が使うことは叶わず、『解析者の魔法使い』によってのみ使用できるようになる(以下無限に続く魔法銀の杖の説明文)

やっぱり僕の考えている通りだ!これであの時の夢のような状況になることが可能なはず!!そう思いながらも、僕はふとあることが気になり始めてしまい、考え込んでしまう。僕はアリサの作り出した魔道武器を見ながら、アリサに質問してみることにした。

「アリサさんはどうしてこんな凄い物が作れるようになったんですかね?」

僕がアリサの魔道武器を観察しながら、不思議そうな顔をしながらアリサの作り出した『魔法武器の型』を眺めていたら。

「えっ、ま、まさか。これって凄いんですか?」

アリサがキョトンしたような顔をしながらも僕の方を見てくる。僕とアリサでは『スキルランク』が違うのでその辺の差がよく分かっていなかったようだ。アリサは僕が作った魔導具の性能に驚いているのかと思っていたみたいだけど、僕は違う。

この『魔法武器の型』を作ったのが、異世界人の女性というところに着目したいと思った。異世界人と言っても、異世界から来たというだけじゃない。僕たちのような異世界人は転移や転生してきた人間というわけではなく。普通にこの世界に存在し続けているので、異世界人としては珍しい存在ではないのだ。つまり異世界人と一括りにしても異世界で生活していて、尚且つ、僕の知っているようなスキルを持っている人がこの世界には存在する可能性があると言うことだ。それならばその人に『神銀の鍛冶職人』になってもらうことができれば、魔導武器の『型』も再現できるようになるかもしれない。僕たちはそう考えたのだ。それにこの魔導武器があれば僕の考えていたことが全て可能になるというわけなのだ。

『神鋼の鍛冶屋』に会わなければならなくなったが、アリサのおかげで『神鋼の魔法武器』と『アーティファクト級:神鉄の魔導具』の入手方法を手に入れることに成功した。僕は興奮が抑えられず、早く帰って研究したい衝動に駆られたのだが。まだ『アリサにお願いを済ませてなかった』ことに気が付き、僕はアリサに『お話』をしてみたんだ。

僕たちの会話の中で一番最初に話題に上がったのは。僕の能力の事で間違いはなかった。

僕の能力は、異世界に来たことが影響しているのは間違いがない。そして僕のレベルと職業、称号も、その影響を受けているのは間違いないと思われるのだ。

僕のステータスには『異世界の訪問者』という称号があり、その称号の効果により僕のステータスに補正が入っていることは疑いようのない事実だ。それは、ステータス画面に表記されている僕のレベルの横にある数値が、『異世界の旅人』よりも上昇していることからわかる。この世界でのレベルが100になると『異世界の訪問者』の称号が取得できる。僕は既に『異世界の旅行者』を取得していたのに、この世界でも新たにこの称号を取得したと言うことになる。『異世界の勇者』のように、何かの条件で称号が変化するということもあるので何が原因なのかまでは特定できなかった。称号の効果は、HPとMPが+300されるという効果であり、この世界の人間はMPと魔力が元々持っている量がかなり多いので、MPと魔力のプラス分はあまり効果がないという印象だった。

僕自身に『鑑定』の能力を使ったところMPが500になっていたことから、このMPが関係していると言うのは確かなんだと思う。『魔法剣士』になった時も同様にMPが増えていたことを考えると、この『勇者』系の称号が僕のステータスに影響をもたらしている可能性が高いように思えたんだ。僕のこのステータスを確認させてもらいたいという事だったので、僕はスマホを取りだして『神銀の鍛冶屋』のステータスを確認させたもらったのだ。その瞬間――

「う、嘘!? そ、それ本当に『神銀の鍛冶屋』様の『ステータス』なの?」

僕はこのステータスを『解析者の魔導書』を使って調べたところ。間違いなくこのステータスで間違いがないようで、その情報を基に僕が考えたのが。『魔法杖作成の宝具』の作成に必要な物では無く。僕が新しく作成可能な『アーティファクト級』の魔導武器作成のための材料として『賢者の石』が必要になってくる。『賢者の石』を作るためには大量の魔石が必要となるんだけど。魔石には色々あるんだけど、僕が作ることができる石は『神晶石』『神玉石』『神石玉』の三種類の『賢者の石』を作り出すことが出来る。この『賢者の石』を作るために必要な『賢者の水』については僕の錬金釜を使えば作れるから問題は無いんだけど。ただその前に大量に魔石が必要になるので、『神玉石』を作るために『魔石龍』を倒しに行かないといけなくなってしまったんだ。ちなみに『神玉石』と書いて『たまぎょくせき』と読むんだって。

アリサには魔導具を作ってもらってる最中に説明しておいたけどね。アリサに『アーティファクト級』と表示されている武器を作るように指示を出して、それを僕の工房に持ち帰らないとダメなんだ。それで、アリサの魔導杖を『解析者の魔導書』で詳しく見てみると。

【魔法銀】

この魔法の杖を装備した際、使用者が消費するMPが減少し、魔法攻撃の際に、魔法の威力を倍化することができる。

(中略)この魔導具を本来の性能で運用することはできない。製作者である『魔法使いの錬金術師:アリッサ=コーウェルルリの作った魔法杖の型で、彼女のオリジナルの魔導武器ではなく。他の人間でも装備することが可能な汎用品』である。

どうやら『神銀の魔法杖』は、僕の考えている通りの性能を持つ杖の型のようだ。僕の頭の中では『魔法杖の型(オリジナル)』という風に考えていたんだけど、この型が量産可能なものだとすると話が違ってくるんだよ。まあとりあえず詳しい話を聞かせてもらうことにしたんだけどさ。

アリサの話を聞いて行くうちに分かった事は『解析者の魔導書』の説明にも書かれていたとおり。

この『アーティファクト級の魔法武器』には本来なら僕の考えていた通りの特性があるみたいなんだよね。まあそれが本当だとすればだけども、もしそれが本物だった場合。僕は今後、自分の身を守る為の力を手にすることが出来る。そうなった場合はアリサの協力を仰ぐことが出来るだろうし、今後の僕にとって心強い味方になってくれることが期待できる。僕は改めて、僕のために協力をしてくれることになったアリサに感謝の気持ちを込めて礼を言った後、僕は『アリサと二人で僕の工房に帰ることにした。

アリサとの話し合いを終えたあと。僕は一度家に帰宅することにしたんだけど、アリサが言うには元々アリサの家は僕の家からそれほど離れていない所にあって、徒歩で移動が出来る程度の距離らしい。しかもこの辺りは街の中心からさほど離れた場所でもないため、このあたりで家を買って住んでいて当然なのだとか。だから特にこの周辺に家が密集している訳でも無いみたいだ。そんな事を話しているうちに家の近くまで戻ってきてしまったのだ。

/ 3位 / 5,674+50 =6,734部 あれっ? おかしいな。僕はパソコンの前に座っていたはずなのに、どうしてベッドの上にいるんだろうか!まさか、これが異世界での定番イベントなのか!そう思いながら体を起こしてみたら案の定、目の前には僕の部屋の風景が広がっていた。僕は夢の中で目を覚ますことができたのかと思いながらも、部屋の外を確認しようとドアに向かって足を進める。しかし僕は一歩目を踏み出したところで急に立ち止まってしまう。なぜかというと僕は今、靴を履いていないのだ。いやまてまて、ちょっと待ってくれ!僕は確かに自分の部屋にいたはずだ。ということは誰かが僕の部屋に入ってきたということだよな。僕が履いていたはずの靴をどこに置いてきたのか、僕の記憶の中には一切残っていないのだけど、これは明らかに異常事態であることは確実だぞ。

それに今の僕が置かれている状況はかなり危険度が上がっていたのだ。なんせ今の僕は裸足なのだから。もしも、こんな状態の僕を見つけたとしたら確実に誘拐犯と思われてしまうことは間違いないだろう。

まぁ僕の場合はこんな格好で外に放り出されていたとしても誰も気にしないような状況なので、この服装に関しては全く問題はないし、そもそも僕の顔を見て分かる人はこの世界にはいないと言ってもいい。

それよりも僕は、僕をこの部屋に連れて来た人間について考える必要があった。僕は自分の身に起きている出来事を整理するために、もう一度『スキルの種』を『解析者の魔導書』を使って見てみることにした。『解析者の魔導書』には、このスキルの効果も記載されているのだが。僕のスキル欄に記載されているのはこのスキルだけだ。つまり『転移』や『転生』に関するようなスキルは一切記載されていなかったのだ。つまり僕の持っているスキルの中に、転移できるようなスキルは存在しないと言う事を意味するのだ。

そう言えば以前も似たようなことがあったな。僕の所持しているスキルに書かれている内容が違うことが何回かあった。それは僕の知らない間に新しい効果が追加されていると言うことなのだ。『魔導具職人:魔導杖』を作成したとき、この効果が僕の想像している効果とは全く違った効果に変化していることがわかったのだ。僕はてっきり僕の持つ『鑑定』の能力が『鑑定眼』に進化したことでこのような現象が起こっていると考えていたのだが、それは僕の考え過ぎのようで実際は全く別の理由が存在したのだ。僕の予想していたように、僕のスキルに追加された新能力『解析者』の効果は。僕の視界内であれば『どんな物でも詳細を解析する事が出来る』というものだった。僕としてはその程度にしか思ってはいなかったんだが。

僕に『魔導具』を作成する能力が備わっていることが判明した際に。僕が作り出した『神魔杖:セラフィーム』には、この機能が最初から備わっていたという事がわかってしまった。この『セラフィム』というのは天使の階級の一つで。その上位の存在である『天界人』の力を封じ込めることが出来たんだ。

ちなみに『魔導具職人』の称号には、『神鋼の鍛冶師』『神鉄の錬金術師』などが存在していることから、『アーティファクト級』に分類されるような魔導武器を作り出すためには、それに匹敵する素材が必要となってくる。

例えば『神鋼の鍛冶屋』の称号を持つ『アリサ』は『魔導鉄の錬成』が可能と言うことになっているけど、『神鋼』と同等の効果を持つ『神晶石』は、『神鋼』で無いと錬成を行う事はできないと言われているんだ。実際にこの世界で錬金釜が扱える人間が存在するかどうかはわからない。しかし仮にこの世界では無理だったとして、錬金釜を扱うことのできる存在が現れたとすれば、『アーティファクト級』の魔導武器を作ることも可能となるだろう。

僕は、先ほどから気になっている『神銀の鍛冶屋』の称号の詳細を見てみると。どうやら僕の予想通り、この称号の能力が反映されるような感じで『魔導杖』を作り上げることが出来れば、『アーティファクト級』の性能を持った魔導武器が完成するということになると思う。『魔導杖』には、僕がイメージして作っていたものとは明らかに違う性能が記載されていた。

【魔導杖】:杖型の『魔法の武器:魔法杖の一種。この魔導杖を使用する事で魔法を使う事が出来たり、魔力の増幅が可能になる杖の型の事】

『賢者の石』が作り出せないと分かった時に。『アーティファクト級』の魔導武器の作成を諦めかけていたんだけど。『賢者の石』の代わりになるようなものがあれば問題はないと言うことになる。僕は自分のスキルを確認してみたら『魔道具作成』の所に新たなスキルが追加で表示された『錬金作成』の欄がいつの間にか追加されていて、さらに『錬金作成』の下にある項目に『神銀の武器作成』という文言が追加されていた。

そしてその項目の下側には、新たに取得した錬金釜という物が表記されている。僕は、アリサから『魔導杖』を作るための型を受け取っている最中にアリサからこの説明を受けていたんだよね。僕の頭の中では、『魔導杖』に使える材料は限られていると思っていたけど。『錬金の武器作成』の項目を確認する限り、『錬金作成』の能力は、『錬金釜』を使用して『神鋼の武器』、『神銀の武器』を作り出すことができる。

つまりこの世界のどこかに存在する『神晶石』と呼ばれる鉱物を手に入れられさえすれば『アーティファクト級』の性能の武器を作り出すことが出来る。僕のステータス画面に新しく現れた、僕の所有する『神の恩恵(ギフト)』と思われる【解析者の魔導書】の機能は『解析者の魔法』と言う名の、僕の知りたい情報を調べることが出来る。検索機能とでもいえばわかりやすいだろうか。『魔法の宝具』が作り出せるようになる条件と作り方を確認できればいいのだけどね。僕の【固有術技】に表示されている『創造魔法の発動可能回数が5回/日に減少される可能性がある。1日に使用する回数は20回まで使用可能だが、1日の内に使用出来るのは最大10回でそれ以上使用すると24時間の待機時間が加算される』という表記も少しおかしい気がするんだよね。

『創造魔法』については、一度アリサにも確認したことがあるんだよなぁ~!アリサにも確認したところ。どうやら彼女は僕と違って自分の能力がしっかりと把握出来ているみたいだ。ただ彼女の口から出てきた話はあまりにも荒唐無稽な内容であったため、僕としては半信半疑というところだったんだけど。まあ彼女曰く、自分がこの世界で持っている能力をきちんと使えているという実感があると言っていたし、僕には到底信じることが出来なかったんだけどさ。僕にはまだ自分自身にどのような変化が訪れたのかは分からない。ただ、今僕が考えていることをアリサに伝えると。

「私もそんな話は一度も聞いたことがないんだけど」

とのことだったのだ。やはり僕だけが何か特殊な状態に陥っているということなんだろう。まぁアリサが僕の話に疑いを持っている様子が無いから、僕自身が気にしなければ大きな問題は無いと思っている。とりあえず『錬金の工房』をこの工房で作れるかどうかを調べないと。

そう思いながら『神眼』を使って『錬金の工房』の効果を確認してみると。案の定、そこには今まで僕の目にしてきた効果とは違う文章が映し出された。

『アーティファクト級の魔導武器を生み出すために必要な、錬金術用の道具を召喚することが出来る』

これは、まさか本当に僕の目の前にある光景がそのまま現実の物として作り出すことが可能ってことなのか!?いやちょっと待ってくれ!冷静に考えよう。僕が最初に『鑑定』の力を試したとき、この部屋の中には『魔導工房:錬金釜』が存在無かったはずだ!ということは、僕の『神眼』の力で『錬金の工房』が呼び出せるようになったという訳なのだろうか?それとも他に何か要因が有るのか?そう思いながら『錬金のアトリエ』の方に目を向けてみると。案の定、この場所には何も変化が生じていないようだ。

そう思いながら『魔導炉』の方を見てみると、僕がこの前作り上げて『魔導鉄の鍛冶師』の称号を入手したときに使用した時と同じように『魔導炉:錬金窯』と書かれた文字が出現していた。僕はすぐにその言葉に触れてみることにした。

僕が指先で触れてから数秒経過しても、特に変化が訪れるようなことは無かった。

んっ?これは僕の勘違いかな?僕のスキルに書かれているように、錬金釜と言う物が存在しているなら『錬金のアトリエ』を召喚する事が出来るはずじゃないのかな。まぁ実際に存在するようなら、その辺りも含めて調べてみる必要がありそうだな。僕はとりあえず、『解析者の魔導書』から『魔導具作成:レシピ本』を呼び出してみることにしたのだが。なぜか僕の前にその『レシピ』が出現することはなかった。しかし『解析者の魔導書』に記載されていた内容は嘘ではなかったようで。僕の視界内には錬金工房に必要なアイテムの数々が表示され始めていた。

僕が一番最初に気になったのが『調合箱』だ。この『魔導具工房:錬金釜』には必要な機材がすべて用意されているみたいなのだが。この中にどんなものが揃っているのか気になってしまったのだ。そう思った直後『調合箱』が僕の視界内に現れた。この『調合箱』はどういった用途に使うものなのだろうか。僕は不思議に思いながらも『調合釜』の蓋を開けると、その中に様々な薬品が用意されていたのだ。僕の知識では薬は錬金釜で作るというイメージが強かったため。こんな道具が必要なのか疑問に思っていたのだが。どうやらこの錬金釜を使って錬成を行いたい物の素材を釜の中に入れていくだけで勝手にその物が生成される仕組みのようで、その工程をこの錬金釜で行うと言う事になるらしい。

ただ僕としては、この錬金釜の本来の役割としては、『神銀の武器』を作り出した方が有益なのではないかと思ってしまうんだが。それは、あくまでも僕の憶測でしかなく、本当の意味での検証が必要だと感じているから、僕としてはまず『神銀』を作り出すための素材が何処かに転がっていないか探し始めたんだ。

僕の記憶が正しいとすれば。確か神銀が保管されている場所があった筈だよな。そう思って『アーティファクト収納空間:異次元倉庫:神の鞄:神袋』を起動させた。僕の脳内に、この『神の鞄』に入っているアイテムの一覧が表示される。そしてそこに神銀の名前を発見することに成功したのだ。僕は『神晶石の結晶』を1個取り出しそれを床の上に置いた後で、『錬金の武器作成』の項目を開き『神銀の武器作成』と入力してみたんだ。そしたら僕の手元に錬金釜が現れていた。その錬金釜の使い方を確認してみて。僕はすぐに錬成を始めたんだ。僕はその錬成の作業をしながらアリサに話しかけて見たんだけど。どうやらこの『錬金のアトリエ』と、僕の作った『神魔弓:天叢雲』に付与されていた『アーティファクト級』の性能が付与されていることは、どうやらアリサも理解してくれているみたいだけど。僕はアリサの質問に対して、明確な答えを示すことが出来なかった。

「やっぱり、この『錬金の工房』には特別な力があるみたいね」

「確かにそうなんですけど。このスキルについて詳しい事は、正直よく分かっていないんですよね。僕の持っている称号の効果が反映されているのは間違い無いと思うんですけど。でも僕には、自分のステータス画面に現れている能力が実際に自分の力で引き出せるかどうかの判断は出来なかったので」

僕が自分の意思で『錬金の工房』を使えるかを確認するために『錬金の工房』を使ったのが悪かったのか。『神の眼(神の瞳)』を使おうと思った時にはすでに遅かったのだ。

僕は突然激しい眩惑を覚えてしまい、僕の目の前の景色が変わってしまったのだ。しかもそこは錬金釜が存在するはずの『錬金のアトリエ』では無く、僕の記憶の中では見覚えの無い場所であったのだ。

(おい!!ここはどこなんだ!っていうか僕に何が起きたんだ!?)

『神魔弓:天叢雲』に刻まれていた『神晶石(しんしょうせき)』から、『神銀の武器』を作り出そうとした直後に僕の視界は突如光に包まれてしまった。

僕としては錬金釜の中から、錬金釜を取り出そうと考えていたんだけど。それが間違っていたというのか?僕の錬金釜が錬金釜としての機能を失って、別の物に変質してしまうなんてことはあるのだろうか?

『アーティファクト級の魔導武器を生み出すことが出来るようになる。但しこのアーティファクト級とは、『魔導武器』に分類される武具の性能の平均値である。アーティファクト級以上の『武器』を作り出す場合には『神の恩恵(ギフト)』によって『神の奇跡』と呼ばれる現象を発現する必要がある。『神の恩恵(ギフト)』は『神の恩恵(ギフト)所持者』しか扱う事が出来ない。またこの世界の住人にはこの世界の人間にしかない『恩恵』が存在しているため『神の御業』を使用できる者は限られている』

僕は『神の使徒』の【鑑定】能力を使用して得られた説明文を読んでいた。しかし、この『神の御業』というのがどのような物なのか。今の僕が想像できる範疇では限界があり過ぎる。ただ『アーティファクト級の魔導武器を生み出すことができる』、『アーティファクト級の性能を持つ魔導武器を作成するために必要な、錬金道具を呼び出せる』という文章だけは理解できるんだけど。それ以外については何も分からなかった。ただこの表示された情報を元に考察を行っていく必要があるんだけど。まず、この情報自体が嘘であるという可能性は排除して考えていいはずだ。何故ならば、仮にこれが真実の情報だとすれば『神の試練』の後に手に入れた技能が消えてしまっているという現状がある以上。僕としては信じるに値する情報がこの中に存在している可能性が高いと思っているからだ。つまり、この説明書きを信じないのであれば、自分の持つ技能の確認を行う必要性があるのだ。僕の現在のステータス画面を確認をしてみると、先ほどまでは確認することのできなかった項目が増えていることに気が付いた。

『神の使徒』

:神の使いにして使徒の称号を得た存在。その者の魂を肉体に閉じ込める代償にその者が得た知識や技能などをそのまま引き継ぐことが出来る。ただしこのスキルを発動している最中はその肉体を制御出来るのはこの世に存在する生命体の中で一人だけとなる。尚、肉体の制御が効いている間は発動者との繋がりが途切れる事はない。また、その者の肉体を制御している間は常にその者を監視するための目が備わることになる。その目は対象となった者に気づかれぬように偽装される。

どうやらこれは、山田正志さんの説明にあった通り。僕の意識が存在していない間に発動するタイプのスキルだったみたいだな。そして僕の体を誰かが操作していたとしても僕の体を自由に扱える訳ではないという事も分かる。もし僕の肉体を操れるというのなら。この『神の眼』という能力をフルに活用すれば、この世界を自由自在に駆け回ることも可能だということだ。まぁそんな事が出来るならとっくにやっているよね。というか、僕の体の所有権を持っている人物がいるという時点でこの話自体が眉唾物である可能性が出て来ちゃう訳だし。とにもかくにも、僕は自分が『神の使徒』になっているということは信じざるを得ない事実だと思う。まぁこの称号が『使徒』ではなくて『神の使者』とか『御子』って名前になっていたら。僕はもう少し冷静に考え直す時間を取ることが出来たんだろうけど。でも現実には僕の称号に『使徒』って文字が入っていたから、それを目にした途端僕の頭の中には『神』と言う言葉に拒否反応を示し始めてしまったんだよな。だってさ、僕は無神論者のつもりだったんだから。まぁ、その辺の事はとりあえず横に置いとくとして、僕の称号欄に記載されている文字の意味を考えないとな。僕の称号の文字が変化したという事は他の人の称号も同じことが起きている可能性があるということだからな。

そう思った瞬間から僕の思考は一気に回転し始めた。

僕が真っ先に考えたのは自分の持っているスキルや称号に変化が起こっているのではないかという仮説だ。

例えば僕の持つ『神速』『高速演算』なんかが消えたりする可能性も有るのではないかと考えたのだが。これは直ぐに解決する問題だと思い直しその仮説を破棄することにする しかし次に僕の脳裏に浮かんできたのが僕が知らない新しいスキルが身についているんじゃないかということだ。僕の知る範囲で、新しく覚えたようなスキルといえば、僕のレベルが100に到達した時に取得出来たあの『ユニークスキル』の類いなのだろうか。あれを僕以外の人が覚えられるとしたらかなり危険ではないだろうか。その危険性を考えた僕はその新たな能力の取得を試みようとしたのだ。

ただこの試みは失敗に終わったようで。結局僕は、新たに『神魔弓:天叢雲』から得た『神銀(しんぎん)の弓(ゆみ)』の錬成を完了するまで『錬金のアトリエ』に戻ることが出来ず。『神銀の弓』の錬成が完了したところで元の場所に転移させられたんだ。僕としてはもう少し実験を繰り返したかったんだけど。仕方が無いかと諦めることにし、今は、『アーティファクト収納空間:異次元倉庫:神の鞄:神袋』の中に『神晶石の結晶』が1個残されているのを確認してから僕は『錬金の工房』を解除して『神の眼(神の瞳)』を使ってみることにしたんだ。そして視界に僕のステータス画面に表示されている能力が反映されるという表示を確認した僕は。ステータス画面に『神の瞳』のアイコンがある事を改めて確認すると僕はそれを指で押し込んだ。そしたら『神の瞳(神の瞳)』が起動してくれたのだ。

僕にはステータス画面に『神の瞳(神の瞳)』がインストールされているかどうかを確認する術が無かったので。これで起動してくれるか心配ではあったものの無事僕の目の前にウィンドウが現れてくれたので僕はホッと胸を撫で下ろしていた。

『この世界の創造神』のスキルの恩恵で『神の使徒』の『神の恩恵(ギフト)』と『錬金の工房』の2つを手に入れた僕はこの世界に生きる人々よりも少し優遇されている存在になってしまったようだ。

ただここで僕はこの世界での常識に疎かったことを自覚させられてしまった。

『神眼(神の瞳)』を使い僕には理解できない情報を閲覧しようとしたときに、僕は自分のステータス画面に突然眩惑を受けてしまい意識を失ったのだ。おそらく、この『神眼(神の瞳)』というスキルが、使用者の意思を無視して強制的に僕の精神力を消費させる力を有しているのだろうと。僕は予想した。僕もまさかこの世界に来ていきなり意識を失ってしまう事になるとは思っていなかったんだ。

そして、僕は自分の肉体の支配権を奪われてしまい、気が付けば目の前の風景が変わっていたんだ。僕がいた場所は錬金釜が存在するはずなのに錬金釜が無くなっていて。僕の前には見たことも無い女性が立っていた。その女性は金色の髪色をしていたけど。髪の毛の長さを見る限りこの人は多分女性で間違い無いはずだと思う。身長的には170センチ前後で年齢は18歳から20歳ぐらいといった感じに見える。

「こんにちは、私の名前はアリサ。あなたは?」

「ぼっ、僕の、おっ名前は、上坂、まさし、です」

どう考えても日本人じゃないよね?この人の顔立ちって。明らかに欧米系の人だよ? しかもこの人が身に着けている服ってさ。

中世ファンタジー風というのかな?ゲームとかラノベでよく見かける服装そのもののような格好をしているように見えるんだけど。

僕の着ているのは普通の学生の制服なんだ。

この世界では違うのかも知れないけど。見た目だけでいえばこの女性の方がコスプレ衣装を身に纏っているようにしか見えないんだよ。それに何この恰好、スカートって短すぎやしないか!僕はこんなに短いの穿いて歩いたらすぐにパンチラしてしまうんじゃないかと思って落ちつかない。この女の人に何か文句を言おうと思っていたけど。いざその本人に対面してしまうと中々言い出せなくなってしまった。

「あーえっと、そうじゃなくて、あなたのお名前をお伺いしているんですが?」そう言われたことで、僕の頭が急激に冷静さを取戻していった。この人は僕がこの世界の住人では無いということを疑っているんだろうか。

そもそも異世界から来た人間を簡単に受け入れることが出来るものなのか疑問に思いながらも。

この女性の問いにはちゃんと答えなければと思った。だから、僕はこう返事をしたんだ。

『僕は、神から選ばれた使徒であり、この世界の救済の為に遣わされた者』と――

*

* * *

そして、私は今ある少年の前に座らされていたりする。彼の話を纏めると彼は神様からの依頼により異世界から呼び出されて『使徒』という特別な存在になったらしい。正直言ってそんな与太話信じられないんだけどね。

だけどその証拠にこの子は不思議な技能を持っていた。それは『神眼(神の瞳)』と呼ばれる【鑑定系最上位技能】の能力なのだけれど。この子はそれを自在に操り、更にはその上位技能である【神の祝福】という【特殊スキル】までも持っていた。【神の加護】という【鑑定系最上級スキル】まで所持していたんだ。ここまで来れば流石に彼がただの人間でないことは分かるというものよ。

しかし、それならば尚更彼をこのまま帰すわけにはいかない。

彼には私の国に来て貰って王と面会してもらわなければならないのだから。そうして私は、彼に『神の使徒にして神使』と名乗るように勧めたのだった。その方が、私が彼を召喚したことが公に出来るからね。

こうして、彼には、私の祖国に付いてきてもらうことにしたのだ。そこでならこの『神の使徒』という特殊な存在である彼がこの世界を救えるのではないかと考えたからだ。

しかし、問題は山積みだ。先ず一番の問題はこの子をどうやって元の世界に返すかという問題なのよね。こればかりはすぐに答えが出るものでもない。なのでまずはその前にこの子にやってもらいたい事があるんだけど良いかしら。その仕事というのはね。私達の国の王にこの子の有用性を示す為のデモンストレーションなの。

この『神の瞳(神の瞳)』があれば、相手の能力を正確に読み取ることが出来て交渉や政治の場で非常に有効なのだと説明する為に。実際にこの『神眼(神の瞳)』を実演するの。そしてその為には当然相手が居ないといけない訳で。そこで、私の知り合いの中で最適な人物が居るの。

彼の名前は上坂正志。

この名前を聞いてピンと来ていないようだったので。そのことについて質問をしてくるので私が答えると。とても驚かれたのよね。まぁそうでしょうね普通は、異世界の存在など想像することも出来ない筈だし。そう思った矢先にこの子はこんな事を言い始めた。その発想には驚きだった。なんと『アーティファクト収納空間:異次元倉庫:神の鞄:神袋』なんてものをこの子が持っていますかと言い出したのだ。確かにこれはこの世界では非常に希少な品物だし。しかもその性能から言えば、アーティファクトという扱いになっているはず。アーティファクトの収納空間と言えばその中身の容量は無限に近いとされているし、この『神の眼(神の瞳)』の能力はアーティファクトの収納空間からでも機能することが出来るという事だ。つまり、彼はアーティファクト級の道具を所有しているということになるので、これを利用すれば彼の特異性を証明する事が出来るだろうという結論に達して。彼にこの国に来てもらうことになったの。そしてこれからそのデモンストレーションを行って貰うんだけど、そのデモンストレーションに私も付き添う事に決めた。その方が彼にとっても安全だろうと考えてのことだ。

さて。

さっきまでは説明に徹してあまり彼を観察する時間が取れなかったんだけど。ここからはしっかりとその容姿を確認してみることとしましょうか。

ふむ。やはりなかなかの男前じゃない。でもまだ少し子供っぽさが残っていて可愛いところが残っているみたい。うん、ちょっといいかもね? 私好みの外見かもしれないと内心では考えてしまっていたりするけどね。

この子、見た目に反して、実はかなりの実力者の可能性もあるわよね。

アーティファクト級アイテムを所持していて、レベル100を超えているって事は少なくともそれだけの力を持っているという証明になるのだから。

ただこの子はステータス画面に表示されている能力を確認する術が無いようで。この世界での一般的な常識を知らない事が分かってきた。ステータスを確認することが出来ないっていうのはそれ程珍しい事ではないんだけど。レベル100を超えるような人間は、基本的に自分より弱い相手からは攻撃を受けないという恩恵があるのよ。だから戦闘職に就いていないような普通の人でも。一般人が10程度のレベルしかない相手を殴ったり蹴飛ばしたりしたとしても殆どダメージにはならないの。そういうこともあって彼は自分がこの世界の人間と比べてかなり優れた存在だって気づけないんだろうな。ステータス画面の能力を自分で確認できないんだったら尚の事その傾向が強いんじゃないかしら。もしかするとこの『神の使徒』の称号ってこの世界に来たことで手に入れただけであって元々は無かったのかもしれなくて。『神の使徒』の称号は、この世界の人間が勝手に付けたものだと考えると辻妻が合う気がしたのよね。この世界に来ると神様からの恩恵が与えられるみたいな話は聞いたことがあるけど。もしかするとそれのことなのかもね。

それにこの世界には『使徒』、『聖人』と称号が存在するし。神様の寵愛を受けると使徒とか聖女とか呼ばれることもあるしね。それにステータスを確認する方法を教えてしまったら。自分の力を確かめるために人を殺してしまう可能性があることを考えるとやっぱり教えるべきじゃないと思う。

そしてこの子は自分の事を神の加護を受けていて、錬金の職人さんに祝福されていますと口にしたけど。そんなものは錬金の工房を見た時点で嘘とバレているんだから意味がない。ただその発言のおかげでこの子がどれだけ特別な存在なのかを理解してもらえたと思う。錬金工房を創ることが出来る人間なんて、普通の人間にはいないはずだから。この世界において錬金術とは選ばれた才能を持った人間だけが使うことを許された技術のはずだもの。だから彼は『使徒』『神の使徒』に加えて『使徒』『神の使徒』も持っていることが確定しちゃったのよね。まぁ使徒はともかく使徒ってのは多分この国でも数名しかいないんじゃないかなって思ってはいるんだけど。もし仮に使徒が複数いたとしたらこの国の王様がそれを放置しておくとは思えないのよね。

さてと、そろそろこの部屋を出て王城に行こうかしらね? そういえばこの子はお腹減っているのか聞いてこなかったので私はお昼ご飯がまだなことを思い出してしまった。それでこの子は今おなかペコちゃんじゃないかなと思い尋ねてみると予想通りおなかが減っていたようだ。だけど残念ながら今は手持ちに食材は無い。なので私は料理屋に食べに行くことを提案したのよ、そして、私はその提案を受け入れるつもりだったのだけれど。どうやらこの子はあまり食欲が無かったようですこし気分が悪いと口にし始めてきた。

そこで、彼の体調を心配してくれたアリサが彼に薬を飲ませてくれると言う事になった。彼女の話を聞く限り薬にはポーションも含まれているという話で安心したんだけど。そのあと直ぐに目の前で凄いものを見てしまい絶句する破目になってしまった。なんとその彼女がポーションをコップ一杯の液体に変えてしまったのだ。しかもそれだけでなく。この水で薄めたら更に飲みやすくなるだろうとまで言いだしたので更にビックリしてしまった。そういえば彼女は、ポーションを飲んでいたし、そもそも私の『鑑定』の力をあっさりと見抜いたりしているのだから只者では無いのだろうと考えていたんだけど。まさかここまでの技量を隠しているとは思わなかったのよね。そして彼女が作ったその薄い緑の液体を見て、私は思わず「すごいわ!」と感嘆の声を上げてしまったんだけど。それは、この世界に存在するどんな薬品よりも回復効果が有るのではないかと直感的に感じたからなのだけど。この子は、その言葉に対して「この世界の薬師が作っていたポーションに比べれば劣ると思います」と答えた後に「材料さえ有ればこれより上の効果を出すことが可能だと自信を持って言えますから」と言って微笑んだ。その笑みを見た私は、背筋に冷たいものが走った感覚に襲われたの。それは何故かといえばこの子が今言った内容が、冗談に聞こえなかったという理由もあるんだけど。それよりも何より。私がこの世界で見て来た中でも特に優秀と言える腕前の薬剤師が作り上げたポーションは、せいぜいHP1000くらいの回復量のはずなのに。その数百倍の量で回復させることが出来るという発言自体が、この子は規格外の存在だということを示してると思ったからだ。

私が驚き過ぎて声が出せずに固まったままになっていたんだけど。

その隙を突いて、アリサに頭を下げられたので私もその流れに乗って謝る事にしたの。

その後すぐに私の意識は途切れてしまいまして。

次に目覚めた時には王城の客室のベッドの上でした。

僕達は今現在この国の王城に向かって歩いて向かっていたりする。この国の王が待つ王の間を目指して歩いている最中で。僕の横では先程王都に到着してから色々とあったのだが、今は王城に向けて歩みを進めている。ちなみに僕は『神眼(神の瞳)』を使いながら王の間に続く道の脇に立っている衛兵達のステータスを『神眼(神の瞳)』の能力である『透視』の技能を使用し確認していく。

その結果この王城の中に入ると王と会うことになるらしいので事前に『神眼(神の瞳)』の特殊能力を発動しておき。相手が何をして来るかを先読みして対処しようと考えている訳だ。

そして王城に入ってすぐの広間に出たところで突然一人の兵士が近づいてきてアリサに対して敬礼をしてきた。そしてこんな事を言ってきた。「王女様ご機嫌麗しゅう。此度はこの度の召喚でお越し頂きました方々のお相手を仰せつかり誠に感謝申し上げます。さっそくですがこちらで御着替えをされて陛下とお会いになって下さい。皆さまを謁見の間で待機させておりますので」

兵士はそこまで告げて一呼吸置きこう付け足す。

「それと『鑑定』能力に長けた勇者殿には後ほど陛下よりお言葉を賜ることになりましょうので宜しくお願い致します」

この言葉を受けた僕が「わかりました」と答えて。

『神眼』の力でこの国で一番偉い人物のステータスを確認しておくことにしましょうかね。

ステータス画面のステータス項目の1つ『称号』を選択し『名前』、『性別』、『レベル』、『種族』そして最後に『職業』を確認してみると『国王』となっていた。これは恐らく間違いないだろう。『神眼(神の瞳)』の『サーチ』、『スキャン』を使ってみて分かった事だけど。『称号』の項目に表示されているのがこの世界におけるこの世界での本当のステータスって事だろうな。そしてそのステータスの数値を『解析』を使用して数値に直せば『スキル値』『レベル』が確認出来そうだという結論に達したのだった。

そして『称号』の欄を確認する事で、その人物がその世界でどの様に思われているかが理解できると判断できるわけだ。

まぁその前にこの『鑑定』の能力は『神眼』の特殊能力の一つらしく、『神』が与えてくれた『固有能力』と書いてあり。他の人がこの力を手に入れる事は出来ないようになっているみたいなんだけど。まぁそんなことはさて置いて『解析』の方も使ってみるとしようか。

まずは目の前に表示された情報を確認していくことにすると。

『鑑定Lv2』

対象の物体の状態を把握することが出来る。ただしレベルが足りないため詳細の表示は不可能になっている。

Look!ステータスオープンって感じで脳内に浮かび上がってくるステータス画面に『解析』の能力を使おうと思う。ただ『鑑定』と違い相手の許可無しに使用出来るものなのか少し不安になってきたけど。まぁ試しに行ってみるしかないよね? するとステータス画面上に新たな文字が表示されていた。『解析の技能の使用を許可します。実行してみてください』って。なんかいきなり出たんですけど!?って驚いていたらアリサさんが急に笑い出してね。どうしたんだろうって思いながらも言われた通りに『解析Lv2』を実行してみたら。また新たにメッセージが視界の端に出て来ちゃってね。

『解析の技能を使用を許可します。実行してもよろしいですか?』

「はい。よろしくお願いします」と口に出していた。

『解析が実行されるまでしばらくお待ちください』

なんだろ?今のは?もしかしてこれが僕の新しいスキルなのだろうかと一瞬思ったんだけど。どう考えても違う。今までこの『解析』の『称号』を持っている人は沢山いたはずだ。その人たち全員が『鑑定』の能力を使えていたなら今みたいに毎回誰かの許可を得る必要は無かったはずなのだから。

それにさっきからこの国のトップのステータスを何度も確認してしまっているけど何も問題なく表示されている。

そして気になったことがあった。この『解析』の能力で表示したステータス画面には名前の横にカッコ書きで『職業』と言うのがあってそこに書かれている内容が『無職』、『村人』、『旅人』、『商人』、『農民』、『剣士』、『魔術師』、『僧侶』、『鍛冶師』、『料理人』、『盗賊』、『弓兵』、『戦士』、『狩人』、『魔法使い』、『魔導士』、『探索者』、『錬金術士』、『錬金職人』の13種類の役職があるのだ。そしてその13の役職の中に僕の知っている職業は1つとして存在していなかったのだ。そしてさらに、僕の頭の中では『解析』を使用する際に表示されるメッセージが繰り返し流れている。

『解析が開始されています。もう少し待ってください』

『この解析の力は『解析の加護』の力の欠片です。まだあなた自身が使いこなすことはできませんが『加護の導き』に従いその力を発揮していくことになります。この解析の能力についての説明をします』

『『鑑定』『スキャン』『透視』『念写』『思考共有』『検索』『ナビゲーション』

この5つの『加護の恩恵』の力を使用できるようになります。『検索』の技能に関してはあなたの知りたい情報が自動的に取得可能になります。この『検索』については今後活用していく事になると思います。また『透視』に関しても同様ですがレベルを上げるともっと広範囲に物が見えるようになりますので今後のレベルアップで期待をしておいていいと思います。その他の説明は追々行っていくことになっていますが今はまだこの辺で理解してもらえればいいでしょう。では今後も精進するようにしていってください』

(ふむふむなるほど。そういう風にこの力を使えば良いのか!)

そんな事を考えながら自分の手の中にある『鑑定』の力を使う為に発動させようと思う。

そして『鑑定』の力が使用可能となったことで『神眼(神の瞳)』が教えてくれた通りの詳細画面を表示する事が出来るようになっていた。

僕は早速『神眼(神の瞳)』の機能を使ってステータス画面を開く。そして『神眼(神の瞳)』で調べたことの結果。この国の王様の『名前』が『アルフォンス=デメトリア』となっているので間違いない。ステータスの数値を見ると全ての能力において高い数値を誇っているようだ。レベルが80台というのも凄いなと感じている。レベルが80台なんて普通に考えれば有り得ない事だと思う。そしてこの『称号』の称号の欄に『魔王』、『王の中の王』、と書かれているのだが。この称号は一体なんなのか全く解らなかった。

そのステータスの内容を確認し終わったタイミングで突然王の間へと繋がる扉が開かれて中に居る人達から視線を集めてしまった。なのでその集まった目線を一身に集めてしまう結果となってしまったのだ。僕達の前に姿を現したのは40代くらいに見える女性だったんだけど。この人がこの国の王で有って。今この場で僕達に声を掛けてきているのだと『鑑定』で得た情報によって判断できたわけだ。

「勇者殿方、この度は私の為にこうしてこの王城に足を運んで頂けたことを深く感謝します」そう告げると、王らしき人物は、深々と頭を地面につけ土下座をしていた。僕はこの行動を見て驚いたと同時に慌てて声を張り上げる。

だって僕達が勝手にこの王城に来てしまっただけで別にこの国の王に呼ばれたという訳ではないし。それに王城に到着したらこの部屋で待機してくれと言われただけだったわけだから。僕的には特に悪い事はしていないつもりだ。

僕は、頭を床に押し当てたまま動こうとしないので。

僕はアリサの方へ振り返り小声で聞いてみる。

「この王様に何をしているんだ?」

「これはこの世界に伝わる最上級の謝礼の挨拶ですよ。本来は王が直接謝罪の言葉を口にするなんてことはあり得無いんですよ。しかもこの王の場合は、直接言葉を伝えにくるなんて事が殆ど無かった筈なのに。今回の場合は本当に特別で。この国ではこんなにも早く『神眼』を持った勇者が現れるのが稀だったんでしょうね。そのせいで国をあげて歓迎をするという事になったんじゃないかしら?それとこの世界の王様というのは、かなり偉い立場にいる方が多いのよ」

と小声ではあったが教えてくれて。この国では国王が民の暮らしに対して最大限の責任を負う代わりに。この国の王に対して発言が出来る権限を持つのが。国王という肩書きらしいのだ。まぁ要は王の代理をすることが出来るような立場に国王が君臨しているというわけだ。ただあくまでもそれは国の中での立場で。他国に対しての発言権や外交を行うことが出来るというわけでもないみたいで。この国はそんなに大きな規模ではなく。他の国からしてみればそれほど重要視するほどの価値の無い国なのではないかと考えられているようだけど。それでもそんな国でも国としては機能していてちゃんとした生活水準を保つことが出来ているのも事実なのだそうだ。

それから僕達の前にやってきた国王が話を始めることになったのだけど。この場に集まった者達の人数が多かったのもあり一度には話し出すことは出来ないだろうと考えたのか。順番に質問を行っていく事にして最初にアリサさんに話しかける事にしたようだ。この場には国王を含めて13人の人物がその場にいるのだけど。それぞれの名前を教えてくれるようでその人物の紹介をしてから話をし始めた。

「まず私はこの国を治める国王である。名前はデメトリアと言う。以後宜しく頼む」と挨拶をしてきてから続けて

「先ずはこの世界に召喚された勇者の方々を呼びだしてしまったことについて申し訳なかったと思っている。だがどうか我々の頼みを聞いてもらいたいのだ」と言ってきたわけだけれど。僕はどう返答したものかと少し戸惑っていた。何故なら僕達はそんな事頼んでいないわけだしそもそもこの世界が危機に瀕していて僕達の協力が必要不可欠だというわけでもなくむしろ余計なお世話をされているというか。

それにそんな事は知らないというわけだしさ。この王様はどうやらこの国がどれだけ危機的状況なのかを理解していないのではないだろうか。と内心では思ってしまっていて。僕のこの気持ちは表情にも出ていたのかもしれない。すると横にいたアリサが僕の顔を覗き込んできてから微笑みを浮かべつつ僕の肩に手を置いてくれて落ち着かせようとしてくれるのだけれどね?それのお陰もあって僕の中にあった不安が消えていって落ち着いていくのが自分でも分かった。そしてアリサさんに励まされる形になってしまったことが少し情けなくなってしまった。

(あーなんか格好つかないねこれじゃさ)って思いながら苦笑いしてたらアリサが

「あなたがどんな風に感じているのか分からないけど。私は貴方と一緒にいられる時間がとても楽しいわ」

と優しい笑顔を見せてきてくれたのに少し照れてしまい。

思わず頬が熱くなる感覚を覚えて俯いて

「あ、ありがとうございます」

と口にしたのであった。

そしてこの会話を聞いていた王様が

「この二人は既に夫婦のような雰囲気を持っているように感じられるな」と 言ってきた。

そしてその後に続くように今度は 僕の隣に座っていた美春さんの事を気に入ったみたいで 美春さんも気に入られたみたいで嬉しそうな笑みを見せていたのだった。

王様の次に話始めたのが『戦士』の『職業』を持ってる女の子で名前を『サーシャ=エルステット』と言うようだ。その彼女はこの世界での成人年齢の15歳でまだ成人したばかりの女性らしくこの若さで冒険者になっていると言うので驚いてしまった。なんでもこの国の『聖女様』になる為にはどうしても冒険者として旅に出て魔物を倒す必要があるのだと。そして『聖女』として認定してもらうためには、『勇者の剣』と呼ばれる特別な武器を手にしなければならないのだがそれを所持出来る『勇者』に選ばれなくてはいけなかったらしいのだけれど『勇者』に選ばれた『男の娘』が現れたということで、彼女が冒険者をしなくてもいいようになるという期待がされていたわけなのだが。

残念ながらその彼女の名前はサーシャという女性だったらしい。

僕は『神眼(神の瞳)』の能力を発動させてステータスを確認するとその情報を知ることができたわけで。ちなみにその情報とは

【名前】:サーシャ=エルステット(本名不明/男性?)

性別:♂

年齢:15歳(誕生日未設定)

身長:165cm(5cm刻みによる計測)

職業:戦士

体力:25万(1億+1050万×5千倍数値)

気力:50520万

筋力:4600000

攻撃力:458200

魔力力:25万

防御力:252900

敏捷性:5011000

耐性値:2880000

知力:2514000

運:124580(固定表示)

状態:良好 装備 魔鉄の短剣×2 鋼鉄の大斧 鋼鉄製の胸当て(強化済み)

革の鎧(強化済)

革の小手(装着)

靴(強化済)

称号 無し 加護 なし 能力一覧 言語理解 アイテムボックス スキルポイント上昇率超絶UP LUK倍増 ステータス成長速度極大UP(LV30)

鑑定(MAX能力)

透視(Lv9)

検索(Lv3)

ナビゲーション(MAX能力)

称号の所で(?)となっている項目があるんだけど。これは何なのだろうと疑問を感じたわけで。アリサに聞いてみるとステータス画面にあるステータスの数値を詳しく見ることが出来る鑑定の恩恵の技能を使えば詳細画面に表示される数値を見る事が出来るのだという。そして僕の場合の鑑定のステータスをチェックすると

名前:山田正史

性別:無

年齢:15歳

身長:163センチ

職業:『勇者』

体力

:9999999999/999,9999999/900,000,000

レベル:1 レベル上限に達しました。限界突破しました。

筋力

:500000

攻撃力 :500000

魔力 :505000

防御 :500000

気力 :502000 筋力、攻撃力、防御力、気力は限界値の500倍のステータスになります。

特殊ステータス 幸運度

99.99%(無限)

(∞)

状態 疲労度 0/100% HP 1兆9999億9770万7861/7700億 MP 1京9089兆6907億8676万6863/9900兆6596億3764万6785/9900兆7540億9543万3446 固有技能 完全鑑定 異世界召喚補正 異世界召喚補正効果発動 神眼機能追加可能 経験値取得数10倍に増加 獲得SPを100万にする。

必要SP 10P(残り9994874028002440P 獲得する経験倍率を100万にすることで獲得しやすくなるわけだ。あとSPに関してはアリサの持っている鑑定で見ることが出来た情報なので、僕のはまた違う物だと思うんだけど。アリサの説明してくれた通りに確認する限りではこんな所だろうか?まぁこんな事を考えていても始まらないんだけどね。

それでこの王都に来るまでに立ち寄った街で聞いた噂で勇者達がこの王城に到着しているという話を聞いたと王様に言われて慌ててここに駆けつけて来たのだとかで。その慌てぶりに王様の側近らしき人は呆れた様子だったのは言うまでもない事だろうね。ただそのおかげで王城に到着してから王様に話をされるまでの待ち時間はかなり短縮出来たので結果的には助かったのだけどね。王様も少し申し訳なさそうにしながら。これから勇者達に話を聞いていきたいという事だったわけだ。そして僕は王様に聞かれたわけだけども

「あなた達は元の世界に帰りたいと思わないのですか?」

という質問に対してどう返答しようか困ってしまったので正直に「僕は元の世界に帰りたい」とだけ伝えたのだ。それを聞いて驚いたような表情を一瞬見せてきたけれど。何か思うところでもあったのか少し考えた素振りを見せてから「わかりました」と答えてくれてから。王様の後ろからメイドの人が入ってきてお茶とお菓子を出してくれたわけだ。その味はこの世界にきて食べた物の中に入ってい一番美味しかった食べ物で。この世界にも甘いものが食べられて嬉しいなと思ってしまうのと同時にこの世界の食事は本当においしいものが多いんだなと感じた。そしてそんなに甘くないデザートも用意してくれていたようでそれがまたおいしくてつい食べ過ぎてしまうほどで。僕は自分の食欲に少し驚くほどにがっついてしまっていて。それには周りにいる人達はみんな苦笑いをしていた。でもそんな僕に文句をいう人もいないみたいだ。そして食後に紅茶を飲んで落ち着かせてもらってから王様が改めて口を開いてくれて

「勇者の方々よ。先程も申し上げた通り我々は現在この世界の危機に直面しております」と 話し始めてくれたわけだ。その話を聞いて僕はどう答えればいいか分からなかったけれど。隣の席にいたアリサが話に加わってくれた。アリサはその言葉使いは綺麗だし品格があるしでとても話していると聞き心地の良い声なんだよな。なんて考えていてしまって。そんな事を思ってしまっている場合ではないって感じなんだけどさ。そしてアリサの話はこう続くのだ。魔王が復活する兆候があってこのままだとこの国は滅ぼされかねないとか。しかも今すぐではないにしろ復活すれば数百年は確実に経たないと復活出来ないらしく。だからこそ早急に対応しなければならないというわけなのだ。そこで召喚されたばかりの君たちには無理かもしれないけれども、魔王を倒してほしいという話で締めくくられたのである。

ただ僕は魔王退治って言われたところで、そんなのどうやってやれば良いんだろうとしか思えなかった。この異世界に召喚されたのは間違いないだろう。けれど僕は別に戦闘職でもないわけだから。戦えないわけで。それに勇者の職業が『戦士』や『剣士』の人なら分かるのだろうけど僕はそういう『戦士』の『職業』の人のステータスを見ても特に強いとは思えない。むしろ弱そうな感じがするくらいなんだよね。そして『勇者』の称号を持ってる僕のステータスがおかしいんじゃなくて他の職業の人が凄すぎるだけのような気がしてるんだけど。でもこれを言うと色々と話がややこしくなりそうだなと考えてしまって口を閉ざしていたのであった。でその話を聞き終えたら今度は別の人が話を始めた

「えっと俺達を呼び出したって事はなんかあるんすかねぇ」

なんて言ってるのは『盗賊』の『職業』を持った男子学生みたいな格好をした男の子であった。

その子の隣には

『賢者』『回復士(僧侶)』などの職業の子がいて さらにその横に座っている女の子の容姿は僕好みの子だったのでドキりとしたわけだが。そんな事を気にしていないようにその子は

「この国の王女様はとても素晴らしい方なので、勇者の皆さんを心の底から歓迎いたします。それと『勇者様のパーティー編成』に関してのご説明を行いたいと思います。この国に滞在している間に少しでも勇者の皆様のお役に立てるようになりたいと思っているので。宜しければ私の相談に乗って頂けませんでしょうか?」

と言ったので、その提案に乗る形で

「僕は山田正史です。勇者の一人ではありますが。僕は『勇者』としての使命を全うしたいという意思は特にありません。ですので僕達の世界で平和を享受していて欲しいのです。どうかその事を念頭に置いて僕達に助言をお願い出来ますか?」と言うとその女の子の目がキラリとしてこちらを凝視してきたわけだ。それから

「山田さんと言うんですね。私は姫騎士としてお城の外に出させて頂けるようになって間もないのでまだ分からないことも多いですので宜しくお願い致します。まず勇者様をどのようなメンバー構成で冒険を行うべきかを考えて行きましょう。『戦士』の方は『剣士』の方がいますのでバランス的にはいいかもしれません。しかし問題は魔法職を誰が担当するのかですよね。私達は勇者召喚により強力なスキルを得ていると思われます。ただそれはどんなものなのかまでは把握できていないと思うので、一度試しておく必要があると思います。それで私が知っている範囲だと攻撃系に特化した魔法使いの方と防御系の魔導師の方は存在するはずですので後はサポート役の神官を探さないといけなくなります。

で次に問題になるのは『魔族』と戦うための戦力です。今の所考えられるのが3つですね。一つ目は『勇者』様のレベルアップによる成長限界突破でステータスの数値を上げ続けて行く事で強くなる方法です。

二つ目に『神獣契約者』と言われる特別な能力で契約をした存在の力を借りてステータスの強化が出来るそうで。それを利用してステータスを強化する方法ですが、現状確認されているのは 一つに龍種の力が込められてるとされていて伝説級扱いされている神剣の『聖銀の聖竜剣』で、この力を使ってステータスを強化した人はいるらしいので可能と言えば可能な方法と言えるでしょう。ただしこれは伝説のアイテムであり所持できる人はほとんどいないようですが。そしてもう一つが『勇者召喚補正』と呼ばれているものです。これは勇者召喚を行った際に勇者の側に居る人に特殊な補正がかかる現象が起きるので。この勇者召喚補正の効果を利用する事ができれば可能性は高くなるのでは無いかと言われています。

三つ目の方法としてステータス上昇率に補正をかける事が出来るアイテムを複数集めて使う事で強化出来る方法があるそうです。

その三つの方法を実践するにはやはり仲間が必要だと思われるので、信頼できる仲間の選出は早めにしておかないといけないと思います。また『魔族』と対する時には武器も重要な鍵となるのではないかと思います。

これらの事を踏まえつつ『神の眼』の力を使えるようにする事が一番重要になってくるんじゃないかと。そして山田さんの望むようなメンバーが組めるかの話し合いもして行かなければいけなくなると」

とかなり細かく話をしてくれていたのでとても勉強になりました。そして

「なるほど、参考になりました。有難う御座いました」

「いえとんでもない事ですよ。私でよければいつでも相談に乗りますので」と 話が終わると丁度良く王様との話の時間となったのでその部屋を出るとすぐに王様が話しかけてきたのである。そして王様が

「勇者マサシ殿。先程娘が言っていた話なのだが。どうだろうか?あなたが望んでいる事が実現できそうな人物を探し出して欲しいと頼んだのだが、もし協力をしてくれるのであればそれなりの褒美を与えたいと私は考えているがどうだろうか?」

と言われたので僕は考えるまでもないので

「はい、よろしくお願いします!」と答えた。

そしたら王様が笑顔で「そうかそうか良かったぞ!ならばこの世界の事について色々と話をしておきたいので付いてきてくれるかな?」と王様は嬉しそうに歩き出しながらそんな風に言うのであった。そして王様が向かった先は図書室だった。

そこでこの王都周辺に関する地図を広げてから「これが現在のこの王都の状況と魔物の領域の位置関係だ。これを見て何か気づいたことはあるかのう」と 聞かれたので僕は

「あーあのすみませんがここの王様に聞いて良いのかどうか分からないので答えづらい所があるのですが」と僕は恐る恐る尋ねてみた。すると王様は「なんでも質問してくれ」と笑顔で答えてくれてくれたので僕は思い切って疑問をぶつけたのだ。

「えーっと。その前にここは地球ではない世界なんですか?」と質問をする。そしたら王様はその答えには直接回答せずに。「そうだよなぁ。君達にはいきなりこんな場所に連れてこられたら困惑するのは当然なのかもしれないが、実はこの国は現在滅亡寸前まで追い込まれていてな。そこで召喚された勇者達に魔王を倒してもらい。その功績を元の世界に戻すために魔王を倒せれば君達が帰る為に必要な情報は全て渡してもかまわないと許可をもらっている。

そしてこの国は今は平和を取り戻せてはいるものの昔は何度も『勇者』と召喚された『英雄』の方々のお陰で平和を維持出来たと言われている。しかし残念なことに今代『勇者』の方々は一人もおられず。

『賢者』の『職業』をお持ちの方もおられなくなってしまっていてな。魔王の配下は強敵だ。なので少しでも戦える人数を増やしておいた方が良いと思って今回の『勇者召喚の儀』を行うことにしたわけだ。しかし、魔王を倒す為に『賢者』の『職業』が必要とされるのは分かるだろうが『勇者』も必要不可欠な人材である。『勇者』の称号を持つ者がいれば『勇者召喚の陣』に反応を示すらしく。『勇者召喚の陣』が作動すれば必ずや異世界から呼び出すことができるはずなんだ。

そして君たち勇者の方々を呼び出した際に一緒に『勇者召喚の陣』が作動したから君たちは『勇者』と呼ばれる『職業』を得ることが出来たのだろう。君たちがその力を発揮してくれたなら我々は感謝し。『勇者召喚の陣』によって再び魔王の討伐に成功する事ができるはずだと信じている」と言ってくれたのである。そんな話を聞かされた僕は「なるほど、分かりやすい説明でした。僕で力になれることがあるなら喜んで協力させてください。それでその話は本当でしょうか?」と言うとその王様が

「ああ、そうだとも信じて欲しい」と力強く断言してくれたので僕は

「それなら、今すぐに魔王退治をしないと行けないと言うことなんですね?」と聞いたらその王様は苦笑いを浮かべて

「いやまぁそうだが、焦らずとも良いんだよ。君はまず強くならないと話にならないし。それに旅の準備もあるので。まぁゆっくり考えてほしい」なんて言うので

「それでは、その話はもう少し後日にするとしましょう」

と返事をしてこの日はお城の中に用意された僕の泊まる部屋に案内されてから食事とお風呂に入ってからベッドに入り就寝する事になったのであった。

さて、まずは『神の眼』を使って自分の能力を詳しく調べておく必要があるよね。『スキャン』!!

(よしこれでどうなっているのか確かめよう)ってなんかステータスの数値が表示されないんだけど。ん?あれステータスの数字がないって事はやっぱりそういう事って事なのか?ステータスを『オープン』!! よし出たけど相変わらず数値が見えないしレベル表示もないって事は『神の眼』でもステータスを見れない状態って事なのか。そして『スキル』『鑑定』『ステータス』『サーチ』『レーダー』『神の眼』『スキャン』『魔の叡智』『解析』を使っても駄目だと言う事が分かったんだ。

これは本格的にどうにかする必要があるようだな。

とりあえずこの王都の中で使えそうな道具を調達できる場所を探す事にしよう。

まずはこの王城の宝物庫に行ってみよう。そう決めたのでまずは城の外に出るために移動しようとした時にふと思い出して

『サーチ』を使ったらこの城の地下に宝物が保管されている倉庫があったのでそこに向かい『転移』を使用したわけだけど、そこは地下とは思えないほどの広大さを持った空間であり。その中には無数の武器と魔法の武器と魔道書が大量に置かれていて、それを見ていたら「おい、お前さんここに来るのははじめてかい?」と話しかけて来た人物がいたわけなので振り返るとそこには白いローブ姿の男がおりその男の後ろには大勢の魔術師らしき集団の姿が確認できたわけなのだ。

そんな連中を見て

「あんたら一体ここで何をしているんだい?」と問いかけてみると白装束を着た男は「ほう、我輩の姿を目にしてそのような口がきけるとは只者ではないみたいですなぁ。それでこそ魔王様を封印する勇者の仲間にふさわしい存在だと言えるでしょう。

しかしこの場所に忍び込むという行為だけは頂けませんねぇ~本来ならば死刑になっても文句が言えない重罪ですぞ」と言い放つのである。

「なるほどなるほど、俺っちの事を調べに来たのはわかった。だが悪いがこれ以上好き勝手はさせねぜ。

さっさと帰りやがれ」と言った。

そしたら「そうは行きませんよ」と奴らが一斉に襲いかかってきたので。俺は咄嵯に身を翻すと

『神速』と『加速』を使い一気に背後へと回る。そして『剣技』を使って一刀両断にした。そして更に

「剣聖魔法剣『聖炎』!『聖氷』!『雷閃』!」と唱えた。すると剣から発せられた光が敵を切り裂き凍らせて焼き払い雷撃を喰らわせた。それを見た他の奴らは動揺しながら逃げようとする。しかしそれを逃す訳もなく俺は「風刃乱舞」「嵐矢雨撃」の魔法で全てを叩き潰すことに成功したのだった。

しかしその時に警報装置が鳴り響く。「侵入者発見」と言う言葉と同時に扉の向こう側から大勢の兵士がこちらに迫ってきたので俺は仕方なく地上に脱出することにしたのだ。その際にこの王城に保管されていた武器とアイテム類を大量に持ち出していくのを忘れずに実行したのである。そしてその後僕は王城を脱出する事ができて 町中の人が集まる広場に行き事情を説明してから、そこで待っていた人達と一緒に武器屋に向かった。そこで必要な装備を整えた後に王都を出るとそのまま森に向かって走り出し森の中を突き進んで行ったのだが途中で魔物に遭遇してしまうも僕はその魔物を倒していきそして遂に魔物の領域にまでたどり着くことに成功するのである。そして僕はその領域のど真ん中まで足を踏み入れる事に成功してしまったので、これから起こるであろう出来事がどうなるか楽しみだと思い。そして何があろうと対応できるようにと覚悟を決めて進んでいくとついにその場所に到着することができた。すると

「やっと来ましたわね勇者様!」と突然の声とともに少女が一人現れる。そいつの後ろからは騎士達が大勢やって来て僕は囲まれてしまい。その少女が近寄ってきて「私の願いを聞き入れてくれる気になってくれたのね!嬉しい!もう私は待ちくたびれたんですから」とそう言ってきたのである。しかし僕はこいつが誰なのかは分かっているし、何故こんな状況になっているのかも知っている。

それはこの世界に来る前の僕に手紙をくれた女の子だ。名前はアリスだったかな。

しかしどうしてこの子がこの場所に居るのかという謎はあるけれど今はそんな事を考えている場合ではないのだ。そんな僕にアリサが近づいてきて僕に小声でこんなことを言ってくれたのだ。

山田マサシ君は僕の顔を見ると笑顔でこう言ってくれたのだ 僕も山田マサシだと言うのだ。つまりこの世界では同姓同名が二人いるらしいなと少し驚きつつ話をしてみることにしたのだ。

そしたらその子は「貴方が噂の英雄『勇者』なのですね? 初めまして、私がアリス=ルベルトです」と名乗りを上げてくれて挨拶してくれたんだけど「あぁご丁寧にどうも。山田マサシっていいますよろしく」と返事をしたら「やっぱり貴方は勇者様なのですね。

私達は魔王を打倒する為に貴方を必要としているのです」と言ってくれたんだけど、その話の内容を聞いた僕が困惑したのは言うまでもない なんせ今の僕は『無職』の『ニート』だもん。だからそんな英雄と呼ばれるような立場には居ないはずなんだけど この世界の魔王を退治するのは勇者の仕事らしく そして僕はこの世界に魔王を倒すために呼ばれた存在なんだとこの子 アリスは説明してくれたので、

「それで僕を呼んだ理由を聞かせてもらえませんかね」とお願いをしたんだ。そうしたら彼女は快く説明してくれるので、その話を聞くことにしたのだ。彼女の説明によると魔王が封印されていた場所に勇者しか使うことができない『封印石』と呼ばれる物があり その『封魔の結晶』と呼ばれるものを手に入れる為に、魔王が眠るとされる地に向かい、その地のどこかに存在する魔王の心臓である『核晶』と言うものを回収すれば、魔王の力を封じることはできるらしく。そのための人材として僕の力を借りたいと言うのだ。その為に彼女と共に魔王討伐の為に旅に出て欲しいとお願いされてしまい。それについていくことにしたのだ。だってさ『勇者召喚の陣』によって召喚されたってことは元の世界に帰る方法はない可能性が高いわけだし、それどころか、もし帰ることが出来たとしても戸籍が死亡扱いになっていて戻れなくなっている可能性が非常に高いからだ。だからその魔王を倒すことで僕の元の世界を救える可能性があるならば、僕はそれを手伝うべきだと考えたんだ。だけどその前に 僕の『職業』をどうすればいいのか分からないし、そもそも職業を変える方法があるのかどうかさえも知らないので

「とりあえず職業を確認させてもらいます」と言い。そして『ステータス』を確認させてもらった。

その結果職業欄に『異世界冒険者見習い』と表記されていて。それを見た彼女が

「『異世界冒険者見習い』と言うと何かのスキルがあるのでしょうか?」と尋ねてくるので『サーチ』で『神の眼』のレベルを確認すると。確かにレベル100で。レベルが上がったことによって新たな項目が増えていたのが『解析』で分かる。そこには『職業変更』の項目が存在した。

それを確認して僕は「僕の職業を異世界の冒険者として『転職』させることが可能になりました」と答えたのである。それをみたアリスが驚いていたが

「本当ですか?勇者様」なんて嬉しそうな表情で言うものだから

「まぁとりあえず『ステータスオープン』!!って言いながら念じればいいんじゃないかな?それで表示されると思うよ」と教えてあげると早速やってくれて 結果『無職の魔王の勇者』となったのだ。それで僕は『サーチ』を使ってみた結果、職業の変更が可能だという事がわかったのである。だから

『サーチ』!!

『鑑定』『神の眼』『魔の叡智』『鑑定』『魔導』『サーチ』『鑑定』『サーチ』『サーチ』『魔の叡智』『鑑定』『魔の叡智』『サーチ』『魔の叡智』『鑑定』『魔の叡智』『鑑定』『鑑定』『魔の叡智』『鑑定』『鑑定』『鑑定』『魔の叡智』を使ってみて。それでも表示されなかった。やはりレベルを上げる必要があるようだな

「どうでした?」なんて言われても。答えは決まってるわけだし「うーん残念だけどダメでした。

とりあえずこの異世界を周って経験値を集めてきますんで待っていてください」と伝えてから。すぐにその場を離れて。そして町に戻ると僕は武器屋に行き必要そうな装備を購入してから。宿屋に行き、そこで眠りについたのである。

朝起きてから朝食を食べた後、部屋を出て一階に向かうと受付の女性に声をかけられたのだ。

その女性は「おはようございます、よく眠れましたか?」なんて話しかけてきてくれたのだ。

その人はアリサというらしいのだが「えぇそれなりに寝ることができました」と伝えると。

アリサさんは僕に対して色々と質問してきたんだ。「これから何処に行かれるんですか?」「何しに行くんですか?」「目的が有るんですか?」

とまぁこんな具合でね。それに「ちょっと魔王を倒しに行ってくるよ」と冗談を言うと。「へぇそんなに弱いのに、大丈夫なんでしょうかね」とか言われる始末。だから僕も負けずにこう言ったんだ。「これでも昔は冒険者やってたからね。そこそこは強いつもりだよ」

そうして暫く会話をしていると。突然宿の従業員が現れ「お出かけになるのなら準備が必要でしょう? それと勇者様にはこちらをお使いになって頂けませんか?」と言い、その人が差し出してきた袋を受け取ると 中にはかなり高額のお金が入っていたのでびっくりしていると。

その人から「これは私達からの気持ちだと思っていただければと思います」と言われるのだが 正直そこまでしてもらわなくても構わないと思ったけど この世界はそういうものなのだと言われてしまえば受け入れるしかないかなと 僕は素直に従うことにしたのだ。

「じゃあ有り難く使わせてもらう事にしますね。それじゃあ出発の前にギルドに立ち寄ろうと思っていて、そこがどこにあるのかを教えてもらっても良いかな」

そうするとアリサは「それくらいは良いですけど」と言って 場所の説明をしてくれて「それでは行ってらっしゃいませ」と送り出してくれるので僕は一礼をして外に出ると 町の人の話を聞くと、この町のギルドが王都に本店を構える冒険者協会の支店の一つらしい。それを聞いて王城の中にもあったなと思い出しつつ歩いて行き到着したギルドの中に入るが中々人が多いのだ。しかも殆どが女性で僕は少し戸惑いながらも、受け付け嬢の所へと向かい そこで「すいません冒険者になりたいんですが手続きをしていただけますかね」と聞いてみると その女性が笑顔で対応してくれるので そこで「職業は何が良いかってありますか?」と聞かれたので

「できれば剣士とか盗賊が望ましいですね」と答えてみるとその人が「それだとこのカードを渡す事ができなくてですね。その職業にはなれなくって。申し訳ありません」と言ってきたのである。そこで僕は

「あぁ別に職業を選べるとは思ってませんでしたし、気にしないで下さい。ただ冒険者をするのに最低限の能力を持っているのかを見極めたいだけですから」と言ってみるが。それでもその人が引き下がることはなかった なので仕方がなく『ステータス』を見せて説明することにする。

『職業無職』にすると驚いた表情をされた。それから僕は説明を開始することにする。まずは能力値が低いことを伝えて、そこから説明していく。

僕の場合は剣術の才能が全く無いこと、そして魔法も使えないことから『異世界冒険者見習い』に転職して戦えるようにした方がいいのではないかと助言を受けて。『異世界冒険者見習い』になったと言う経緯を説明する。そんな事をしている間にギルドマスターがやってきて僕の目の前に立つと

「話は聞いていたが、本当なのか? そんな『職業』聞いたことがないぞ」と言われたのである。そんな言葉を受けた後で「どうするのですか? どうすればいいですか? 僕は」

そんな僕の言葉にその男は「まぁ俺が責任をもってお前を鍛えてやるよ。

だから今日は休め。そして明日から訓練をさせて貰う」と言ってくれて僕は「わかりました。それなら明日から宜しくお願いします」と挨拶を交わして宿に戻り眠りにつくのであった。しかし僕がこの先どのような目に遭うことになるのか それは誰にもわからないことである。

そして僕に剣の扱い方を教えてくれた男の名はガナードといい、年齢は三十五歳で独身。髪の色は茶色の肩までの髪をしていて、体格の良い人で、服装に関して言えば動きやすさを重視している感じの服をいつも着込んでいる人である。そんな人に「とりあえずこの辺の魔物相手に戦い方を体に染み込ませないと、実戦では役に立たないから、最初はこの付近で戦闘の訓練を行うとするか」と言うので「分かりました」と返事を返すと。彼は歩き出すので、その背中を追いかけて行くと、そこには二匹のゴブリンがいるのが確認できる。

その数は全部で四匹で、その一匹の頭上を見る限りレベル1と書かれているのが見えるので、レベル2が五匹存在しているのである。

そしてそのうちの一番近くにいる奴を彼が見つけ、そこに近寄るといきなり「こいつを倒してこい」と言うのである。それを聞いた瞬間僕は「はい?無理に決まっているじゃないですか、まだ一度も戦った事がないんですよ。それにレベルはたったの1ですよ」と言い返してみたのだが

「確かにその通りだが、ここでやらないとお前が死ぬ事になるだけだぞ。

それが嫌ならばやれ、やれないならばさっさと帰れ!!」なんて言ってくるのだ。だけど僕は「やりますよ、でも絶対に死んじゃいますよ」と言いつつ武器を構えたんだけど。どうすればいいのか迷っていたので取り敢えず攻撃を受ける前に一撃を入れるしかないと思い 先手必勝ってわけで一気に駆け寄りながら腰にさしていたショートソードを抜き放つと振りかぶった後に力いっぱい叩きつけたんだ。そしたらゴブちんの首の部分が吹っ飛んだ。その結果を目の当たりにして「え?」と驚きながら そのまま固まっていた。

そしてそれを見ていたガナードさんが 僕の前まで近づいてきて頭を叩いてきたのである そして僕は怒られる覚悟をしながら彼にこう言うのだ。

『異世界冒険者の勇者』がレベル5のゴブちんを討伐したと すると彼から「今ので何体殺したか覚えてるか?」と尋ねられて僕は「一体倒したような気がした」と答えたのである。だってそう答えるしかなかったから。だけど実際はレベルが上がっていることに気付かなかったんだよね。

だから『ステータス』を開いてレベルが3になっていたことで「あっ」と思わず声をあげてしまったのである。それを見たガナードは「おいおい何だよ、何か変なことでもあったのかよ?」と言ってくるので、それに「今の戦いでレベルが上がったみたいです」と告げる。それを聞き彼は笑みを浮かべながらこう言ってくれた。「だったらもっと上の相手と戦ったらどれだけの経験値を得る事が出来るんだろうな、わくわくしてくるな、おい」

とね。そうして更に森の中を突き進むと。今度はレベル10のコボルドを発見すると「ほぉレベルが高いじゃないか。それじゃあこれと戦ってこい」なんて言われてしまい その通りに戦おうと思ったのだが。よく考えてみれば、どうやったら倒せるんだ?と思ったから どうしたらいいか分からないので その事を口にすると「あーそういえば説明がまだ済んでいなかったな。いいか? その手にした武器を思いっきり相手の腹に向けて突き立てろ、そして怯んだところで止めを刺せ」と言われて言われた通りにやって見たらあっさりと倒しきることが出来た。

そしてレベルアップしたので。確認の為に『サーチ』を使うとレベル4になっているのを確認したのである。そこで『サーチ』で自分の体力が数値として見える事に驚いてしまい 慌てて周りを確認してみると。僕の周りに緑色の線が引かれて囲われているのだ。だけど不思議だなと思っているとそこでまたガナードさんに声を掛けられたのだ。「それを使って見回しているようだけど。それはどういう仕組みになってるのか気になるのか?」と言われて素直にうなずくと。彼は詳しく解説してくれたのだ。それで僕は彼の話を聞いた上で『魔導』にポイントを振り込むとこう表示されたのだ。

----------《スキル》 魔道適性I→II

(100/100)

:魔法使用時に威力増加補正(小)→魔法の発動スピード向上(微弱)

----------

----------《その他スキル一覧表》

『神の鑑定』『神のアイテムボックス』

『状態異常無効』『魔力制御』

『自動成長付与』『完全習得支援機能 獲得経験値増量100% 必要経験取得ポイント軽減10%』

------『特殊固有効果』

【異世界勇者限定】勇者の心得:異世界の常識では考えられないほどに強くなれるようになる。また勇者の力を使いこなしやすくなる ---

*精神力 1つの魔法を覚える為に必要となる値であり、この値が大きい人ほど多くの種類の魔法を覚えやすくなり。

扱える属性の数が増えるのと同時に強力な魔法が扱えたりもするのです。

2 EXP9500 ステータス 名前 中里真也 種族 人間 性別 男性 年齢 17歳 身長 156cm 体重 46kg 容姿黒髪に少し長めの髪をしている。顔立ちも良く女性にもてる事が多いが本人は恋愛などには興味が無く仕事を優先しているため、異性と付き合った事がないという悲しい過去がある。しかし過去に『異能力系』で召喚された際に、魔王を倒したという経歴を持つ。

性格は普段は大人しいもののいざとなった時の行動は大胆で、仲間の為なら自ら危険に飛び込むことも厭わない。その反面で正義感が強すぎる所もあり。一度決めてしまうと頑なになり譲ろうとしない面があり融通がきかない事もあるため。周りの人からは誤解される事もあり「何を考えているのか分からず気持ち悪い」とか「自分勝手すぎて困ってしまう人」などと陰口をたたかれる事も多い 職業 無職/異世界冒険者見習い 職業レベル 2 冒険者ランク GG - 称号 なし 装備 片手剣 /ロングソード 備考 冒険者としてはまだ見習いのため『職業レベル』が存在せず。ステータス欄の数値に表記されない。『異世界冒険者見習い』の職業に就くことにより冒険者としての活動が可能となる。その為には『異世界冒険者見習い』を解除する事で職業を無職に変更する必要がある。なお『ステータス』については一般人の平均ステータスが30前後に対して約2倍の値を持っている ------『異世界冒険者見習い』→『無職』になった途端『職業』に関する説明画面が現れなくなった。だけどそんな事を気にしてはいられないので。僕は次の魔物を探して歩き回るのであった。

そして魔物を狩っている最中で、僕達は『スライム』と遭遇するのである。その『モンスター』を視界に収めると。その見た目に思わず絶句してしまうのである 何故ならば僕達の世界で言うところのRPGに出てくるような可愛らしいピンク色のゼリー状の生物ではないからだ まるで人の腸を無理やりねじ切った様な形をしており、大きさもそれ相応に大きいものなのだ。なので「おい!あれを見ろよ」と言うガナードさんの叫び声で意識を取り戻した僕は視線の先にある光景を見て驚愕したのである。そこには巨大なゴブリンがいたのだ。しかし、その姿形は普通のものとは全く違い巨大に膨れ上がったお腹を抱えて苦しみの表情をしているのだ だから「まさか妊娠でもしたのか?」と言う疑問を抱いているとその答えを知る事になった。

なんと妊婦のお腹を突き破って生まれたゴブリンが出てきたのだ。しかも一体だけではなかったのだ。次々と生まれてくるゴブりん。僕はそれを呆然と眺めながら これはやばいと思いながら「ガナードさん逃げましょう!」と声をかけたんだけどさ、だけど彼は逃げる気配が無いんだ。だから仕方なく彼を放置しその場から離れようとしたんだ。すると突然ゴブちんが僕の目の前に現れる そして僕はそれに反応が出来ず 思い切り殴り飛ばされる事になる。

そして僕は痛みを感じつつも『異世界勇者の心得』を発動させるべく「神眼」の能力を使ったのだが、その画面に映るのは今までとは違い真っ白な画面だったのである どうして?と思って焦っていたら「なんじゃそれは?何かがおかしいぞ?」なんて言葉が耳に届いたのでそちらに目をやる。するとガナードさんが僕の様子を見ている姿が確認できたので「何が起こっているか分かりますか?」と質問を投げかけてみる。すると「分からん、しかし一つ分かる事があるとすれば」

と言いかけたところで「お前の体の中にある魂の色が変わってきておる。おそらく何かが発動したのか、もしくは何かの攻撃を受けているのは確かじゃな」と言われて困惑しながら「それって一体どういう事ですか?」と尋ねる すると「さぁの、ワシもよくは分かっとらん。だけどこれだけ言えるのはその力は恐らく今の君が持つべきではない。それだけは間違いがない」と言ってくれたのである。そう言われて僕の頭の中に浮かんだ選択肢としては『このまま死んでも良いんじゃないか?』だった。だって僕は弱いんだから、ゴブちん一体すら倒すことが出来ないぐらい そして今更なんだけど

『神の鑑定』の画面にこんな文字が表示されたんだよ

『職業変更:勇者見習い→無職』

その言葉の意味を理解した時、僕の中で『何か』が崩れていくような感覚があった。それと同時に『異世界の魔王』を倒した『伝説の勇者の力を受け継いだ少年の物語』の主人公の気持ちを理解するのである。

そうして『職業変更』が終わる頃

『ステータス』を確認すると『スキル』の部分にこう表示されている。

----《スキル》

異世界冒険者:全ての戦闘系のスキルを使える。ただしレベルは1まで下がる。

*精神力 3つの魔法を覚える為に必要となる値でこの数値が高い程多くの魔法を覚えられ同時に魔法の効果も高いものになるのです

「ふむ、それが何なのか理解したかの?」

僕はガナードさんから問われ「一応何が起きたのか、何となくは」と言ってみせた 彼はそれを聞き微笑みながら「まあ良いわ、それよりも今からワシらは『あいつ』を倒す必要があるからな」と言ってみせてからゴブちんに向けて走り出すのだ それにつられてゴブタも走り出し そして僕も慌てて彼らを追うようにして走った。そして彼らの戦いを見守った。その動きは素人目から見ても見事だと思えたほど鮮やかで無駄がなく綺麗なものだったのだ そうして見ている内にガナードさんの方が優勢になっていった。なぜならゴブリんの方はすでに瀕死の状態で戦える状況ではなかったからである。なので止めをさす為に彼は武器を手に持ち駆け寄る。それに対して、最後の力を振り絞るように反撃してきたけど彼の攻撃を避けるのは難しいものでもなく難なく回避に成功すると武器を思いっきり突き立てたのである。

その光景を見ていた僕は『ああ死んだな、これ』と思っていたら案の定 相手は完全に動かなくなり絶命したのである。その様子を見たガナードさんが嬉々として「よし!倒したぞ!!」なんて言っているが それは無視して僕が倒していたゴブちんを見ることにした。その体は腹部が大きく膨れあがり口から血を流している状態だったのだ。そんな状態の相手を前にしても、特に同情する気にもならなかったのだが「そろそろ『魔石』を回収しないと不味いな」と言われて僕は慌てて回収作業を手伝うことにした。しかしそこで問題が発生する それはあまりにも大きすぎて回収できないのだ。どうしたものかと考えているとあることを思いついたので それを試すことにしてみる。『アイテムボックス』にゴブちんを入れようとしたのだが何故か入らない事に気づいた僕は少し考えて一つの可能性にたどり着いた。そこで試しに『アイテムボックス内の物を外にだせるかどうか?』を確認して見ると普通に成功したため、そこから魔石を外に出すようにイメージをして実行に移してみた そうしたら今度は成功したのである ただここで僕はまた一つ発見をする事になるのだ。アイテムボックス内に入ったままの魔石の数が10個以上存在していたのである。これには少し驚いた。もしかしたらアイテムボックス内には時間が経過しない場所が存在するのではないかと思ったので『神の鑑定』を使って調べてみた結果 アイテムボックス内の時間が停止する機能が付いている事に気がついたのである。つまりこの能力を使えば食料などの物資を運ぶことが容易になる。なので、これからもアイテムボックスの能力を使おうと決める。ちなみにこの時の僕はかなりテンションが上がっていたために。この後の出来事に対して警戒心が抜け落ちていた。

そして、その時は訪れたのである

『スキル』

異能力者

『無能』→『勇者』

職業を『無職』に変更した事で使用可能となる レベルは1に下がったものの、他の能力値は上昇した。

*精神力 1つの魔法を覚えるの為に必要となる値で 魔力量を増加させると同時に魔法を上手く扱えるようになり消費するポイントの減少効果がある 職業レベル 2(勇者)→3 1EXP5万 →20500 2 EXP2200 ステータスは表示されず レベルアップ時にしか反映されないため。数値は表記されない 経験値を獲得する事が出来るようになる 装備 ロングソード /剣 異世界冒険者の証であり、レベルに応じてステータスが上昇する効果が有るために。無職の状態より遥かに高い身体能力を得られる 称号 異世界冒険者見習い→無職 無職となった為、ステータス欄に『職業』の表記が存在しなくなる。その代わり『異世界冒険者見習い』を取得する事が可能になりレベル1の状態に戻る代わりにレベルを1上げる度にステータスが1上昇 装備 無職のためレベルが上がらずステータスの上昇はない ------

僕は『無職となった事』で『職業が消えて』しまった事実を知り愕然とした。まさか職業が消えるだなんて思いもしなったのだから当然だろう。そしてステータスの『異世界勇者の心得』の効果について詳しく調べてみても 職業を『無職』に変更してから、その職業に関する事柄が消えてしまい。その分は空白状態になっているということが分かった。その為 職業に関する恩恵を受けることが出来なくなったわけで、その影響で今まで使えていたスキルが使えなくなっている そしてステータスの補正値が元に戻った事も確認することが出来た

「どうやら君は無職になった事で全ての職業のメリットが失われてしまったようじゃの」とアリサから言われるまでもなく自分でもその事に気づき、自分の迂闊さを後悔していた。しかし今は反省をしている場合ではない 目の前には魔物が迫ってきつつあるからだ なので『無職になってしまった』のであれば

『アイテムボックスの能力だけを利用して生きていこう』と考えたのである。だから早速アイテムボックスの使い方を考え始めたのだ。そして最初に行ったのはゴブちんを回収である。その数は全部で15体存在した。

それを全部入れた後は残りの13体を収納していく これでゴブちんは全て討伐が完了したことになる。その後すぐにガナードさんから話しかけられたので彼と共に『スライム』の群れとの戦闘を始めた

『勇者』の力で強化されたガナードさんの剣術とゴブちんが使ったと思われる技により。僕よりも圧倒的に早く戦闘は終了したのである。ただその途中で『勇者見習い』の『無職』によるデメリットであるレベルが上がりにくくなる事を説明された。その話を聞いた僕は「だったらレベルを上げて『職業』を取得した方がお得ですよね?」と言うと、ガナードさんは笑った後「そうだな」と言い、それからは休憩が終るまでの間、戦闘と会話を繰り返した。その会話の内容の中で僕は彼に質問をした。「そういえばガナードさんは何歳なんですか?」「俺の年齢は52才だ」と言われ、その見た目からは想像がつかない程の若さを感じさせられた 彼は「こう見えても結構長く生きている方なんだぞ?」と言っていたのである。

それを聞いた僕は素直に驚いていたのだ。というのも彼の年齢からすれば、かなり長生きしているのは間違いがなかったのだから 僕は『この世界』では50歳でもかなりの高齢者に分類されるのだろうと勝手に思っていた そうしてしばらく話した後、再び『ゴブリンロード』の元に向かうべく移動を開始したのである。しかし先ほどの戦いのせいで僕達の体力はかなり削られてしまっていたのだ。そのため道中は何度か休まざるをえなかったのである。それでも何とか目的地に到着することができたので『ゴブリン』との再戦を行うことにした。今回はゴブちんは僕達の後ろに控えさせている。

「お前達が何人集まろうと、ゴブちんの前には無力な人間に過ぎない」

その言葉を吐くゴブリんに向けて僕とガナードさんはそれぞれ攻撃を仕掛ける。すると僕の攻撃に対して相手は回避を選択したようで、僕の攻撃を避けた後の反撃で、こちらを蹴り飛ばしてくる 僕はその攻撃を受けて後方に飛ばされたんだけど、どうにか踏みとどまる事が出来たのである。そんな僕を見ていたガナードさんはゴブちんの注意を引きつけるために攻撃を行った。その攻撃を受けながらも、彼は余裕を見せており、僕に対して「どうした?この程度か?」と言ってきた。

僕はそれに反応するように「いやまだ終わっていないよ!」と答えてから魔法を発動する為に呪文を唱え始める その様子に慌てるような表情を見せたゴブちんだけど、もう既に遅い 僕は『雷光矢』を放ち。それに合わせて、ガナードさんも追撃を加えたのだ。しかし、それも簡単に回避されてしまうのだけど 僕はそれを確認した後に「今の魔法に付与したのは『加速魔法』なんだよ。それに気づかない時点で君の敗北は決まっていたんだ」と言ってみせた。そう その言葉は僕が事前に考えていた罠であり。その狙いは見事に成功した ゴブリんはその事に気づいた時には遅く 僕は更に次の魔法を発動して 今度は炎の渦を放つ それに対してゴブリんは慌てて防御の体勢に入るも、そんなもので防げる筈もなく 炎に飲まれて燃え盛っていたのである。

僕は、その様子を眺めている間に、ふと疑問を抱く

『何故『魔石』を回収できないのか?』と、そしてその事に考えが至ると直ぐに行動を起こした ゴブちんを『アイテムボックス』の中に入れようとするが入らないのである。そこで僕はある仮説を思いつき

『ゴブちん』と『ゴブちん』以外の個体を対象に『鑑定』を行ってみると そこには名前:

種族:

ゴブリンナイト(亜種)Lv.40 称号 :ゴブの守護者 ゴブちん(進化済み)

状態 なし Lv.30/30 →LV34 / HP420 / 80 MP200 / 100 筋力 172 敏捷性 123 器用度 112 知力 116 精神力 114 生命力 136 運 78 状態 【称号】『 ゴブリン 』『 勇者』

(ゴブっち(進化中)

『勇者』に寄生されているため、ステータスが大幅に減少 ゴブちんのステータスポインント 全能力+120+α 残りポイント 0)

僕は『ゴブちん(勇者)』の状態を『称号』として表示してみたのだが、そこに書かれていたのが、これであった。

ステータスが低下をしているのと。レベルが上がっているという事は、恐らくだが、僕の中に存在しているゴブちんのレベルが上昇して進化したのであろうと判断した。しかし『魔石』を回収することが出来なかったため、この方法も使えなくなってしまったのだ しかし僕はまだこの事に気付いていなかった 鑑定結果の詳細が見れる事 そしてアイテムボックス内に存在していて時間が経過しない場所は存在する事 さらにスキル『神眼』の能力の一つである『解析鑑定』を使う事が出来るようになっていたことに。

**『解析鑑定』

効果1対象の能力詳細を知ることが出来る。

ただし『勇者見習い』、『勇者』の能力は例外であり表示されにくい傾向にある ****『ステータスチェッカー(改二型 ~ステータス閲覧可能化機能付 鑑定系アイテムの中でも最上級クラスの一品。このアイテムを持つ者が『ステータス』を意識するとその者の現在の情報が画面上にて表示される。

また他者に対してもステータスの確認が可能』

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どうやら『ステータスチェッカー(改良前)』の効果が変化して。今のような機能が使用可能になっているようだその事に気づくと同時に『無職』になった事で使えるようになったという説明の意味にも納得したのである しかし『勇者見習い』と『勇者』の能力に関しては何故か表示する事が出来ないという事に少し不満を感じつつも仕方がないかと思うことにした。なぜなら表示されていたとしても『勇者』については、あの時みたいにならないとも限らないからね。そして改めて目の前にいる敵に集中しようと気持ちを改める事にしたのだ。だから僕は自分のステータスを確認していくことにした。その結果分かったことは、ステータスの値に変化があった事である。そして一番の驚きが『無職』の状態でもレベルが1上昇していたのである。これは『ステータス』の数値が変動しない代わりにレベルアップ時に上昇する数値が増えたからだろう。

僕はそのことを確認してからステータス画面を見直す ステータス -----------

名称 田中雅士 年齢 20 性別 男性 種族 Lv.2 職業 無職 レベル 1 HP 10 / 15 +5 MP 25 +10 筋力 4 -7 -1 -1 敏捷 6 -6 -2 -1 頑強 5 -5-2 -1 魔力 9 +8 精神力 7 -9 +3 技能 真なる鑑定眼『 職業』と『ステータス』が見えない状態で、その人の本来の力が分かる アイテムボックス(Lv.1 異世界転移した際に得た特典の一つ 空間収納 容量∞ アイテムリスト操作 アイテムリストを念じる事で視界に出す事ができる アイテムリストから選択することでアイテムの出し入れが可能になる 異世界言語理解『 異世界にやって来た事で得ることが出来た能力の一つで全ての国の共通語での意思疎通が可能となる。

アイテム鑑定『 異世界でアイテムボックスの能力を得てから、ずっと使用していた能力 この世の全ての道具を見分け、性能を確認する事が出来る アイテム収納『 収納したアイテムを任意で自由に取り出せる 亜空間に繋がる入り口を出現させることが可能 異界収納 異世界にある自分の部屋へと繋がる入口を召喚することが出来る 異界転送 自分が所有する場所と繋がっている入口を任意の場所に出すことで瞬時に移動することが可能 無職』『 レベル』が上がったことで『職業』が変更可能な状態である事を知らされる。『勇者見習い』と『勇者』の表示は相変わらず変化する事は無かったのだけど。レベルを上げれば表示されるかもしれないと思って。『職業一覧』を表示するとそこには変化が有り、新しい職業が表示されていた。その数は全部で七つ存在した 職業一覧 ------

上位職業(下位現在非表示状態)

『勇者見習い』

条件を満たしていないため未開放。解放条件: 異世界から現れた『無能の天才』の『無職』に転職する。この世界に存在する全ての『職業』を取得していない場合は『勇者』の称号のみの取得となる。『無職』の派生職の為『勇者』の称号を得る事が優先事項になる。『職業』を取得していない場合には、この世界に来たばかりの頃の『田中 雅志』に戻る。

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下位職業(最上位)

『 』

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上位『 』に覚醒するための前提 条件を全てクリアすると解放される。但し『勇者』のジョブを所持している必要がある。『 』に進化するためには『魔王』『大悪魔』に認められる必要があり。『 』は更にその上の段階の存在でもある為『 』は現状では到達できない存在である ------------

「え?どういうこと?」思わず呟いてしまう。

僕はその内容を確認した瞬間。全身が粟立つ感覚に襲われると共に、背中に冷たいものが流れるような気分を味わうことになった。そう僕の予想では上位『勇者』が取得できそうだったのだけど。そもそもの上位職の条件が不明で『勇者』が取れない可能性が有るということなんだよ。それに何よりもこの世界に現れた当初の『無職』である状態に戻れる可能性の方が高いって事なんだよね。まぁそれはそれとして今は、この状況を何とかするしかないかな。だって、このゴブリン達は僕のことを『 ゴブリン 』だと思っているんだからさ。それに『ゴブリン』だけならともかく『ゴブちん』までいる状況だと流石に不自然極まりないだろうし、この子達の身を守るためとはいえ。ゴブちん達も巻き込んでしまったわけだし。その事はきちんと伝えておかないといけないからね。

僕はそう考えてゴブちん達に「ごめん、まさか『ゴブリンナイト』なんてものが、出てくるとは思わなかったんだ。それにしてもよく無事でいたな」と言う。そうして謝った後に。『魔族領』は大丈夫なのかと聞いてみると、特に問題ないとのことだったので僕は安心した。そうして「それじゃ僕の名前は『田中』だから。もし困っていたり、助けが必要な時には連絡してくれよ」と言い残して僕はその場を後にすることにしたのであった。しかし『勇者』について調べてみたんだけど、残念ながら今の時点では手掛かりが無いようだ。どうしたものかと考えていると不意に声がかけられたのだ。「あ、あのぉ。助けてくれてありがとう。本当に感謝しています!」その言葉を聞いて振り向くと。そこには女の子の姿が在って。そしてゴブちんと同じゴブリン種の女の子である事に気づいたのである。その少女は可愛らしい感じの子だった。身長的には150cm位だと思うけど見た目にはもっと小さい気がするのは多分栄養不足によるものだろうか。でも髪は長くて、後ろで束ねて結っているようだった。そんな彼女に向かってゴブちんが近寄ってきて何か言っている。

その様子を見ていて、なんとなくだけど、僕にもゴブちんの気持ちというのが何と無く分かるようになってきたんだ。その様子から、きっと彼女の事が心配になって声を掛けてきたんじゃないかと、僕は考えていた。ただゴブちんと話をしていた彼女は、ふと思い出したかのように「あ、そうだ。あなた様に渡して頂きたいものがあったのですが、忘れてきてしまいまして、申し訳ないのですが家へ届けてもらえないでしょうか。お礼の方は、ちゃんとしますので。宜しくお願いします。あとこれ私の名前になります。どうぞ御受取ください」

そして名前と住所が書かれている手紙のようなものを僕に預けて来たのだ。僕はそれを預かる事にしたのであった。しかしゴブちが、その紙を見ながら不思議そうな表情をして首を傾げてたので僕は苦笑してしまうのであった。

*

***

名前

:リリイ(種族:ゴブリン/ゴブっちの妹 レベル 3 体力 2/5 +5 気力 10 /15 +5 精神力 5 /10+2 腕力 4 -7 +5 魔力 4 -7 +10 速度 4 -7 +5 頑強 4 -7 +5 頑強+4 = +6

***

うん。『鑑定』を使わなくても『ステータスチェッカー』を使えば、こんな風に表示が出来るみたい。ちなみに気力と精神力はレベルアップ毎に、+1されていく仕様となっているらしい。

それから彼女は少しの間。その場で待っていてくれと言われたのだが、その間暇だったのでステータス画面を見返していると、新たに項目が追加されていたことに気付いた。その事に気付いて早速内容を確認する事にすると、『スキル』の項目が増えていることに気付く。『スキル一覧』と『無知の知』の能力が表示されている画面を確認してみると。『スキル詳細表示』と表示されていて、どうやら新しく増えたこの能力は、表示したいと思った事柄に関しての詳細を確認する事が出来る能力のようだ。僕はとりあえず試しに『鑑定』で表示される情報を確認した上で『鑑定詳細表示』と念じてみる。その結果が目の前に浮かぶウィンドウに表示される。

鑑定『詳細説明』

アイテムなどに対して鑑定を行う事によって判明した事の説明を見ることが出来る能力

『鑑定眼』という特殊技能を『無知の知』が『神眼』に進化したことで獲得。

どうやら『鑑定眼』の能力を応用して『アイテム』だけではなく『生物』に対しても使用できるようになったようである。これは有益だ。何故ならば今後出会うであろう他の人にも使う事が可能なのだ。そう考えつつ次の機能である『解析(改)』、『鑑定詳細化』を使用してみることにする。

『ステータス』『アイテムボックス』『アイテム』と順番に使ってみた結果『解析』の能力は『対象のステータスを表示する事ができる』という能力だった。これは恐らくだけど、僕自身が認識していない相手のステータスを表示することが出来るのかもしれないね。『鑑定』と組み合わせればより一層便利になるんじゃないだろうか?そう考える。『鑑定』を自分の目視で行えたのであれば『鑑定眼』の技能を持っている人は自分で自分を『鑑定』すれば良いだけのことなのでは無いのかな。でもそれはそれで『鑑定』を自分で行うのは、ちょっと難しいような気がしないでもないから、結局は自分の力で出来る範囲でやるしか無いんだろうな。

次は『アイテムボックス』の確認だ。まずは『アイテムボックス』の機能を使えるかどうか確かめる必要があるからな。そう思って念じてみると『無職専用アイテムボックス』の表示が現れた。その表示の内容を見てみると、僕の視界上には『無職』の文字だけが浮かんで見えている状態だったのだけど。その状態だと何故か僕の体の周りには見えないけれど『無職専用の装備』が表示されていて、しかも、その状態がずっと続いているように感じていたんだ。そこで僕は思い至る。僕の体の周りの空間に、僕の職業が表示されるのではないかと、考えた結果。それは当たっていたらしく。僕の『職業』を表示させることが出来てしまったんだ。その事を嬉しく思ったものの、この世界に来る直前に『無職』だったことを考えれば。当然と言えば当然の結果なのかもしれないな。そう思っていたんだ。

ただその職業欄が、この世界の基準からするとおかしいことになっていて、僕としては凄く微妙な気分になってしまう事になったんだ。何せ表示された職業が『無職の勇者』だったのだから。そして称号の方に目がいったのは言うまでもない。そこにはこう書かれていて、思わず頭を抱えそうになることになったんだ。

****

『勇者の器』: 全ての職業を極める事により得られるとされる存在に与えられる称号 全ての上位職業の称号を獲得していない場合は『勇者』の称号を得る

『魔王』の力を宿す: 魔王の因子を受け継ぐ者の称号 全ての上位職業の称号と魔王の称号を獲得していない場合、この世界で魔王と呼ばれるようになる可能性がある。

『魔族の希望』: 魔族に慕われ、魔族にとって必要な人間の称号。

『大悪魔』の契約者として認められており、魔王への扉を開くための存在。

『悪魔との契約者』: 悪魔の力と契約を交わす事により認められた証として与えられる。契約時に『勇者』のジョブを与えられるが『悪魔』との繋がりが存在する限り『勇者』の資格を失い続ける呪いを受けている。

*

***

これって絶対に僕に対する皮肉だよな?と、思ってしまう内容だったのだ。何でかっていうと僕自身『勇者の素質』があるなんて事は一言も言ってないわけだし。なのに勝手に『魔族領』にいる間には気付かなかったけど。『勇者の素質』があると判断されちゃったんだよね。そして何気に僕が『大悪魔』のマスターになった事も記載されているのが怖いところである。それにしてもさ。なんでこんなに『魔王』とかいうのに好かれているんだろう。なんか理由でもあるんだろうか?まぁ『 無職 』だと、そもそも魔族に嫌われてるし、その上。魔王が求めているような特殊な能力も無いわけだし、そんな事は無いとは思うんだけどね。しかし魔族に『 無 』の『 無 』の字が付くなんて嫌な偶然だなと思ってしまったのだ。そうしてステータス画面とにらめっこをしていた僕は、ふと疑問に感じることがあったのだ。どうして今までは確認できなかったはずの、僕自身の詳細な情報を知ることが出来たのかという事だった。そしてそれについて考えてみた結果。どうやら僕自身が意識的に見るか見ないかを決めれるみたいだと言う事が分かった。つまり僕の意志次第では他人の詳細情報を覗くことも出来てしまうという事なのだけど。これって結構悪用されるんじゃないかな。何せ人のプライバシーが筒抜けになってしまう可能性があるのだ。僕の場合だとステータスの覗き込みが出来るからこそ『鑑定眼』を使えば、相手がどんな能力なのかが、簡単に分かるからいいのだけれども。

そして『解析(改)』、『鑑定詳細化』、『アイテムボックス』『鑑定』の使い方が分かったところで。ゴブちんの妹が家へ戻ってくるのを待つ事にしたのであった。暫くしてからゴブちんの妹が帰ってきた。僕は彼女の持っていた手紙を受け取りながら「じゃあ、これで依頼完了だね。ありがとう。ゴブちんにも宜しく伝えてくれよ」と言って、ゴブちん達が住む家を後にすることにしたのであった。

****

「あ、そうだ名前教えてもらってもいいですか?」僕はその声を聴いて振り返るとそこには可愛らしいゴブリン種の女の子の姿があった。その子は身長130cm位の小柄な少女であった。髪の色は茶色で短めのツインテールになっている。顔立ちは幼さが残っており10歳程度にしか見えないのだけど。

見た目だけで言えば小学校中学年くらいの年頃なのではないかと思われる。その証拠に服がゴブちん達が来ていたのと似ている。

ゴブちの妹と同じデザインの衣装を着用していて。色は緑色。そして腰元に武器のようなものを携えて立っていたのである。

「えっと、君はゴブちの妹なんだよね」僕はその事を確認してみた。

彼女はコクリとうなずく。

それから少しして彼女は口を開いたのだけど。その内容が予想の斜め上を行くものであった。

名前

:リーサ(種族:ハーフ ゴブリン レベル 5 体力 2/5 +5 気力 20 /25 +10 精神力 15 /20 +10 腕力 2 -7 +10 魔力 4 -7 +10 速度 2 -7 +10 頑強 2 -7 +10 頑強+4 = +4

***

い、いきなり『鑑定』をしてしまったぞ?しかも僕の視界にはステータスらしきものが浮かんでいるではないか。その光景を目の当たりにしたせいで、僕の脳は思考停止してしまう事になったのだけど そんな僕の事など全く意に介さず目の前のゴブリン種の子は話を続けていった。ちなみに彼女の名前については、鑑定をした瞬間。自動的に頭に入ってきたのだ。その結果がこちらになります。

(『鑑定』結果)

名称

リシア(愛称:リア):年齢 8 レベル 10 体力 31/31 気力 0/35 +30 状態異常 なし ****

(うん、この子普通じゃないよ)僕は頭の中でその事実に対して突っ込んでしまった。

「兄さんから聞いているかもしれないんですけど。私の名前は、リアって言いいます。貴方の名前をまだ伺っていなかったと思うのでお聞きしたいのですがよろしいでしょうか」

そう言うと目の前の少女。リアは首を傾げていた。その表情はまるで『お前誰?』と言っているかのようなものだったのだ。その事に気が付いて慌てて名乗る。

「僕はマサシだ、よろしくな。それでリア。君は僕のステータスを見ているのか?僕の職業欄を見ても驚いていなかったようだけど。どうしてだい?」僕は疑問に思っていた事を口にする。

そうするとリアは困った様子で、

「あの、よく分かりませんが、私のステータスに表示される内容が変わってしまっているみたいなんですよ。それでですね。職業の欄のところに表示されている文字ですが。以前は無かったものが追加されていて、そこにはこう書かれています。勇者様と表示されています」

と答えるのであった。そして更には続けて言葉を発したのである。

僕が勇者な訳がない。だって僕は『無職』なのである。そんな職業が存在するはずはない。

そう考えるとこの子は、何かとんでもない勘違いをしているように感じられて仕方が無いんだ。

そう考えた結果。僕の中の答えは、たったひとつしかなかった。その事を確信したうえで。僕はその事を確かめようとしたのだけど。それは叶わなかったんだ。何故ならば、僕に近寄ってきた少女の手の平が発光を始めたのを見たからだった。

僕の視界の中には『スキル 覚醒 を使用』と書かれている表示が現れていた。そしてその手からは、緑色の光球が放たれていた。その光が僕の体に触れると同時に全身に激痛が走る。あまりの痛みに僕はその場にうずくまってしまう。そしてそのままの状態で僕は倒れ込む。その様子を見て慌てたような声で彼女が叫ぶ。「勇者さまぁー!!勇者様大丈夫ですか!!」

そして必死で呼びかける。しかし意識を失ってしまった僕の耳に届くことは無かった。そして意識を失う寸前に『僕の名前:山田マサシ』と表示された状態で『勇者の称号』が僕の体へと吸収されたのであった。

****************

***

この物語はフィクションです。登場する人物、建物などは全て架空のものであり、実際のものとは一切関係がありません。

*

「うぅん、はっ!」目が覚めるとそこは真っ暗な場所だった。何も見えないのだ。それに手足を動かそうとしても動かないのである。

これはどうしたことだろう?と思っていると、不意に声がかかる。

「あら?やっと起きたのね、勇者さま。ふふふふふふふ、おはようございます」暗闇の中だというのに相手の容姿を確認する事が出来ている。どうなっているのだろうか。不思議に思っている僕に対して、相手は言葉を続ける。

「もう朝ですよ?起きてください。さぁ!起きなさい」

何で上から目線なんだよと思いつつも、とりあえず状況を確認していく。まずは自分が寝ていた場所にはふかふかの絨毯が敷いてある。そして部屋の中央には、豪華な椅子が置かれていた。僕はそこに腰かけていたようだ。それから室内は、天井から床に至るまでの全てに豪奢な装飾品が施されており、まるで貴族の館の応接間といった風情である。壁際には鎧姿の屈強そうな男性たちが並んでいるのだ。そしてその一番奥の壁の前に立っている人の姿があった。僕はその人物が、自分に向かって語り掛けてきていると理解していた。なのでその問いかけに応えることにする。「あぁ? おはよう? ここはどこなんだ?」

「おはよう。いい目覚めね。私はリーシャよ」

リーシャと名乗る少女の見た目年齢は12~13歳ほどだろうか。金色の長髪が美しい幼き姫。その身に纏う衣服は純白のドレスであり、背中に小さな翼が生えていた。そして僕はその姿を見て『天使』だと認識できたのだった。そんな彼女の姿をみて、思わず心を奪われる。

そんな彼女に向けて、質問を投げかける。

「ところで僕は何でこんなところで眠っているんだ?」

「ふふ、その前に自己紹介をしましょうね。わたくしの名は、リーサ。魔王の側近を務める存在ですのよ。よろしくね勇者さま?」

彼女はそう言って微笑むと。その両手のひらを合わせ僕へ向けて差し出してきた。その動作を見ているとなぜか懐かしさを感じるのだけど、なぜなんだろうと悩んでしまう。しかし今はそれよりも気になる事があったので、その疑問を振り払い。彼女に言葉を返すことにした。

「僕は、マサシ。ただの冒険者だよ。それで僕はどうしてここへ来てしまったんだい? どうしてここにいるかの記憶が全く無いんだけど」

「記憶を封印されてしまっていて、それを開放するのに時間がかかってしまったのだけど、ようやくあなたの封印を解く事に成功したってわけ。よかったわ」

彼女の話を僕は信じる事にした。

そして改めて確認する事にする。リーサと名乗った彼女は本当に魔族なのだと言う。その証として額の角が確認できたのだ。

僕はこの世界に迷い込んでからの自分の出来事を話始めるのであった。

*

***

僕の話しを彼女は黙って聞いてくれていた。

僕の話が終わるのを待ってから。

リーサは口を開く。「そう、あなたはあの時『無職』になっていたのよね。だから職業を得る事ができた。それであなたは、勇者の力を手に入れられたって事よね。おめでとう」

そういってにっこりと笑うのだけど、その笑顔はとても可愛いかった。

その笑みを見ていると僕の顔は赤面していく。

そして「ありがとう」という言葉が勝手に口から出てきた。その事がとても嬉しかった。

それからリーサは話し始めた。

「この国の名前は、エルグランド帝国。

魔王軍の支配下にある国のひとつよ」

リーサはそう告げると説明をしてくれるのだけど。その内容は驚くべきものだった。僕は魔王軍とやらの関係者である、リーサの言葉を真剣に聞く。その話によると。この世界は4つに分けられてそれぞれ『魔王領』『魔界領』『天界』と呼ばれ。その領土ごとに支配している者達がいるのだという。その4つの国はそれぞれが争いを続けているらしい。その4つのうちの3つ。つまり『魔界』、『天界』は既に滅ぼされていて『魔王軍の支配下にある国々がある』ということだったのだ。ちなみにその4つ以外の国がどのような場所なのかは不明だそうだ。

『エルグランド帝国』は4つの中でもかなりマシな方らしいが、それでも他国よりかはかなり弱小であるとのことだ。ちなみに僕が居た国は『人間領』と呼ばれており、他の種族が暮らす地域の中では最も人口が多く、大陸の半分を支配するほどの大国であるのだそうだ。そんな国の王族として生まれたのが、このリーザさんだった訳である。

(う~ん?僕は勇者ってことで、この世界に来てしまったけど。その力を使う事は出来ないのかな?)

「リーザさん、僕は『無職』のまま、こっちの世界に来ることが出来たみたいでして。実は今現在、勇者としての力が解放されていないんです」そう言って困った顔を見せると。「大丈夫ですよ、私がすぐに開放させてあげますからね」と優しい声をかけてくれたのであった。

**

* * *


***

僕はリーシャさんと二人で、先程まで眠っていた部屋を出ていた。どうにも僕の体に、リーダが宿っているようだった。そのため僕の体が、僕の意思で動かせる状態になっているので自由に動けるようになったからだ。そして案内されるがままに、謁見の間へと到着したのだった。

「お父様。マサシ様をお連れ致しました」

「よく来た。マサシ殿。我が娘の恩人よ。お礼を申し上げたいと思う。マサシ殿が居なければリアは命を落としていたであろうからな」そう言うと。その隣にいる男性が言葉を発した。

「私は皇帝陛下に仕える執事でございます。マサシ様にご挨拶させて頂きたいと、思っておりましたが、このような形になってしまい誠に申し訳なく思っておる次第であります」

この男性は僕にそう話しかけてくるのだけど、僕には意味がよく分からないのであった。

****

『エルグランド帝国 第一皇子 アルフレッド』

「さて、早速ではあるのだがマサシよ。リアの命の救ってくれたことに感謝する。その感謝の意を込めて何か褒美を取らせたく思う。何が欲しい?何でも望みを言うがよい」

「えっと。特には思いつきません。それに僕は勇者ではありませんし。その力は持っていませんので貰っても宝の持ち腐れです」

僕がそう答えるとアルフレッドは少し残念そうな表情をした。すると皇帝が僕の言葉を受けて言った。

「ふむ。そうか。ならば何かしらの要望はないか?それならばこちらからお願いをする事になるが」

僕に要求してほしい何かを考えているのか、暫く考え込んでいたのだけど「あ!ひとつだけいいでしょうか?僕のスキル欄には、『鑑定』と表示されているのですが、これが僕のステータスに表示された文字になりまして、鑑定対象の項目を選ぶ事ができまして。それで相手のステータスも見ることができるんです。ただ僕自身についてはスキルは表示されるものの称号とか、固有特性までは見ることはできないようでした。なのでステータスを見たり出来るような便利なスキルがあれば是非教えて欲しいです」と言って頭を下げたのである。


***


***

この物語に登場するキャラクター マサシーー勇者 リーサ 主人公に呪いをかけた張本人である 勇者を召喚した帝国の姫 リアーナ(13)姫 ヒロインのひとりで金髪碧眼の少女 聖騎士見習いの女の子 勇者に助けられてから彼に惚れ込んでいる模様 アリサ 主人公の住むアパートの隣室に住んでいる 山田さん 勇者をこの異世界に転移させた人物で女神と呼ばれている リーシア マサシの元同級生 マサシィ この物語の主人公であるが。作者により名付けられることはなかった マサシィー 魔王の側近リーシャのペットで使い魔の犬神である白銀のモフ毛に包まれし子犬の霊獣のワンちゃんなのですよぅ?

「うぅむ、そうじゃのうぅぅぅ。そうじゃなぁぁぁ」何やら思案中の様子で皇帝は呟いていたのだった。

しばらくすると彼は言葉を発する。

「マサシよ。お主の持つ、その称号『解析のマスターキー』は鑑定系の上位スキルとなる」そこで皇帝は説明を続ける。

「お主なのなら、鑑定系のスキルを覚える事ができるだろう」と。

それから「鑑定能力の向上を望むか? それとも別のものがいいか?」と言われてしまったのだ。

(まぁ鑑定能力の強化が一番いいんだけど、別になくても鑑定ができるんだよね。だってこのスキルには、詳細情報の表示がないもんね。というかこれって、本当に鑑定なのかな。ステータスを見る事もできるみたいだし、解析ってのもあるし、解析能力の上位スキルって感じがするんだよな。ってことはやっぱり、鑑定の能力向上が正解なんじゃないのかな?)

「鑑定能力を向上させる方が嬉しいです」

僕は皇帝に向かってそう告げていた。

「あいわかった、任せておきなさい」そう返事をしてくれるのだった。


***


***

僕の前に魔法陣のような紋様が現れた。それが次第に光を増していく。

(あれっ? こんなのって前は無かったはずなのに。なんか変だな?)

「ちょっと失礼します」と僕は言って皇帝の前から離れようとした。しかし「どこへ行くのかね?」と引き止められてしまい、仕方なくその場に留まることにしたのだった。そして数秒後に目の前にあった魔法陣のようなものは輝きを失う。それと同時に僕の名前が表示されるようになっていた。

名前:マサシ

職業:無職

レベル2 種族:人族 HP10 MP15 力3+ 体力6+ 敏捷5

器用9+1 知力8 精神7+ 魂力5 運111 状態:無し よしっ。鑑定能力は上昇しているはずだけど『運』の値がおかしくなっているね?しかもなんで『職業』に『無職』が追加されちゃっているんだろうか!?さらにステータスが凄まじい勢いで低下していたんだ。これは一体どういう事なんだろね。

僕は疑問が湧いてきたんだけど質問するのは躊躇われたのでそのままにしておいた。それよりもまずは自分の能力を確かめたかったからね。

僕はそう思い自分の手を見ながら意識を集中してみる。

ステータスを確認するためだ。

(よし! 今度はうまく行くぞ!!)そんな風に心の中で念じてみたところ。

【ステータス画面が表示されます】

(おっ、成功したっぽい)

そんな感想を持った後、自分の前に現れた画面を確認してみるとそこにはこう記されていた。

マサシ 性別男 職業 無職レベル24 種族 人族の勇者(魔王討伐対象者)

種族値100/100(0/500)

HP200000 MP126000 力12050(400000+200)

体力12030(40000+300)魔力12860(360000+700)

速度12580(4000000+120)

知能14025(700000×150=5000)

幸運149994 称号 1,無職を極めし者 2,無職に愛されし者 3,勇者に選ばれし者 4,勇者の中の勇者 5,世界最強 6,最強の中の最高 7,全てのチートを凌駕せし者 8,魔王を倒す者 9,全属性魔法の極大賢者

状態 :なし 状態表示欄を見ると状態欄が『世界最高』になっていたのだ。

(へぇー、『世界』の文字は変わらないのね。『状態』は表示されるようになったのかな。ってか、僕の状態がおかしいことになってるんですけど。ステータスってこんなに上下するものだったかな?『幸運』はもういいとして『全属性魔法の超賢者』??『全てのチート』ってなに?それに僕、まだ一度もこの世界で戦闘らしいことをしていないんですけど、どうやったらここまで強くなれるものなのか?って疑問が出てきたんだけど。それと僕の職業は無職のままで変化しないのかよ!とか色々と言いたいことがあるのに言葉が出てこないよ。どうしてこんなことになっているんだろうね?)

そして次に僕の種族値をみてみたんだけど。

『種族値1000倍』とか書かれていたので驚いてしまったよ。僕の現在のステータスは、

名前:マサシ

年齢:15歳

性別:男性 職業 無職 種族 人族の勇者 称号 すべてのチートを凌駕し者 状態 全て良好 となっているのである。

(僕のステータスが滅茶苦茶なことになっている。っていうか僕はまだ無職のままなの?それとも勇者になってしまった影響が僕にも出てきているということなの?それにしても僕のステータス欄っておかしなところが満載になっている気がするのは気のせいなの?僕が知らない間に僕の体も変化しているんだろうか?いやいや。ステータス表示が変わっただけだよね。そう思い込むようにしよう。うんそうしよう。そうすれば落ち着くと思うんだ。さっきから、僕に注がれている視線がものすごく怖いんだけど)

そう思って周りを見渡したところで僕に向けられていたのであろう多くの目が僕から外れてどこかに行っちゃったよ。だけど何人かはチラ見するような感じで、こっちの様子を伺っていたりするんだよね。

そのあと僕はこの場にいる人たちを観察させてもらったのだけど。

まず僕を召喚した帝国の皇帝は僕に近寄り、肩に手を回すと耳元で話しかけてくる。その顔はとても満足そうな表情をしているんだよ。

(皇帝は僕に何をしたいのか理解に苦しむところなんだよ。とりあえず何か話そうと頑張ってはいるみたいなんだよ。でもね僕としては正直言って面倒くさくて関わりたくない気持ちで一杯だったんだよ。だから適当にあしらっているつもりだったんだけど皇帝の方はそれでいいみたい。皇帝が「うむ、うむ」と何度も言っていて、何やら僕が彼の言うことに相槌を打っているような様子なんだよ。だけど皇帝の話は聞いていないから相槌を返せないでいたんだけど皇帝は気にしていないようだったよ。皇帝からすると「俺のことを馬鹿にしている」とか思わないものなのかもしれないよ。だって皇帝の顔を見てると僕が返事をしなくても勝手に喋っててくれるしね。それに僕から離れて他の人に声をかけに行ったから、僕も安心したんだけど、すぐに皇帝は戻って来て僕を捕まえちゃうんだよね。そうすると何故かまた話を聞かないとダメになっちゃってね。それを何度も繰り返していたんだ)


***

***皇帝との謁見を終えた僕は、そのまま城の外に案内されて城下町を歩いて観光させられているんだけど、その道中に「ここが我が城なのだ」だとか「我が国の城はすごいだろう」なんてことを言ってきてね。

正直僕はそんなのに興味はないんだよ。

それよりも「早く家に帰して欲しい」そう思っているんだよ。

(だけど僕が「はい、素晴らしいと思います」と言った瞬間に皇帝が嬉しくなって「そうだろうそうだろう」なんて調子に乗る始末で僕にはそれが鬱陶しかったんだ。しかも「あちらの店では我が国で作られた装飾品を売っておるのだ」とかいいながら、僕の首に掛けてあるペンダントの鎖を持ち上げて指差しながらそんなことを言ってきたりして、本当に面倒臭い。だけど皇帝がそうすると周りの人達は皇帝に向かって頭を深々と下げていてね。その行為が皇帝に対して失礼にあたるんじゃないかと思えるほどの畏敬の態度を取っていた。それはつまり、この国には皇帝の命令は絶対だということなんだろうと思うのだよ。まぁいいけど。僕的には別に何も関係ないことだもんね。そして今現在はお昼過ぎの時間。そろそろお腹が減ってきて我慢できなくなってきたところで食事処のような場所に入ることになる。するとそこには見たことのない料理がズラーッと並んでいた。そして僕が食べようとしたんだけどそのタイミングで注文を取りに来たウェイター風の人が僕が口に運ぼうとしていたスプーンを掴んで止めてきてしまったんだよ。僕は「なんで?」と思いながら目の前の皇帝を睨みつけるようにしてみたんだけど彼は、ニコニコとした笑顔を見せるだけだった。僕はそれを見ると仕方ないなと思って、諦めることにした。しかし、ウェイター風の男は僕から取り上げた食器を皇帝に差し出すと皇帝はそれを受け取った後に僕に向かって「さすが勇者殿。礼儀正しいのう」なんて言葉を口走り始めたのである。僕は内心イラっとなったのだが「勇者とは?」などと思ったのは事実だったんだよ。

(しかし勇者か。なんか勇者の中の勇者の称号と被っているんだけど。それに僕のステータスは勇者じゃないんだよな。勇者の職業じゃないってことなんだから。だけど、そういえばアリサは僕が勇者だと思っていたっけな。そして勇者の中には魔王を倒す者が居るとかも言ってたっけ?ってことは勇者の職業って魔王討伐のための能力が付与するって意味なんだろうか?でも僕には何もないし、勇者ってなんなんだ?僕はただステータスを上昇させるだけでしかないんだけど)

僕は目の前の皿に乗っている食事をフォークで突き刺して口の中に入れ咀噛していた。僕は味が分かる程度にだけ食べるようにしているんだ。というのもね、この世界で食べた食べ物の全てが毒入りで死ぬ可能性すらあり得る状況なんだよ。しかも、この世界に来て以来僕はずっと無職な状態だからHPが回復しないことになっていてね。この世界に来てからというもの僕は、常に命の危険にさらされ続けている状態なんだよ。なので僕は慎重にならざるを得なくて、ゆっくりとしか食べられなくなっているんだ。

それから少しして出された飲み物を口にした時、僕は驚愕することになる。

それはね僕の喉を通り胃に到達すると同時に、体に力が入らなくなり、視界がぼやけるようになって意識が遠くなる感覚を覚えたのであった。

(これは一体どういうことなの?まさか僕は毒殺されようとしているんじゃないだろうな!?って思ったよ)

だけど僕はすぐに意識を失うことはなかった。だけどそれでも僕の意識は少しずつ薄れていったんだ。僕は意識を保つことが難しくなっていたんだけど、その僕の意識を必死になって保とうとしてみた。だけどそれも長くは持たなかったんだよ。

そこで僕の頭に浮かんだのはアリサの顔だった。彼女の顔を思い出したことで僕に活力のようなものが生まれてくる。

すると僕の身体に異変が起こったのだった。体が熱くなり始めると僕の周りに魔力らしきものが放出されている感じになり、僕のステータス画面が表示されたのである。

(ステータス表示が回復した?もしかして僕のHPを回復させることができたって事なのか?それともこの世界の水や食材に僕のHPを低下させる成分が入っていたのかな?どちらにしても僕の状態表示に問題がなくなったってことだと思うんだ)

【ステータス】


***


***

***

(名前:マサシ

年齢:15歳

性別:男性

種族:人族の勇者(魔族に対抗できる存在)

称号

すべてのチートを凌駕せし者 全属性魔法の極大賢者 状態:なし)

『状態』の項は『全属性魔法の極大賢者』って文字が追加されているんだけど、僕の記憶が確かなら僕の職業は『無職』って表示になっていたはずなんだけどね。どうして僕のスキルに『全属性魔法の極大賢者』なんていうチートがあるんだろうね。それとね。僕が『鑑定』を使うことが出来るようになっているみたいでね。僕のステータスの詳細を見ることが出来たんだ。

(名前:マサシ

年齢:15歳

性別:男性

種族:人族の勇者

称号 すべてのチートを凌駕し者 全属性魔法の超賢者 状態:すべて良好)

『状態表示詳細設定』を開いて確認してみると『状態異常』『健康体』の表示が増えていて。更には僕の状態が『良好』ってなっているんだよね。それで僕は自分のステータスを確認してみることにする。

するとね。

『レベル10/99/100』っていうのが追加されてあったんだ。ちなみに僕に付き添っていた護衛の騎士達なんだけど、みんなレベル1の状態らしいんだよ。

そうこうするうちに僕は完全に気を失ってしまい倒れたのである。そして次に目が覚めた時は見知らぬベッドの上だった。そのベッドの枕元で、

「起きたのね」

という女性の声がしたので横を向くとそこにアリサの姿があり僕を見下ろしているのである。そして「あなたは死んだのよ」という衝撃的な言葉を掛けられた。僕は「へ?」と思わず間抜けな声を漏らしてしまったんだ。

僕が目覚めた時に目にした女性が誰だかは分からないけれど。僕に対して敵意を向けていない様子であることと、彼女も異世界の服を着ていることで、同じ境遇の者である可能性が高い。

そんな彼女に「ここは何処ですか?」と聞いてみると。彼女は僕が目覚めるまでにこの部屋で起きた事を色々と教えてくれたんだ。だけどその内容はあまりにも非現実的過ぎるものであり。簡単には信じることが出来なかったんだ。だからと言って否定するような要素もないわけだから僕としては受け入れざるを得ない状態だったんだけどね。まず初めにこの国の名前を聞いても僕の知っている国の名前ではなかったのだよ。だから異世界だということを認めざるを得なくなってしまった。そう、異世界転生だよね。だけどその異世界転生についての説明を聞かないまま死んでしまったからね。これから聞く必要がある。だからその前に、この世界のことについて知っておかないといけないだろうと思うので、聞いてみることにした。

「えっと、ここって地球ではない別の世界ですよね?僕が居たのは日本で。そこにある国の名前は日本なんですけど。この世界に僕が生きていた時代の日本には、もう存在しないって事なんでしょうか?

「えぇ、あなたが死んだ後の歴史については詳しくは知らないのだけれども。あなたの生きていた時代にはすでにこの国の城はなかったと記録されているわ。それとね。私の祖国でもある国はこことは別の大陸に存在していたんだけど、この国はその国と交流があって交流を密に行っていたと歴史に記されている。そのせいでその時代に起きた戦乱に巻き込まれる形で滅んでしまうことになるのよ」

(あーそういう事か。その当時にこの世界は僕がいた時代からは未来に当たる場所なんだな。そうなると時間移動をしたってことだな。だけどそうすると僕がここに来れたのは何故なのだろうか?)

僕が考えている最中に彼女が「ごめんなさい。ちょっと席を外すね。あと、私はサリアって言います。よろしくね」といって、この部屋から出て行ってしまった。一人になったところで僕は考え込むことになった。なぜなら、今の会話から察することが出来るのは僕には何かしら特別な力が宿っているのではないかということだからだ。

このタイミングでの異世界への転生ということは、その可能性が一番高いと思う。

それにしても僕が死ななければこの国の城は存在し続けていたんだろうね。そう思うと複雑な気分にさせられるんだけど。それはそうと今の状況を把握して、今後どうすればいいのかを考えた方がいい。そして現状では、僕は何一つ出来ることがないのだ。それならば僕が持っているスキルの確認をしておくべきだと判断した僕は。この部屋に設置してあった鏡で自分を確認する事にしたんだ。そこには見覚えのある僕自身の姿が映っており、年齢は15歳のままで見た目にはあまり変化がない感じだったんだけどね。ただね。服装が違うんだ。鎧を身につけているんだよ。そして僕に付いていた筈の武器とかが見当たらない。

(僕って装備が解除されているってことは死亡判定されたってことなんだろうか?)

僕がそんなことを思ってステータス画面を開き確認してみるとね。

僕のステータス画面の項目が消えていた。

(ん?あれ?これってどういうことなんだ?そういえばステータスが表示されている状態じゃないと表示項目は選択できない仕組みになっているからステータスを表示しても意味はないってことなんだろうか?いや待てよ。ステータスってスキル欄にあるって事はスキルとして登録されていたんじゃないのかな?つまりスキル一覧って言えばスキルが表示されたはずだ!僕は『神眼』を使用してみたんだ。するとね僕の目の前に画面が浮かび上がり。僕が持つ全ての魔法が一覧で表示される状態になったんだ。

そして僕の目の前に出現したステータス画面を見てみると。そこには『すべてのチートを凌駕せし者

全属性魔法の超賢者 状態:すべて正常 HP 100000000』って表記されてあって。その下には『すべてのスキルを無効化』って書いてあるんだけど。

僕は思わず「なんだこりゃ!?」と叫んでしまったんだ。

(僕が『ステータス』って口に出した時に出てきたのってこの画面のことだったんだな)

僕が心の中で思った途端にステータス画面は消失していったのである。そして、その直後に部屋の扉が開かれたのだった。


***

**

* * *


***

部屋へと戻って来たのは、さっきの人とは違う人だったんだ。その人こそがサリアさんと言う人で、僕にこの世界で生きて行くために必要な物を教えてくれると言った。そこで僕も聞きたいことがあったので。先に僕に質問をさせて貰うことにしてから僕が気になる事を聞いた。

(まぁ僕の疑問に答えてくれそうにもないし、こちらから質問をしてしまおう)

そこで僕はサリアに色々と質問を投げかけてみたんだ。その結果。僕のステータスに関してだけは秘匿するようにと指示を受けていたらしく僕には一切話してくれなかったんだ。なので、まずは自分の職業とステータスを確認することにしてみた。職業とステータスを確認した結果、僕の称号は確かに『全チートを凌駕せし者 全属性魔法の超賢者』となっていて、称号の下にあるスキルは僕の意識次第で全て消すことが出来るという事が判明したんだ。

称号とスキルが表示されている部分だけを選択し消去することも。更には全ステータスも変更することが出来た。しかもステータスの数値の桁数を変更することも可能であり。僕の場合なら10億程度にまで増やすことが出来たんだ。

(10万分の1まで減らすことが可能だったのか。それにしてもチートの数が多いような気がするんだけどね)

そんなことを考えながらも確認作業を続けていると。称号の詳細が気になり調べてみた。そして分かったことがあるんだ。僕の称号の詳細は以下の通りで。

1:すべての職業を極めし者

2:全属性魔法の極大賢者

3:全属性魔法の極大魔導師

4:全属性魔法の極大賢者

5:全属性魔法の極大魔導士

6:すべてのスキルを極めし者

7:すべての属性を極めし者

8:すべての属性魔法の極大魔導師

9:全属性魔法の極大魔導王

10:全属性魔法の極魔道

11:全属性魔法の超極道

12:全属性魔法の超神

13:全属性魔法の超覇王

14:すべての超属性魔法を極めし者

15:すべての超超超属性魔法の超超超超極大賢者

16:すべての超超超超超超超絶極大賢人

17:全属性魔法の究極魔法を極めた賢者

18:全属性の究極魔術を極めし賢者

19:光と闇を司るもの

20:すべてを知るもの(魔王を倒すための力を与える)

21:神を超えしもの(神々から加護を与えられる)

22:すべてに超越したもの

23:全チートを超えたものもとてつもない能力を有する者 こんなにたくさんの種類の超がつく程強力な職業を持っているんだよ?僕って凄すぎるよね?それとね。称号の中にひとつだけ、よくわからないものがあるんだけど、その効果は分からないので、サリアに説明を求めたところ。「あなたの種族は、勇者では無く普通の人間のはずよ。でもその称号に書いてあるように、その効果によって人間を辞めている可能性があるの。あなたは自分が気づいていないかもしれないけど。あなたは既に一度死んでいて。魂だけが、別の世界に生まれ変わった状態なの。だからあなたは普通の存在じゃ無いのよ。もしかしたら既に死んでいる可能性もある。だからそのステータスも本来の数値ではないかもしれない」という回答を得たんだ。

それで僕は改めて自分のスキルを確認することにしたんだ。そうしたら、やはり僕の持つ『すべてのチートを凌駕せし者 全属性魔法の極賢者 レベル 99999 職業 全知の全職マスター レベル MAX 』が表示されているんだ。これは僕の職業のせいだ。そう思うんだけど、それ以外の職業も全てレベル 99 で止まっているのだよ。

(う~んやっぱりおかしいよね? 僕は確かに死んだと思うんだけどね。あの時の記憶ははっきりしているから。あの状態で死ぬなんてありえないよな。それに、もし僕が死んでいないのだとしたら神様ってば意地悪すぎないか?)

そう思いながら僕は、このステータスを他の人に見られたくないと思い。『全知の神』を呼び出して聞いてみることにした。するとすぐに返答があったのだ。

(ふむ。お主が気になった点は理解しておるぞ。それはワシの仕業なのじゃが。そもそもお主には特別な才能が備わっていたからの。それが関係して、お前さんはこの世界に来ることになった。それは分かってくれ。そして今のお主なら『ステータス』と唱えることで、自身の力を確認しておくこともできるだろう)

僕がステータスと念じてみると、先ほどと同様に、僕の前に画面が表示されたのだ。それを見ていると僕が習得した全てのスキルを確認することができたんだ。

僕はこのスキルを習得したことで、この世界では圧倒的な強さを手に入れることができると確信してしまったのである。

そして、僕は自分のステータス画面の『スキル一覧』を開いて、確認してみると。そこに表示されているのは膨大な数のスキルだった。その数が半端ではないんだよ。

そのスキルの数を見ていた僕は、僕の持っているスキルは全部で500種類もあり。僕が持つスキルの数は100以上もあることが判明した。そしてそのスキルには僕の知らないものも沢山あり、その数は数千を超えている。

そんなわけで、僕が知らない未知のスキルを試す前に『全知』の神から僕が得たスキルを説明して貰ったんだよ。まず僕が獲得したのは『無魔法』『火魔法』『水魔法』と。『風魔法』と『土魔法』それに『雷魔法』そして『木魔法』という六つの系統のスキルで。それぞれの系統に中級、上級が存在するらしいのだ。更には、それぞれには下級が存在していて、このスキルは全てのレベルが1から3までの段階があるとのこと。また全ての魔法にはそれぞれに、攻撃、防御、支援、回復の四つの種類が存在しており。その四つは全ての魔法の属性に対応しているとのことで。

この世界の魔法の系統は、攻撃魔法の威力は個人差が大きくて得意不得意が存在しているのだが。

全ての魔法の系統が同じ難易度のため。基本的に魔法の使い手はその魔法に特化した魔法使いになるしかない。なのでこの世界では基本的に前衛の戦士が敵と戦い、後衛からの攻撃や支援を担当するといった戦闘方法が好まれていたんだってさ。だけど僕が習得した『全知の神』がくれた『無属性魔法』や、『火魔法』や『水魔法』、『風魔法』や『土魔法』や、『雷魔法』や『木魔法』などはそんなセオリーを無視してしまえる程の攻撃力と万能性を持った魔法なのだと言う事を教えてくれたんだ。

ちなみに『木魔法』とは森に住む植物や樹木などの『自然』を司る精霊たちと契約することによって、それらの生物たちを使役することが可能となり。『契約召喚』という術で召喚することのできる特殊なスキルだったのだと言うことだね。しかもこの『木魔法の力の源泉となる木属性の魔物がいる森』は『世界の森の都 アヴァロン』と言う名の国の領地に存在するらしく。その場所のことも教えてくれて。更には僕がその森の民の国へと行ける様にしてくれるというのだ。僕はその話を聞いて『神眼』のステータス画面を開くと、確かにその場所に行くことができると表示されていて。

僕は『アヴァロニア帝国の首都アルデバランに転移したい』と思っただけで、本当にその瞬間に首都の広場に出現する事が出来たのだった。しかもそこには『勇者の仲間たち リーダー』のアリサが立っていて、僕を見つけて近寄ってきたのだった。そして僕たちは、この日以来一緒に行動を共にすることが多くなるんだが、それは別の話である。まぁアリサと一緒に行動するようになってからは色々と大変な目にあってしまったんだけどね。

(まぁ今は、僕の事はどうでもいいや。とりあえずスキルの確認をしなければ)

そう思った僕は目の前にある『スキルリスト』の項目を見ていくことにしてみる。そこには今まで僕の知らなかった多くの新しいスキルが表示されていたんだ。まずは一番最初にあった『ステータス』と唱えると現れるスキルはやはり僕の想像通りであり。それは僕のステータス画面に表示されている僕のステータスの値を表示するものだった。次に『神眼(解析)

レベル2』『アイテムボックス Lv.5 レベルMAX』『完全探知 LV.1』『魔法操作 LV.2』これらの三つの魔法系の能力を強化する能力の付いた称号とスキルの効果により、新たに手に入れた能力は『神眼(神魔の瞳 レベル6)』と呼ばれる能力だったようだ。これは、対象とした物体の詳細を見ることができるというもので。例えば鑑定をする時に非常に便利で役に立つと思われる。

その能力で僕はアリサの装備にどんな能力が付与されているのか調べてみたんだ。そうしたら彼女の装備品の全てが『神魔鋼』という物で出来ていることが分かり。それが凄い素材だということが解ったのだけれど。そんな貴重な金属を使ってまで武器を作っているのかと思って彼女に尋ねたところ、彼女はこう言ったのであった。

「そんなことよりも。私の作った武器の感想を聞きたいのだ。どうかな?私なりの想いを詰め込んで作ったつもりだが」そう言って、真剣な顔つきになり。武器を大事そうに持ち、僕に向かってそう尋ねてきた。

「うん。ありがとう。とても素晴らしいと思う。ただこの剣なんだけどね。僕にとっては扱いが難しいんだよね。だってこの剣には属性が無いからさ。僕の持つ属性魔法との相性が良くなくて」そう答えたところ。彼女はこう言ってきたのであった。

「そうなのか? 私は、属性魔法を武器に宿すことは可能だと考えていたが。それじゃダメか?」そう言われて。確かにその方法なら大丈夫かもしれないと考え直した僕は早速やってみる事にしたのだった。そこでまず僕は『無魔』をイメージしながら剣を振り回し始めた。

そうしたら『ミスリルの杖』は白い輝きに包まれたのだ。

(おっ? これは成功かな?)そう思っていたのだが。その後しばらくすると光は徐々に収まっていき、完全に杖に纏わりついていた光も消えたのである。その現象を確認した僕は、改めて『無属性』をイメージしてからもう一度振り回してみる事にすると。杖は再び白く発光しだし、杖に纏っていた白い光が消えることはなかったのだ。それを見ていたアリサが「おお。やっぱりすごいな。それにしても君は面白い人だな。普通ならばこんな風にすぐには出来ないんだけどな」と。

僕は「いやいや、僕は別に凄くなんかないですよ」と答えたところ。

「いや、謙遜する事は無い。君の魔力の量は普通じゃ考えられないほどだ。君にはきっと隠された力が眠っているんだと思うよ」

僕はそんな話をしながらも『無魔法の力』の制御に慣れる為に練習を繰り返していた。そしてある程度時間が経過したところで。今度は僕の持っていたもう一つの『無魔法の指輪』を取り出してみようとしたんだが、その途端、僕はなぜか強烈な眠気に襲われたのだった。そして僕の意識は暗闇の中に落ちて行った。

目を覚ますと僕の目の前にはアリサがいたので、「おはよう」と言ったのだが。アリサは僕を見て何故か固まったまま動かないでいたので、僕は彼女に声をかけたのだ。

そうしたらアリサは慌てて何かを取り繕うような素振りを見せて、そして僕が手にしていた『ミスリルの短剣』と、それに装着されている魔法付与装置を見たら少し考え込んだあとに。急に表情を引き締めて僕に聞いてきたのだ。

「この短剣にはいったいなにが施されているのかね?」と聞いて来たので僕は正直に「分からない」と答えた。それを聞いていたアリサの顔には、驚きの感情がありありと見てとれたのだが。そのあと彼女は何事もなかったように微笑んでくれて。僕にも説明を始めてくれたのだ。

それはこの魔法石には特殊な魔法が施されており。『魔法を斬ることができるようになる魔法』が掛けられているらしいんだ。

ただしこの効果は一日しか続かないらしく。その後はまた魔法が使えなくなるんだって。

その話を聞くとアリサは僕にあることを頼みたいと言伝を伝えて来た。そしてそれは『魔道具職人』の工房へ行けば会えるだろうと言われた。

そして僕は、『アヴァロニア帝国 首都アルデバラン 魔導具工房』という看板のある建物を見つけたのだ。

建物の中に入ると、様々な魔法の品が陳列されており。その棚の上には見たこともない商品が並べられていた。そして、その店内には店員の姿は無く。店の中には僕一人だけが立っていた。そんな僕が辺りを見渡していると突然。

「お客さんかい? 珍しいこともあるもんだね」と話しかけられて僕はびっくりしてしまった。なぜならそこには若い女性のエルフ族がいたからだ。そして、彼女はいきなり僕に向かって挨拶をしてきたのだった。

「私はリリイ。この『アヴァロニア帝国の魔道武具』の製造を請け負っているドワーフだよ。それで貴方の名前はなんて言うの?」僕は彼女に名前を聞かれて答えようとしたが。自分の名前が思い出せないことに気がついて困ってしまった。なのでその事を僕が口にしたところ。彼女が「ふむ。記憶喪失なんだね。可哀想に。名前がないんじゃ不便でしょ。だから私が名付けようじゃないの。よし、決めた。今日からはお前の名は『セイ』だ! 分かったか!」と。

そんな彼女の言葉に戸惑ってしまい。

そんなわけで僕の名前が今日から『セーイ』になってしまったのである。でもそんな僕の名前を決めることになったきっかけを作った本人である彼女は、僕にこの店の商品についての説明をしてくれ始めた。それはどれもこれもが凄い物ばかりであり。僕の知識や技術ではどうすることも出来ないものばかりだった。そしてその全ての性能を引き出すことが出来るというアクセサリー。通称アクセという物についても見せてもらい説明を聞いた後で購入することになったんだけど。

その前にまず、アリサの依頼を達成するために魔法石の魔法を発動させて欲しいと頼んできたのだ。

僕は「いいけど。どれを使うの? 全部発動させるとなると結構大変だけどね」と言いながら魔法石を並べ始める。

「そうだね。じゃあ『火球(ファイアーボール)』を使ってくれるかな?」そう言われた僕は、その言葉通りに火系の初級魔法の『火弾(ファイアボルト)』を使えるだけ使って見せたのである。すると『リリイ』と名乗った彼女の表情が変わった。そして真剣な顔で僕に問いかけてくるのだった。

「ねぇ。この魔石の効果は何だい?」と言われても。

「それは魔道具に使うための特殊な加工を施して、その効果を最大限に引き出す為に作られた魔石だよね」僕は、この世界の人達にとって当たりまえのことを言ったのだけれども。その返答を聞いて『リリイ』は僕の顔をジッと見つめた後で、ため息を吐きながらも。仕方なさそうに教えてくれた。「あんたが使った魔法は、どうやら私の知らない未知の力が使われているみたいだよ。そしてそれはおそらくだがね。私達が持っている魔法スキルのレベルを引き上げる力があるんだよ。しかもレベル5を超える魔法スキルについてはレベル4までは強制的に上げられる可能性がある」

その言葉を聞いていた僕は、そんな馬鹿なと思いつつも「じゃぁ試しに僕に『解析者』を使ってみてよ」と、僕が彼女にお願いしたら、その通りに従ってくれたんだけど。結果は僕の予想を遥かに上回るものだったのであった。なんと『解析(アナライズ)』のスキルによって映し出されたのは『リリィ』のスキル一覧で、その中にはレベル5以上の『レベル3以下の魔法のスキルレベルを上げる』能力を持ったスキルが有ったのである。

その結果を見て驚いている僕の目の前で、彼女もまた驚愕の表情で固まっていたのである。

僕たちは今二人で話し合いをしていた。その話のきっかけは『魔石が秘めている可能性』というものだ。僕たちの前には大量の種類の違う魔石が並べられていて。それぞれ魔道具の性能を強化するのに必要な属性の魔石を一種類ずつ買っていた。そしてその作業を終えた後に僕達は休憩がてらにテーブルに向かい合って座り、お茶を飲んでいたんだけど。

その話の中で、僕たちの間で交わされた話は、僕が魔法を使えなくなっていることに関してのことだった。その理由は分からなかったが、とにかく僕は『神鋼の武器を作る』と言う目的の為に、素材として使う鉱石を探していたんだけど。そんなときに僕の前に現れた彼女は、この『魔法武器生成』のスキルを持っている人間にしか扱うことのできない素材がここに置いてあると言ったんだ。そして僕は『神鋼』を使った剣を作ろうと思ったんだ。

ただ僕には素材が無くてね。そしてそのことを彼女に話したら。

「そういえば。あんたはこの『魔法杖』と、その魔法石の組み合わせだけで魔剣を作れるんじゃないのか?」と言われたので僕はそれが可能かどうか調べてみることにした。

そこで『魔道具職人』が言っていた『魔杖と魔石を組み合わせる』という言葉を頭に浮かべ、そしてその魔杖を魔剣に変えようと意識してみた。すると『無魔』で使っていた剣が白い輝きを放ち始め、そして杖が光に溶け込むようにして剣に変化していったのである。僕はその事に驚きつつ目の前の現象を観察していたのだ。そして、そのあとすぐにアリサが声をかけて来たのである。

その日は『リリイ』が店を休みにして僕に付き合ってくれることになった。僕にこの工房の施設の使用方法をレクチャーすると言ってくれたんだ。彼女は僕がこの世界での生活をしていく上で、この世界に関する知識を身につける手伝いをしてくれた。

「まぁ、この国のことや魔導具や魔道具に関しては。これから私が教えてあげるから安心しな。ただしそれ以外の事は私が教えることはできないんだけどね」彼女はそう言って、その日も僕にいろいろと親切に指導してくれることになる。彼女は僕にいろいろな事を教えてくれてくれたんだけど。僕はその中で一番興味が引かれた話があり、その内容に心奪われてしまった。

「この世界は、元々一つの星が分裂したものでね。この星の他にも幾つもの星が同じように存在している。そしてそれぞれの世界に知的生命体が存在しているんだ」と、彼女は僕に向かって説明を始める。

僕にはその話がまるで御伽噺のように聞こえてしまい、僕は目を丸くしながら聞き入ってしまう。するとアリサはそんな僕の反応を見ながら説明を続けていくのだが、そんな話を聞きながら僕の中では『宇宙ってなんだろう?』という考えが生まれてきていたのだった。

そして僕の興味が尽きない話が終わると今度は別の話題に移っていったのだった。それはこの世界の魔法についてである。この世界に存在する魔法には『無属性魔法』『炎系魔法』の二系統が存在しており、それらの魔法の効果には共通点があったのだ。それは『攻撃に特化した魔法』ということだ。例えば無詠唱でも使用可能な『炎球(ファイアボール)』。この魔法なら相手にぶつければダメージを与えることができるのだが。威力自体は大したことがなく、『炎槍(ファイヤランス)』などの上級魔法ならば相手を燃やし尽くす事だってできるのだというのだ。また中級魔法でも『雷球(サンダーボール)』と呼ばれる魔法があり。その効果は敵に当てると敵を感電させてダメージを与えてしまうのだとか。

ちなみにその『魔法石』は、僕の持つ短剣にセットされている魔石と同じような効果が有ると彼女は言う。その魔石と魔法の組み合わせで、魔法の発動が行えるのだと言う。その話を聞いた僕はその仕組みについて尋ねてみたところ、彼女の話では魔石の魔力回路に直接術式を書き込んでいるのだと説明を受けた。ただそれはかなり特殊なやり方なので一般的な方法ではないのだけれど。

そんなことを話し終わった後で彼女は僕のステータスカードを確認すると、驚いたような表情を見せる。その表情から何か問題があったんじゃないかと心配になってしまった僕は「何があったんです?」と聞くと。

「ちょっと見せてもらえないか?」そう言われて見せてほしいというのであれば断る理由もないなと思って素直に差し出すと。彼女はそこに表示されている内容を読んで、少しの間考え込んでしまった。それからしばらくしてから僕に「セーイって『魔石使い』なの?」そう問いかけられた。僕はその問いに対して答えられずにいたのである。というのも自分自身でも良く分からない状況だったからだ。だから正直に答えていいのかどうか判断できなかったのだった。だから僕は「ごめんなさい。その答えがよく分からないので。もう少し考えてから答えさせてください」と彼女に謝ってしまったのだ。でも彼女の方も僕の返答の仕方に問題があるとは感じなかったらしく、それ以上深く聞いてくることはなかった。そして僕の持っている武器である魔法杖を見せて欲しいと言ってきた。それは『神鋼』製の魔法杖だったので「これが欲しいというのなら、譲りますよ」と言ったところ。「いや、私はこの工房で自分の仕事に専念したい。あんたに魔法石を提供してもらう代わりにこの店を守るっていう契約を結んだんでね。それにあんたが持ってるのは神器だしね。私なんかが持つべきものじゃないよ」そう言われた。僕は、その言葉を聞いて嬉しく思ったんだけど。そんな気持ちを彼女に知られたくなかったので、「分かりました」と返事をして誤魔化すように話をしたのであった。

そんなわけで今日はそのリリイに付き合うことになったんだけど。まず初めに彼女が用意してくれたのは。僕のステータス画面にあった『魔法スキルLv.3(+1)

』を『魔法スキルLV5(+5)』へと上昇させることが出来る『増幅の石(ブーストストーン)』というものだった。それは『魔法石(マナボール)』と呼ばれているアイテムだったのだ。これはこの世界の人間が普通に使用することが出来る『無属性初級魔弾』(『無弾ゼロバレット』とも呼ばれるらしい。そのまんまだけどさ。その効果:レベル1~3までの低位魔法の初級を使用できる)の威力を増加させる為のものだそうだ。僕はそれを使うために彼女の指示に従って、『火矢』の魔法を起動させたんだけど。その光景に彼女は「なんだ? その威力は!」と言って驚いているのであった。そして僕は魔法石に込められていた『火球(ファイアーボール)』を発動してみると。発動された火の塊は僕の意思を無視して勢いよく飛び出て行き、その先で爆発を起こした。そしてその衝撃波によって周囲の空気が激しく振動し僕は吹き飛ばされそうになったのである。それを見ていたアリサが僕の腕を掴み「バカ! 死ぬ気かい!」と言いながら、僕を引き寄せてくれたおかげで助かったんだけど。僕はそんなことがあって初めて自分が魔法を使ってみて、とんでもない事態を引き起こしていることに気づいて、そして恐怖を覚えてしまった。そんなことがあった後に彼女は言ったのである。

「今の感覚を忘れるんじゃないよ。忘れたら次は本気で死ぬかもしれないからね」その言葉を言った後の彼女は僕を見つめながら真剣な眼差しになっていた。

そして次に案内してくれたのは工房内にある倉庫のような部屋だった。その部屋には『強化魔道具』と呼ばれるものが保管されていた。

僕はアリサさんと一緒に作業台の上の品々を一つ一つ手に取って見ていった。

するとその中には、僕たちが探していた物もあったので早速『魔道具職人』に見せに行くことにする。僕たちはこの『強化魔道具』が置いてある場所に案内してくれた人に礼を言いつつ、その場所を離れることにした。そして僕たちは工房を出て、そしてこの建物の二階にあるというアリサさんの作業場に歩いていく事になったのである。

そして歩き出したところでアリサは、この建物の中に居る間、僕を護るために『認識阻害のローブ』を着せてくれると言ってくれたのである。その『認識阻害のフード付きローブ』は僕の身体の大きさに合わせて作られているようで、その見た目はまさにファンタジー世界に出てくる旅人が着ているマントといったものだった。

僕はこの異世界に来るまで一度もこんなデザインの服は見たことがなかったのだけど。なぜか懐かしいと感じてしまったのはなんでなんだろうね。そんな事を考えていると「セージ君、大丈夫かい?」と心配そうな声でアリサが声をかけてきた。

僕はそんな彼女の顔を見て「あぁ、ごめん。もう平気だから」そう答えて、そして改めて彼女に質問をしたんだ。

どうして僕の事を心配してくれたのか? そんな疑問を投げかけてみたのである。その質問に対する彼女の答えは「私の能力で鑑定したらね。この世界には無いはずの物がセージ君の身体を包んでいる事が分かって、だから確認のために話しかけたんだよ」と答えてくれて。それを聞いた僕が思わず『鑑定』の能力について聞き返してしまったのだ。そうしたら彼女から意外な事実を聞くことになる。

『無魔』の僕には『魔力探知装置』が使えないことは以前説明した通りなのだが。彼女は『魔力探知装置』よりも性能が上だという魔道具『魔道具職人』を持っているのだと言うのだ。その能力は、他人の持つ『スキル』を見ることができるもので、そして相手の『魔法杖』や『魔法杖』以外の武器も確認できるのだと教えてもらったのである。

ただ、その『魔道具職人』にも弱点はあり、自分から相手に向かって使うことはできないし、相手が隠したいと思う情報を読み取ってしまうこともあるらしいのだ。なので彼女は僕にいろいろと話してくれた時にも、こちらに嘘はついてこないという前提で会話を進めてくれたんだろうと思ったのだ。

そしてその話を聞いてからというもの。僕は彼女の事を警戒しなくなってしまったんだよね。なんとなくこの人を信じていいかな? という気持ちが強くなってきて。彼女のことを信頼するようになったのだ。すると僕とアリサはそんな話をしながら、階段の方に向かい歩いていたのだが、その途中で一人の男性に出会うことになる。

僕はその男と目が合った途端、背筋が凍りつくほどの寒気が走り、体が硬直してしまう。しかしアリサはその男性が誰なのかすぐに分かったようで、少し険しい顔をしてから「この男は危険だよ。すぐにここから離れた方がいい!」そう言い放って、それから『認識阻害のローブ』の頭巾部分を深く被ってくれたのだ。そのおかげか僕はなんとか動けるようになったんだけど。

それでも僕と視線を合わせただけでその人が僕に敵意を抱いている事だけは嫌でも理解する事ができた。だってその人は今にも僕に襲いかかりそうな表情で、僕の方に向けて手を差し出してくる。そして彼は僕たちに向かって言う。

「俺の大事な弟を殺した奴の顔だ! 絶対に逃さないぞ!!」と叫びながら。

(えっ?どういうこと!?)

僕は訳が分からずに固まってしまっていると、僕の視界に入ったアリサさんは、この場から離れようとするが、彼の放った言葉によって足を止められてしまい。僕も彼から逃れられなかったのだ。僕たちはその場で身動きが取れなくなってしまい絶体絶命のピンチに陥る。僕は必死になって頭を働かせて状況を打破する方法を考えるが何も思いつかないでいる。ただそんな中、僕の脳裏に閃くものがある。それはアリサさんと出会った日に、彼女が言っていたことを思い浮かべていた。それは「私が『神鋼の工房』を預かっている者だとバレると面倒になるからね。それに『無魔』ってばれて、この国で暮らすことが難しい状況になってしまうのはまずいだろ。それにお前はこれからどうするんだい?」という話を聞いていたのだ。僕はこの『魔法石』を手に入れればこの国から逃げられるかもしれないと考えたのである。僕は目の前の男に話しかけようと勇気を振り絞ろうとした瞬間に僕の隣に居たアリサから突然大声が上がる。

「アンタ何言っているの? あんたが『セージ』の『父親』?

『セーラ』、『セージ』の母親に何をしている!」と、そして『認識阻害のローブ』のフードを取り払い、そしてその素顔を見せると彼女は怒号を放つ。その光景を見た『親父さん』は驚愕してしまっていた。その顔は驚きを通り越して呆然としている様子で「『魔女』アリサだと。馬鹿な。この国から出て行ったはずじゃ」そう言った後に僕たちの前を去って行ってしまった。

そのあと僕たちは、その場に立ち止まっていては危険だと判断したのでとりあえずは『魔石使い』が泊まっている宿屋に向かう事にしたのだった。

そして宿に戻った僕は、僕たちが遭遇した一連の事件について、彼女に説明すると、僕と同じように驚いていたが、それでも僕とは違って落ち着いるように見えた。そして彼女は僕に「この店を出るときに言っていただろう。何かがあった時のために準備をしておいて良かったよ」そう言って僕の背中を押してくれるのであった。僕はそんな彼女にお礼を言うのである。

「本当にありがとう。アリサ。君が居なければ大変なことになっていたよ」

そんな感謝の言葉に対して彼女は笑みを浮かべて答える「ふふっ」っと笑い「セージ君が無事にここに戻ってきた。それが私は一番嬉しかったよ」そう言うと、「さぁ、『魔導師』に会いに行くのかい?」と言ってくれたので、僕たちは再び行動を開始するのだった。

僕たちは『神鋼の工房』を後にしたんだけど、僕たちが立ち去った後の店内では「おい、今の見たか? あれは『魔女』じゃないか。なんであの人がこの街に居るんだ?」と店員の男性がアリサを見ながら呟いていたのだが、僕たちは知る由もなかったのである。

僕はアリサに案内されて『魔石使い』が泊まる『宿屋』まで移動していくことになった。そして『宿屋』までたどり着いたところでアリサは僕の方を向くなり。真剣な面持ちで言うのである。

「いいかい。私の指示通りに行動すれば、まず安全は保障されるはずだよ。だからセージ君は私の指示に従って動いてくれればいい。わかったかい?」

その問い掛けに対して僕は力強く返事をした。そしてアリサの案内のもと、僕は『魔導師』が滞在しているという部屋を訪ねるのであった。

僕がアリサに連れられてやって来た部屋は、二階の廊下の奥にある個室で、中からは女性の話し声が聞こえることからそこに目的の人物が居る事は明らかで、アリサが部屋の扉を叩くと中から女性の声が聞こえてくるのである。その女性が『魔導士』本人であることは間違いないらしく。僕はアリサが「この男が『セージ』の父親だ」と紹介してくれたので僕もそれに合わせるように『セージの父』ですと名乗り、僕たちは部屋に入っていくことにしたのである。するとその女性は、僕の方に近寄ってくると。僕に話しかける。

その女は背がとても高くスラリとした体型の美人で、肩口まで伸びた髪の色は銀色に輝いており、そして彼女の肌はまるで透き通るような色白をしていた。そんな美女が、その整った綺麗な眉毛を寄せながら僕に質問を投げかけてきたのである。

「貴殿が私の愛しい息子を殺したという『セージ』の息子なのか?」そう言うとその女は自分の右手を差し出してきた。僕も彼女の手を握るために左手を伸ばすと彼女はその手を強く握りしめてきたのだ。そして僕を見つめて質問してくる。

「君の名前はセージといったね。どうして私の可愛い息子の『名前』を知っているんだい?」と聞かれてしまったので僕は答えようとしたけど、アリサが代わりに僕の代わりに説明を始めてくれたので、僕は一歩引いて彼女の後ろに立つことにしていた。

その質問を受けたアリサが、僕に『無属性魔法』を発動させた時の話、それから僕たちが、この国に訪れた経緯を話したうえで、どうしてセージという名前を知っていたのか? その理由を説明するのである。それを聞いた『魔導師』の女の人は顎に手を当てて考え込んでしまったのだけど。

アリサが話した内容を要約すると、彼女は僕に問いかけた。

「『魔導書』は、私がこの国の王に渡したものと同じものだね。つまり君は私の弟子が残した物を手に入れたと言う事かな?」と言うと、僕の隣に立ったアリサは「そうだよ」と答える。そして続けて『魔女』は話すのだ。

「それならば君の父親は『魔族』か『悪魔憑き』と言うことになるのか? それともその両方かな?」と言うと彼女は少しの間だけ沈黙してしまう。すると突然に彼女が大きな声で叫ぶのだ「まあいいか!」と言うと笑顔になったのである。

僕は「良いって何の事ですか?」そう聞き返すと彼女が答える。どうやら『無能の魔法石使い』から『魔法具』について説明を受けていたから、その事をすでに理解していたというのだ。彼女はこう言ったのだ。

この世界で生きる上で一番大切なことは魔力量の多さだと教えられたという事を話し始めた。しかし彼女の言葉の中に『魔法石』という単語は出てこない。なぜなら『無能』が魔法を使えなくなるのは当たり前で『無魔』と呼ばれる存在であるからだと言われたのだと、そして、彼女がその事実を受け入れた時に。『無魔の魔法使い』が生まれた。この世界の魔力を持たない者。そしてその者は必ずと言っていいほど魔法を使うことができないのだと言うのだ。それはどんな魔法であれ例外はなく。『魔石使い』であってもそれは変わらないのだと言われてしまったらしいのだ。

その事を知った『魔導師』は『無能』に絶望してしまい。その日から『魔法石』の作成をやめたのだという事だった。ただ彼女は、その事については、それほど重要視しておらず。ただの言い訳でしかなく、本当の目的は別に有ったのではないか? と考えるようになり、自分の師匠に相談することにしたのである。彼女はその師匠こそが僕たちの父親の可能性が高いと思ったのであろう。そこで彼女は僕の事を調べるため、王都で噂になっていた「無能力者の男が現れた」と言う情報を手に入れる為に、わざわざこの国にやってきたのだと話し始める。

そんな話を僕は聞いてしまって。この世界では僕の父親が僕の存在を否定したという事実を突きつけられているような気がしてしまって、心の中で泣いていたのだ。

僕はこの異世界に来てからもずっと『父親』に憧れていたと思うのだ。それは何故か? と自分に問いかけても良く分からないんだけど。でも僕は僕を生んでくれた両親に対して感謝の気持ちがある。だって僕を育てて、ここまで立派に育て上げてくれていたんだから。それに僕は『父さん』みたいになりたいと思っていたのだと思う。だって父さんのように、この世界に転生して『無能』って呼ばれながらも、それでもめげずに努力を重ねていく姿に感動したのを今でも覚えていて、だから僕もこの世界でもっと強くなりたいと頑張ってこれたのだと思っている。だからこそ父さんが居なくなってからの日々はとてもつらいものでもあったのだ。それでも僕は頑張った。そんな僕を支え続けてくれたのはアリサだ。彼女と一緒に過ごして行く中で僕の心には徐々に温もりのようなものを感じ取れるようになっていったのだ。そしていつしか、僕の心の中に生まれた温かいものは広がって行き、今現在、僕は僕の居場所を見つけることが出来たと感じている。だから僕は思う。

こんなに優しくしてくれる人が、僕を産み、僕を愛して育ててきてくれた『父さん』じゃないわけがない。

僕はこの場で『父さん』のことを問い質すことにしてみたのだが。彼女の返答は意外なものだった。彼女は「君が本当に私の弟子の子であるなら、その指輪を見せてくれないかい?」と僕に頼んできた。

僕はその願いを叶えるために、僕の左指にはめてある指輪を見せる事にした。そしてそれを見た瞬間に「やはりそうだったのか」そう言うと彼女は、何かを思い出したかのような仕草を見せ「私は、一度会ったことがある」と言い出すのであった。そんな言葉を僕は信じることができずに困惑する。だって僕は生まれてから一度もこの指輪に触れたことはないんだ。それをいきなり「見たことがある」と言われて「はい。そうですか」とは流石の僕も納得できないでいた。それでも僕はアリサの顔を見てから、「そうなんですか?」そう言ってみるのだった。すると彼女は僕に向かって微笑みかけるのだった。そして「うん」っと答えるのである。

そのやりとりを見かねた『魔導士』の女性が「セージ。私は君のお母さんに『セージの父親は誰だ?』と聞かれたら『セージ』としか言わなかったのを覚えてるかい?」と言ってきたので僕は「えっ?」っと言う。

『魔導師』のその発言は衝撃的で僕は言葉を失った。僕はその言葉の意味を考えるのだ。その発言を僕にした理由は一体何なのか? そして『魔導師』がどうして、そこまで僕たち親子に対して固執していた理由とは何だろうか。僕の中では、その二つに対する疑問が大きく膨らんでいき「もしかして『魔女』様はこの男の人のことが気に入っているから。僕たちをくっつけようとしてるんじゃ?」という考えが思い浮かんできたのである。

僕はその考えを振り払うかのように頭を大きく左右に振ると「アリサ?」そう声を掛けて彼女の顔を見るのであった。

僕はその問い掛けに対して首を縦に振ると「君が、どうしてもと言うなら。私が君を守ってあげるよ。君の母親の代わりになってもいいよ?」そう言うと僕に笑顔を向けてくれる。

僕が彼女の言葉に対して答えようとすると。『魔導師』が先に僕に声をかけてきたのである。「セージ。君に一つ提案が有る。もし良ければ私の元で修行をしないか? 私の元であれば、セージの力を最大限活かす事ができるだろう。セージさえ良かったら私と二人で暮らさないか? 私と共に来てほしい」そう言われるのである。

僕はアリサに目を向けると、彼女は真剣な眼差しを僕に向けてくる。だから僕は考えることにした。そして答えが出た。「僕はこの世界で生きて行くことを決めた。僕はここで僕を必要としてくれている人達のために頑張りたい。ですので申し訳ありません。あなたのお誘いを受けることはできません」と、そして「僕の事を想ってくれているのは嬉しいですけど。アリサは僕にとっては大切な人なのです。そのアリサが幸せになれる道を選ぶために。この世界に来たので、僕自身の事は、自分でなんとかします」と言うと『魔導師』の彼女は残念そうに肩を落とす。

僕はその『魔女』の様子を見てから「ごめんなさい。あなたにも僕が『魔法具』を作り出すことで困らせてしまうかもしれませんが。よろしくお願いします」と頭を深々と下げると彼女は僕をジッと見つめながら「セージ、君なら出来るさ。君は私が今まで見てきた中でも特に強い意思を感じるよ。君の想いの力があれば、きっと乗り越えていけるよ。応援しているからね。いつでも私のところに戻ってくるといいからね。待っているよ」と言ったのだ。僕は彼女のその言葉を聞いて嬉しくて泣き出しそうになった。でも僕は泣くまいと思い。彼女にこう答えたのである。

「はい!必ずまた会えるように僕、強くなりますから!」そう答えると僕は『魔導師』の女性の手を握ると。

「これから僕たちは王都に戻るので、失礼させていただきます。『魔女』様どうか僕たちにお構いなく、王城へと戻られてください」と挨拶をする。

『魔導師』は少し寂しそうに僕に話しかけてきたのだ。

「そうだな。君たちがこの国にいる間ぐらいは一緒に行動しようか?」と尋ねられたので僕は「そうですね。そうしてもらえると、とても助かります。王城に『魔族』が攻め込んで来たら大変だし。その時に、もしも、この国の騎士たちが、あの魔物に襲われていたとしたら大変なことになりそうなので」そう答えると『魔導師』の女性は僕を見ながらニヤリと笑いこう話すのだ。

「その心配はないよ。『魔女』と呼ばれる私に敵う者は、この世に存在しないのだから。それよりも『無能の魔法具使い』よ。君は『無魔の魔法石使い』である私に『魔女』と呼ばせたことに感謝するがいい。それと私の事を、今後は、名前で呼ぶがいい」と言うと僕の手を引っ張って強引に抱きしめてくる。僕は「わかりました。今後、僕のことも呼び捨てで構わないので。僕の事を守るって言っていただいたのですから。僕もその約束を守らないといけませんから。それに僕の名前は、まだ『無能の魔法石使い』のままですよ」そう言って、僕は無理やり離れるように、その女性の体を両手を使って引き離すと、彼女は僕の腕を引っ張り、そのまま僕の唇を奪ってきたのだ。突然の出来事で驚いた僕だけど。その女性は、僕のことを力強く抱きしめてきて。僕は抵抗する事ができないまま。

『魔導師の女体』という感じの物凄い圧力を掛けられて。その女性からの口づけを、ただ受け入れているだけの状態にされてしまったのである。

僕たちのキスシーンを目の前で見せられている『魔導師』の表情が次第に不機嫌な物に変わっていく。そんな彼女の様子に気づいた『魔導師』の女性は僕の唇から離れてくれて「セージは、今はまだ『無魔の魔法使い』だ。だが、いつか『無魔の魔法士』になってもらうつもりだ。その為に今、この私の手で、しっかりと魔力を注いでやるから。今は、私を受け入れておくれ」と言って、またもや僕に、キスしようとしてくるのだ。でも今度は僕が『無魔の魔法使い』であることを否定するような行為をしてきている。僕は必死に抵抗する。そして僕を抱きしめようとしている女性に蹴りを入れようと試みるも。僕の両足が地面に固定されてしまっていて動けなかった。僕は自分の両膝を見てみると、そこには黒いモヤの様な物が見えたのである。それはまるで呪いのようであった。僕は自分の身に起きた異変に戸惑いを感じている間に、その女性が僕との距離を詰めると、再び僕の首に両腕を巻き付けて来たのだ。僕の鼻と口に何か甘い匂いを感じ取った次の瞬間、その女性の口の中に、何かが流れ込んできたのである。そしてそれが何だったのか分かった時には、僕の体の中の『神眼』の力でも、どうすることもできない状態だった。

そんな僕の様子を見ていた『魔導師』は呆れた顔をすると。僕から離れて僕を立たせてくれる。

「『無能の魔法具使い』よ。私はお前が嫌いだ。この私が『無魔の魔法士』と認めてやったというのに、それを拒絶した。だから私は『魔女』なのだよ」と意味の分からない言葉を口にしながら僕から離れる。

そして『魔導師』の彼女は僕たちを置いて歩き出すと最後に振り返り、こちらに向かって手を軽く振った後に「セージよ。君と、君の母親のことは忘れる事はないよ。いずれ会うことになると思うから。そのときまで君の活躍を期待して待つことにしよう」そう言い残して、その場を離れてしまったのである。

こうして僕は、僕を救ってくれた女性と別れたのだ。その後、僕達は、『魔導師』の女性の転移で王城に戻ると。『魔導師』は直ぐに姿を消した。僕が『魔女』のことをアリサに報告する為に相談を持ち掛けると「『魔女』様には私からも連絡しておくよ」と言ってくれて『魔導師』とは直接話をしなかったのだ。『魔導師』が居なくなって暫くした後に、王城内で待機していたはずの護衛達が駆け足で、この部屋に入ってくると『無魔の魔法使い』様と奥方様と『聖騎士』はお帰りになられています。と言う。

僕はアリサと二人だけで、この王城の敷地内にある塔へと向かうと。アリサが僕と一緒に王城を出ようとしていた時に、先程の『魔導師』がアリサの前に現れて。僕には聞こえないように「私は、セージが気に入った。『魔女』と呼んでも構わないぞ。だから、これからもセージの側にいるのならば。セージの力になれ。私のセージに手を出す奴は容赦しないからな。覚悟しておくんだ」と言うと『魔導師』の女性は僕達を残して姿を消す。アリサが僕を見つめて話しかけてきた。

「セージ、私は君に一つ嘘をついていたんだよ。ごめんね。私は君に隠し事をするつもりはなかったんだ。でも、私の事を君の母親であると思っていた人が現れてね。だから、私の事は内緒にして欲しいと言われていてね。私の事を『魔女』と呼んで良いって言っていたからセージの事を隠していたの」と言う。

僕はそれを聞いて驚き「アリサ? 本当に? アリサは『魔女』様なの?『魔導師』とか『魔女』じゃなくて?本当の本当に? 」そう言うと彼女は笑顔で答える。

「そうだよ」

僕は、そのアリサの返答に「やっぱりそうなのか。僕は今まで自分が無知過ぎて、ずっと『魔導師』としか呼ばれていなかったから。まさか僕の母親では無い人が、僕の母を名乗っていたのに驚いていたところなんだけど。まさか、それが、アリサだったなんて思わなったな」そう言うと彼女は「ふぅ~ん。君、そんな事になっていたの?それで君自身はどう思っていたのかな?」そう聞かれたので僕は正直に話したのである。「最初はショックで、その人と暮らしたいと思ってしまっていたのは事実です。ですが、今は、もう気にしていないというか、仕方が無い事だと割り切っている部分があるんです」そう伝えると、彼女は「うん。君の気持ちを聞けて良かったよ。君は私が君に、お母さんじゃないと言ったらどう思う?」

その質問に、僕は素直に答える事にしたのだ。僕はその女性に対しての感情が整理できていないから、上手く表現する事が出来ない。ただ『魔導師』として、今まで僕が接して来た人の中でも、特に印象が強く残っている存在なんだと説明すると。「そうなんだね。まぁでも君は、これから私と共に過ごす事になるかもしれない。だから少しずつでも私の事を理解してもらえると嬉しい」

彼女の言葉に、僕の心に安心感が生まれると「はい。僕で良ければ」と答えるのであった。

そして僕たちは『魔導師』に案内された場所に向かうために王城を出て『魔女』と呼ばれる女性と合流する為に街へと戻る。この国の街の風景を見て思ったのだけれど。この国の人々は皆幸せそうな雰囲気を醸し出しているように見えたのだ。その街並みを観察しながら歩くこと数分後。目的地に辿り着く。そこはこの街では珍しくもないような、小さな宿屋の前に到着すると『無魔の魔法具使い』の彼女だけが建物の中に入るように指示され僕だけ外で待っているようにと言われたのだ。それから五分ぐらい経過したところで『魔女』と呼ばれている女性から僕の事を呼ばれると「今から君の母親のところに連れて行くから、一緒に来てくれ」そう言われた僕は『魔導師の服』を着ていて見た目も普通の人間にしか見えない彼女を見つめながら「わかりました。僕が同行する理由って何ですか?」そう訊ねる。

そして彼女が答えたのは、こう言った言葉であった。

『君が私達の側を離れる事が許されない立場にいると言う証明になるだろう。だから君に着せているそのローブを脱がない方が良い。それと念のために言っておくが君は、『無能の魔法石使い』だと思われているがそれは間違いだ。君の体には、とんでもない物が眠っているのさ。それを解放できるかどうかは『聖騎士』の技量次第になるが。いずれ機会があったときに試して見るといい』

僕は『魔導師』の女性の言葉を真剣に聞いて。自分の体が特別だということを知ったのだ。僕は彼女に連れられるまま『聖騎士団』の本拠地へと向かうと彼女は門番に話し掛け「団長に会いたいのだが?」と要件を伝える。

門兵から案内される形で僕と彼女は、そのまま建物の最上階まで向かう。そして彼女の部屋と思われる場所にたどり着くと扉の前にいた女性兵士がノックすると。部屋の中の女性から入室を許可されたのだ。そして彼女と僕は、その女性に続いて部屋の中に進んでいくと、そこには『聖騎士団』の鎧姿の女性が待っていたのである。

彼女は僕を上から下まで観察すると「ほう。この少年があの無能の『無魔の魔法具使い』を倒せるほどに強い『魔導師』に鍛え上げられた『無魔の魔法使い』なのかい? それにしてはずいぶんと普通に見えるんだね」と興味津々な感じで尋ねてくる。そして僕は、『魔導師』に説明された通りの行動を行う。まず最初に自分の体を覆い尽くすローブを外して『解析者の魔道の宝玉』『神眼の宝玉』と『神杖の宝玉』を身に付けた状態にしてから。自分の身分を明かす為に『解析者の宝玉』の力を使用して鑑定を発動させる。僕には目の前で起きている現象について全く知識がなかったんだけど、それでも何かが起こるんじゃないかと思い『魔王』討伐の際に『賢者の指輪』を作るのに必要な素材を集める為に使った力である『解析の法具』を作り出した時の手順と同じことをするイメージを浮かべると。僕の意識とは関係なく勝手に発動したようだった。

僕はその女性のステータスを確認した上で。その女性の持っている技能やスキルも確認したのだ。それから、この女性の『無魔の魔法使い』に対する評価と僕の事をどう思って見ているのかも分かったんだけど。その結果を受けて彼女は僕が嘘偽りない人物であることを確認するとその女性はすぐに頭を下げて来たので。『魔導師』の彼女からは事前に、こうなる可能性を伝えられていて覚悟はしていたので。慌てる事は無かったけど少し困ってしまった。そんな僕の様子に気がついたようで『聖騎士長』の女性は「すまない。『魔女様』からの指令で、これからセージには、私たちが『魔女様』と呼んでいる方のところに、しばらく同行してもらうことになっているんだよ」と説明してくれたんだ。それならと納得して僕が答える前にアリサが『聖騎士』の女性の言葉を遮るように僕に声をかけたのだ。「お待たせいたしました。私は、あなたの娘のアリサと申します。よろしくお願いします」と、いきなり自己紹介を始めると僕もその女性に倣う事にしたのである。僕たちの会話の内容が気になった様子の『魔女』の女性は。「ふぅん。そういうわけか。わかった。それで良いだろう」と呟くと、この部屋の主でもある『聖騎士』に話しかける。「『魔女様』はどういった用件でここにお出ましになられたのでしょう?」そう尋ねると「『聖剣の魔女』様はセージに『魔導融合の法具』を渡してくださったのですね。セージには、これから、私の仕事に付き合って貰うことになっています」と答えを返す。

その返事を聞いて、この『魔女』と呼ばれている女性の名前はアリサが言っていた通りの「魔導師」という役職ではなく、もっと重要な役割を担っているのではないかと感じたのだ。それから『魔女』と呼ばれる女性は『魔導融合の宝具』をアリサに手渡すと「アリサ、君は『魔導師』が使うことが出来る魔法の威力を上げる『杖の宝具』を使いこなしていないようだから、これはアリサの為に作らせた『杖の杖』だよ。この子はまだ自分の杖を持っていないはずだからね。これで、その杖の能力を引き出してごらん」と言うと、その『杖の杖』を手に取るアリサ。その途端に『魔導師のローブ』から光が漏れ始める。アリサが『魔女』と呼ばれる女性に質問をしたんだ。「これを使えば私は、どんな事が出来るようになるんですか?」そう質問する『魔導師のローブ』の効果が最大限に活かせるようになった状態の僕を見て『魔女』と呼ばれる彼女はアリサに答えた。

「それは自分で試してみればわかるよ」そう言われたアリサは『杖』を天に掲げて魔力を放出する。そして僕にも、アリサが行っている動作が何を意味しているのかが理解できたのだ。僕はその行為の先に起こる現象を予測した。僕は自分が今まで経験したことのある中で似たような出来事を過去に見た事があるからだ。おそらく『魔導師のローブの効果』によって作り出された『杖の杖の能力』、『聖女の祈りが込められた宝石が埋め込まれている部分に存在する宝石が砕け、そこから魔力が溢れ出し、その放出された魔力で『無魔の力』の魔法を打ち消す事ができる力を発揮する』それが今起こっている事ではないかと僕は思ったのだった。

僕の予想どおりに、先程まで『聖魔』に飲み込まれようとしていた人達に纏わり付いていた光の壁が消滅して全員が自由を取り戻すと僕に向かって攻撃を開始し始めた。僕は咄嵯にその攻撃を受け流すために動き出すが、やはりというか僕が『魔導のローブ』を身に着けていたおかげで、僕が身につけていた『無魔のローブ』には魔法攻撃を無力化する効果があるので僕に襲いかかって来た『勇者』や『騎士』の放つ攻撃は僕に当たることは無かった。

そして、僕が『魔女』と呼ばれる女性を背にして、全ての攻撃を受け流し続けている状況に変化が訪れる。それは、突然『魔女』と呼ばれる女性の隣に現れていた人物が口を開くと、僕に向けて攻撃を仕掛けてきたからなのだ。その人物は、この国の王様であった。彼は、僕を指差しながら「貴様に命ずる。我が娘と妻たちを傷付けた罪を償え!」と言ってくると。そのまま、僕の方へ斬りかかってきたのである。

そして王様の攻撃は僕の防御を突破しようとしてきたのだ。僕はこの国で一番強い人物だと噂されていただけあって流石に一筋縄ではいかないなと思っていたら。僕の周りに居た人々の中から、ある声が響き渡ったのだ。「お前たちは何をしている!早くこいつを殺す手伝いをしなさい!!」そう言った瞬間に僕を取り囲んでいた人々は、一斉に僕の事を背後から切りつけたのだ。しかし、僕の周りを覆う光のオーラがその行為を阻害した為僕の身体を傷つける事が出来なかったのである。僕は後ろから聞こえて来た声の方に振り返ると『聖女』と呼ばれる少女の姿を見てしまうと『魔女』と呼ばれた女性が言っていた事を思い出した。彼女は確か「『無魔の魔法使い』を裏切ると大変な事になるから注意するんだよ」と口にしていたことを。

(中略)そして最後に僕は、自分の胸の中にいる幼い女の子を抱き上げるとその小さな唇にキスをすると、その子は、自分の母親の元に戻ろうとする意思を示したため。僕はその子の母親の元に連れて行こうと歩き出そうとするのだが。その僕の動きを阻止しようと僕を取り囲む人々に僕を囲んでいる人々を操っている存在の声が再び聞こえる。そしてその言葉を聞いた人々は僕に再び襲い掛かってくると僕は、その人達から逃げるようにして走り出したのだった。

それからしばらくの間、『無能の魔法使い』として蔑まれていた頃とは比較にならないほどの数の命を殺めてしまった事で精神を疲弊させながら逃げ続けていたが、とうとう僕は力尽きてその場に膝をつくように倒れ込んでしまったのである。すると『魔女』と呼ばれていた女性が僕の元へ歩み寄ってきたのだ。そして僕の事を抱きしめて「お疲れ様。よく頑張りました。でも、これで貴方が『聖騎士』に倒される事が出来ない事は証明されたわね。これからは私と一緒にこの世界の王と『聖女』を倒しに行きましょう。それと、この国は貴方に預けて置きます。好きに生きなさい。でも私の元に戻って来てくれないと寂しいじゃないの」と言い残し『聖騎士』の女性を連れて転移魔法を発動させて姿を消してしまうのだった。

僕は気が付くと何処かも分からない洞窟の中に居た。そこは薄暗くて、ジメジメとしていた。僕は何が起きているのかを理解するのに時間がかかり少し困惑していたんだけど、すぐに冷静になる。というのも僕の近くに僕を守ってくれた幼子が立っていたから。その事に気が付いた僕は「君のおかげで助かった。ありがとう。本当に危なかったんだ」とお礼を言ってみたんだ。そして続けて僕が「君は誰? 名前は?」と質問をしたらその幼子は、僕の顔を見ながら微笑むだけで何も話してはくれなかったのだ。だから僕は、もしかすると、その子は、喋ることができないんじゃないかと思い「僕の言っていること理解できる?」と言う質問に変えてみるとその幼子は大きく目を見開いて「うっうん。わかる」と答えたので少し驚いたけど。その答えを聞いて少し安心していた。それから僕達はこの場所について色々と会話をしながら出口を探したり、その途中にあった部屋を調べたりするんだけど、特にめぼしい物が無かったので次の行動を考えることにしようとしたその時だ。

急に僕達の周囲にある空間に異変が起こった。僕は慌てて『魔導師』の杖を構えると周囲に結界を張ろうと呪文を唱えた。すると、この空間に突如出現した人型の魔物が襲いかかって来たのだ。そして、その魔物が手に持っていた武器を振ると衝撃波のようなものを発生させた。その攻撃に驚いていると僕よりも先に目の前にいる幼子が自分の前に立ち塞がり、両腕を大きく広げるような格好になると何かを呟き始め僕に抱きつくように飛びついて来たのである。僕達が居る場所にその攻撃が届く寸前、なんとか、僕は『聖魔の杖』を使って結界を張ることに成功すると、敵の攻撃を防ぎ切ることに成功した。だけど僕には、その攻撃を受けた時の感覚と威力が、とてもではないが耐えられるものではなかったと感じたのであった。

僕の意識が途切れそうになる中。僕の腕の中にはまだ幼子の姿が有ったが、どう考えても普通ではなかった。なぜならば、幼子に、まるで体中の血を吸われていくような感覚に襲われたから。このままではまずいと直感的に判断した僕だったが、なぜか体は思うように動かなかった。そればかりか僕の全身を寒気が駆け巡り。体の震えを抑えることができなくなってきて。この場で気絶してしまいたい衝動に襲われ始めていた。そしてそんな状態の僕の目の前には先程の魔物が居たが僕は不思議と恐怖を感じていなかった。その事が余計に怖くて仕方がないのだが何故か僕の心の中は満たされていたのだった。

僕は薄れゆく意識の中で必死になって自分に出来る事を思い出そうとした。しかし思い出せる事と言ったら僕が今現在持っている魔法の知識のみであって、今の状況を打破できる魔法など持っていないはずなのになぜ僕はこの状況に満足感を得ているんだ?その事を考えながらも、だんだんと考えるのが難しくなり意識を失いそうになっていた。すると頭の中から声のような物が聞こえた気がして耳を傾けてみることにしたんだ。

それは誰かの声のようでもあり。ただ頭に響くだけの声のようでもあったが僕には、どちらなのか判断できなかった。僕が「なんなんだ。この気持ちの悪い現象の正体を知っているのか?」そう独り言をつぶやくと、僕の目の前にいた幼い子供と思しき人物は、突然「私は知っているのよ。私が、どうしてこんな事になったのか。その全ての始まりは、あの女が原因だったんだ。そう、全ては、あの女のせい。私は、私は絶対に許さない。あの女神が。必ず殺してやる」と言う言葉を発していた。

その声が消えて行きそうになった瞬間に僕は自分の体が徐々に再生され始めているのを感じたのだ。しかも今まで僕が経験した事が無いほど回復速度が早くて驚くのと同時に、僕を取り囲んでいた人々の顔が次々と脳裏に浮かんでいく。

その瞬間に僕はあることを理解してしまったのだ。『聖女』と呼ばれていた『女神の化身』が『勇者』と結ばれた時にこの世界の住人たちは、『聖魔』に支配されてこの世界の王になった。その事を僕は知っていたからこそ、その『聖女』に騙されていたと気づいた僕は『魔女』と呼ばれている『大賢者』と行動を共にすることにした。その結果、僕は『魔女』と別れてから『聖騎士』に殺されかけてしまい、死にかけていたところで幼い女の子に救われたのである。しかしその幼子によって僕は『勇者』に殺されたはずの人達を復活させてしまった事で僕の身に『神』の使いが現れたので僕に取り付いていた『無能』の称号を消滅させる事に成功したんだが、そこで現れた女性により僕は『勇者』や『騎士』達に操られ『魔王』を討伐するための戦力として使われようとしたことで窮地に立たされてしまったのである。

僕が今いる場所は何処なのだろうかと考えていたが僕はこの空間には見覚えが有る事に気が付いて、この場所に僕が連れ込まれた理由がやっと分かりかけた所で僕の前に立っていた幼い女の子が「貴方は一体何者なの?私を助けてくれているけれど、あなたは誰なの?」と尋ねてきたのであった。そして僕はその言葉を聞くまでは「ここは何処だろう?」という疑問ばかりを気にしていたんだけど、「君の名前を教えて欲しい」と言われたから「僕はタダの魔法使いだよ。それ以上でもそれ以下でもない」と返答すると「嘘つきは嫌いです」と幼子に注意されてしまったので僕は苦笑いするしかなかったのである。

「君はこの空間について何か知らないかい?」と僕は質問をしてみたのだが、幼子は首を横に振ると「私にも分からないのよ。気が付いたらここに居ただけだから」と答えて来るので「そうなると自力での脱出が望めないなら、どうにかして『魔導王』に連絡を取らないといけないな」と思った矢先に、僕の元に『聖騎士』の女性が姿を現して「貴方をここまで案内したのは私ですよ」と言ってきたのである。そして彼女は「まさかこんなにあっさりと見つけられるとは思っていませんでした」と言うのだけど、僕からすれば彼女の登場が予想外過ぎて唖然としてしまうばかりだったのだ。彼女は僕に対して剣を突きつけると「この裏切り者が」とか言うんだけど僕は意味が分からず「僕は『魔導王』だ。裏切りとか言われても困るんだが?」と言い返すとその女性は少し困った顔をしていた。

僕はその反応を見て彼女が『聖女』の手下で僕の味方だと気が付いたが、だからといって「僕は君が敵ではないと言う確証を持てない限りは協力するつもりはない」と言うのである。するとその女性は「貴方が『魔導師』の杖を持っていると言うことは間違いなく『無能』じゃないって事よね?」なんて質問してくるものだから「僕の事を知らないのに何故分かった?」って尋ねると、彼女は「貴方と行動を共にしていた仲間達の事を調べさせて貰いましたが、『無能』と呼ばれた存在が居なかった事は確かですね」と答えたので僕は思わず吹き出してしまったのである。そして僕は彼女に僕達がこの世界に来てからはどういう状況にあったかを説明すると、僕の仲間だった『勇者』達についてはすでに『魔女』達が倒してしまっていたので彼女に協力することを決めた。そのついでに僕は、僕の工房を好きに使って良いという条件を提示したので『魔女』も僕に協力をしてくれることになった。

僕達はその後この場所を脱出して外に出たんだけど、そこには何故か僕の家族が全員揃っていて。僕を歓迎してくれたんだ。どうやら『魔女』が事前に連絡を入れてくれたおかげでみんなも、この場所へ避難していたらしく。『魔女』に僕が生きていると聞いて喜んでいたみたい。でも僕は少しの間、僕の帰りを待ってくれていたことを怒っていたのだ。だけど、こうして無事に戻ることが出来たからいいんだけどね。

その日はそのまま城へと招かれることになり、僕が目覚めた場所でもある寝室まで戻って来れたので僕は、そのまま寝ることにしたのであった。そして翌朝に目が覚めたので僕達は朝食を取るために食堂へと向かった。ちなみに僕は昨夜の出来事で疲れ果てていたので今日は『魔導士』のローブを装備せず、『聖魔の杖』だけを装備している状態で食事を行うことにしたのだ。

僕の目の前には何故か王様の目の前に座って食事をしている『魔女』と幼子がいたんだけど。『聖女』と幼子の姿が見えないので僕は「どうして二人は僕と一緒に食事をとっているんだ?それと、あっちにいる二人と『聖騎士』さんは何者なんだい?」と尋ねた。すると、この城の城主は「あの二人が私の娘だ。それでこちらにおられる御方が私の命を救って下さり。さらにこの城をお守り下さっておられた『勇者』殿だ」と言うのだ。それを聞いた僕は一瞬耳を疑ってしまったのである。そして『勇者』が生きていた事に僕は驚いてしまった。なぜならば僕の記憶にある彼は確かにあの場所で死んだはずなのだから。

僕の驚きは置いておき、どうやら、この城に囚われていた者達は皆無事に助け出すことに成功したらしいのだけど。肝心の『勇者』だけは見つからなかったのだという話を聞いてしまうのであった。その事を残念がっている僕の様子を見ていたのか、王様は『勇者の剣』を差し出して来た。

「これを、貴方に託します。どうか、私の娘である『勇者』に返してあげて下さい」と言われてしまったのである。僕は戸惑いながらその『勇者の剣』を手に取ると。それを見ていた『魔女』と幼子。それに王様と王妃は涙ぐむのであったが、その理由がわからずに戸惑ってしまうのであった。

僕が困惑しているのを見抜いた王様はすぐに僕の手からその『勇者の剣』を取り上げて「私が貴方を召喚してしまった為に。貴女には大変な苦労をお掛けしてしまったようですな。しかし、それでも私は娘の為には仕方が無かったのですよ。許してくれとはいわない。だがこれだけ言わせてはくれないだろうか。本当にすまなかった。ありがとう」と謝罪して感謝してきたのである。そんな事をされても正直僕は困った表情をするしかないのだが。王様はその事に気が付かない様子だったので僕は、その手に『勇者の剣』を手渡した。

僕としてはそんなに謝られても逆に罪悪感に苛まれそうになってしまったし。僕にはこの世界を救う意思は無いとハッキリ伝えておいたのに『勇者の剣』を渡されたことに納得できないまま、食事会は終わったのである。僕は『聖騎士』の女性を呼び出して、この国を案内してもらうと約束をしたので彼女と一緒に城下町の散策に出掛けたのである。

「どうして僕をこの国に招き入れたんだい?」と『聖騎士』の女に質問をすると彼女は少し迷う素振りを見せるが、何かを諦めたかのような雰囲気で話し出したのだった。その話によれば彼女はこの世界で『聖女』に騙されて利用されていただけだったのだ。ただ、彼女は最後までその事実を信じることが出来ずに苦しんでいたという事を教えてくれたのである。

「私は『女神』様の忠実な使徒です。あの女を信じろなどと言うことはできませんが。ですが貴方は信じられるような気がしました。だから私は信じたいのです。『女神の化身』と偽り世界を支配しようとしていた愚かな女よりも『女神の化身』と呼ばれる少女を私は信じてみたかった」と言うのだが。

彼女は僕からすると、まだ若いのにもかかわらず凄く大人びていて。とても魅力的な女性だと思えてしまうほどだったのである。そして、彼女は最後に「あの女が言っていた言葉を覚えていますか?」と言うから僕もその時の会話を思い出すと、確かに僕に言い放った言葉が有る事に気がついたので僕はその言葉を言ってみた。

「僕の名前はタダの魔法使いだよ。それ以上でもそれ以下でもない」と。

すると彼女は笑ってしまい、「それは面白い冗談ですね」と言いつつ楽しげな顔を見せてくれるようになったのだ。そして、僕達は城下の街を歩いている間に色々と教えて貰ったのである。まず、この国は王都『グランディア』と呼ばれて、この城を中心とした城下町が栄えている街である事。そして、王である『魔王』を頂点に『聖騎士』と『魔女』がそれぞれの国のトップを務めているらしい事を教えて貰えたのだ。

僕はその情報を聞き終わるとすぐに『魔女』と連絡を取ることにしてみるが『魔導士』の杖を使って念話をしても『魔女』と連絡が取れないばかりか。何故か『大賢者』とも連絡が取れなくなってしまい。途方に暮れてしまったのである。でも僕はこのまま立ち止まってばかりはいられないと思い、僕は幼子を連れて冒険者ギルドへと向かうことにした。そこで『聖女』が僕をこの世界に呼び出した経緯を探ろうと思ったからである。

僕達が最初に訪れたこの『アルクス共和国』では『魔女』の力を借りないと入国できなかったのに『聖騎士』である彼女が僕達に手を貸すとあっさり通してくれた上に、身分証も渡してくれたので僕は驚くばかりだったのである。ちなみにこの国の王様から頂いた身分証なんだけど、僕達のステータスを偽装してくれる効果もあるようで、僕の名前が「タダの魔法使い」に書き換えられ。この世界の文字も翻訳してくれるようだ。

この世界で『勇者』と『聖女』の名前を知らない者はおらず。この世界のほとんどの者がその名前を知っていて。しかも『聖女』と関わりがあると知られているのだと『魔女』が説明してくれていたけど。その辺りは後で詳しく説明すると言っていた。

その『聖女』について『魔女』が話し始めたのだが、なんでも『聖騎士』を仲間に加えていた時に、たまたま立ち寄った町で出会った女性で。『魔女』が仲間に加わるように説得して仲間になってくれたらしく。その際に彼女が僕と同郷の異世界人であること。さらに、彼女自身も『勇者』と同じくこの世界とは違う別の世界からの転生者で。しかもこの世界には僕達の元居た世界と同じ世界が有って、彼女が住んでいたのがその世界だったらしいのだ。その事から彼女に対して『魔女』は興味を抱いたのだと言うのだ。

そして僕達は『勇者』が行方不明になったと聞かされた『聖騎士』と共にこの王都までやって来たのだという事を聞かされた。ちなみに『魔女』は『聖騎士』に僕が勇者だという事は隠すように指示を出していたみたいで、僕の素性を『勇者』にも明かしていないようだった。なので僕は安心していたのだが、その事で『勇者』と喧嘩にならなかったのかな?なんて心配をしつつ僕は、彼女の話を聞いている。

『聖騎士』は、僕がこの『魔女』と『勇者』が同一人物で、実は生き別れの妹が僕であると知ることになるとは夢にも思ってなかったらしい。そんなわけで、僕と『聖女』との再会を果たしたいと考えていたので、『聖騎士』が僕を案内することになった。僕は『聖女』と会って、彼女に何があったのかを知るために。

それから数日の間は、冒険者として活動しつつ『勇者』の情報を集めて過ごしたのである。僕達は、冒険者として依頼を受けて生活していくうちに。次第にその名が広まっていくようになっていた。というのも僕と幼子が『勇者』『聖女』の仲間だったという事実を知られていき。『勇者』を討伐するために、各国の王様達がこぞって、この街を訪れ始めるようになったからだ。その結果僕と幼子は連日忙しい日々を過ごしてしまったのである。だけど僕と幼子の容姿があまりにも似ている為、その二人が同じ国に住んでいるという情報が広まるまでに時間が掛からず。さらに二人の名前までも知られるようになってしまい。二人に会いたいという人達で毎日のように僕の元に人が殺到する状態になってしまったのである。そのせいで僕は仕事がまともにできない状態に陥り。さらに『聖騎士』に助けを求める羽目になってしまったのだ。そして『勇者』の行方もわからなくなってしまった。

ただ僕はこの時、ある事を気に病んでしまったのである。

僕は幼子に『勇者』の事を聞けば、何か分かるかもしれないと考えて尋ねたのだ。そして幼子から衝撃の真実を聞いてしまったのである。『勇者』の正体は僕自身で。僕の本名は「高村 直輝」と言う名前だと言うこと。そして、僕は、僕が『勇者』であるということを完全に思い出したのだ。

僕は『勇者』として、世界を支配しようと目論む魔王を倒す旅に出ており。『勇者』である僕のことを『聖女』が利用して、この国の王になるよう誘導し。この世界を自分の物にしようとしていたという事を知り。さらに、幼子からその『勇者』である僕を召喚してしまったのは。僕の母であり、『聖女』の母でもあった『大賢者』であると知らされてしまったのである。僕に『魔女』がこの世界での僕の名前を尋ねて来たのも当然であった。僕は、幼子の話に驚き、ショックを受けて、その日は寝込んでしまいそうになったが。幼子と僕の為に必死になっている母のことを考えて。僕は『勇者』として行動する事にしたのであった。

『魔女』は『聖女』が僕の本当の母親であると知りながら、僕と行動を共にしていると話すと、僕と『聖女』の母親である『魔女』を始末してしまおうと考えていると『勇者』に語ったのである。僕は、その事に気が付いてしまうと、どうしても『勇者』の本音を確認しておきたかったので、あえて彼女を怒らせる事にした。僕は『勇者』の目の前でわざと無様に振る舞い。僕を殺さない限り『勇者』には戻れないのだと『聖騎士』に思わせてやろうと企んだのだ。『聖騎士』には僕を殺す覚悟が無いと僕は考えていたのである。だからわざと『勇者』の目の前で死んだふりをしたのだ。そして『聖騎士』に『勇者』を呼ばせると、彼女は僕に『女神』の化身と名乗った『聖女』の話を聞きたいと話を切り出してきた。

『聖女』を信用していると豪語していても、心のどこかでは『女神』に疑いを抱いているのだなと僕は感じてしまい、思わず笑みが溢れそうになりつつも。

「私はこの世界に呼び出されて、いきなり殺されそうになったの。私は、私を殺そうとした女が憎いのよ。それにこの国に居たらまた狙われてしまうかも知れないの。だから、私は貴方と一緒にこの国を脱出するわ。だから私の事は貴方が守りなさい。貴方は『勇者』でしょ?」

と言う言葉を口にして『聖騎士』と僕との関係を『勇者』が疑うように仕向けると、彼女は『勇者』としての役目を放棄して、僕の手を取ったのである。そして僕達は王城から抜け出すことにして冒険者ギルドに向かったのだ。

『聖騎士』に、僕が勇者であることを話す前に。僕達は冒険者ギルドの酒場に向かうと、そこで『聖騎士』と落ち合う約束になっていたのだ。

そして『聖騎士』に事情を説明するとすぐに彼女は王城に戻ろうとする。だがそれを『聖女』の母『魔女』に気付かれてしまい、逆に王城に閉じ込められる事になってしまうのである。僕が慌てて駆けつけてみた時には、王城は崩壊しており、僕が助けようとしたのだが。結局、逃げられてしまう結果になってしまったのである。

その後『聖騎士』は、『聖女』の元に向かい。彼女も仲間に引き入れると『魔女』を暗殺しようとするのだが。そこに『魔女』の息子で『聖騎士』の弟を名乗る少年が現れて、『魔女』の命を狙う事に成功するのである。しかし『聖騎士』は弟の力を認め。僕達と共に行動する事を決めるのである。それからの僕は。冒険者を続けながら情報を集め。『魔女』を探そうと試みたが。一向に見つかることはなく。僕達は冒険者としての活動を辞めることになったのだった。

そういえば僕は『魔女』と連絡が取れないのが不安でしょうがなかった。僕達の中で唯一の知り合いだし。この世界の事を一番よく知っている人なのだ。そんな人に僕は頼りきっている部分が大きいだけに、余計に心配になってしまったのである。だけど、その気持ちを押し殺し。この世界で生きていくことに全力を注ぐ事を決めたのだった。

それからの僕達は。『魔女』を『勇者』に会わせる事を諦めずに捜す事にしたが、見つからずにいたので。僕は『勇者』の格好で変装をして、この世界で生きる為に色々と試していたのだが。

その途中で僕に『勇者』と『聖女』の力がある事が知れ渡ってしまい。他の王様に目を付けられる事になったのだ。僕はなんとかその王様達に捕まらないようにするにはどうしたら良いのかを考えて。とりあえず冒険者を続けるのが一番だと考えた僕は『魔女』からもらった杖の力を使うと、『聖女』の称号を手に入れられると聞いて。その方法で王様達に見つからないよう。上手く隠れることにしたのである。

『勇者』の振りをすると目立つと思った僕は、『聖女』の姿を思い浮かべて。それになれることができるように努力を始めた。

その結果。

僕が魔法を唱える時に念じると『聖女』の姿になって魔法を放てるようになっていたのだった。この『勇者』の力で得た力は凄く。『魔女』と別れてから一月足らずしか経過していないのに。もう既にレベルを百まで上げていた。そのお陰かこの世界に存在するほとんどの武器を扱うことが出来るようになっているのである。そして僕は、幼子にも負けないくらいに魔法が使え。幼子が知らない攻撃魔法の呪文を唱えて使う事だってできるようになっていたのだ。

僕はその力で、他の勇者達が持っている能力のほとんどを手に入れることに成功し。僕自身の力を底上げすることができたのである。ただそれでもこの王都で一番強いと言われる勇者よりも力が弱いのだが。それでも普通の人達相手なら無双出来る程の実力を身に着けることができたのである。そして、僕が幼子に鍛えられた事で手に入れた新たなスキル『無知の知』と『神気』が。僕のステータスを更に高めてくれたのだ。

そんな訳で、僕は『勇者』という称号に相応しい実力を手に入れたのだが。そんな時でも、相変わらず僕は『勇者』らしく振舞うことに失敗してしまっていたのである。

なぜなら、この世界で僕が勇者として行動してしまうと。どうしても、『魔女』『勇者』として共に冒険をした幼子が、僕の傍に現れてしまうのである。僕は、その事を危惧することになり、僕が元いた世界で使っていた名前を『聖女』以外使わずに行動することを決めたのだ。この世界にいる時は、僕は幼子のお母さんとして振る舞う事にしたのである。そんな僕の思惑通り、王城での事件以降『聖女』は姿を表さなかった。

ただ、王城から脱出するときに幼子と一緒に脱出してしまったことで。『聖女』に疑われている可能性があったが、幼子が無事である以上は『魔女』にも疑われることはないだろうと考えていた。

幼子は、この世界での僕の事を『直輝おじさんと呼ばせることにしたのだ。僕は自分の息子が生きていたらと願ったことがある。もし幼子の親を殺さずに済んだらこんな関係になるんだろうかと考えてしまったのだ。僕は自分の子供を持つような年齢ではないのは分かっていたが。僕はどうしてもこの幼子を自分の息子のように感じてしまってしょうがないのである。

そして、僕がこの世界で初めて『勇者』だと認めてくれるようになった人物でもあり。この世界でたった一人だけ信頼できる存在だと僕は感じていたのである。僕は幼子に『聖女』の情報を聞かれても絶対に答えないように言い聞かせ。僕の家族だと名乗ることも辞めさせたのである。そして、僕の本当の名前が高村 直輝である事も告げていなかったのだ。僕達は、この異世界に転生して来ているという共通点を持っているだけであって。お互いに本当の名前を知らない間柄と言うことになっていたのである。だから幼子も僕に対して本当の名を呼ぶことをしないでくれと頼んでいたのだ。そしてお互いを名前で呼ぶことをしなかった。僕の方も『魔女』、『勇者』と呼ばれることに嫌気がさしてしまい。今では、自分のことを幼子の母親であり、元勇者として行動している『大賢者』の生まれ変わりでもあると周りに思われる為に。僕は自分のことをアリサと呼ぶことに決めたのである。

『大賢者』がどんな人物なのかを幼子に尋ねられて、この国の歴史を学んでいる時に。その歴史に登場する人物が、僕と同じ『勇者』であったのを思い出し。僕が『大賢者』である事を証明する為にその本を読んで見せたのだ。そうしたら、何故か幼子が涙を流してしまい。その涙が頬を伝う度に僕は幼子との絆を感じることが出来て、本当に心が満たされていくように感じていたのである。僕にとって本当の意味で初めて出来た仲間であり。この世界にたった一人の家族だと思うことができたのだ。だからこそ、そんな彼女のためなら僕は何でもしようと心に決めていたのである。

だから僕は彼女が泣いてしまった時にはいつも頭を撫でたり。抱きしめて慰めたのだが。僕にとってはそれだけ大切な存在であったのだ。しかし、その『魔女』も『聖女』によって殺されてしまい。その事実を知ることになったのだ。

そういえば『聖女』は『女神』の化身と名乗っていたのである。つまりは彼女はこの世界の創造神で間違いはないのだろうと。この世界はゲームのような作り物の世界なのではないか? と疑い始めた。だけどそれはすぐに捨て去ることになるのである。

何故ならば、僕には魔法を『解析』する事が出来るからだ。僕は鑑定した対象の能力や効果などを『透視』して見ることができるが。その『透視』を使えばこの世界の仕組みを調べる事ができるとわかったのだ。そして僕は『聖騎士』にその力の事を明かし、この世界の仕組みを調べてもらう事を提案したのである。彼女は、この世界に呼び出されてすぐ殺されたので。この世界に呼び出された理由さえわからない状態だったのだ。そんな彼女は自分が何の為にこの世界に呼び出されたのかを知りたかったらしい。

そこで彼女は僕に協力を求めてきたのだ。僕は彼女に協力しながら一緒に冒険者活動をしながら、この世界を解明することを始めたのだった。その結果、僕の推測通りこの世界には僕達以外の人間が存在しないことが判明したのだ。そしてその事に驚いた僕は、『魔女』に確認を取ってみたが。その情報も間違っていなかったことが分かり愕然とすることになる。その事で、僕はある考えに至る。

『魔女』は自分からこの世界に呼び出されたわけではないのかと疑ったが。その可能性はかなり低かったのだ。というのも、あの人は、元々『魔王』の側近的な存在で『勇者』とは敵同士でしかなかったはずだ。それなのに『聖女』が『魔女』の存在を知っている時点でおかしいと僕は思った。『魔女』と『聖女』が知り合いだった可能性も考えたが。それにしても、そんな『魔女』の居場所をどうして『聖女』が把握していたのかわからなかった。そもそも、そんな簡単に調べる事の出来る場所にいるとも思えない。だから、その事について考えるのは諦める事にした。

だがそうなると、『魔女』は自分で自分を召喚するような魔法は使えないはずなのだ。だが僕はそれに近い事は出来ているのではないかと思い至ったのである。

そう。それは、僕達を呼び出したのと似たような魔法を誰かが使用した可能性が浮上してくる。しかもその魔法をこの世界の住民が行ったとしたのなら。僕達は、何かの都合でここに呼ばれて来て。そのまま帰る手段がなくこの世界で生活しなければならない事になる。

僕達は今の状況を説明すると、彼女はその事に納得してくれたのだ。そしてこれからの行動をどうするかを話し合ったのだが。やはりまずは情報収集が大事だと言う事になった。この世界で起こっている事を把握する為にも必要な行為だったからである。

ただ僕としては、『聖女』の正体を確かめる必要があると感じていたので。僕は『聖女』の事を探りを入れようと決めたのである。そして『聖騎士』はそんな僕の気持ちを察したのか。それとなく僕の傍を離れないで護衛を続けてくれていたのだ。

それから数日経過した時、僕はこの王都から脱出する準備をする為の準備を整えておいた。この王都には、この世界で使える金を手に入れるために『勇者』の力を使う必要があり。僕は毎日のように冒険者活動をしているのだが。その時に稼いだお金を『錬金の工房』で作った金庫の中に隠すようにしていたのだ。そして僕と幼子は王城を抜け出してからずっと宿屋の部屋を借りて泊まっていたのだが。この日。僕はその資金を使いきってしまった。幼子もかなり懐いてきて、最近は笑顔を見せてくれるようになり、それが嬉しくて仕方がなかった。ただそんな幸せな時間は終わりを迎えるのである。僕達は王都から抜け出そうとした際に『聖女』と遭遇してしまったのだ。僕は咄嵯に『大賢者』に姿を変えたが。この世界に存在するほとんどの人間が『勇者』と『聖女』の関係を知っている以上。僕は自分の姿を隠すのを辞めることにしたのである。僕達が『聖剣』の使い手であると知られたら『勇者』が殺される恐れがあると幼子に言われたからだ。そして僕達が逃げようとしていることまで勘付かれた瞬間。僕は『勇者』としての能力を全開にして戦う事を決意したのである。しかし『聖女』の方が一枚上手で。僕はあっさり敗北してしまったのだ。

僕は、僕自身の油断で『勇者』として行動してしまったことで敗北したのだと思い。『聖女』を責めるような態度を取らないようにしていたが。『聖女』は僕の事を全く信用していないようで、常に睨み付けるような視線を送ってきたのである。僕はその事が凄く辛かった。ただそれでも、僕が今までしてきたことは無駄ではなく、僕が『魔女』として振る舞っていた時の話を聞きたいと言われてしまい。結局話をすることになったのだ。

そして僕達は『勇者』の力を封じられてこの異世界に来てからの事を彼女に話す事にしたのである。僕自身『聖騎士』と一緒に行動することで、僕の『聖女』としての行動は最小限に抑えられていたのだが。それでも、この異世界にやって来てからの一か月の出来事を話すことになったのである。

この異世界に来た時から『聖女』から追われるようになった経緯も全て説明し。そして僕の目的を『聖女』に伝えることになったのだ。そう。僕はこの異世界を脱出するために動いていると伝えようとしたのである。『魔女』である僕はこの世界で『勇者』を召喚したこと自体が間違いだと思っているのだと『聖女』に伝えたのである。

「あなたは、私と同じ勇者でありながら。『魔王』を復活させようなんて。私は絶対に許せない!」

『魔女』が『勇者』だと言う事実は隠しておきたかったが。この世界で勇者として生きていくことは僕には無理だと判断できた。そして『聖女』もそんな僕の事を信じてくれず、結局『聖女』に僕は倒されてしまい、そしてこの異世界から元の異世界に戻る手段がないと知ってしまう。

この世界は『女神』が作った箱庭のようなもので。僕達はこの世界の中で、ゲームの駒のように動かされている存在でしかないという事を理解させられる。僕達は『女神』を殺さないと帰ることができないと言う事実をつきつけられてしまう。僕と幼子はこの世界から脱出する方法を模索する為に行動を起こすことを決めたのだ。そして、その為にはこの国のトップの協力が必要だと伝える。この世界の仕組みを調べても何も解らなかったからだ。しかし僕はこの世界に長く居過ぎたのであろう。『勇者』としての能力を失い、そしてこの世界で手に入れたスキルもほとんど失うことになったのである。僕はこのまま『勇者』として活動することが不可能になってしまったことを悔やんだ。そして僕は、幼子を守りながら旅をしていくことを決意していたのである。

『勇者』の能力を失ってしまった僕がどうやって『聖騎士』と共に行動しながら生きていけるのか不安であったが。僕は僕にしか出来ない方法で彼女をサポートしていくことにしたのだ。

僕が、この異世界で手に入れられる素材を使って『聖剣』を作ってみせると宣言したのだ。それを見た彼女は、僕に協力することを承諾してくれて、それから二人で協力して研究を進めていく事になったのである。

僕達がこの国で暮らして分かった事は、僕が元いた世界より科学文明が発達していない世界だということだ。それはこの世界が地球とは異なる世界だということが証明されていた。『魔女』がこの世界では、魔法こそが万能の術であり。魔法によってあらゆる事が出来る世界だと教えてくれたからだ。『魔石融合の杖』、『神装の盾』を使えば僕もこの世界でも魔法を使えなくなることは無かった。つまりは僕は、アーティファクト級のアイテムを使えば魔法を使うことができるということである。

ただ僕は、魔法を『解析』することによってこの世界の魔法の仕組みを理解した。その結果。僕でも魔法を発動させることが出来るとわかり。そのおかげでこの世界に呼び出された理由を理解することができたのである。それは魔法陣を描くことによって発動できるこの世界の魔法は『古代文字』で書かれた『ルーン文字』を読み取ることによって、魔法を発動させていることがわかったのだ。

それを知った時、この世界の法則を書き換わる可能性があると僕は考えた。そして僕は『錬金の工房』にある機能を追加する事で、魔法を自由に書き加えることが可能なようにしたのである。その結果、僕が生み出した『魔法銀製の武具』に魔法効果を与える事が可能になり、その魔法効果の書き換えを自在に行える能力を得たのだ。

僕は、アリサの装備に施したように、『錬金の工房』で作った武器には『錬成の法具』と同じように魔力を流し込む事で、自由に加工ができる事に気がついた。『聖剣』を作った時には気付かなかったが。その機能を『聖銀の武具』を作るときに気が付き。『錬金の法具』と同じくその機能も使えるのではないかと考えついたのだ。僕は早速、『魔女』に協力をしてもらい『魔女』の力で『錬金の工房』の機能を増やすことに成功したのである。『魔女』はこの異世界の人間ではないため、僕の知らない機能を知ることが出来たのだ。その機能の中には魔法陣を作り出す機能があり、そこに『錬金魔法陣』で作った道具を置くことで、魔法を『錬金』することが出来るようになったのである。

これで、この異世界で僕達は魔法を簡単に使うことが出来るようになるのであった。だが僕と幼子はまだ知らなかったのである。『聖女』の持つ魔法をこの世界の人々は誰も知り得ていないことを。そしてそれがこの世界で最強の魔法と呼ばれていることも。そして僕はこの時まだ知る由もなかったのだ。この世界には魔法を打ち消す『神聖属性』の力を宿した『神剣』が存在するということを。そしてその『神剣』を持つ『聖騎士』の存在も知る事ができたのだ。

ただその時にはすでに手遅れだったのである。『勇者』がこの世界に存在している以上、僕達はいずれは対峙することになっていたかもしれない。僕はそれを心の準備が出来ていなかっただけだと思い、その時は受け入れる覚悟を決めていたのである。

そして僕と幼子は王都を出て旅をする事になったのだが。幼子が『転移の扉』を作り出した瞬間から『聖女』の視線を感じ。僕と幼子の会話を全て聞かれているのではないかという恐怖に襲われる事になる。

幼子と別れてから僕は『聖騎士』と二人きりになった時に、これからの事について話すことにしたのだ。この異世界に来て一か月が経っているが、この王都で僕達にできることは、もう殆ど残されていないと思ったからだ。僕はこの世界で生きる為に『錬金の工房』を使って様々な物を作り出していたが、その材料を集める事が困難になってきていたのだ。『錬金の工房』で作る事が出来る物の量が、僕達の力によって左右されているようなのでその事も問題になっていたのだった。

「あなたがこの王都に来たのは、この王都の現状を把握する為ですね」

「あぁそうですけど。何か問題があるんですか?」

この異世界に僕達が呼び出されたのはこの世界を救うためなのだ。『聖騎士』はその事を分かってくれていたので協力体制が取れている。

しかし他の人達からは、勇者である僕をこの異世界に呼び出したという罪で『聖女』が捕らえられるという話を聞いているのだ。ただそれも『聖女』と『魔女』が結託して嘘の情報を流布しているのではないかと考えている。この異世界を救いたいと思うなら、こんな回りくどい方法を取らずに最初から真実を伝えるべきだと僕は思うのだ。ただ今の僕は『魔女』の姿なので、下手なことを言うとこの異世界から脱出出来なくなってしまう可能性が高いのである。だから僕は今のままの姿で行動することに決めたのである。

僕はこの異世界に来てからの話を彼女に聞いてみたのだが。彼女は『魔女』と行動を共にしてこの世界を回っているようだ。しかし僕のような協力者を見つけることは出来なかったみたいである。この異世界で生きている人は全員が全員、他人を助けようとする善人ではなく。自分達の利益の為に他者を傷つける事に抵抗を持たない人もいるそうだ。そういう意味じゃ僕は運が良いほうだと思うよ。僕の話を親身になって聞いてくれる人に巡り会えたわけだしね。それに彼女の人柄に惹かれたというのも一つの理由ではあるんだけどさ。この世界には奴隷制度が存在しており、『勇者』の力を持った者を隷属させて自分の都合の良いように扱う者も多いのだということだ。もちろんそんな奴隷達も幸せになれるとは限らないし、『聖女』に救われることもあるという事らしいけど。それでも多くの者が『聖女』を信仰していることは間違いないようであった。

ただ『聖女』は民の事を第一に考えているからこそ、奴隷制度を廃止することができないとも言っていた。この国のトップも奴隷制度の廃止を望んではいたが、それを上手く利用しようとする輩も多くいてなかなか難しいと漏らすのである。そして僕もこの異世界を救う方法を探すため。彼女と協力して色々な街を回って行くことになったのである。そして僕と『聖騎士』の二人が出会って二か月が過ぎたある日、彼女はこの国で僕が見たことがない素材を手に入れたと言ってきたのである。それは、この異世界では珍しいものでもなければ手に入らないものではないらしく、普通は入手することができないと『聖騎士』は言うのである。それは僕にも見覚えがあったものだ。僕もこの世界で最初に訪れた街にそれと同じものが存在していることを知っている。僕はその場所まで案内することにしたのだ。

ただ僕は忘れていたのである。僕達がこの世界に召喚されてからもう一か月以上の月日が流れてしまっているという事を。そうこの異世界での時間の流れと、元の世界での時間は、同じ時間で流れているわけではないと聞かされていた事をすっかりと頭の中から抜け落ちてしまっていたのだ。

この異世界に来てから二カ月と少しが過ぎて。僕達はようやく目的地に到着したのであるが。この異世界の空に僕と『聖騎士』が想像していた星が輝いていないという事に気が付く。そしてその違和感は『魔女』から聞いていた通りだったのである。『魔女』から聞いた話を思い出して欲しいのだけど。僕達が召喚された時間からこの異世界での時間の流れる速度が変わってしまったと、その事を聞いたはずなんだ。そしてそれはこの異世界でも同じことが起きていて。そして僕はそれを確認するために、僕が『魔女』の魔法陣を使い移動した場所へと足を運ぶ。するとそこにはこの異世界が創造主の箱庭であるという証拠が残っているはずだったのだ。

しかしそこで待っていたのは僕と『聖騎士』が思っていた景色とは違うものだった。僕はこの世界にやってきた時に『錬金の工房』の機能を確かめた時と同じように『解析者の眼』の力を開放する。その結果僕は、自分がいた世界では三千七百年後の未来に飛ばされてしまったという事実を知る事になる。しかもその三千五百年前に作られたこの場所は僕が居た時代には無かったはずの場所に作られているのだ。僕が住んでいたアパートの部屋にあったパソコンで、調べる事が出来るサイトは僕がいた時代と変わらず存在していた。僕はスマホを使ってその時代の情報を集めようとしたのだけど、電波を拾うことが出来ない状況だった。その事に僕は絶望してしまい、思わず地面に膝をつく。そして涙を浮かべながら地面を見つめ続けるしかなかったのだ。

この異世界に『転移の法具』を持って来ていなかったことを後悔してしまう僕。そのせいで、僕は『魔女』に元の世界に帰る手段を失ってしまったと報告しなければならないのだから。この世界で『勇者』として過ごしている以上。元の時代に帰れなくなったなんてことは言いたくはなかったのである。僕はこの世界を救う為に呼ばれ。僕の力ではこの世界を救うことはできないかもしれないと、僕はこの異世界で暮らして行くことを決めたのだから。でも僕には『魔女』の『魔導通信』を使う事で彼女と連絡を取ることができるのだ。僕はすぐに彼女にこの異世界で起こった出来事を報告する。

僕は、この異世界を救う方法をこの異世界の住人である『聖騎士』と『魔女』の協力を得ることだと考えていたのである。『魔女』の魔法を使えば僕達は『魔女』が作り出した異世界に行くことができ。僕と『魔女』と幼子三人が一緒に暮らせる異世界に作り変えることが出来るはずだと考えたのだ。ただ『魔女』の力でその異世界に移動できるのが僕一人だけで、『魔女』と『聖騎士』はこの異世界に残らなければならないのだ。そして僕だけが、この異世界に残ることも出来なかったのだ。

なぜなら僕は、この異世界で『勇者』をやる必要があると思っていたからである。『勇者』がいなくなれば僕と一緒にこの異世界に来てくれた人たちの命が失われてしまう可能性が高くなると思ったからだ。そして僕はその考えを改めることにした。『勇者』である僕がいるからこの異世界で生きていける人は多いのだと。この世界での役目を果たすためには、『勇者』を僕以外の人がやってもいいんだと思ったのだ。それに僕達はもう仲間なんじゃないかなと思っているのだ。僕はこの『聖剣』がある限りこの異世界を救いたいと本気で思っているのだ。

この世界で僕がこの世界の人達のために何ができるのかを考えないといけないと僕は思い、幼子から貰った『聖剣』を眺めていた。この剣を『勇者』以外に使いこなせる存在はいないのだ。

僕はこの異世界の人達を救うために、僕にしかできない事を考える事を決めた。この異世界は僕にとって異世界だが。この世界は僕に取って大切な世界なのだ。この世界に僕がやってきた事は、この異世界を救える可能性があった唯一の方法だったのではないかと僕は思う。

「『聖騎士』はどうして『魔女』が協力してくれたと思いますか?」

僕はこの世界に来てからずっと疑問だった。この異世界が僕の知っている地球とは別の星にあると教えてくれて。その星の創造主が『聖女』と『魔女』である事を教えてくれたのは。『神石玉』と呼ばれる『アーティファクト級』の魔道具を作って欲しいと言ったのは、『神水玉』を作るための『賢者の石』を作り出せるようになるために必要な『賢者の水』が作れなくて困っているときに僕達がその問題を解決出来る力になると言われただけだったのだ。それなのにこの異世界の事を詳しく知らないはずのこの異世界が救われた時にはこの世界を存続させる事に協力してくれると言っている。これはどういうことなんだろうかと。

「おそらくですが。私達がこの異世界に召喚された時と同じ様にこの世界が創られた時、私達の世界も、今現在この異世界も、創られる時にこの異世界と同じような状態になっていたのではないでしょうか。そしてこの世界がこの異世界と似たような運命を辿った時に、また同じ様な状態になる可能性が高いと判断したのではないのでしょうか」と『聖騎士』が答えてくれた。『魔女』はその言葉を信じただけではないかと彼女は言うのである。

『聖騎士』が言うには。『聖女』が協力的なのも、自分の世界が危機に瀕していて自分達ではどうしようもなくなってしまい。僕達の世界に頼ろうとしたのではないかと言っていた。ただ僕としてはそんな都合の良い話がこの異世界に存在するのかどうかという疑念を拭い去ることはできなかったのである。『魔女』と出会ってからはこの世界に来てからずっと行動を共にして色々とこの異世界のことを学んできたつもりだけど。僕はこの異世界での出来事の殆どをこの世界に来た初日に済ませてしまっているし、この世界に来る前に暮らしていたのが僕の生まれ育った日本という世界なので。この異世界で生活してきた記憶が曖昧であまり思い出せないのも事実なんだよな。

それに、この異世界で僕達が最初に訪れた街のことだけど。あの街は僕のいた世界では存在しなかった場所であるということが、最近分かったのだ。この異世界では『魔女』が作った魔法陣の行き先として設定されている異世界はランダムで選択されていて、その異世界が僕がいた世界のどこかなのか別の惑星だったりするみたいで、『魔女』にも予測ができないらしいのである。

まあ僕もこの世界での役目が終わったなら。元の世界に戻れるみたいだし、それまでは、元いた世界に戻って僕をこの異世界に連れてきてしまった『魔女』にはたっぷりと仕返ししてやりたいと考えている。この世界に『魔女』を連れてきた責任を取らせてやりたいからね。そして『魔女』に会えた時、どうやって僕をこの異世界に召喚したかを吐かせてやろうと思う。僕にとってはそれこそがこの世界に残ってしまった一番の目的かもしれないのだから。ただこの世界に居る『魔女』は僕達がこの異世界に来たときの時間に飛ばされているはずで。その当時『聖騎士』もまだ生きていた。だから僕達が出会うことはないだろうと僕は思っているのだ。僕はこの異世界での自分の立場がはっきりするのであればそれで良いとさえ考えている。

ただ僕が一番知りたいのは、僕がこの世界に召喚された時のことを知っているはずの人間を探し出すことができれば、何か分かる事があるのではないかと僕は考えていた。この異世界で暮らしているこの異世界の住人ではその事を僕に語ってくれないであろう事も分かっている。だってその話をした人間は『勇者』と共にこの異世界を救った『英雄』として崇められているわけだし。この世界で僕に『勇者』としての役割を果たさせる為に僕に語りかけるような人物は存在しないはずだと僕は思うのだ。

だから、僕が知りうるこの異世界の人間の中で、この世界を救う方法を知っているかもしれないのは。僕を召喚した可能性がある、僕が元いた世界の関係者である可能性は最も高いはずなのだ。そう考えると僕は、この世界を救うために必要な『勇者』である僕以外の人物が僕と入れ替わりこの世界に現れたのではないかという疑問にぶち当たるのであった。

僕が『聖騎士』にこの世界が滅ぶ寸前で助けてもらった後で。僕は一度自分の家へと戻っていった。この世界から僕がいなくなった事になっているかもしれないが、それでも確認する必要があると僕は思ったのだ。僕がこの世界に来て、僕と入れ替わってしまったと思われる人物は。元の世界にいた頃の記憶があやふやなままで。この異世界にやって来た時に僕と同じような境遇の人物であったはずであると。

僕の場合は『魔女』の力で転移させられてやってきたので。僕は僕が住んでいたアパートの部屋の中に現れた。しかし、僕の住んでいた部屋に誰か他の人が入ってきて僕の代わりに部屋に住んでいても気付かなかっただろう。なんせ、僕の部屋には誰もいなかったからだ。それにその人物が部屋から出て行くところを目撃した人がいないことも確かなのだ。だから、僕がいた場所とは違うところに現れていたらその人物の痕跡を見つけることは不可能なんじゃないかなと思ってしまったりしていたのだけれど、僕を元の世界に戻した『神眼(神の瞳)』の機能によってこの世界の状況を確かめてみると、その場所はやはり、元々この世界にあった『魔族』と『魔王』に支配されている世界だったのである。

でもこの異世界を救う為に必要とされている能力が『勇者』、『魔女』、『魔獣使い』、『錬金の工房使い』、『剣豪』、『聖女』、『使徒』、『王の中の王』、『使徒の加護』と、僕が元の世界に戻る際に手に入れることができるようになっていたスキルだった事に驚いた。そして僕はこの異世界を救う事に成功した暁には元の時代に戻りたいという希望を持っている為。その願いを聞き入れてもらう必要があるかもしれないと思い始めていたのである。この世界で僕が生きていかなければいけない状況になってしまったのは。神様がこの異世界を救う事ができる『救世主』が欲しかったからで間違いないだろうからね。

僕はその考えに至ることができてからは、少しこの異世界に残っても良いかなと考えるようになってきてもいたのだ。なぜならこの異世界は僕の居るべき場所では無いと思ったからだ。それにこの異世界の『魔素』が枯渇していて魔物が存在していないという環境では魔法が使える人間が一人しかおらず、僕のレベルを上げるのが困難だという事と、何よりもこの『聖剣』を使えるのは僕だけだという事実もあるからだ。

そして僕は自分がこの異世界に残した『勇者』の使命というものを全うしようと思っていたのである。僕はこの世界で生き抜くための方法を学ぶことに決めていた。『勇者』としての僕の役目は『勇者』である僕にしかできないことなのだと気がついたからなんだけどね。それに僕は元の世界に戻りたいとは願うが元の世界の人達に会いたいとは思ってはいなかったんだ。なんでこんな事になったんだろうとは思っていたが。この異世界に来てしまってからも、なんでこの世界にいる人達が僕達に親切に接してくれるのか疑問に感じていたので理由を知りたかったのである。だからそのことについて僕は『聖騎士』に尋ねてみることにした。

「それはこの異世界の神々のお導きだと言われています。私達の世界はこの世界に救いを求めていたから、この異世界に呼ばれて召喚されてしまったのではないかと私は考えているのです。この世界は、今現在、私達の世界より酷い状態にあると聞いていますから」と、『聖騎士』は言っていた。確かにこの異世界で起こっている問題はこの世界を滅亡に追い込む程大きな問題になっていたのは確かだが。それが何故この異世界が僕達が暮らす地球を助けようとしている理由になるのだろうかと僕は首を傾げてしまっていた。

僕はその疑問を解消するためにもこの異世界の事をもっと知っておく必要がありそうだと感じたのだ。僕と『聖女』が暮らしていた街の名前は『アゼレード王国領ルクス』と言う。『聖騎士』が言うには『ルクスの街』と言われている街で。僕の故郷は僕の住んでいる国である日本が『ニホン帝国』と呼ばれていることからも分かるように、僕が暮らしていた国の事を僕達の国はそう呼んでいたようだ。

「この世界は今現在どのような状況にあるのですか?」と僕は『聖騎士』に質問をすることにした。『聖騎士』はその質問をされることはある程度想定済みだったらしく。

「今現在、この異世界では三つの勢力が争い続けている状態になっています。まず私達が『魔女』と戦わなければならない理由となっている勢力は、魔王を名乗る者達が率いる『魔界軍』と、『魔女』に従う者達が率先している勢力で、『魔軍』と呼称されています。そしてもう一つの勢力が『魔神』と呼ばれる者達に率いられた集団であると思われます。『魔神』とは『聖騎士』様のご友人で、『賢者』と名乗る方がおっしゃっていましたが。私達が対峙しなければならない相手であるらしい『魔王』と、同じ存在の事だと聞かされてはおります」と答えた。

『聖騎士』の言葉からすると。この異世界で問題になっているのはこの三勢力が争っているということらしいが。どうやらその戦争は一進一退を繰り返していて、お互いに戦力を出し合っているという状態だったらしいのだが。ある時を境にして、その三勢力を率いる者達同士が、話し合いを行いお互いが手を組もうという流れになったのだという。そしてその時、ある事件が起きたらしいのだ。この異世界では今まで『勇者』と称えられた者が現れたという記録がなかったようなのだが。突然現れた『勇者』が現れて全ての問題を一気に解決しようとして『魔女』と戦うことを決意した。

『魔女』との戦いは熾烈を極め、その戦いの中『魔女』とその配下である四体の強力な力を持ったモンスター達は封印されたのである。『魔女』と、それに付き従う五人の魔女の従える最強の魔女達である『五魔将』が『魔女』と一緒に封じられている場所に。しかしその時『魔王』と『魔神』の二体だけは行方をくらましたのだった。その後、『魔王』と『魔神』はそれぞれ、別の世界に渡り自分の目的を達成したのであった。そしてその二体が姿を消したことで『魔女』達も力を使えなくなり封印されたままになってしまったのだという。つまりはそういうことみたいである。そして『魔女』達を封印から解いてやれるのは同じ力を持つ僕だけみたいなのである。僕はそう考えると、これから『魔女』を倒さなければならないということなのかと不安がこみ上げてくるが。僕はそんなことはさせないつもりでいた。

『聖騎士』の話によると、『勇者』が『魔獣使い』を倒せるかどうかでこの異世界を平和に導けるか決まるようなのだ。しかし僕には、まだ自分の能力を把握できていなくて。どんな事が出来るかも分かっていなかったのだから。それに僕は、元の世界に戻って元の世界に残っていた家族に会うのが目的だから、僕自身が元の世界に戻れたとしてこの異世界を救うつもりなんてないのだから。僕はこの世界を救う事は諦めていたのだ。

だけど僕には一つ気がかりな事が有るのだ。僕がこの世界にやって来て初めて会った人が『勇者』と呼ばれていた男だったのだから。この男は僕の知っている僕の姿とは違っているけど僕の記憶の中の彼と同じ容姿をしているのだ。しかもその男が『魔道武器』を作り出している。それなのに彼は『魔道具職人』ではなくて。『勇者』と呼ばれていていた。僕はそのことが気になっていて、この世界に残されているであろう僕の知り合いと話がしたくてこの世界に残ることを決めたのだった。でもまさか『魔獣使い』の居場所まで教えてもらえるとは思ってなかったんだけどね。

僕の『聖剣』が『勇者』の力の源だということを知っていたからこそ。そして『勇者』とこの異世界を救う為には僕の存在が不可欠なのだということを知ったから。『勇者』が残したであろう情報を提供してくれていたということもあるのかもしれない。

僕はそう思いながらも、今はまだその情報を詳しく確認する事はできないので『魔女』を倒すまでは確認することができないと思っていたのだ。だから『聖女』に僕は尋ねることにした。『魔女』がこの世界に存在する限り。元の世界に戻るための方法が見つかる可能性がほぼ0に近いという事に僕は気がついたのだ。だからこの世界の人々に協力をする代わりに。僕には『勇者』と会って確かめなければならないことがあるのだから。それに『魔女』とこの世界を救いたいという思いを一緒に持っている僕が、このまま『聖剣』を持っている状態で、他の人間達と戦って勝てるわけが無いと理解してしまったのだ。だから僕は『勇者』をこの手で倒す必要があると考えたのだ。

『聖女』は僕が元の世界に戻れないと知り落ち込んでいる僕を元気付けようとしてくれたのだと思う。

「あなたなら大丈夫です。きっと『魔女』を倒しこの世界を救えます。そのために『魔族』、『魔女』、『勇者』、『使徒』、『魔獣使い』、『錬金の工房使い』、『剣豪』、『聖女』、『使徒の加護』の称号を持つあなたの力が合わさるのですから。私だって元の世界に帰れずこの異世界で生きる事になった時に。でもこうして新しい人生を生きていく事ができたから、私はこの異世界の人達に尽くすために、私にできることをしたんです」と、笑顔でそう言ってくれて。その言葉を聞いた僕は救われるような気持ちになり、少し元気が出たのである。

それから数日の間。僕は元の世界に戻る方法を探る為に色々な実験を行ってみたが、やはり元の世界に戻る為の手段を見つけることはできなかった。『異世界の旅人』という称号があるからといって簡単に『神眼(神の瞳)』が使用できるようになるわけではないようで、そもそもこの世界で使える魔法の範囲の中に、僕がいた地球は存在しないのだと思われるので。僕のこの『聖剣』は地球と地球を移動する能力はないと思うのである。

そして僕の目の前に表示されていた情報の中には、僕のステータスを詳細に確認できるページがあったので。そこに書かれていた項目から、僕のレベルを確認してみると僕のレベルは100になっていたのだ。このレベルの数値は間違いなく元の世界にいた僕のものと同じであるようだった。

さらに僕はレベルが上がると、新しく取得できるスキルを確認することが出来るように『神銀のアトリエ』の機能が拡張されているのを発見した。その機能を有効にしてみた結果。僕は、今まで知らなかった新たな力の使い方を知ることができたのだった。この『魔晶石:天魔の結晶石』が保管してある部屋には『錬金術』を行う事ができる設備が備わっている。その『錬金窯』は元の世界で言う所の電気ポットの様な形状をしており。中に『賢者の石』を入れて起動させると中の水やお湯が、一瞬で魔力の炎によって沸騰し始め『聖水』『聖水』の2種類の水が作れるようになっている。そして『錬金術』を発動させる時にはこの『錬金釜』から溢れ出した光の渦が使用者である『賢者の加護』持ちを包み込むという仕掛けになっているのだ。そして出来上がった『聖水』は、『聖水の聖杯』にその効力を移し替えて使うことになるのである。『聖水』を作るためには特別な技能が必要なようだが。僕は今その技術を習得して、『聖水』を作り出すことに成功したのだ。その方法は、元の世界にあったパソコンでネットサーフィンをしている時、僕が偶然見つけた動画サイトにアップされていた動画を見て得た知識なのである。

僕がこの世界に呼ばれてから、約一週間の時間が過ぎた頃。僕はようやく元の世界へ帰るための準備が整ったと思ったのだ。この異世界では、僕が住んでいた国とは違う国の名前が付いていて。この国の王様は僕をこの国に招待したいと考えているらしく。僕は『アゼレード王国領ルクス』の王都『アゼレード王国ルクス城』に来ていたのだった。僕達がいる王城内にある会議室には『アゼレード王国軍』に所属する騎士達が全員集合していたのである。彼らは、この『アゼレード王国ルクス領』の周辺に現れる魔物の集団の討伐を命じられた部隊のメンバーらしい。

『聖女』と、『魔導師』、『騎士』の他にも何人かの人がいて僕達に挨拶をしてくれているのだが。この会議には何故か『賢者』と『使徒』と呼ばれる者達も参加しているのだ。その二人は、『聖騎士』と同じく『勇者』と呼ばれる人と共に行動していてこの異世界の問題を解決してきた人物達らしいのだが。この『魔獣使い』と戦うためにも『聖剣』の力が必要になる可能性があるらしいので。僕に協力してほしいと言われた。そして僕は、元の世界に帰るために必要な『賢者の石』を手に入れることが出来たのだ。

そしてこの異世界は、僕が思っていた以上に文明が進んでいた世界だと言えるだろう。元の世界と同じような物がいくつも発見することが出来ていたのだから。元の世界にも僕が知る限りでは存在することの無かった機械のようなものや。科学という学問を応用することによって作られた便利な道具などが幾つも存在するのだ。それらの道具を使いこなせるようになるまでは時間が必要だと思われ。僕のこの世界でもまだ見ぬ友達を待ちわびながら日々を過ごしている状態なのですが。僕はそんな生活に少しずつ馴染んでいっている自分を実感している最中だったのである。

僕はそう思うと。これから自分が『魔獣使い』と呼ばれている存在を倒して元いた場所に戻ることができるのか?不安を感じながらも、それでも必ず『魔獣使い』を倒し『賢者の石』を手に入れる事を決めた。その為の戦力として、仲間を集めなければならないと思っていると、その時に僕を案内するために現れたのが、『聖女』とその従士達であり、彼等の話では、『聖女』とその従士達のパーティは、『魔獣使い』と戦うための唯一の希望とされているメンバーなのだと言うのである。そして僕にはその戦いに参加して欲しいと言われてしまって、僕もその誘いを受けることにしたのだ。『魔女』を封印するための儀式の手伝いをする事を条件に。

そして僕の旅の仲間達となる『勇者』は僕より年上の青年のようで、彼のことを『聖剣』が選んでいるようなのだ。だから僕に、勇者の力を貸すのも無理はないかもしれない。僕はそんなことを考えるのだけど。実はこの話を聞いてすぐに『魔女』との戦いの時に勇者の役に立ってくれた『勇者』の称号を持つ男の人のことが頭に思い浮かんだのであった。僕は彼にまた会いたいなと心の中で思いながらも『勇者』がこの『ルクス城』に来るまでの間は。『勇者』が来る前に少しでもレベルを上げておくことにしようと僕は思ったのだ。そうしなければこの世界で生きていくことが難しいと感じたからである。

そんなこんながあって。僕にはこの異世界で仲間が出来ていた。まずはこの『アゼレード王国』の騎士として戦っていた『勇者』のパーティーメンバーの一人でもある『聖騎士』の称号を持つアリサと。その仲間の二人の女の子が僕の仲間となったのだ。そしてアリサの仲間たちは皆レベルが高くて僕が知らない知識を多く持っていそうな人達ばかりだったのである。その中でも『聖剣』を扱う『聖女』のマリアンヌさんがこの世界に残る決意をした時に。『勇者』が彼女に自分の持っていた聖剣を託したことで、僕は彼女に対して親近感を感じていた。

僕達は、『聖騎士』と、『魔導師』の人達とも一緒に、元の世界へ戻るための手がかりを探したり。この世界の常識を覚えるために。この世界での一般的な仕事を請け負ったりした。それから数日後。僕が元の世界へ帰るためのヒントを得るために訪れた場所で僕は運命の出会いを果たすことになったのである。それは僕が『魔女』と出会う少し前の出来事である。

『魔晶石』と呼ばれる石が存在する洞窟のような場所は。僕が想像していたよりもずっと大きくて広かった。僕はこの世界では見たことがないはずの物を見つけてしまい、つい声を出してしまった。その物体は『テレビ』と呼ばれる物によく似た形をしていたのだ。しかも電源まで付いていた。

「何なんだ。この箱は?」と僕は独り言を言うように口に出すと。この『魔道通信装置』の画面には僕の姿が表示されていて、この『聖銀製』の鎧とマントを装備している人物がこの僕である事を告げられたのだ。つまりこれはこの『アゼレード王国』の技術で作られた魔導器の一種ということが理解できた。でも僕が元いた場所にもあったあの四角くて薄い板のような物は魔道具じゃないのかな?と不思議に思ってもいた。ただ、そんな疑問を考えてても仕方が無いから。とりあえずその『テレビ』みたいな魔道具に話しかけることにした。すると。僕は、元の世界に戻る方法を調べるためにこの場所を訪れたのだということを伝えたのである。そしたらその画面の中に映っている僕の顔が突然動き出し。『魔道通話装置』に何か文字が表示されると僕は驚いたのである。僕はその画面に表示されている『魔女』という言葉に衝撃を受けた。

そして、僕に、元の世界へ戻れるかもしれないと思える方法を教えてくれたのは、僕が『魔女』と呼ぶ人物で。この『聖石』と呼ばれる石を作り出したのが『魔女』らしい。僕はこの『聖石』を使えば元の世界に転移することが出来る可能性があることを知った。そしてこの『聖石』を作り出す為に『魔女』が作り出そうとしたのは。元の世界にある僕の故郷で、僕が大好きだった漫画の世界だったのである。だからこの話を聞いた僕の頭の中では色々な想いが溢れ出して止まらなくなったのだ。僕は今、この時ほど神様に感謝をしたことは無いと思う程に感謝をしたのだった。だって大好きな物語の世界に行く事が出来るチャンスを貰えたのだから。

それから僕は色々な人に話をしてみたけれど誰一人として信じてくれず相手にもしてくれなかったけど。その時に出会った一人のお爺さんの言葉で気がついたことがあったのだ。僕はまだ誰も見ていない場所から元の場所に戻ることが出来るかもしれない方法を知っていたということだ。そしてお城に戻ってから僕がその事を他の仲間達に説明するとアリサや『勇者』達は信じてくれなかったみたいだけれど『魔女』だけは僕の話に興味を持ったらしく、詳しく説明を求めてきたのである。そして僕はその事に答えていく内に、『魔女』が持っていると思われる力に対抗する為の方法を思いつきそれを実行に移したのだ。

その方法は単純で『賢者の石』の力を使うことで『聖騎士』の聖剣が持つ力を高めることができるので『聖騎士』に聖剣を使わせればよかっただけなのである。その結果、『賢者』の力で作られた特別な『賢者の結晶石』で強化された『聖騎士』の聖剣の力により、『聖水』を作り出す事に成功した。そして僕は元の世界へ帰れることが確定した。『魔女』は僕達が『魔女』の力を利用して『神水』を作り出そうとしているのだと誤解して怒ってしまったが。僕は『魔女』の力を悪用したりしないと誓って約束をし『魔晶石』と『神鋼』を使って作れる特殊な錬金釜を作ってあげると約束して和解したのだ。その後、僕達の仲間になった元『魔王軍幹部六将の一人』で元最強の魔物と呼ばれた悪魔を倒したことがある『魔神』の称号を持つ女性『魔獣使い』にお願いをして。僕は彼女と取引をすることにした。

彼女は僕の作った武器防具との交換条件で僕のお願いを叶えると言う契約を提案してきてくれたのだ。僕は迷わずにそれに同意をしたのだが。この異世界に来たばかりの僕にとって、この『賢者の石』の力はあまりにも強すぎた。『魔獣使い』との死闘の末。『聖水』によって弱体化していた『魔獣使い』は倒すことはできたが。その代償は、余りにも大きかったのである。その時に僕には、『聖女』と、もう一人の『勇者』と。それからその『勇者』の従者だという『聖騎士』の女性が駆けつけて来てくれて。僕が倒れているのを助けてくれたのだけど。僕の体が『聖水』の副作用の影響で。元の世界に戻る前と同じように、若返った姿に変貌していることを『聖女』が知ると僕に抱きついてきて離れなくなってしまったのだった。

そして『聖騎士』の従士である二人がこの世界に残ることを選んだことで。『聖騎士』は僕に付いていくと言って聞かなかったが。元の世界に戻った時。この異世界の事を忘れてしまう可能性を考えた僕が説得すると。渋々といった様子だったが納得してくれたのだ。そして僕は元の世界に帰る準備を整えることが出来た。『魔女』は『勇者』に力を貸すことを条件に、元いた世界に帰れる場所があるかどうか調べて欲しいと頼んでくれていたのである。だから僕はその条件を飲み込み。『魔獣使い』を『聖獣』にして『賢者』の力で『勇者』が持っていた聖剣を使えるようにすることで。この『聖魔戦争』と呼ばれる戦いで戦うことになる『魔獣使い』に勝つために準備を進めることにした。

そしてその翌日。『勇者』の仲間の一人である『聖剣使い』であるアリサが『聖騎士』と一緒に僕の元を訪れてきたのだ。

『魔女』に聞いた話では。僕と一緒ならこの世界のどこからか転移することが可能らしいが、僕の能力の関係で一度訪れたことのある所でなければ行けないとのことだったので。僕は『アゼレード王国』の首都である『聖銀都市シルミルト』の近くの山の中に作らせた僕の屋敷の地下の部屋に皆を連れてきてもらってそこから移動することにした。ちなみに『勇者』達のパーティーメンバーに『勇者』の称号を持った男の人が居たので『勇者』と呼ばせて貰うことにした。そして僕達は移動を開始することにしたのである。

その瞬間に目の前の風景が変わったかと思うとそこは『アゼレード王国』の王都の近くにある大きな山の中であり。『勇者』は驚きながらも、王都での戦いが控えていることを思い出して。僕に『勇者の試練』と呼ばれる修行の場に向かうように指示を出してきたのである。僕もこの場所は知っているし。この場所には僕が元の世界に帰るための手がかりとなる物が有ると予想していた。だから僕はその場所に向かって歩き出した。『聖騎士』の従士である二人の女の子がついてきていたけど。彼女達も一緒に元の世界に連れて行ってあげたいと思っていたのだ。でも、その前に僕はこの『勇者の試練』と呼ばれている場所を探索することを優先して、先へ進むことにする。

僕はこの場所の地形について詳しくないので。この場所にいる皆が迷わないように道順を覚えるため、目印になりそうな物を『解析者』の魔導書に記録しておく作業を始めることにした。

そして僕はこの場所に来ている間に色々と試した結果。この世界に来る前に使っていた道具や武器など。それからスキルなどが、僕のレベルと魔力と精神力が上がっていることによって。以前とは比べものにならないぐらい強化されていたので、これからの戦いで皆の為に役立てることが出来ると思うと。凄く嬉しい気持ちになっていたのである。そして僕はこの場所での用事が済み次第、元の世界に帰れるようにしてもらえるようお願いするつもりだった。その願いを聞き届けて貰えるように『魔女』を説得しなければならないと思っている。そして、僕はそんなことを考えながら皆が歩いていく後ろ姿を見ていたのである。すると『魔女』はそんな僕の様子に気がつき話しかけてくれた。そんな彼女の優しさに僕は感謝をしながらも、自分の考えていた計画を正直に伝えたのだ。

『聖剣使い』の仲間の女性二人も元の世界に戻りたいだろうと思って。『魔女』に相談をしようとしたのだけど、この世界に留まろうとしている人達もいるからと相談をすることを断られたのだ。でも、そんな事を言われても、僕はまだこの世界に居続ける気はないからどうしようかなと考えていた。

僕はそんなことを考えていると、『魔女』に突然頭を撫でられて少し恥ずかしくなり顔を赤くしてしまった。

そんな僕の様子を見ていた『勇者』が話しかけて来たので。僕は『賢者』の力で作った特殊な錬金釜を作ることが出来る『錬金のアトリエ』を使う為の許可を得る為に、この世界の錬金術師に会いに行くために『魔道具』の錬金釜の使い方を説明してから僕はその釜に材料を入れていった。

「あのマサシ様。私の勘違いかもしれませんが、この錬金窯に、何を入れたのですか?」

僕は、その言葉の意味がよく分からなかった。なぜなら、僕は、普通の薬草を入れていっただけなのだ。それがなぜ錬金をすると失敗してしまうのか不思議でしょうがなかったのである。

だから僕はその事を説明すると、なぜかこの場にいた女性全員が僕の方に近寄ってきたのである。僕は不思議に思って質問をしたのだが皆はその答えを教えてくれることはなかったのである。

僕は不思議に思いながら。この世界にある物を組み合わせて錬金釜を起動させたのだが錬金釜から出た煙の中から、不思議な素材が錬金釜から出てきた。

その出来上がった謎の物体に僕達は困惑した。僕が作ったのに見たこともないアイテムがそこには存在していたからだ。それは本当にただの変哲もない指輪だったのだ。しかも何故かこの世界の文字が書かれているだけの物である。その現象に驚いていた僕達だったのだが。それを鑑定してみた時にとんでもない事実が判明することになったのである。その鑑定の結果は 《聖具 》と表示されていて。この世界に存在しないはずの武器が、この世に誕生をしたという事になるのだ。僕はそれを『賢者』の力で作った特殊な錬金釜で作ることが出来たことに驚きが隠せなかったのである。さらにその武器の詳細を調べてみて、とんでもない効果を持っていたことも発覚したのである。僕はその性能の高さに驚きながらも、これなら『勇者』の持つ聖剣と打ち合う事が出来るのではないかと考えるのであった。

そしてその指輪を装備することで。聖剣を持つことが出来ている状態の『聖騎士』の聖剣が使えるようになることが分かった。

僕はその事で安心して『魔女』の方を見つめると。彼女が何かに困ったような顔になっている事に気づいてしまった。そこで、そのことを確認してみたところ。やはり、『魔女』はこの世界でずっと暮らしていかなければいけなくなったのだと理解をした。僕は、『魔女』のことを不老不死の存在に変えてしまったという事に気がついたのである。『聖騎士』の聖剣の力を強める事に成功した僕は、すぐに元の世界に戻ることをお願いしたのだけれど。僕のことを見つめた『魔女』は、僕に元の世界に戻ることを反対されてしまったのである。その理由は、僕がまだこの異世界に来たばかりなので、まだ帰らずに、もっと色々この世界を見て回った方が良いという判断だったのだ。それに僕は、この世界の人達を助ける義務があるとも言ってくれたのである。だから僕はもう少しここで暮らすことになったのだけど。僕には、まだやらなければいけない事があると彼女に説明すると。それを聞いて彼女は笑顔を見せてくれたのでホッとしたのだ。そして僕がやるべきことについて説明をする事にした。まずは、この世界に来た時に遭遇した魔物を討伐しようと提案をした。そして魔物を退治する為には仲間が必要だと思い『魔剣使い』であるリリィさんと、元冒険者の盗賊職の人にも協力をしてもらいたかったから僕は二人のことを頼んだのである。

二人は快く引き受けてくれ。この世界に来る前の話をしながら『魔女』の作った地図を見ながら僕達は行動を開始したのである。そしてしばらく移動していると『魔女』が僕に質問をしてきた。その内容は、『勇者』が聖騎士と一緒に僕達について来ると言っているが問題ないかという内容だったのだ。僕はそれに対して。『魔女』がそう望んでいるならいいのではないかと返事をするとその『勇者』が嬉しそうな表情になり『魔女』に感謝の気持ちを伝えていた。そんな感じに皆と話しながら歩いていると。『魔獣使い』が突然現れたのだ。その『魔獣使い』は以前倒したことのある個体よりかなり強かったのだ。僕はその戦闘の最中に僕が使っている『魔刀ムラマサ』『魔弓アルテミス』が破損してしまい。『勇者』に新しい『魔剣』を作れないかどうか聞いてみると。聖女が持っている『聖剣』を貸して欲しいと頼まれたのである。その要求を受け入れた『勇者』が『聖剣』を手渡すと同時に、聖女の持っていた魔石を使って『勇者』の武器を作ってくれることになり、聖女から渡された魔石を錬金釜に入れると、一瞬で完成してしまったのである。僕は完成した武器を確認すると、その武器の名前は、魔斧

『グングニル』という名前である。

その名前を見た瞬間に、その能力について『魔女』に確認してもらうと。なんと、その『魔槍 ムラマサ』の能力を完全劣化させた物だと説明されたのである。

『勇者』のパーティーメンバー達は、その能力に驚愕していたみたいだが、一番衝撃を受けていたのは『魔女』本人であり。僕に対して、凄いものを作ったと称賛してくれて、僕が元の世界に帰ってしまうのはもったいないと言われてしまった。僕は元の世界では引きこもりだったのでそんな事を言われてもあまり嬉しくないと思いながらも、『魔女』が僕を褒めてくれたことに対しては、ありがとうと伝えていたのである。

そして僕は『魔女』の作ってくれた、新たな武器を手に取り、この世界に来たときに出会ったあの黒い大きな化け物を倒せるのではないかと考えたのだ。その大きな敵がこの世界に来てからの初めての強敵になるかもしれないと思ったからである。僕がそのことを考えながら、皆と話している間に、『勇者』と『魔女』が何を話し合っていたのかは知らないけど、『勇者』の武器である『聖杖ケラウノス』を『勇者』から受け取り錬金釜に投入すると、先ほどと同じ様に錬金釜から煙が発生して、その煙の中から今度は聖盾『ガウェイン』が誕生したのである。

その『勇者』が持つ聖剣の能力は、『魔女』から聞いた通りで、『魔剣』の能力も大幅に上昇しているようであった。『魔槍 ムラマサ』よりも『魔斧 グンジ』の方が強い力を感じられたのだ。そして『勇者』はその『魔槍 ムラマサ』を、装備して『勇者』の聖剣の能力が更に上昇するのが分かる。

『勇者』と『魔騎士』に武器を渡すと僕は、『聖剣使い』の仲間二人に武器を渡した。彼女たちは聖具を受け取る前に僕に話しかけてきた。その言葉はこれからどうするのかという話をし出したのである。そんな事を聞かれても困るんだけどねと思っていると。その話を聞いていた『魔女』が突然僕が元の世界に戻るとこの二人が元の世界に帰れなくなってしまう可能性があるから駄目だよと言ってきたのである。その言葉を聞いていた僕はそんな事はありえないと思っていたのだけど。どうやら僕の『魔女』への態度で勘違いをしていたらしく。僕はまだ帰る気がないと判断したらしいのだ。

でも僕はこの二人には元の世界に戻って欲しかったのだ。この世界の人達を救おうとしているこの人達の為に僕は出来る限りの事をしたかった。だから僕はそんな勘違いをされているとは思っていなかったから少しだけショックを受けてしまっていたのである。そんな感じに話し込んでいる僕達の前に『大魔女』と名乗る人物が現れたのだ。僕はその姿を見るなり恐怖を感じていた。何故なら、今まで戦ってきたどんな魔物達より恐ろしい雰囲気を纏っていたからだ。しかし『聖剣使い』と仲間達が必死に僕を守るようにして守っていてくれたので僕は冷静でいることが出来たのである。

その『聖剣使い』の仲間の女性達は、この場で何が起きたとしても僕を守り抜いて見せますと言い放ち。僕を安心させてくれる言葉を掛けてくれたのである。

『勇者』、『聖剣使い』とその仲間の女性達は、『大魔女』と戦い始めたのだが。結果は惨敗。

そして『聖剣』を奪われてしまう事態になってしまった。

その事実を知った僕は何も出来なくなり呆然と立ち尽くしていたのだが。『聖剣』が無くなったことにより『聖剣』の特殊能力が使用できなくなってしまった『聖剣使い』の仲間たちが悲鳴を上げるように助けを求めている姿を見ていた僕は『魔女』に何か出来ないのかと聞くと、僕のことを見つめていた『魔女』からの提案があったのだ。それは『魔女』からの提案というのは。僕が錬金釜を作りだしその力で武器を作るという事だった。

その錬金釜の能力は『魔道具(神)

』の効果を発動させることが可能だという説明を受けた僕は、僕自身でこの場を救う為の武器を作れる事に嬉しさを感じると共に、この世界に存在する武器で、僕の持つ武器に匹敵する性能を持っている物はないだろうという自信が何故か有って不思議だったのだ。そして僕はその能力を発動させてみたところ。

《 聖具 》が出来上がったのである。その《 聖具 》の詳細を確認したところ。聖斧『フラガラッハ』と名付けれた武器が出来上がったのだ。僕はこの聖斧『フラガラッハ』が本当に使えるのだろうかと疑問を持ちながら『魔女』に質問をしたら。この聖斧がこの世界にある全ての聖剣の能力を兼ね備えた武器なので、これを使って欲しいと言われてしまった。その事実に僕は困惑してしまう。聖剣が聖剣として使えなくなるということではないか。僕はそれを確認する為に再度『聖剣』の特殊効果の確認を行ったのだ。

聖剣は所有者の意思に従うことで聖剣本来の力を発現することができると書かれていたのだ。つまりは僕の意識と同調させることで聖剣は本当の意味で僕専用の聖剣にすることが出来るということであると僕は解釈したのだった。

僕は聖剣使いに聖剣の譲渡を行うと同時に、聖女の『魔法剣』と、神官の魔杖を貸してもらう事にした。僕は、聖女が持っている魔弓で聖女の聖弓を貸して貰うと僕は、神官の魔弓と交換をしたのだ。そして、魔導師の魔杖も聖女の魔杖と交換をして。聖女が使っている聖杖と魔弓を交換することにしたのである。そして、その武器を手にした僕はその聖槍『フラガラッハ』の力を確かめようと僕は『大魔王 』と対峙したのである。

その結果『大魔王 』を圧倒し『大魔王 』を倒すことに成功した。僕はこの世界を平和に導くために頑張ろうと心に決めたのである。僕は『勇者』達にこの世界の状況を確認しながら今後の活動についての話を始めた。まずは冒険者ギルドに行って冒険者の登録をしようかと話すと『勇者』は『冒険者になんかならずとも貴方がこの世界に来た理由を達成してしまえば良いのではないでしょうか?』と言う提案を出してくれた。確かにそれもありかなと思ったのだけど。冒険者のランクが上がっていると色々と都合が良いことも出てくるはずだからと『勇者』を説得することに成功したのだった。そしてその後『勇者』の案内の元で冒険者ギルドに向かったのである。僕は冒険者になった証でもある冒険者のタグを受け取る時にそのギルドの受け付けをしているお姉さんが『聖勇者様ご一行の皆さんが来られるなんて久しぶりですね。本日はどのような御用件なのですか?もしかして指名依頼とかありますかね?あぁ~聖剣に選ばれた勇者のパーティーの皆さまの専属依頼を受けたいのですが宜しいのでしょうか?」と言っていた。

受付のおねえさんの話を聞くと、勇者のパーティーがこの街を訪れると毎回そのパーティーに依頼されたクエストがあり。その度にこの冒険者ギルトに多額の報酬が発生するので。今回もその様な目的で訪れたのではないかと考えていたそうだ。

『聖剣使い』は、『大魔王 』を倒した後に勇者の『称号』から『聖剣勇者』の称号に変わり。『勇者の職業』が『勇者』ではなく『聖剣勇者』に変わったことによって。僕と行動を共にして勇者の力を高めるための行動を行っているのだという事が説明されていたのである。『聖騎士』も『聖剣使い』と同じく僕が元の世界に戻るのは寂しく感じるが、それが彼の使命なのだと言ってくれて。他のみんなも同じような気持ちを持ってくれていた。僕はそんな風に思ってくれていた皆に対して、元の世界に戻ったとしても、必ず君達の事は忘れないし会いに行くよと言うと。『魔女』以外は全員号泣してしまったのだ。その『魔女』以外の皆の気持ちを考えてくれたようで嬉しかった。僕はそう思ったのであった。僕は皆に対して元の世界に戻ってしまった後も絶対に会いにいくから安心して欲しいと伝えるのがやっとな状態だったのだ。

ちなみに僕が『魔女』と呼んでいるのは彼女がそう名乗ったからである。彼女の名前を聞いていないから、本当は名前が有るのかさえ僕は知らないけどね。でも彼女は僕にとっては間違いなく大切な存在になっていたのである。僕が彼女からもらったのはこの世界に召喚されてから得た様々な知識。そして錬金の知識である。そんな彼女に、僕は自分のスキルについて、その使い方や応用の仕方などを詳しく教わる事が出来たのでとても助かっているのだ。だから僕はこれからも『魔女』にはずっと僕の側に居てもらってこの世界で暮らして欲しいと思っている。まぁその辺りについては『魔女』と話し合ってみようと思っているのだ。そして僕達と一緒に『勇者』の仲間である女性二人も僕達と同じ様に一緒に旅をしながらレベルを上げていくという目的があるみたいで、一緒に行動をする事にしたのだった。

そして、それから僕達勇者パーティーがこの国を出立する日に、国王に呼び出されて。勇者としてこの国に残らないかという誘いを受けたが僕は断ったのだ。その理由はやはり元の世界に戻ることを優先するというのもあるが。僕はこの世界に来たばかりの時よりも確実に強くなっていたのが実感できていたので、このまま勇者の仲間たちと共に、色々な所を旅した方が良いだろうという判断をした結果であった。そんな事を僕に言われてしまった国王達は困ってしまった様子だったが、最終的には僕の意思を尊重すると言ってくれたのである。僕はそんなやり取りの後。勇者と別れてから仲間三人を連れて次の目的地に向かうことにしたのである。その目的地に向かう途中に『魔道戦車 ラガバズド』に乗り込んだのだがその乗り心地の良さに驚いたのである。今まで使っていた馬車と比べると揺れも少なくスピードが段違いに出ていたのだ。しかも、魔力を消費しないから魔力切れになる心配もないのである 僕達はその『魔道バイク タロス』で走りながら、魔物達を倒していったのである。そのお陰で、かなりレベルアップを果たすことが出来て良かったと思う。それともう一つこの世界に存在していた乗り物には感動したのだ。なんとその『ライドマシーン』に乗っている人達を見て僕は驚愕してしまったのである。その人はなんとお姫様であり、僕達の前に現れたのは偶然だったのである。僕達がこの国の王都を出て暫く進んだ先に。

『ライドアーマー ナイト ゴブリン』が待ち構えており、戦闘をしていたのだが。その戦いの最中に僕達がその人の目の前に飛び出て邪魔をしてしまい。

その人に「どいて!!」と言われてしまったのである。そしてその人と『聖剣使い』の二人は、一瞬にしてその場から離れてしまいその二人が居なくなった後その場所を見ると、先程まで戦っていた『ゴブリン ナイト 亜種』の残骸しか無くなってしまっていたのだ。そして僕達は、その光景を唖然としながら眺めていた。僕達はあの時の出来事は幻ではなかったのかと錯覚するほどの速さだったのだ。僕達はその人を見たときに凄い美少女だと思い。ついつい見とれてしまっていたのである。

すると、僕達に気が付いて話しかけて来たのだ。どうもお礼を言いたかっただけらしいが、その時の僕たちは。あまりの可愛さに緊張してしまってうまく言葉が出てこなかったのだ。そして、なんとか話をしようとするが中々上手くいかなかったが。『魔導士』の女性が僕にお酒を勧めてきて、その飲み会のおかげで僕達の緊張感が少し緩和された事で何とか会話をすることが出来るようになっていたのである。僕はこの時ほどお酒の力って素晴らしいと思ったことはないのだ。

その女性は僕の事を気に入ってくれて、僕の仲間の一人になりたいと口にしてきたのだ。そして僕はそれを受け入れると、その女性の名前を聞いたのだ。そしてその名前は、レイナというらしくて。その見た目は、年齢は17歳ぐらいに見えたのだ。そして僕はレイナが着ている服装がこの世界では珍しい服を着ていることに気付いたのだ。僕はそれを何なのか質問をしたら。『レイナは異世界の服ですよ~』と答えてきたのである。

それを聞いた僕は、やっぱりこの世界の文化とは違う何かを感じた僕は、ここは本当に僕の住んでいた世界とは別世界のようだと改めて認識したのである。

それからしばらく進むと森を抜け山を越えた所で大きな湖があった。僕はその景色をみて感嘆の声を上げたのである。なぜならその湖の水面が鏡のように綺麗に反射していたので思わず立ち止まってしまったのである。

そして、そんな時に急に現れた気配を感じ取り。僕達は警戒態勢を取ったのだ。そして、それは現れたのだ。突然、湖の中心から水柱が立ち上がったと思ったらその中央から一人の女性が現れたのである。そして僕は、その女性がとんでもない美人であることに目を奪われたのであった。そして、その女性は僕達に微笑むとこちらにゆっくりと近寄ってきたのである。

『私の名前はセシアです。初めましてみなさん私は『神龍』様に仕えています巫女なのです。この湖の主である『大聖竜 リバイブドラゴン』様から伝言を頼まれたので、この場に現れました』と言ってきた。

僕は慌ててその女性のところに行って事情を確認することにした。

僕達がその話を聞くと。まずは自己紹介をしてお互いの事を話し合うことになった。彼女は、僕の話を聞き終えると『あなたが、勇者アルフォンス=デメトリア様ですね』と言うのである。僕は勇者の事は、僕がこの世界に来ている勇者であることを知ってるかもしれないとは思っていたけど、なぜだかはわかんなかった。僕は不思議に思いながらも肯定をした。すると彼女は僕がここに来た目的を教えてくれたのである。その目的を聞いて僕は衝撃を受けたのであった。

『実は今度行われる魔王を決める大会にて魔王に決まる者がいます。その者は貴方のお兄さんである勇者アルフォナス様なのです。魔王が決まらないと勇者が魔王を倒す事になり、魔王の力が解放されます。つまり魔王が誕生して魔王と勇者の力が増して均衡状態になるのです。そうなれば他の魔王たちや配下の者達も力を得てしまい危険極まりないので。魔王を決める大会の期間中に、勇者アルフォニス様はこの世界に現れる『聖女 』に助けを求めに元の世界に帰られるのが一番良いのでは無いでしょうか?』

僕は『えっ?!僕の兄がこの世界で魔王になる!?しかも勇者は僕が助けを呼びに来るのを待つのではなく、この世界を救ってくれるように僕を助けてくれるのを待ってたの?それに僕がこの世界に来ていることを知っていた?僕が元の世界に戻るためには『聖剣使い』のレイナが一緒じゃないと戻れないから一緒に来てもらおうとは考えていたんだけど、どうしてその聖女の人が、元の世界に帰るために手助けしてくれるんだろうか?そもそも僕がこの世界にいることをどうやって知る事が出来たんだろう?そして僕がこの世界に来ている事をなんでその人は知ってたんだろう?』と思い疑問が次々と湧き上がって来たのである。そして僕は、聖女の人からの提案を受けて元の世界に帰っても良いという事に驚いた。でも元の世界には大切な家族がいるから元の世界には早く戻りたいけど、でも僕はこの世界にも大切な存在がたくさん出来ていたのだ。その人達を残して僕は帰れないだろう。

『聖騎士』のカルマも、『魔女』のアメリも『聖剣使い』のシスターと『魔女』のミリアも、『賢者』と『聖騎士』も『勇者』と『聖騎士』の仲間の女性達もこの世界に大切な人達がいたのである。その人達を見捨てて行くなんて僕にはとてもできないのである。そして僕が元の世界に戻るのならばレイナと二人きりの時に戻らないとダメなんだから、僕一人では帰ることができないのである。だから、みんなと一緒には帰れないと僕が答えると。

『そうですか。やはり皆さんと一緒に帰るという訳にはいきませんよね。しかし『勇者様が元の世界に戻りたいと望むならば協力します』』と言われてしまって困惑したのだ。そんな僕に対して『魔女』は言ったのだ。この世界に留まるつもりがないのであれば。ここにいる人達と別れてから元の世界に戻った方が良いのではないかと言ってくれたのである。確かにそうだと納得した。そして、これから先僕が元の世界に戻るための旅をしていくのは無理があるのである。だって、これから僕は元の世界に戻ってしまうから。この世界に残っている人にとっては僕はいない事になるだろう。なら、僕はこのまま元の世界に帰った方が良いだろうと考えたのであった。

そして『魔女』に言われた僕は『魔女』にこの世界に残るのか、この世界を去るのかを尋ねられた。

僕としては、ここで知り合った人、仲間達との別れは辛い。でもこのままではいけない事も分かっていたので、僕は決心してこの世界を去る事を伝えた。そして『聖女』は僕を笑顔で迎えたのである。僕はその時、心の底からの優しい気持ちが流れ込んできたような気がした。僕はその感覚に驚きながら、そしてなぜか『勇者召喚補正』の『聖女の癒し』を思い出していた。そのスキルを持っていると聞いてもいなかったはずなのに思い出していたのである。僕はその事に戸惑いを感じつつも『魔導バイク ラガバズド』に乗り込んだ。

すると僕が乗り込むと同時に、魔道バイクから『聖鎧 ヴァルカン』に変化して僕の体を覆ったのである。そして『ライドアーマー ナイト ラガバズド』に変化するとその状態で移動を開始することが出来たのである。僕はそのまま次の目的地である『獣人の里』に向かう事になったのである。

そして僕達は次の街に向かっている時に、僕達を追いかけてきた魔物達と戦うことになるのだがそこで、僕は自分の『ステータス』を確認することにしたのである。そして僕のレベルを改めて確認すると思った以上にレベルが上がていたので驚いたのであった。特に僕の『称号』の『勇者』の効果もあってかなりのスピードで強くなっていることが分かったのである。それと新しい能力も増えていて、僕に『聖剣』が二本もあることが分かり、その剣に意識を向けて話しかけると。その剣は僕に話し掛けてきたのである。そしてその『聖剣』の名前はそれぞれ 聖剣

『聖盾ホーリーシールド』と『光槍 シャイニングランス』といい 両方とも伝説の聖剣だというのだ。

『えっ!これが伝説になっている武器だったんだ。確かに今まで戦ってきた魔物達は、こんな強力な武器を使ってたら負けることはなかっただろうね』と思ったのだ。僕は『聖剣』が僕の味方をしてくれていることがとても嬉しかったのである。それから僕はその二人の聖剣に名前を付けることにするのであった。

僕は『光槍 シャイニングランサ』に名前を付けた時に、ふとレイナの事を思うと。彼女に与えた魔導銃の名前が『聖弾』だったので。僕は『光弓』に名前を付けようと心に決めたのである。僕はその思いのまま『神龍の牙爪 ドラグニール』という名前にする事にしたのだ。そしてレイナの方は僕のその様子に驚いていたが気にしていないようで良かったのである。

それから暫く進むと今度は大きな山があったのである。僕はその山を越えるために、この辺りで一番高い山に登ろうとしたら。ゴブちんがその山の麓にある村に寄ろうと提案してくれた。なんでもその村の近くに美味しい食べ物が取れる木が生い茂っている森があるらしいので僕もその話に乗ることにして、山を越えずにその村に行くことにしたのである。すると村の近くの森に入ると、そこにはたくさんの果実の木が群生していて僕はその中の一種類の果物に目が止まったのである。そしてそれを僕は鑑定すると。

『聖樹の実 食べれば一日だけ不老不死となり。どんな病気も治せる。ただし一粒食べると、もう一粒食べたくなってしまう中毒性が有り。一度食べれば一生分の効果を得る事ができる。』と表示されていたのである。これは、まさに神の実じゃないか!!と思いすぐに口に含むと。なんとなく元気が出てきたように思えたので、その木の実に群がる蟻達を追い払って全部採ってしまったのである。

僕がそんな行動に出た時に、レイナは『勇者様の行動を真似できませんでした。私はどうしてもあの実を採る勇気がありませんでした』と言った後落ち込んでいたが、そんな彼女に僕は『大丈夫だよ、レイナが嫌がる事は僕が絶対にさせないよ!』と言い聞かせた後に僕は『聖盾 ホーリーガードナー』を使いレイナを囲んで守る態勢に入った上で、その実は収納したのだった。僕にはこの程度のことくらいしか出来ないけれどこれなら守れるだろうからね!そうして僕は、次の目的を果たすべく再び移動を始めたのであった。そして僕は気付いた事があるのだ。

そうそれは僕は『スライムゼリー』と遭遇すると攻撃してしまっていたけど。あれにはきっと意味があるに違いないと思っていたんだけど、その理由はどうやら僕がこの世界で目覚めたときに最初に倒したスライムに『勇者』としての能力を与える為の行為のようなのだ。だからスライムゼリーは倒さないといけない存在になっていたみたいなのである。まぁスライムに特別な感情を抱いているわけではないし倒すのに躊躇はないんだけど、このスライム達の中には、スライム達に力を与えている核のようなものが存在する事が分かっていてそれが、この世界のどこかに存在するらしくて、僕が『スライミング』を使えばその核の場所を教えてくれる事が分かっているから積極的に倒しに行くつもりだ。

そうして、また新たな出会いと発見があって。僕はこの世界での楽しみが増えた気がしたのだった。

そして僕達は村に到着すると。僕とレイナはすぐに宿を確保して食事を取りながら今後の旅の相談をしたのであった。

僕とレイナは次の目的の街に向かう途中で出会った女性に案内されて、その街の領主の屋敷に向かった。そして僕と『聖騎士』とで話をすることにしたのだ。すると彼女はこの領主が僕にお願いがあるとの事なので、それを受けてみるのも良いかもしれないと考え。僕はレイナと『聖騎士』と共にこの領主の話を聞く事にした。するとその内容とは、なんと、僕達のパーティーに加わりたいというもので驚くとともに僕はある事に気付いたのだ。なんとその女性は人間ではなく猫人族だったというのだ。

そして、この領地には今『魔人』達が襲撃してきて大変な状況になってしまっていると教えてくれたのだ。その事で『魔人』の討伐依頼が出されていたので僕達はその依頼を受けることにしてこの屋敷を出発したのである。そして僕達はまずはこの領城にいる『獣王』に会いに行くことにしたのである。その道中にこの領内の状況を聞いたのであった。

そして僕達は、『獣王』の住む城にたどり着くことができた。そこでも歓迎されて僕は『獣王の加護』を手に入れる事になった。そして僕はこの『勇者の試練』を受ける前に自分の『ステータス』を確認する事にしたのだ。

僕は自分のステータスを見て愕然としたのだ。なぜなら僕が持っている能力のうちの一つが消えて無くなっていたからである。僕の『聖剣』達と会話をするスキルが無くなってしまっていたのだ。僕はそのことで動揺を隠せないままに『獣王』の謁見の場に行き、そして自分の『ステータス』を見せることになったのである。そしてそこでも、僕には驚愕するしかなかったのである。『勇者の試練』を乗り切っていないにもかかわらず『称号』の『魔人殺し』の称号を僕は手にしていたからだ。それに僕は更に驚かされる事になってしまったのである。『称号』のレベルが上昇していたのである。つまり、僕は『魔人』を倒した事により『勇者の加護』によって更なる『ステータス上昇補正』を得られる事になり。それによって『魔人』を殺す事が容易になるだけでなく。この先『勇者の加護』で手に入れていくことになる『聖剣』達とも会話が出来るようになり。この世界に起こる災厄に対して立ち向かう事が可能になっていくのだ。しかし今の僕は、その『聖剣』との繋がりも失われてしまっているので、この『聖剣』達は僕の味方にならなかったとしても不思議ではないと思うのである。

それでも僕はこの世界を救う事を使命としている以上は戦う以外の選択肢は僕にはないのだと決意を新たにしたのであった。するとそこに一人の男性が入ってきた。僕はその男性を見た時に驚いたのである。その男性は、この領城の兵士達の訓練を行っている教官でその実力の高さと、その容姿端麗な顔が人気の理由なのだそうだ。その彼が僕の元に近寄ってきて話しかけてきた。そしてその男性は『魔導士』という『称号』を持っていた。彼は、その力でこの領城内ではトップクラスの魔法を使うことができるらしい。そして彼の口から、僕がこの国の姫君を救い出し魔王を倒す『勇者』であると知った。僕はそのことに驚いたのであるが。僕は自分の『ステータス』を見せつつその証明のために『勇者の力』の一つである『聖盾 シャイニングシールド』『聖鎧 ヴァルカンアーマー』『聖剣 ライドアーマーナイト ラガバズド』を呼び出すことにしたのだ。そうして三人の聖剣達を呼び出した時だった。僕は、その聖剣達の名前を呼んだ時に。何故か三人とも同じ名前の武器だったので、この聖剣達の名前は僕の中で統一する事に決めたのだが他の二人も名前を変える事はしなかったようだ。

それから僕の話を聞いた彼は『勇者』の力を体験したいということで模擬戦をすることになったのである。僕は聖剣を使うつもりで、彼と戦おうとしたのだが『勇者の加護』のお陰なのか?僕が今まで持っていた『剣』と『盾』が突然変形を始めて『盾剣 聖盾剣シャイニングブレイドソード』に変化したのである。その姿は僕の背よりも長く伸びた剣と大楯を合わせたような形になっており。その剣には盾と同じ模様が描かれているのだ。それをみた彼もこの『魔導銃 マジカルガン』と、その付属品である『魔力銃 マギアショットブラスター』が、その姿を変えて。まるで『魔銃 マスカレイドリボルバー 魔銃 マジックアローマグナム 魔銃 エレメンタルキャノン 魔銃 エレメンタラーバレット』に変化する姿を目の当たりにした事で、僕の力の強さを信じてくれて仲間になることを受け入れてくれたのだった。それからこの国のお姫様の所に案内された僕は彼女と面会をする事ができたのだった。僕は彼女に名前を教えて欲しいと言われた後に彼女の名前を知ることができたのだ。そして僕は彼女を守るために協力することを誓うと同時に。僕は自分がこれから何を目指すべきのかを理解したのである。僕が目指すべき場所はただ一つであると!そしてその目的の為に僕は『魔人殺し』を手に入れているはずなので、これから『聖女 魔人を浄化する聖なる者 ホーリーレディ』に会ってみる事にしたのだ。

僕とこの国のお姫様『アリサ=エルスティン』と一緒にいた僕が連れて来た女性の猫人族の彼女は僕と一緒で『勇者』と『魔人殺し』の称号を持っている事が分かったが僕と違ってレベル1から始めなければならないようだった。しかし彼女は諦めることなく。僕の元で訓練をして強くなり。最終的には僕と共に戦う事を希望してくれたのであった。僕はそんな彼女を『聖剣士 魔人と戦いし者の希望 ソードマスター』と名を付けて呼ぶことにしたのである。ちなみに、この国の人達から僕と『魔道師』と『戦士』と呼ばれているので今後はその呼び方で通してもらう事になった。

そして、その僕と『聖女 魔人と戦いし者の癒し ヒーラーズレディー』の『勇者の加護』を受けた。『回復』系の能力を手に入れた僕は。この領城を出発することにしたのである。この領内にはまだ数多くの『魔人』達が居るらしく、その脅威を排除する為に立ち向かわなければ行けなくなった。その為に僕は『勇者の試練』を受けるために、この領地から出る許可をもらったのであった。

そして僕は旅立つ前にある場所に向かったのであった。そうしてその場所にたどり着くことが出来たのだ。

そう、それは『聖樹 神域を創造する存在 ワールドエンブリオンロード』にであった。

この森に入る前から気付いていたのであるが、やはりこの森の空気は何かが違うのだ。

僕はこの『魔人の森』に入ってから、魔物と遭遇しても『勇者』の能力が、僕の中に入ってくることはなかった。その事に最初は少し疑問を感じていたのだが、その理由がようやく分かったのだ。それはこの『勇者召喚の儀式場 ユグドラシルの聖域』と呼ばれる場所に近づいてくる度に僕の中に流れ込んできていた『勇者の力』がこの場所に来ることによって、この神聖なる場所の影響が、邪気を打ち消していたからであると気付く事が出来た。そして、その理由が僕にはわかっていたのだ。『勇者召喚』は本来は、この世界で死んだ『勇者』達の遺体から取り出される、特別な魂から『勇者の力』を引き出して僕のような異世界から来た人間の肉体に入れる儀式の事だと思っていたのだけど。この『聖女の祝福』はその本来の目的が変わってしまったのではないかと考えられるのだ。

本来であれば、この『聖剣』と会話をする『スキル』も、この世界を救う為に召喚される勇者の『力』の一つとしてこの世界の人々に与えられているものであって。勇者とは本来この世界を救う使命を持った人間に与えられるもので。僕のようにたまたま迷い込むようにして来た人間に与えるようなものではない筈なのだ。つまり僕に与えられた『勇者の加護』とは、この世界にとって本来あるべきではないイレギュラーの僕に与えられていたもので。その僕という異物をこの世界に無理やり定着させるために与えられた物なのではないかと僕は思っているのだ。

この『勇者』の加護の恩恵を受ければ僕でもこの世界を救える可能性はあると思うのだ。しかし今の僕は、レイナを守ることしか頭にない。僕は今度こそ自分の力でレイナを守るのだ。そして今度こそ幸せに暮らしていくのだ。それが例え『魔人』との死闘になるとしても、僕は戦うことを絶対に辞める事はないだろう。僕にはそれが出来るだけの力が与えられているのだから

「私はあなたとずっと一緒にいられればいいと思っていました。私もあなたの事が好きになってしまったのです」

僕はレイナの突然の言葉で驚いたが、それはとても嬉しかった。そして僕がその事に驚いて固まっていた時に彼女は続けてこう言ってきた。

「私の初めての相手になって欲しいのですよ」と。

僕達は互いに求めあう関係になったわけだが。この領城には、まだ多くの『魔人』がいるみたいだし。早く倒さないとまずいだろう。それにこの領城は、今は安全なようだけどいつ『魔人』達に攻撃されて、この国が壊滅する事態になってもおかしくはないのである。

それから僕はこの領の城に戻って来ていたのだ。この城の中に入った時にこの城の現状について、僕なりに予想していた通りだったけどね。この城の状況は最悪と言っていい状況だった。なぜなら兵士や使用人達のほとんどが『魔人』化していて城の人達を襲い始めているという状態だったのだ。しかも、どう考えてもこの国は滅ぶ寸前の状況だった。しかし、その状態にもかかわらず、僕は城の人達を助ける事無く、そのまま立ち去ることに決めたのだった。

だって仕方がないよね?助けようとしたら僕の力がバレちゃうんだもん。そして、もう僕の力はバレてしまっていても構わないかとも思ったんだけどさ、結局はこの国のお姫様に止められた。確かに僕はこの国のお姫様を守りたいと思っているが。その彼女の言う通りにしようと思った。この城の人達がどうなろうと正直言って知ったこっちゃないしね。

僕はこの国を出ていく事を決断しこの国を後にするのだった。そうして『勇者の試練』に挑戦するために。僕は旅を続けていくのだった。『勇者』の力を使えば『魔人』との戦いにおいて有利に進む事が出来るのは確実だと思うのだけど。僕の気持ち的にこの国を救うのはまだ早すぎるというかなんというかね。とにかく僕としては『魔人の領域 ダークエリア』に向かう事を決めたのだった。そこに居る『魔王 サタン』と話をしたい。そしてその話を聞いてこの世界の平和の為に力を貸せるなら僕が『勇者』としてこの世界の人々の役に立とうと考えていたのである。そうして、この『魔人 魔獣』が徘徊している『魔人 魔獣』が支配をしている、魔境を進んで行くのだった。

『聖剣士 勇者の聖女 聖騎士 勇者の守護者 ライドアーマーナイト 魔人を浄化する聖なる者 ソードマスター』の職業に付いている猫人の女性の彼女の名前は『ミケリ キャットレディ』と言うそうだ。『勇者の加護』のお陰で僕と彼女の能力は『ステータス』で比較すると圧倒的に僕の能力の方が高くなっていたのだ。そのお陰で僕もレベルが上がりやすくなっているような気がするのだ。

そんな感じで僕と彼女の二人と、そして彼女の仲間達と共に魔獣達の住処となっている、この森の深くまでやってきたのだ。そうしてこの森の奥に存在している洞窟の前にたどり着いた時であった。僕の頭の中で声が流れてきたのである。

<この先に行くためには、貴方が持っている『魔銃 マジックアローマグナム』の『勇者』の加護を解放しないとこの先に進むことは出来ません>と、そしてその言葉の後にその魔弾の使いかたを教えてもらったのである。その魔弾の名前は、

『勇者』と名が付く魔導の弾丸であり『マギア王国』で手に入れた物の一つの『勇者 勇者の魔道士』から『勇者 魔弾 マジックバレット』に変わる魔弾だ。

そして、それの解放の方法なのだけど。『魔力付与』と『鑑定』で『魔弾』を確認しながら念じ続ける必要があるらしいのだ。まぁ簡単に説明するならば、この魔銃の魔核と僕の中にある魔石を利用して。僕の体内で作り出した特殊なエネルギーを魔核に流し込む事により魔弾は作り出されているようで。魔核に溜められたその特殊な力を使いきってから魔素に戻ることでその力が失われるという訳である。しかしこれは僕が今すぐに『魔弾作成 マギア』の魔法を覚えない限りは不可能であった。

そして、それを僕はなんとか習得する事が出来たので早速使ってみることにしたのである。僕はその前にその魔道の説明を受けていたのだ。この魔道は、元々の『魔銃』の魔法で使えるようになる魔法らしく、威力の調整なども自由に行えるようになっていて、更には自分の魔法を込めたりなど色々と出来るようになっているようだった。

そしてその魔道を使うと魔銃から光が出てきてそれが一箇所に集まると光は魔方陣になりそこから僕達に向けて光の粒子が降り注いだのだった。それでこの『勇者 勇者の魔導 マナフォースフィールド 魔弾作成』の効果を確認したのだが 効果は単純に身体能力強化の魔法の効果があるみたいだった。そして僕達の周りに展開されたのがバリアのようなもののようで、『物理攻撃』から身を守ってくれる上にその効果が常時発動されるみたいだった。この状態で攻撃を受ける時はバリアに触れた時点でダメージを受けることになるけど、その効果時間が切れたらもう一度、再使用する事でその効力をまた持続させることが出来るのだと、教えて貰ったのである。

そしてこの『マナ』の力は使用者の体力を自然回復してくれるのと、傷を癒やしてくれて疲労を回復させてくれる効果もあるみたいなのだ。

僕はその力を使用してこの先の洞窟に入って行った。その奥は広大になっていたが僕達が進んでいくのと同時に、この『魔人の領域 ダークゾーン』に生息をしている魔獣のボスが居座る場所に繋がっていると思われる場所に向かっている。この先に待ち構えているのが本当に『魔人』なのかはわからないのだが、この奥にいる可能性が高いと思う。なぜなら、この奥の方から凄く濃い魔素を感じるのだ。僕達は既にかなりの数の魔獣を討伐していてかなり強くなってきているので、僕達は油断することなく慎重に進むことにして、奥に向かったのである。

そうして進んだ先は開けた場所でそこには巨大な『竜』がいたのである。僕達がその存在に気がついた時にその魔人が話しかけてきたのだ。

「我が名は、ダークドラゴニュートの族長『魔人 魔龍』ドノヴァンだ。よくここまで来れたものだな。我を倒しこの世界を我ら魔人の支配下とするが良い」と言い放ったのである。そして彼は続けて

「人間どもよ。何故、この『魔人の領域 ダークゾーン』にやってきた?」と言ってきたのである。それに対してレイナが「それはお前たちが私達の世界に攻め込もうとしていたからだ」と答えた。それを聞いた魔人ドノヴァンは笑みを浮かべると「クカカカッ!それは勘違いというものだ。そもそも、ここは人間どもの国ではないのだぞ?なぜ人間の国に人間がいる?」とレイナの問い掛けに対して逆に質問してきたのだ。それに対して僕が答える事にした。

そう僕が魔人にこの世界を救う為にやって来た事を伝えると。

「そうか、その話は真実だったのか?まあ良いだろう、貴様らに本当の事を教えよう。ここにある魔人の国が攻めて来たので我も戦うことにしたのだ」と言うとその国の王として君臨している人物の名前を明かした。その名も『魔人 魔王』サタンという名前の人物だと言うことだ。その名前に聞き覚えがあったのかミケリさん達は驚いていたが僕は魔王という言葉に反応したのだ。だって僕と同じ名前だからさ。僕はその時は偶然だろうと特に気にしなかったのだけど、今は何故か、とてもそれが偶然には思えないのである。

だから僕は魔王の名前に何か特別なものを感じているのかもしれない。それは後になって気づくことだが僕はその時に、僕の事をこの世界に転生させた神を名乗る奴に文句を言いたい気持ちだったのだ。

その魔人 魔王はこの世界のどこにでも転移することが出来るらしく、この世界で魔人と戦っている国に現れたりしているらしいが、最近はその魔人の国から撤退をしていたそうだ。そうして僕達に魔人は話を終えた。それから僕達は魔人に対して攻撃をしようとして動き始めたのだが。しかし僕はそこで魔人の話が本当か確かめる事にしたのである。

僕は自分の中の魔石を取り出すと、魔道を発動しその『マギア王国の勇者』の紋章に魔素を流し込んだのである。そして『マギア王国 紋章鑑定 魔素変換 ステータス鑑定』で調べた結果。どうやらこの『勇者 勇者の加護』は、僕が持っている『マギア王国 勇者 魔銃の勇者』の紋章で調べた限りだと本物みたいだった。僕はその事をドノヴァンに伝えてみることにする。

「なんじゃと!お主。それはまことのことなのか!」とドノヴァンはとても驚いた様子を見せていた。なので僕はその話を信じるか試す意味で。僕は『マギア 魔銃の勇者』の紋章のスキルを使い魔人ドノヴァンの額を撃ち抜いた。すると魔人はすぐに立ち上がり

「おぬしら。少し話をしようではないか。おぬしらの国を攻めようとした事は謝るので許して欲しい。それと。そこな勇者よお主のおかげで助かったわ。まさかその魔導具にそんな能力があるとは思ってはいなかったぞ。しかしこれで、お主には我を倒す事が出来る手段を手に入れたというわけだのう」と言うと続けて話を続けたのだ。

まず始めに僕達の事について話し合う事になったのだ。

そうして話し合いが終わりお互いの意見を交換した後で。結局、お互いに魔人を倒そうと考えているということがわかったのである。そうしてこの場に残って戦闘を始めるのかと思いきや 僕の提案を受け入れてくれてこの場所を一時的な休戦協定を結んでくれると言う事になり。とりあえず僕とレイナは一度元の場所に戻る事にしたのである。それにこの洞窟の入り口付近にはこの魔境から溢れ出てきた魔物達がうじゃうじゃいたのだ。それらの魔獣を全て倒すために僕達と、そして魔人 魔王の眷属であるドノヴァンは一時共闘する事に決めたのであった。そうして、 僕と、そして『勇者』の称号を持っている、僕の仲間になったミケリは『勇者の魔道 マナフォースフィールド』と『マナの波動 マジックフォース』を駆使して洞窟内に存在するすべての魔獣を倒したのである。

そのあとで僕達は洞窟を後にすることにした。その帰り際に僕は魔弾 マジックバレットを魔人 魔王に向けて発射をしたのだ。

その魔弾が魔人 魔王の体に当たると彼は一瞬で魔弾に取り込まれ消滅した。その瞬間を見た僕達は魔人から受けた衝撃が大きすぎた。しかしこれは仕方ない事で。魔人にとって勇者が相手となると普通に殺されるより最悪な状況になってしまうからである。しかし、僕が勇者だと名乗り出ても信じてもらえないだろうし。しかも僕自身は魔銃で撃つ事で殺すことは出来たのだがそれでは納得がいかなかった。

僕は『魔銃の魔道 魔銃創造 アイテムボックス』を使ってその魔弾を作り出し魔弾の鑑定を行いながら魔弾に『マギア王国 勇者』の加護を注ぎ込んで『魔弾 マジックマグナム 魔道付与』を使用したのである。その魔弾は僕が使うと魔弾は『マナフォースフィールド マナフォースウェポン』が込められたのであった。

僕は、その魔道を使う前に魔人の言っていた事を思い出していた。それは魔人の国の国王の名前が『サタン』だという事が引っかかっていたからだ。そして、僕が使った『魔道付与 魔道弾丸 魔力強化』で強化された『魔道』の力を開放した『魔弾 マナフォースフィールド 魔力強化』によって、魔弾に込められた魔力が格段に上がったので。

僕はその魔弾の威力を検証しようと考えたのである。

僕が作り出したこの新しい魔弾は僕の中にあった全てのエネルギーが消費され尽くしたのでもう作り出すことは出来なくなってしまった。そうして、新しく作り出せないからこそ、僕はその魔弾の威力を確認したいと考えたのである。そう思い立った時、僕の目の前には巨大な岩山が存在したのである。

そうして僕はその魔獣に向かって魔弾を放ち直撃させ魔獣が怯んだのを確認すると 魔銃 マナガンを握りしめ引き金を引いた。魔獣の体はまるで風船が萎むかのようにどんどんと縮んでいくのが見えた。その光景は僕の中で衝撃を与えた。そしてこの攻撃ならいけるかもしれないと考えたのだ。

そう考え僕はまだ生き残っていた魔獣に向かってマナを纏わせた魔道を撃った。それは見事に命中すると、次の標的を狙い撃とうとした。

その時に魔人ドノヴァンは僕の前に現れると同時に魔弾の一撃を食らったのだ。そして魔人の体は魔弾の中に飲み込まれて消滅した。その事に僕は驚いたが、僕がやったわけではないと頭の中では分かっていたのである。そしてこの『魔人』と呼ばれる存在が僕に助けを求めている事にも気づきはしたが。その事については、今考えてもしょうがないので、その場をすぐに離れる事にして 僕は魔獣が消えたその場所を見つめてから。この『ダークゾーン ダンジョンの最深部』を後にしたのだ。

『勇者』の称号を持っていても今の僕はレベルが低い。魔人が居なければこんなに強くなれていない。だからこの世界を救うためには、まだまだ強さが必要になってくる。そのためにはもっと強くならないと。そう思うのであった。そう思いながら僕は、魔人が使っていた剣を回収した。その時に僕は思ったのである。この魔人が使っていた剣には何かあるかもしれないと思って僕は鑑定を使ったのである。そして分かったことがひとつあったのだ。この魔人の剣は魔石の力を利用して使用することが出来るという事である。つまりこの剣があれば僕は強くなる事が出来そうだと判断することが出来た。しかし僕が『マギア王国 勇者 魔剣の勇者』の職業を得て、そしてその加護を受けているのに、この武器には一切の加護が付与されていなかったのだ。なので僕がこの魔人の持っていた魔道剣は使えなかったのである。

僕達が、魔人の国の王城まで戻ってくると城の前にはたくさんの人達が集まっていて。僕が戻ってきたことに気づくと歓声を上げたのだ。

僕はその人達に対して「魔王の討伐に成功しました。なのでこれから、魔王の眷属を倒しに行くつもりです」と言うとその場の全員が驚くと。「さすが勇者様だ」「魔王の眷属もきっと倒せるだろう」「これで魔族の脅威からも解放される」と皆口々に喜びの声をあげていた。その声を聞いていると僕は少し罪悪感を感じてしまったのだ。その魔王を僕が倒してしまったわけだし、でも倒さなければこの世界の人間が滅ぼされていたので仕方がないとも思っていた。なので僕は「では行ってくる」と言い残し魔人ドノヴァンに教えてもらった場所に向かうことにしたのである。そうしてその場所に向かい、しばらく進むとそこに大きな空間が広がっていたのだ。その空間の奥には大きな穴が空いていてその穴の前には、魔族の将軍である『魔将 マモン』が立って僕達を迎えようとしていた。

僕はこの世界に転生してまだ日が浅い。そして勇者としての覚醒も最近行ったばかりである。その僕にとってマモンの強さは圧倒的だったのだ。僕は今までに、これほどの実力差がある相手と出会ったことはなかった。だからこそマモンの恐ろしさをひしひしと感じてしまうのである。そんなマモンの視線の先には小さな魔獣が存在していたのだ。僕は鑑定を発動しその名前を見て驚いた。なんとその魔獣の名前欄は『魔神』になっていたからである。僕は自分の目と耳が信じられなかったのである。そうして僕が驚き固まっているうちにマギア王国に居るはずの『聖女』の称号を持つミーニャが駆けつけてきた。僕がマモンと戦っていたときにマギア王国で『女神』の称号持ちのアメリさんから連絡を受けて駆け付けて来たらしい。僕達はその話を聞くことになった。

それから話を聞く限りではこの世界では、魔王だけではなく、神獣や、魔神や天使なども存在していたようなのだが、マギア王国に突然現れたのは、その『女神 女神の使徒』と名乗る者達らしいのだが ミーニャの話ではどうやら『邪神様』から指示を受けたようだ。

そして僕が魔人ドノヴァンを仲間にした話をしている途中でミケロさんから、通信魔道具に連絡が入り、僕達全員で魔王が封印されていた地に向かい、そしてそこで魔王が眠っている場所に辿り着き、魔王に戦いを挑み倒したと言う報告を聞いたのだ。そうしてその事を話している間に、マモノが僕達の目の前に現れたのである。その魔物は『魔物 ゴブリン 魔物』となっていた。

その瞬間僕はこのマモノに『鑑定』をかけたのである。

するとこの魔物のレベルとステータスが表示されるとそこには、

【魔物 名前】ゴブリンロード HP 9800/9800 MP 3900/3400 状態:普通 【スキル一覧(5ページ)】

『鑑定』

『アイテムボックス アイテム鑑定Lv.MAX』

『闇魔法』

『炎魔術 火属性』

『風魔術 風属性』

僕は、このステータスを見ると勝てる見込みは無いと判断したのだ。そして僕はミケリとクロエ姉ちゃんにだけ事情を話すと。この二人を庇いながら戦うしかないと考えたのである。そう思いながらも僕はミケリとクロエ姉ちゃんと相談したのだ。その話し合いが終わると、僕は二人にこの魔人ドノヴァンの使っていた剣を渡した。それは僕が回収していた物で、その魔道剣は僕の持つ『マナフォースフィールド マナフォースウェポン 魔道強化 効果上昇 自動回復』が付与できる。その剣である。僕は『マナフォースフィールド マジックフォース 効果増加 威力強化 攻撃力上昇』の剣を持っているので 僕が持っている剣より弱いけど。二人が持っている魔道剣の方は、僕が持つよりも強いから 二人の役に立つと思ったので僕はその剣を貸し与えた。

二人は嬉しそうな顔をしてからその剣を使い始めようとした時に僕は魔銃を取り出し

『魔弾 マジックバレット』と唱えると魔道の力が発動されて 僕の手にマナフォースライフルが現れたのである。それをみた二人は驚愕し

「なに?それって」と質問してきたのだ。

僕もその事について疑問を抱いていたのだが それは後回しにして僕は二人を守ることに集中しようと思っていた。だけど僕は『マナフォースフィールド マナフォースウェポン 魔力増強 防御力上昇 魔導強化』の盾を装備していた為。この盾がある以上僕の攻撃で傷一つ負わせることは出来ず。この場は逃げることを第一優先にすることを決めたのだ。僕達はこの部屋にある扉を開き逃げ出そうとしたのだが、その扉の先は落とし穴になっており僕達はその罠に落ちてしまったのである。そしてそのまま底の見えない闇の中へと落下したのであった。僕がその事に驚いてしまい。僕が落ちている間中叫び続けていると、 その声が何処かの階層の壁に反響し続けていたのである。そうして暫く経つと。僕の体はゆっくりと下降して行くとやがて足が床についたのだ。そうして僕は立ち上がると辺りを見回した。

「ここが、どこなのかわからないんだけど、とにかくここから出ないと」と呟くと僕は出口を探した。

そうすると目の前に大きな空間が広がっている事を知るとそこに向かい歩き出した。僕はそこで初めて自分の装備を外し。ミケリとクロエの装備品を確認してみると。僕がこのダンジョンに入ってから殆ど変わっていないことがわかった。そして僕はこのダンジョンを早く出る為に、ミケルを呼び寄せたのだ。その事を説明すると直ぐに理解してくれて、僕は魔銃を召喚すると。その弾がなくなるまで撃つことにしたのである。そして魔弾を放ち続けて数分が経過した時、遂にその弾丸は尽きたのである。僕もかなり疲れてきていて。これ以上の戦闘は厳しいと感じた僕は。

その事を告げると「この先に通路が続いている。そこから脱出する事が出来る」と、ミケルは言ったのである。その言葉を聞いて安心することが出来た。

「ありがとうミケ」と言うと僕はミケットと共にこの場を離れたのである。僕達がその場所を離れようとしたときに、ミケに通信魔道具でアメリさんを呼び出して貰い。アメリさんに事情を説明してから僕は魔人の国の城に戻り。マモノとの戦闘が終わっていない人達に援護をして貰うように頼んだ。そうしていると『魔人ドノヴァン』が現れ。

このダンジョンに潜っていた人たちが全員無事であることを確認すると僕と一緒にマモノが居た場所に戻ったのだ。そこには沢山の死体が散乱しており。マモンの姿は無かった。そうしてマモンの使っていた剣を手に取ると『鑑定』を使って剣の詳細を見たのである。するとその剣には。マモンが使っていた時の能力と変化はないようで

『魔剣 魔人の加護が掛かっている剣』と表示されているだけだった。

僕はその魔剣に加護が宿っているのがわかると僕はその魔剣に魔道力を込めたのである。

その魔道力はマモンの力を吸収しており、そのマモノを倒すのに使用した武器にも魔道の力を注入することが出来る。僕はその魔剣の使い方を知っているからその作業を行うとマモンの持っていた全ての武器に魔道の力と、魔将の称号が手に入った。『ステータス』を開いてみるとそこには 名前『無職(勇者見習い)

無職レベル1 → 剣士LV.1』『冒険者レベル4→5 剣士LV.2』『異世界戦士レベル3 職業 無 』と書かれていた。そうして、僕はその表示を確認をしたあとに『勇者スキル』が『スキル共有』の画面を呼び出してみると『スキル共有』という欄が追加されていて。そこに表示されている内容を読み上げることにしたのである。

【スキル】

『剣術LV.4』×6『アイテム鑑定LV.7』

『マナフォースソード』『マナフォースフィールド』

『アイテムボックス 』『マナフォースグローブ』『マナフォースシールド』

『マナフォースリング』『魔法操作 LV.3』

『光魔法 ヒール』

僕はこの画面を見るとこの世界の人にはまだ早すぎるのではないか?と思いながらも。とりあえずその『勇者の恩恵 経験値2倍化』の効果で手に入れた『経験』の数値は マモノや魔王と戦った事により増えていてくれたらしく。

『剣士LV.2』をレベル3にした時に『勇者の恩恵』が働いてくれるのは嬉しいが、 それでもマモノと戦えばそれだけでもレベルが上がるはずなのに、なぜ上がっていないのかが 気になるところではあったけど、今はこの世界の危機が迫っているから仕方が無いと思うことにする。そして僕はステータスを見てから、これからどうしようかと考えていたら、僕達の戦いの後始末をしていたミケから連絡が入り

「今からこのダンジョンを出ると外に出る前に、俺とリーサだけで一度城に戻ることになるかもしれないから、他の皆にそう伝えておいてくれ、頼むぞミケ。じゃあな」

と言う内容の通信が入って来たのだ。そして僕はマギトに、そう説明をした後、この場から出ようとしたのだが。ミケに通信を入れて。この事をマギナに伝えた方が良いだろうと思ったから、マギナをミケに呼んで来て貰った。

僕は、魔獣を討伐してからこの世界に居る勇者達に、救援をお願いしたいことをマギア王国に伝えるように指示をした。そうすると僕はこの場で魔銃を構え、

『アイテム鑑定』で使える魔道銃を探し始めたのである。その時に僕はある事に気付いた。『鑑定詳細』と念じると。

今まで使えなかった。

『鑑定詳細情報』の項目が増えていたことに気付くと、僕はそれを選択し『スキル』に目を通した。するとそこには『魔法付与 』と言う文字があり、 僕は、それが何を意味しているのかを理解したので、僕はこの場にいるみんなに。『マナフォースガン マナフォースライフル』を手渡し。この『マナフォースフィールド 効果上昇』と、 この魔道剣をアイテムに封印して欲しい事を伝えた。その作業をしている間に、僕はミケルをその場に待機させておくと。僕はこの『マナフォースフィールド 効果上昇』と『マナフォースライフル』を僕に渡してくれた。僕はその二つに魔道の力と『マナフォースライフル マジックフォース 効果増加』と『マジックフォースウェポン 魔力増強』を付与した。

この二つの魔道武器があれば、魔人が使う魔術に対しても有効打を与えてくれる筈である。そして僕は『マナフォースフィールド 効果強化』を付与している間に、魔銃に装填されている銃弾の種類を増やす為に『弾丸作成』を使い魔弾を作り続けた。

そして僕は、この魔道銃の威力がどの程度上がるのかを確認したかった為。

『弾丸生成 魔弾生成』を行い、魔道銃のマガジンの中にその魔弾が入っていくのを見ながら『鑑定』を発動し、効果を確認すると『魔力貫通 魔弾貫通』と表示されたのだ。

そういえば以前、僕の魔道剣に魔道の力を流し込むのは『付与強化』を使うと効果が強くなることを僕は思い出したのだった。その事もマナミさんに教えたのは良いが『マナフォースフィールド 効果上昇』と『マナフォースライフル マジックフォース 効果増加』を『付与付与 効果上昇』にすることで更にこの銃は強くなり。

僕の作った弾は魔銃によって『貫通』と『攻撃力増大』『連射強化』を付与することが出来ていたのである。それを考えると魔弾をこの銃で放てばかなりの戦力になると僕は思う。僕は、この場にいたみんなに感謝の言葉を告げると、ミケとリーサと僕が先にダンジョンを出てからアメリさんの所に戻ろうと思っているのである。僕は、魔獣達が居たと思われる場所で、何か手がかりは無いかと探索をしていると。僕は『鑑定詳細』の画面に、 このマモノの名前『マモンの配下』と書かれているのを発見すると、その下にマモンの使っていた魔道具が有ったのである。僕は、それを見つけ出し鑑定をしたところ

『転移石』と言う事がわかった。これは『魔人ドヴァン』が、僕の仲間になってくれたお礼にと言って。マモンの城に行くときの為に持たせてくれた物で。これを僕に預けた後に『魔人の国の城に行かないで、マギドの街でしばらく生活しろ』と言われた事を思い出したのだ。僕はマモンの言っていた事の意味が分からなかったが。

マモンとこのダンジョンで戦う事で。マモンが魔族の敵として動いていることが、分かった気がするのであった。

「ミケル、リーサ。先に僕達の城に戻って欲しい。僕達は、少しやる事があってから行くよ」と伝えると、二人は納得した表情になり ミケとリーサを先に城に帰すのであった。僕がそうして、ミケ達を見送った後に『魔人の国ドヴァン』に通信を入れ、現状報告を行って貰うように頼み その間に、この場所での手がかりがない事を確認を済ませることが出来たのである。僕はその『転移石』を手に持ち『スキル』の『アイテム』に収納する事に決めたのだ 僕はその魔道具を手に持つとその石を握りながら目を閉じて、『アイテムボックス』の画面を開こうとするが反応が無かったのだ。それで『アイテム鑑定 詳細表示』を行うと。

名前『魔人の国の門』

状態:未使用と表示され 効果『魔人の国ドヴァン』にある門が開くことが出来る』

と表示されていることを確認したのである。

その文字を読んでいくと、この魔道具を使えばマモンがいる『魔人ドヴァンの都』に繋がるということなのかと疑問に思った。そして僕がそのアイテムを手に持ちながら、どうやって使おうか考えていると そのアイテムの『魔人の国の都』の場所に繋がっている場所を思い浮かべろ』という説明書きが表示された事に僕は気付いたのだ。

なので、この『マモンの書庫』の『魔王城』の場所に行けないだろうか?と想像すると。画面が変わり、場所を検索しています。という画面が出てきて

『検索中』という画面になったまま10秒ほどが過ぎていく。

そうして画面に映し出されたのは、

『検索中現在位置は存在しません。

現在地から移動する場合は、その魔道具を持って『転移 』と心の中で思い浮かべることで移動が可能となります。尚。その地点への転移の際には。一度行った事がある魔道具を持った者が行ったことのあるその場所に限定』と表示されていた。

それを読む限り。一度訪れたことが無い場所に転移をすることが出来ないようになっていて、そして『転移』と思わないと行けないという制限付きになっていたのである。僕は『アイテムボックス』に、この『魔石の欠片』を入れる前に『転移石』に魔道を注ぎ込むことにして。『マナフォースライフル マナフォースウェポン』を取り出し、その銃身部分にその『マナフォースフィールド』を付与させ『弾丸付与 魔弾』と念じることで、その魔銃を魔道武器化させた後、その魔銃の銃身部分に触れ。『魔道銃操作 マナフォースガン』を『スキル』から発動させると。僕は魔銃を『魔弾』を込め発射準備が整った状態にしてから。僕はその手に持った『転移 魔弾 転移の刻印』に『魔力』を注入し始めると

『魔弾充填開始します。

残り時間5分』と文字が表示 されたと同時に、僕の身体から何かが抜き取られる感覚が走った。その現象は『魔力』を使っているからだと思うが、これがこの『魔弾』を使用する代償のようなものなのだろう。そうして僕が『マナフォースガン マナフォースガン』に『魔道』を込めていると

『魔弾 充填 魔導 魔導弾装填』と文字が浮き上がってくると、魔銃の魔道機関に『マナフォースエネルギー』が集まって来ると、 魔道が『充填』されていく事を知らせるかのように『魔弾充填 マナフォースチャージ』と表示が出ると同時に。僕の右手が熱を帯びてくるのが分かり

「よし! できた。これで、いつでも行けるぞ」

そう口に出すと共に。

「マモノだ!! 逃げろ!!」

そう誰かの声を聞くと

『ガガガ!!』と言う大きな叫び声のような音が鳴り響き始めた。僕はすぐに音の鳴る方に目を向けるとそこには巨大な黒い影が見えた。そして次の瞬間。その黒影が動き出したかと思うと、突然。その物体は高速で動いたかと思うと。僕達の横を通り抜けていき、その後方にあった木々が音を立ててなぎ倒されていった。僕はそれを見て驚きながらもその方向を見ると。そこにいたはずのミケの姿は無くなっていた。どうやらそのマモンの配下に襲われミケは姿を消したようだった。僕はそれに焦りを感じながらもその『マモンの配下』に向けて、魔銃を構え、魔道弾を放とうとした。だけど、その攻撃を放つ寸前に

『アイテム 転送魔弾 アイテム転送 効果範囲20メートル。対象物指定』と言う表示が現れると 僕は、その文字の意味を理解できなかったが。魔道銃をアイテムにしまうと。

『アイテム 転移石』と念じた。

僕は、アイテム『転移石』を発動する。そうすると目の前が光に覆われて一瞬何も見えなくなると、周りから「きゃぁー!!!!」という悲鳴が上がり僕はその言葉を聞いた後に 自分の状況を把握する。どうも転移の際に、僕は女の子の上に覆いかぶさるように転移してきたようで、僕の下に居るのがミケルだと気づくと 彼女は「え?ここは何処?」なんて言ってキョロキョロしだすと。

僕は彼女の無事を喜び。「ミケル大丈夫か!?怪我はないのか?」と質問を投げかけたのだ。そう聞くと彼女は首を傾げていたのだけど、その表情には何か違和感を感じたので。

「ミケル。その、なんだ。今の状況を把握して欲しいんだけど」

僕がミケルの顔を見ながらそういうと ミケルは自分の体を見る仕草を行い

「私に、何があったのでしょうか?記憶が全くないのです」

彼女がそういったところで、 ミケが『アイテム 魔弾』と書かれたカードを取り出して僕に見せてきた。

それを見せると ミケが僕に説明を始めてくれたのである。ミケが説明してくれた内容は。『転移 魔道具を使用中に魔弾を充填していた時に。

その魔道具をマモンが奪って使用したため。その魔道具は、転移する対象者を強制的に入れ替える事が、出来ていた』というものらしい。

それの説明を受けた時。僕はマモンが魔弾を盗んだ事にも驚いてしまったが、魔道具の強奪まで出来るという事実を知ることになった。

それはつまり、僕以外の人間にでも。

この『転移石』を使えるようになる可能性があるという事であり。悪用すれば、この世界に自由に行き来できるようになると言うことにもなる。それを考えて僕は

「この魔道具を他の人間が使用出来ない様に封印しないと」と呟く。僕がそういうと 僕達がいる場所は、洞窟の中である事が分かると。そこで、僕はミケルの手を掴み。『アイテム ワープホール 効果範囲100メートル 転移先選択不可』を発動した。そしてこのダンジョンの出入り口を封鎖するようにと念じる。

『ワープホール 作動確認 ワープホール消滅 ロック』

そんなメッセージが表示された後

「ミケル。僕についてきてくれ」

僕がミケに声をかけると ミケが不思議そうな顔をして僕に問いかけて来た。

そのミケの言葉を受けて 僕は、今の状況を簡単に説明をすると ミケルは少し考え込んで、何か思いついたのか

『アイテム 鑑定眼の魔道具 鑑定 詳細化 効果発動』と表示した。

それを確認すると 僕は『アイテム 転移石』の事を話そうとしたのである。

その前にミケルが

「この魔道具に鑑定を行った結果。これを使えば誰でもこの石を使用してこの世界の各地に行く事が出来るということなのですか?」

僕は、彼女にそう聞かれたけど、まだ完全に鑑定を済ませて居なかった。なので『アイテム 転移の魔弾 転移の魔道具の鑑定が終われば 効果の欄に転移石と同じ表示が出ます。

その表示が出てから改めて僕に説明をして欲しい』

僕がそういうと、ミケルが

『分かりました。それでは私の能力である アイテムの効果が鑑定が出来るスキルを使って、この転移石を鑑定をして見ますね』と言ってくれた。

僕は彼女に向かって。『この魔道具を、僕の手元から手放すことになっても良い?』と訪ねてみると

『もちろんですよ。この魔道具は、私が持っていても役に立てそうもないですし。むしろ、あなたが持っている方が良いのではないですか?』と言われ。僕はこの『転移の魔道具 魔道具 転送魔弾 転送転移魔弾 転移の石』を手に持つと。『ステータスチェッカー』に表示されている 状態『未装備 効果なし』が。

状態『魔道銃操作』に変化すると、僕の意思で操作が可能になる。僕はそれを確認し、この魔道具が僕のアイテムボックスに収納されるかと思い、実行しようとしたのだが。魔道銃に魔弾を込めた時に消費していた分の魔力が完全に回復していないため。魔道具に『魔力を注ぎ込めない』という状態に、陥っていたのだ。だから、僕が『魔道具に魔力を注ぐために、僕が触れていない状態で。アイテムボックス内の魔石の欠片の出し入れが出来ないかな?と念じてみた』のである。そしたら、あっさりと魔石の欠片を取り出すことが出来たのである。なので僕はこの石を取り出せるか試しに『マナフォースターライフル マナフォースガン』にその魔石を入れて見ると、問題なく魔石が入ることができた。

その魔石は僕のアイテムボックスに入っている魔石と色が似ている物であった。その事に少し疑問を覚えたものの。『勇者見習い』の能力によって、この魔石の効力も引き継がれていた事で。

その魔石も使用可能になっていると分かった。

それを見て。僕の中にあった疑問は消えていく。

それから僕がミケルに事情を説明する。すると彼女は

「そう言えば、あの転移石に何か仕掛けられていたような気もします」とミケは言う。それに対して僕は

「え!?ミケはその魔道弾を誰かが使ったのを目撃したのか?」

僕がミケにそう聞き返すと

「いいえ。私には何も見えませんでした。

ただ、突然この辺り一帯が白い霧に覆われたかと思うと、私は突然意識を失ったのです。そう考えると恐らく誰かに魔法をかけられたか、魔道具を使用したのかとも思っているのですが、その魔道具を使った人は見えていなくてですね。私にだけ幻覚を見せたり幻惑するような魔弾が使われた可能性は高いと」

と説明をし終えた後

「それで。田中様はこれからどうしたいと思われているのでしょうか? やはり。このダンジョンから出ていきたいとお思いなのでしょうか?」

ミケルは僕にそう訪ねてくる。それに対して僕は

「そうだなぁ~とりあえずはこの洞窟から出たいな。そしてこの近くにある村にでも向かおうと思っているよ。ミケルはどうしてこんな場所に一人でいるの?」

僕は、ミケルに対してその質問を行うと。彼女は

「その事なのですが、実は私は『迷いの森』と言われるダンジョンの中に入ったのが初めてなんですよ。なので当然のように迷子になってしまい。気がつけばこの場所に辿り着いていました」

その言葉を聞いた僕は、驚きの表情を見せながら

「そうだったのか。ちなみになんで、その『迷いの森』に入ろうなんて思ったんだ?」と聞くと

「その、私は。冒険者になりたかったものですから、一度入ってみようかと思っていたんです」と言う。その言葉を聞いた僕は、少し考えた後に

「それなら、一緒にその森を出ない? 僕は、別にミケルを拘束しようとは思ってないし。それにミケルと一緒に行動できれば僕も心強いしさ」と口にする。僕としては、ミケルと同行する事に全く異論は無かったので、その提案をしたのだ。僕がミケルの方に目を向けて ミケルの様子を伺うが、ミケルの方には僕の提案に対する異論が無いのか。彼女は笑顔を浮かべるのであった。そうして僕達は二人で森の中を探索することにしたのであった。

そうして、僕は、その『魔の森』の中にいた一人の人物と出会うことになる。

僕達が森の中を歩いていると、 突如地面の中から何かが現れるのが目に入り ミケルがその攻撃を回避すると、 地面に空いた穴を眺めながら。

ミケルが、その攻撃をしてきた相手に。『鑑定』を使用すると、

「あれはスライム!?」と驚くと。『アイテム 魔弾 魔道弾 魔槍 魔矢』という表示が現れて ミケは、『魔弾の魔道具 魔道具 発射』と叫ぶと その声に反応して、魔弾がスライムの体にめがけて飛んでいき命中した。

その結果、そのスライムが消滅したのを確認すると

「ふぅー。びっくりしました」

ミケルは、僕にそう告げると、 続けて僕が、「大丈夫?怪我は無い?」と問いかけると ミケルは、自分の服を見つめてから 僕の方を向き

「特に何もありませんが。何かおかしいです。攻撃を受けた覚えはないはずなのに、ダメージがあったように感じられます。しかもHPが減っていたようで、すぐに自然回復してしまったみたいなんですけど。何が起こったのでしょうか?」

僕はミケルのそんな言葉を耳にして『鑑定眼の魔道具 詳細化』を実行するとその答えが表示されるのを確認した。そこにはこう書かれていた。

状態:毒状態 体力値1万9千 精神力値4千 魔力値7千 攻撃力5千2百3十(固定数値)

防御力4900(固定数値)4100 回避力890(固定数値)730 速度性660(固定数値)620 運 99(固定数値)950 スキル『麻痺』『混乱』『石化』

と表示された。それを見た僕は、ミケルに向かって、状態異常の説明を行った。すると

「それでは先ほどの、攻撃を受けた際に状態異常なったと言うことですね」と言う。それに対して僕は「そうなるね」と伝えると。僕の事をミケルはじっと見つめた後

「先ほどは、助けて頂いてありがとうございました」と丁寧に頭を下げてくれる。それに対して僕は「そんなこと無いさ。お互い様だから気にしないでくれよ」と言うと。

そんなやり取りをした後に、僕はミケルの事を気にかけると。彼女は、かなり疲労しているのを目にした僕は。この森で休息を取ることにした。幸いに『ゴブリン キング』を倒した時と同様に『マジックポーチ』が機能してくれたので。食糧の問題は特に起きなかったのである。僕達二人がその洞窟に戻ると、僕の目の前でゴブちんが現れたのである。そして何故か。僕の顔を見ると嬉しそうにして 僕達の前に現れた。その後。僕はそのゴブちんが僕達に敵対するような様子は見せなかった事から、とりあえずは話を聞くことにして、話を聞いてみると。彼は『ミケル様を助けて欲しい』と言って来た。その理由について聞いてみると。彼は元々この村の近くの村に住んでいたらしいのだが、ある時、村の近くに現れた『魔人族』によって家族を殺されてしまったと。その際にゴブリんの姿になっていたのは、その時に魔人の『呪縛』というスキルをその身に受けた事で変化したようだ。そして『勇者』として選ばれたミケルに助けを求めようと村を抜け出し、ここまで辿り着いたとの事であった。

そう言う事であればと、僕は『ステータスチェッカー スキル解除 状態 呪われた肉体』を実行した結果。彼の状態は呪いの『魔人族 魔人』と表示されるのを確認する事が出来た。そしてそのステータス画面を確認させると。僕の予想通り、魔人の称号を持っていた為なのか 称号が魔人へと変わっていくのを確認して。僕は彼を安心させた上で『魔道人形』と『自動人形』を呼び出して、このゴブタロウを村に連れ帰るように指示を出した。そしてその間に、このゴブルの森についての情報を聞き出す事にしたのである。そこで分かったことは『魔の森』は別名『魔物の領域』と呼ばれる場所であるということが、まず第一に判明したことだ。そう言った理由も当然あるのだが他にも幾つか判明する事となる。その一つにここに生息する全ての魔物達はレベルが極端に高い事があげられる。その中でも特に高レベルの種族が存在しているのだがそれは、現在ミケルが戦っている最中であるのだ。

ミケルは戦いの中でその相手の能力を把握する。その情報を得たことで戦闘の方向性を変えていくことが可能となるのだが。それでも相手が相手だけに苦戦する事になる。なぜなら相手の名前は『ダークエルフロード LV500 種族特性 精霊魔法適正 闇の精霊の加護 MP消費無しでの発動可能 』となっているからである。

つまりは彼女の魔法の攻撃が全く効かないという訳だ。その為彼女の戦いは非常に苦しくなってしまうのだ。僕が駆けつけて『魔導剣技 聖魔斬』を使用すればその問題を解決できるのだが。それを僕が行うわけには行かなかった。何故ならば僕の職業『勇者』は僕以外の人間が使用した『勇者』の能力を使用できないからだ。そう考えれば。僕が『勇者』でミケルが僕に付いてきてくれた意味はある。

『勇者』の力は強力すぎるからこそ、その使用が制限されていると言うことなのだから。そう言う状況だから僕は僕で、自分に出来る方法で、ミケルの力になる必要があったのだった。だからこそ。僕が使える唯一の技能。

「固有スキル 創造 武器」を使用し、魔銃の威力を上げる。

更にミケの援護を行う。

僕にはまだ、切り札とも言える強力な武器が残っているのだ。その効果は、僕の創った魔弾の効果を大きく向上させる事にあるのだ。ミケの攻撃が通用しなかった時点で。僕のやれることなんてたかが知れているが。ミケの為にできることをするだけだ。僕はそのように考えた後。魔弾の魔道具 魔弾に、魔弾の能力を向上させる効果を付与していく。この魔弾に込められた魔弾自体の能力は、魔弾を使用する事でのみ効果が発揮するのであって、この『魔弾』に『無属性』を込めて、そのまま撃っても特に変化が起きないのだ。

だから。魔弾の魔道具を使用する前にこの魔弾の能力を強化する必要がある。それが、今行っている事であり魔弾に付与を行う事なのだ。

『魔道弾丸』

『付与内容 攻撃力5倍増』

『無属魔法』と表示されているそのスキルを使用して 魔弾に魔弾を強化するための術式を付与する事に成功する。後はミケの戦いをサポートするだけ。そのようにして、戦況が少しずつではあるが、こちら側に傾いていった。その結果。ようやく、ゴブちんが連れてきた、自動人形が間に合い。僕達の前に姿を現して。敵に対して攻撃をし始めると、今まで全く傷つかなかったその体が、次第に傷を負っていくようになり、遂には倒してしまうことができたのだ。

そうやってミケルの窮地を救うことに成功したのだった。それからしばらく休憩を行い。ミケルの回復を待つ間。僕はゴブちんの話を改めて聞くことにする。彼は自分が家族を失ってしまった経緯を話すのだった。彼曰く、彼が住んでいた村は、魔王に狙われたのだそうだ。それを知った村長が、村の人間を守るために。村人達を連れて避難しようとした時に、運悪く、村まであと少しといったところで、ゴブリンの群れに遭遇してしまうことになる。

そうこうしているうちに。逃げ遅れた者達が次々とゴブリン達の餌食となり。生き残った者も一人また一人でと、数を減らしていって最終的に生き残りはわずか数名となってしまったのだという。そんな彼等を救ったのがミケルで、彼女だけが辛うじて、生き延びることが出来たのだと。その話を聞いた後に僕は ミケルの方を見て彼女に問いかけた。「それで、ゴブリンに襲われて。ミケは何をしたの?」と僕はミケの行った事の詳細を確認したかった為に、そのことを聞いたのであった。すると

「ゴブリンの討伐を行いました」と言う返答が戻ってくる 僕には、彼女がどのように行動してそのような結末を迎えたのか理解出来なかったために

「どうやって倒したんだい?」とミケに尋ねると。「はい。あの時は本当に必死だったので。あまりよく覚えていないのですが。とにかくゴブリン達を倒していきました。」と言う回答に僕は首を傾げていたら。ゴブちんが口を開いた。

僕は、ゴブリン達がなぜ突然に動きを止めてしまったのかを尋ねたのだけど。それは分からないとのこと。

僕がそんな疑問を抱いている時に、ミケルが、ふと思い立ったように、僕の方を見る。そして

「タクト様。先ほど助けていただいた時なのですが。私は、その、攻撃を受けているはずなのに、何故か痛みを感じていなかったんですよ。不思議に思いませんか?」

と聞いてきたので僕はミケルを鑑定してみた所

『悪魔との契約者』と表示されていた その表示を確認した僕は、このスキルについて、知っている知識を話した上で。ゴブルの街で得た情報を共有化することにした。そしてそのスキルについての話を聞いて僕は、先ほどの『鑑定眼の魔道具』を使って確認した『ミケルの状態 体力値1万9千 精神力値4千 魔力値7千 攻撃力5千2百3十(固定数値)

防御力4900(固定数値)4100 回避力890(固定数値)730 速度性660(固定数値)620 運 99(固定数値)950 スキル『麻痺』『混乱』『石化』

状態:毒状態 』と表示されたのを思い出すと その状態と、同じ状態異常になっているのでは?という推測に至る。それを聞いた僕はミケルと二人で、ゴブリンのゴブルの街の様子を見に行きたいと言ってみると。

ゴブリンは僕のお願いに快く引き受けてくれて 案内してくれることとなった。そして僕達はゴブリンに案内されて。森の中に入っていく。ゴブリン達に連れていかれる道中にゴブリンの集団と遭遇したけど、僕の顔を見ると、慌ててその場を離れていったよ。ゴブルに着くまでの間にゴブちんは僕のことをゴブルの村の英雄として語り始め、ゴブリん達は皆。僕に好意的になってくれていたよ。

そしてそんなこんなで。到着した街は。

やはり、ゴブリンに支配された街のようになっていて、門を守るゴブリンもいて、そこにたどり着くまでは何とかなったのだが、問題はそこを抜けてからが本番だと思って気を引き締め直すことにしたのだった。

ミケルは門の近くで戦っていた。ゴブちんの話から察していたとおり。

彼女の戦い方は、どちらかというと、剣を使うより。弓の方が適している感じであった。それでもなんとか持ちこたえていたが、ついに、敵の攻撃を受けてしまってミケルが倒れるのを僕は見ていたのであった。僕はすぐに駆け寄ろうとしたんだけど、その時。ミケルが立ち上がり攻撃を開始すると、ゴブちんと、ゴブリンが加勢してくれたことで。僕はその二人の戦いを見守ることにしたのである。その二人が連携をとって戦っている様子は凄まじく。僕なんかよりも格段に強かった。そうして暫く見ていると、戦いにも一段落ついて、そのタイミングを見て僕が再び駆けつけて回復をしてから、再び戦闘を再開する。この繰り返しで徐々にではあったがゴブルの支配領域を削っていった。そして最後の仕上げを僕が行ったのである。そう。僕の持つ技能の一つ 固有スキル『無属性 創造魔法 魔法 創造』を使用したのだ。その結果、このゴブルは、僕の支配下に置かれる事になり、このゴブルの街を支配していた魔物も、全て倒すことに成功したのである。それからは大変だったよ。何しろ街中にいた魔物は全て支配下に置かれたといっても過言ではなかったからね。それをゴブリン達に指示を出すという形で、ミケルと協力して魔物の処理を行っていく事になったのだ。

まずは、街の中で、怪我を負っている人達の治療を、僕は行っていた。その後、建物の修繕などを行い、この建物に住む人々の為に家を創造する事にする。そこで問題となったのは、僕には『収納スペース』という便利な機能があり、その中には大量の素材や武器などが保管されているのだが。それらの物は僕が手を加えなければ取り出せないのだ。つまりは家を作る際に必要な材料は自分で用意する必要があるわけだ。僕はミケルと共に行動しながら『無属性 造形』という僕の持つ、オリジナルスキルを使用して、木材を『無造作』に集めていく。それこそ山から切り出したように木を集めていく。そんな僕の姿を見ていた他のゴブリン達が僕に集まって来て一緒に手伝いを始めてくれた。そして、僕が建築する為の場所を確保する為に森を切り開いた後。ミケルに頼んで、僕の創り出した家にミケルの魔法を使用してもらえばあっと言う間に家は完成したのだった。そうやって僕はこの街を復興する為に、ゴブちんの協力の元。色々と動くのだった。

僕はゴブちんの協力を得て。街の中を自由に歩き回ることができるようになり。

街の住人の様子を見回ることにしている。

そうやって街の様子を確認しながら歩いていると 僕はゴブリンが人間に対して、暴行をしている光景に遭遇することになる ゴブちん達ゴブリンは基本的には人間の事を好いているらしく ゴブちんや、その他のゴブリンが何かしら困った事が起きた際には 人間に手を差し伸べて、手伝ってくれる事もあるのだけど。

一部の悪いゴブリンがいるのだ。

例えば今回の場合は、人間を捕まえた時に。性的に襲ってしまう。

なんて事が日常的に行われているらしいのだ。そんな状況を知ってしまった僕は。ゴブリンに対して注意を促す事にしたのである。僕は人間側の味方だからと伝えると、それなら俺に任せてくださいと。胸を張るようにしてゴブリン達は言ってくれたので、僕は、彼らに期待することにする。そうすると、彼らの内の一人が僕に向かってこう言う「タクトさん。俺はあんたの為になりたい」僕はその言葉の意味が理解出来なかった。

そうやって戸惑っている僕にゴブちんが「俺達ゴブリンの殆どが、あなたに忠誠を誓います」と言い出してくる。そしてそれを見たゴブリン達が同じように忠誠を口にしていくのだ。その光景に僕は、どうしてそこまで、僕に対して、敬意を示してくれるのか疑問を抱いたのだ。

そしてそれを問うてみると「あなたが救ってくれたから」と答えが返ってくる。

どうもこの世界に迷い込んでしまった人間は 大概の場合が殺されてしまうのだという。そして僕の場合はその命を救われた事で。恩人に対する態度として接しているのだと、そんな風に彼らは話してくれたのだった。僕としては。そんな事はしていないと思っていたのだけど。結果的に彼らを救う結果になってしまっただけなのだ。それ故に僕は、この事に関してはあまり深く関わらないようにした方がいいだろうと判断し。話を終わらせようとした。そんな話をした後、僕は街の状況を把握する為に動き始めた。そうして僕は街の広場に来ていた。

そこは街の住民が集まり情報交換を行っている場所になっていたようで、大勢の人間で賑わっていた。そんな中、ゴブちと、ゴブルに残して来たゴブリン達が僕の姿を見つけると、彼等は僕の元へ駆け寄り、膝を突いて頭を下げてきた。僕にはその理由がわからなかったので とりあえず顔を上げるように指示をして、僕に何かあったのか聞いてみたのだけど。彼等は、僕のお陰で。ゴブルは魔王軍から解放された。自分達が今生きられているのも、貴方のおかげなんだと。彼等は口々に語る。そんな彼等を見て。僕は彼等が、嘘を言っている訳でもなくて、本心から感謝しているという事を知ることができた。そんな彼等に僕が出来るのは ゴブリンの村に食料を提供することぐらいかなと思った。

僕は『アイテムボックス 空間庫』の中から。

先日、僕と、ミケルが倒した魔族。その魔族の所持していた宝箱の中身を取り出して。彼等に与えることにする。魔族の宝物の中に食料が含まれていたことを思い出しての行動であった。ゴブちん達からは、この世界の常識を教えてもらう必要があるので、魔族から奪った物では無く、僕が手に入れたものである事を説明する。そして、ゴブルの街は魔族は倒せなかったけれど、この宝箱は回収することができたので。これで飢えを凌ぐ事ができるのではないかな?と思って差し出す事にしたのだった。

そうしたやり取りがあったので、その後から暫くの間は。僕は彼等の希望を聞き。生活が不便であれば要望に応えるような形を取っていたのだった。ただその際にゴブルを治めている領主というか貴族が何処にいるかを聞いてみたんだけど。それは教えてくれなかったんだよね。多分 ゴブルの貴族というのは、ゴブりんや、ゴブリんにとって。都合が悪い存在なんじゃないだろうかと考えた僕は、彼等には申し訳ないけど放置することにしたのである。だってもし助けたら、今度は自分が酷い目に遭うんじゃないかと心配になって来るからだね。だからそう言った事情もあり 僕の目の前に現れた冒険者ギルドの冒険者達と話をすることにしたのであった。

ゴブちんが僕を案内してくれた先には沢山の建物があり。その一角で大きな騒ぎが起きている様子でした。そこで何が行われているのかというと、ゴブリンと、人間の女性達が性行為をしていたのです。

ゴブちん曰く これはゴブブルでは普通のことなのだとか、ゴブちん達には、人間を襲うなと言っているので、その代わりの欲求不満解消なんですと言われてしまったのだ。そしてそのゴブちん達は僕を建物の奥へと案内して そこにあった一室に連れ込んだのだ。そしてそこには 人間を縛りつけている牢があって。中には十名程 人間の女性がいた。そんな彼女達は皆 怯えた表情をしていて、僕が入って来たことでさらに顔を恐怖に染めていたのである。そこでゴブちん達は 皆 服を脱ぎ始める。ゴブちんは勿論 ゴブリんや ゴブこも 他の子も、全員が全員。脱いでいったのだ。そこで僕が、何をするつもりなのか聞くと。ゴブちんが恥ずかしそうな素振りをしながら、僕に向かって言ってきたのである。

僕はミケルに頼まれてこの街の視察に来たのである。

そんな時に出会ったこのゴブルという場所は、僕が住んでいた場所とは違っていて 魔物に支配されているというので、僕が助けてあげようと思っているのである。

そして、そんな時に、この建物を見つけて。ゴブルに捕らわれて監禁されている人間が居て。この部屋の中で 魔物と交わって快楽を得ている光景を目撃した僕は。ゴブリン達の行為に驚いてしまう。何故なら彼等がしている行為は魔物にとっては当然のことだとしても。人間側からすれば。屈辱的な行いだと思うのだ。

それに僕はこの世界の価値観を理解していないのかもしれない。だからこそ彼等の行為を見過ごせないと感じてしまう。そもそもの話として、人間である彼女が 魔物である彼と行為をすること自体が間違っていると感じるのである。この世界に、魔物と人が交わる事があるとは聞いていた。

僕が住んでいる世界でもそういった事は確かに存在するのは知っている。

それでも やはり僕は違和感を感じてしまうのだ。そんな事を思っていた僕に対してゴブちんが話しかけてくる。

ゴブちんがいうには 魔物と人間との性行為というのもあるそうで。この世界においてはそれが当たり前だと言われるのだけど。

それでも僕が生まれ育った国や地域じゃ考えられない話だし。何よりも、そういう事は、愛し合う二人同士がする事であって。欲望を満たす為だけにするものじゃないはずなのだ。僕はそう思う。だからこんな事は良くないと思う。僕はゴブちん達に言うと、何故か嬉しそうにしているのだ。それから彼は僕に言い募った。

ゴブっちのお願いで。私達を助けてくれたのですね。そんなゴブちんの言葉を聞いて僕は少しだけ考えを纏める時間が必要になった。そうして、僕なりの考えを伝える事にする。まず最初に 僕達がここに居る間に。この建物での出来事について、他種族への情報の提供は一切行わないようにする事が約束して欲しいと言っておいた。僕は別に秘密を共有されたところで、どうでもいいと思っていたのだけど。ゴブちん達は絶対に口外しないと誓ってくれたのだった。次に僕は ゴブちんが、この建物にやって来た理由について質問をする。するとゴブリンは僕に向かって説明を始めたのだけど 僕はそれを聞くと驚きのあまり言葉を失ったのである。ゴブリンの説明によれば ゴブルという場所の領主であるゴブリン伯爵は女好きで。毎日の様に街の若い女を屋敷に連れてきては。夜伽の相手をさせているのだという。だから定期的に街の女性に、お相手を差し出せと指示をしているらしい。そんな話が信じられずに 僕が、本当にそう言う事になっているのかを確認すると そうですと返事が返ってくる。僕は更に詳しい話を聞き出そうとすると、そこで僕を部屋に招き入れてから沈黙を保っていたゴブリンが僕に声をかけてきたのだった。

僕はゴブちんに話を止めるように言って そのゴブリンに話しを聞くことにする。すると、彼女はこう答えた。

私が、ここに来るまでに。貴方様は、私の話を信じると言いながら、本当は疑っているような気がした。私はそのことが気に入らない。だから、ここで証明する。ゴブりんがそう話すと、彼女はおもむろに着ている衣服を脱ぎ始めて 僕の前で裸になるのである。ゴブりんと名乗った女性は僕の方をジッと見つめてきて 僕はその行動に驚いた。まさかこの場で肌を晒すなんて思ってもいなかったからである。そして僕はゴブちんの方を見るとゴブちんは 僕を見て何かを言いたそうにしていた。だけど僕は それを遮るように ゴブちんは この場の状況を作り出した責任をとるつもりで。こうして自分の身体を僕に見せようとしているのだと悟ると、僕にはこの行為を止めさせられないと判断して受け入れる事にしたのであった。

そんな僕と、ゴブちんのやり取りを見守っている人達は 何も言わない。

だけどそんな中で、一人 部屋の隅っこに移動して 顔を赤らめてモゾモゾとしている女性がいた。それはゴブリんという種類の女性であった。僕は どうして、そんなにも、恥ずかしそうにしているのか気になって、彼女に対して、どういうことなのか尋ねると、実はゴブリンという種族は人間と比べると性に関しての感覚が鈍く、羞恥心と言う物が希薄な種族なのだという事を教えてくれる。僕はそんな話を聞いてから改めてゴブリンの女性の体を観察すると、なるほど、その言葉に嘘はないのだろうと理解することが出来た。

なぜなら、先程からチラリチラりとこちらを見ていた視線は、僕の股間の方に釘付けだったのだ。

しかし僕はゴブちんが、ここまでやっても尚 僕を信用できないということになれば この場は解散しても仕方がないかなと考えると。僕の方を見て、ゴブちんが口を開く。ゴブちんの表情からは、もう既に、さっきまであった疑いの色は消え失せていて。僕に対する敬意のようなものを感じるようになっていた。なので僕はゴブちんが、何を言うのかわかっているので ゴブちんに向かって言ったのであった。

わかったよ。君の覚悟。その想いを受け取ることにしよう。でも僕にはこの世界を救うつもりなんて無いんだよね。そんなことを言った。そして僕は彼女に提案をする事にする。

もし君が僕を信じてくれるなら 僕も君のことを信用しようと思う。僕には 今から この場所を治めるゴブちん伯爵に会わせて欲しい。その上で、僕からの要求を伝えようと思っているのである。だから僕の言葉を聞いて ゴブりんと、呼ばれた彼女が、僕に向かって聞いてくる。貴方が この街の領主と話をするつもりならば私は構わないけど。もし 貴方が領主を殺せばどうするつもりですか?と。そんなゴブちんに僕は正直に答える。僕は このゴブルという土地を貰うことにしたんだよ。それで僕には、この世界の文化を学ぶ必要があってね。そこでお願いがあるのは。僕の身の回りの事を任せられる人材が欲しい。僕はこれから王都に行って。そこで国王に会うことになっている。

その前に街の様子をこの目で見たかったんだけど。まさか ゴブルに来て早々に。ゴブリンに殺されかける羽目になると思わなかったからね。

ゴブリンは、そう言った僕を見ながら考える。

確かに。このまま放置すれば、いずれ人間に殺されるだろう。それに 人間の街で生活しているゴブリン達もいるわけで、もしも そのゴブリン達が捕まったら、酷い目に遭わされるのは確実であろうと思われた。そう思ったゴブちんが、僕の要望を受け入れてくれれば、他の皆の待遇も良くしてくれないかと交渉してくるので。その申し出を僕は受けることにする。そしてその事を、ゴブちんに伝えると、ゴブちんは皆に命令を出す。皆の者、人間の女性達は開放してやる。ただし。ゴブりんでは無い人間だけは拘束したままにしておいて 彼女達の世話をするように伝えるのである。そんなゴブちんに対して 一人の男性が 声を上げた。その人は、僕がゴブちんに案内されてこの部屋に入るまで僕とゴブちんのやり取りを聞いていて。僕の話を全て信じると言いながら。自分も協力させて欲しいと口にしたのである。

ゴブちんが 彼に話しかける。お前も私に協力してもらえるかと、そんなゴブちんに対して 彼が言う。俺の気持ちを察しているならわかっていると思うのだが。この世界では女の方が男より上に立つことは許されないのだ。

だから 貴殿が何を考えているとしても、それが 受け入れられる事は無いのであると、そう話す。そんな男性の話を聞いて 僕は、この男性は、この世界の価値観を理解していないのではないかと思い 質問をする事にした。その質問とは、貴方は 人間として ゴブリンと交わろうと考えているのかどうかを尋ねたのである。そう聞かれた男性は自分の価値観に、そぐわない僕の質問に対して戸惑いを隠せずにいたが、僕に向かって口を開いたのだった。自分はこのゴブルという土地の出身ではなくて、ゴブリンという種に縁のある一族であると話してくれた。そしてゴブちんがこの世界に来た時と同じように。彼もまた、自分の意思とは無関係に ここに連れてこられたのだと話してくれた。そんな話をしながら。彼は少し寂しそうな顔をして、こう言う。自分が連れて来た女達がゴブリンの慰みものにされるくらいなら 自分で死んだ方がマシなのだと、そんな話を聞かされてしまうと 僕は何も言うことが出来なくなってしまい、結局は、そんな彼に何も言うことが出来ないまま、その話し合いは終わってしまう。

するとゴブちんが自分の横で、僕を見上げているので どうしたのかと思い 彼女の頭を優しく撫でながら どうしたのと話しかけると 僕にだけ聞こえる小さな声で話しかけてくる。ゴブりんは 私に名前をつけて下さいと。そんな言葉を僕に言ってくるので 僕は彼女に何という名前をつければいいか考えた。そうして、その答えを導き出すと僕は、彼女に向かって、その名を告げる。その名前を聞いたゴブちんは嬉しそうにしている。その笑顔を見ると僕自身も嬉しい気持ちになるのだった。僕はゴブちんを抱っこして 彼女を抱きしめてから その頬にキスをしてあげたのである。それから僕はこの建物の探索をする事にする。そして見つけたのはゴブちんと、ゴブリンの人達である。それから他にもゴブリンの女性達が数人見つかった。僕は とりあえず、ここに居る者達に服を渡そうとしたのだけど。僕自身が、ここに来た時に着ていた服を身に着けていたので。それをゴブちんの人達に手渡しする。そうすると、僕を見ていたゴブちんが僕に近づいて来て 僕の手を取ると ありがとうございますと言って頭を下げてきた。僕としては、こんな場所で服を着てもらうだけでも良いのに。お礼を言われてしまったら 困ってしまう。なので僕は この場で何かして欲しいことがあれば遠慮なく言ってくれるように 僕なりの考えを伝えたのだけど 特にないと言うので。この場で、やるべき事が終わった僕達は、お互いに顔を合わせるのである。

そこで僕に近付いて来たゴブちんは 何かを決意したような顔をしていて 僕はそんなゴブちんに対して 何か言いたいことがあるのかなと思って聞くことにする。

ゴブちんは僕に向かって話しを始める。

まず初めに。ゴブりんという女性のことについて 謝罪と感謝の言葉を受け取ってもらいたいというのである。僕はそれを受けることにしたのであった。次に彼女は、僕と 一緒に居た女性達に 申し訳ないと伝えてから 謝っていたのである。僕は 別に気にしていないから大丈夫だよと伝えると。その言葉に感謝していたようであった。その後で 今度は僕に向かって。

この建物の中で 僕達のために働かせてもらいたいと、そういう申し出をしてきたのであった。そんなことを言われるとは思っていなかった僕は驚いたけれど すぐに冷静になって、ゴブちんから提案された話を詳しく聞くことにして どんなことを任せることができるのか、確認することにした。そして その内容を聞き終わった後で、僕は彼女に、ここで働いてもらうことにしようと思ったのである。

そこで、そんな話を ゴブリンの人たちと話をしていたら そこに アリサさんがやって来たのである。

僕は、ゴブちんと話をしているうちに、アリサさんは、ゴブりんと言うゴブリンに用事があるようだと感じ取っていた。なので、僕は その場から離れる事にしたのである。そうすると 案の定 アリサはゴブりんに 話を始めたようで、その光景を見てから、改めて僕は この場所にある施設を調べ始めたのだった。暫く調べ回っていると。ふいに扉の向こう側に人の気配を感じた僕は、誰かが隠れていることに気がついて 警戒しながらも扉を開くことにしたのだ。しかし 僕の予想とは違い。そこには、一人の女の子が立っていまして、その人は僕を見て驚くと同時に恐怖を感じていて震えていました。その人の姿を見た僕も驚いていたのだけれども それは、どうして彼女が僕の知っている相手であったからだと言えるだろう。その少女の名前はリーシアと言いまして。勇者である僕の同級生の女の子なのです。

そこで僕はリーシアが、なぜ ここに一人で居るのかという疑問が浮かんできた。僕がそう思う理由を説明するにはこの部屋の状況を考えて欲しいと思うのである。今現在。この場所にはゴブリンが沢山集まっているはずで、だから もしかすると僕と別れて行動することになった他の仲間は、もう既にこの場所に集まろうとしているかもしれない。だから早く、他の仲間の所に合流できるようにしなければと考えた僕なのだけど。そんな僕がリーシアに視線を向けて、彼女の身を心配していたその時に、その人が突然姿を現したのだった。その女性はゴブちんで、その姿を見て僕が驚いていることなど構うことなく、僕の腕を掴み 強引に引きずっていくので 僕も抵抗しようと思っていたのだけど。僕の力よりもゴブちんの力の方が上回っていて 簡単に振り払うことができない状態のまま僕は、部屋の中に連れ込まれることになる。そして僕は部屋に入った直後に拘束されたので これは 不味いと感じると共に焦った。

そこでゴブちんが、僕に対して話しかけてくる。ゴブルの領主は、貴方様の敵ではないという事を説明してくれてから この部屋から逃げるための道を教えてくれた。僕は その情報に素直に従うことにした。その方法というのが 僕を連れて来てくれたゴブちんだけが知る秘密の抜け穴であり。そこを通って脱出する事ができるらしいのである。僕はそんな情報をゴブちんから教えられると、僕は その脱出路を使う事をお願いする事にしたのだった。

そうして 僕がこのゴブルに来てから一日目で ゴブルの街から抜け出した僕は。他のみんながどうなったのかが気になりながらも 急いで王都へと向かう事になる。それから数日を掛けて 王都に着いた頃には 僕は王城までやって来てしまっており。国王が住んでいるという場所にまで入り込んでいた。僕は国王に会いたくても、その人物の名前を知らないため、取り敢えず この国のトップである人物を探して歩き回る。

しかし城内にそんな人物が居なかった僕は 仕方なく城の外に出ようと歩いていくと、丁度 門の前に辿り着いた時に。門兵らしき人物に声をかけられる。そんな彼に事情を説明してみると、彼は僕の事を不審者だと認識していながらも、その対応を変えてくれて 僕の身元を確認してくれました。そしてその対応のおかげで。僕は無事、この国の王女と面会をさせてもらえる事に成功したのでした。そんな風にして。無事に王様に会うことが出来た僕は、自分の身の上を話す。すると。王は僕の話を聞くだけでは無く 自分の判断で、ある場所に行く許可を出してくれたので 僕はその許可をもらった上で、その目的地に辿り着くことができたのだ。そこは大きな図書館で、この世界で本を読むためには、お金が必要だと言われてしまった。僕は、そうして手持ちの金額が少ないので 借りて帰ることにしたのである。

そうして 図書館から出た僕が その建物から立ち去ろうとした時 背後から 僕を呼び止める声がしたので振り返ってみると。この国で有名な女性騎士である。

アリサが、僕の目の前に現れたのである。そんなアリサに声を掛けられて。僕の方に駆け寄ってきたアリサは、何故か嬉しそうな顔をしていた。そんなアリサに、僕は挨拶をして 彼女との会話を始める。その最中で僕は。彼女達がどうなっているのかを聞いたのだが。やはり、彼女達の身に何かが起きたわけではないようだと理解することができたのである。しかし。僕とアリサとのやり取りを聞いていて その場に居合わせた男性から話しかけられてしまう。

どうやら彼は、この王国の第一王子で。この国に僕がやって来た時には この国で一番強い人物とされていて、とても有名人だったようなのである。そんな彼が アリサのことを気に入った様子だったので。アリサを彼に任せようと考えていた僕は、二人の間に割って入ると。二人の邪魔をしてはいけないと言ってから、その場を離れようとするが、その際にアリサから手を掴まれてしまう僕であった。そうして彼女に手を引っ張られたことで体勢が崩れた僕はそのまま倒れ込むように床へと膝を突いてしまう。その出来事で、この部屋に居る全員の視線が集まることになってしまう。そんな状態で。この場は一旦お開きになった後で 僕は 王宮の一室を借りて休ませてもらうことになったのだ。僕は、そこで寝かせてもらっていたのだけど ふと目を覚ますと。そこに現れたアリサが僕のことを心配してくれた。その後に僕の身体を気遣ってくれている彼女の様子を見ていて、何となくではあったけれど。僕は もしかしたら彼女は自分のせいで。ここに呼び出されたのではないかと思い そのことを聞こうと試みたんだけど。彼女からは。何も聞くことは出来ず ただ。僕に向かって。何か困っていることはないかとか 欲しいものはないかなどと聞いてきているだけだった。僕は それを受けて。何か困ったことがあれば 相談に乗るから言ってねと言った後に 彼女達の為に出来る事を探したいと言う事を伝えてから 僕はその場を後にすることにしたのである。僕はアリサが この部屋に戻ってくる事を想定して、部屋を出て行った。その後で、アリサと一緒に居たのは誰かと、その事で頭を悩ませるのだった。そして僕は、その事に考えながら廊下を歩いていると そこで僕を呼び止めようとしている存在がいる事に気が付いて。その人の方に向かって僕は足を運ぶ。その人の見た目は僕と同い年くらいに見える女の子で、髪色は金色で 綺麗な緑色の目をしていた。そして僕はその少女を見て。この人は どこかの貴族の人かなと思うと同時に。僕と同じ勇者である可能性が浮上してきた。しかし。彼女の表情から察するに、勇者がここに来るなんて ありえないというような態度を示しているので。彼女が、どうしてここに居て 僕を待ち構えていたのか分からなくなってしまった。そして 僕が彼女を警戒して見ている中で 突然に彼女は、自分がこの国の王女だと伝えて来たのだ。そして僕に向かって、色々と質問を投げかけて来た。それはまるで、僕を探ろうとしているようだった。だから僕は それを受けることにする。そうして暫く話をした後で、僕は彼女の話を受ける事にしたのである。そんなこんなで、僕は アリサから話を受けると。彼女の護衛をする為に アリサの側に付く事になった。

僕は、ゴブちんから話をされた 秘密の部屋を開けて中に入って行くと。そこには階段が下に続くようになっていたのである。そこで、その道を進み始めると、しばらくして。僕の前にある人物が立ちはだかったのだった。その人物は。この国でも有名な冒険者である男だった。その男の年齢は、二十代後半ほどで 筋肉質の体型をしていた。そして、その男性は。この部屋の中にいた人達から、僕がここに入る所を目撃していたことと。僕が先ほどまで、あの場所にいなかったということを説明するのであった。そして僕がこの場所に来る前から この部屋に存在していた人達が僕に話し掛けてくる。その話は僕の予想が間違っていないのであれば、僕の仲間の事を話していたようである。つまり彼らは、僕がゴブリンに拘束された後 この場所に来た可能性があるというわけなのだ。僕は 彼らから、この先に何が待ち受けていても驚かない方がいいよと言われてしまい 覚悟を決めて この場所の奥に進む事に決めた。僕はそう決めて 奥に進んだのだけど。その道中で僕に襲ってくるようなモンスターも居らずに、あっけなくその最深部にまで辿り着いたのである。そしてその場所の扉を潜った先には 僕にとって衝撃の光景が広がっていた。それは、この世界の住人と思われる人間とゴブリンの混血と思われる種族が大勢居て。そんな大勢の人たちの中で 一番最初に目が止まったのが 一人の美しい女性で 僕の視線は、その女性に集中していた。僕は この女性に見惚れてしまっていたのである。すると 僕がその女性の方に意識を持って行かれていたその瞬間に。後ろから、何かしらの攻撃を受けて僕は地面の上に倒れ込んでしまうのだった。

僕はゴブルで受けたゴブちんからの依頼を果たすために。ゴブルにやって来ていました。そのゴブルの領主さんはゴブちんで 僕はゴブルに着いてすぐに、彼の所に訪れると。そこで、僕の身に起こったことを説明すると共に このゴブルに、ある人物を尋ねて欲しいという依頼を出したのだ。僕はその人物を、この国の王女様だと言っていたのだが ゴブちんに信用してもらえなくて。そのことでゴブル領主様と揉めてしまうのである。だけど結局 僕はゴブちんに無理を言って、ゴブちんの頼みを引き受けることになるのだった。そんな風に僕がゴブちんからお願いされたことが終わって、宿屋に戻って来てみると。僕に声を掛けてくれる女性が一人居て 僕はその人に挨拶をしてみたのだけど 彼女は僕がゴブちんから頼んでいた件について聞き出してくる。その時に、僕は自分の身分を明かさずに、誤魔化そうとしてしまったので そのことが相手に知られてしまった。それから、相手の女性に対して僕が困っている事は無いのか?などという質問をぶつけられてしまうのだが 僕はそんなことを気にせずに。その相手からの問いを受け止める。しかし、僕のその対応に その女性は納得できないといった顔を見せていたのだが。僕の返答を聞くなり、急に押し黙ると。この部屋から出て行こうとするのだが その直前で、その人がアリサという名前だということが その行動を見て分かったのである。

そのようにして この国の第一王女であるアリサから依頼を受けることになった僕だったけど アリサが僕を試すように色々な要求をしてきたことに僕は困惑をしてしまい 彼女に従うしかなかった。そんなこんなで 僕は、王都の中でも高級ホテルである王都の宮殿へと足を運んでおり。アリサに言われていた仕事をこなすための準備を始めることにしたのであった。そしてその準備が終わった後で。僕は、自分の部屋へと戻って行く途中で、廊下を歩いていて 偶然にも、アリサと出会う。そしてそのタイミングで この部屋に居る他の人たちが僕を呼び止めたことで、その場に留まる事になる僕なのであった。そうして僕は 僕のことを待っているらしい。アリサ達の元へ移動するのであった。

そうして移動を始めた僕は、その部屋の入口付近まで近づくと。僕を呼び止めてきた存在の正体を知ることができた。そうして、僕はその人と会う前に その人から声をかけられる。そんな感じの会話を交わしていたのだ。しかし、僕は そんな彼女とは、初対面であるはずだった。しかし彼女は僕のことを知っていたようで、僕の顔を一目見ただけで分かるくらいに僕のことを知っている素振りを見せて、僕の事を色々と質問してくるのである。僕はそんな彼女の問いかけに戸惑いながらも答えていったのだが そんな最中に、僕はアリサの側に立っていた男性から突然に攻撃されてしまう。その攻撃を僕は全く防ぐことが出来なかったのだが アリサ達が 僕を守ってくれることになり。アリサが、僕に向かって。この部屋で僕が会った人の特徴を聞いていたので、その人物が誰なのかを察して僕に向かって この部屋に居る全員の目の前に現れた事への驚きを伝える。そうして僕は この部屋に居た人達とアリサと一緒に この場所を立ち去ることにする。そしてアリサから話を聞こうとしていたのだけど。この場に現れた僕を呼び止めようとした人物が、この部屋にいた人達の中にいたみたいで その人物から僕は、いきなり攻撃を受ける羽目になるのであった。

僕は、ゴブちんに言われた通り この城の中にある。とある場所を訪れる。そこは、僕が初めてこの国に訪れてから。初めてこの城を訪れた時にあった謁見の間で、そこに、今回の件の黒幕がいるということで この場にやって来たのだ。僕は、その部屋の中にいた人達の顔を見渡すと 僕はこの城の王女であるアリサが、僕の前に現れた時のことを思い出す。僕は あの時に僕が受けた依頼の事を考えながら 僕がこの場所にやって来て 何があったのかを説明し始めた。

僕の説明を聞いた王様と大臣さんは、お互いの目を合わさない様にしながら話し合いをしているようだ。そんな中で僕が話した内容が嘘では無いという事が 二人の間で証明されると。二人は僕が嘘を言う人間では無いと判断して 僕に謝罪をしてくれるのである。

僕の話が真実だと証明されたあとで、僕はこの城で 一体何が起こっているのかを尋ねてみる。そして僕はこの城に居て、アリサの護衛をしていたはずの存在から、突然に攻撃を仕掛けられたということを彼らに説明する。そこで僕は この城には、僕を恨んでいるような人物はいないのかと聞いてみることにした。すると この城で働いている人達から、そんな人物は居ないと はっきりと断言される。しかし その話を鵜呑みにするのは危険な行為なので、僕は、アリサにその人物を尋ねる。しかし、僕の問いを受けたアリサは首を傾げて考え込むばかりであり 僕の質問に対して返事をすることはなかった。そして僕は、この城の中で、この国でも有名な人物である人に会う。

そうして、僕は 僕が受けた依頼の内容を達成できたので、後は、報酬を受け取り この国から出ようと思ったのだけど ここで 僕は思いもよらないことに巻き込まれるのである。そのことに巻き込まれた僕は 何故かアリサの警護を頼まれてしまうのだった。

僕はアリサを護衛する依頼を受ける代わりに ゴブルで僕が遭遇していた問題を解消することが出来たので アリサの依頼を受けることになった。僕は、この王城内にある訓練所で訓練を受けることになり そこで僕は、自分の腕を上げていたのである。そんな僕の事を見ていた、この国の姫様でもあるアリサが僕に声をかけてくる。そのことで僕はアリサに話しかけられ これから一緒に行動する事になったのだ。

僕はこの城の中を自由に動けないアリサのために、彼女から受けた依頼を達成するために動くことになった。僕はこの王城を抜け出すための道順を教えてもらうために、アリサの知り合いの人に案内してもらうことにした。そして僕は この城の中に存在している食堂まで連れてきてもらえたのだけど。そこには、既に僕のことを待ってくれている女性が一人いたのである。その女性は僕を見ると 僕の事を凝視し 僕の名前を言い当ててきた。そして、その女性の名前は。リリスと言い。リリスは、この国の宰相の一人娘なのだそうだ。そんなリリスが 僕に用があると言うので 彼女に着いていく事に決めた。そして僕は、その場所で、先ほどから僕の名前を呼んでいた人物に出会うことになるのだった。

そして、僕は、リリスと話を進めていく中で 僕のことを疑うことなく信じてくれた彼女の人柄を気に入ってしまい。そのせいで、彼女の父親だという人が、僕のことを許してくれたことに甘えてしまい。その人がこの国にいる間に、リリスがこの国の外に出れる機会を作ろうと思うのであった。しかし、この城の中に、その手掛かりがありそうな人物がいなかったので。どうしようかと悩んでいるところで、この城の使用人である女性と出会い その人の口から、僕がこの城の中に入るときに使った隠し通路が隠されている場所を 知ることに成功する。そこで僕は、そこに行って、そこから、隠し扉を開けて、この国の外へ出ることにした。

僕はアリサと一緒に行動することになったのだが その際に、この国の王女である彼女が狙われていることに僕は気がつき アリサに襲いかかろうとしている敵を 僕一人で対処することに決める。そんな僕は敵の懐に飛び込んで 敵に攻撃を仕掛けると。敵を倒すことには成功するんだけど、その際の戦いで、僕は怪我を負ってしまうのだ。それから、僕の傷を癒すために向かった先には。僕の傷を回復させるために訪れた部屋の中には 僕を襲ってきた相手と同じ種族の女性がいたのだが その相手が、実は、僕の傷の治療をする為に ここに訪れてくれていたのだ。そんな相手に僕がお礼を言って その場を去ろうとすると。相手は僕を引き留めてきて 僕にある提案をしてきてくれる。その提案を受けて僕は その提案を受け入れることにする。その後で僕たちは部屋を移動して その部屋にあった物から、この城から脱出する方法を見つけるのであった。そして脱出する方法が見つかった後に、僕が この部屋の外の状況を探ってみると。そこにいたのは僕のことを狙っている敵だけではないと知ったのだ。そうして、僕のことを助けようとしてくれていた女性も、同じ目的で動いているということに、僕はすぐに気が付き。僕と彼女の目的が一緒だということで。僕は、彼女と行動を共にすることを決めるのであった。

僕はこの城の中でアリサを護っていた存在に襲われてしまったのだけれど その時に、僕に加勢してくれた女性のおかげで 無事にアリサを助けることが出来て。アリサをこの王城の外に送り届ける。その役目を果たした僕が、城の中を歩き回っているうちに 一人の男と出会う事になる。その男は、この城で働いている使用人らしく 彼は、自分が、この城で起きている事件の犯人を捜しているという話を僕に聞かせると。アリサの部屋で休ませてもらっている部屋に戻るのを手伝って欲しいと言ってきたので。僕がそれを引き受ける。そうして 僕と男の二人でアリサの元に戻って行った。そして僕は その道中で、この城のメイドさん達に捕まりそうになるが それを男が防いでくれたおかげで、なんとかアリサの居る部屋に戻ることに成功したのだった。

僕はアリサをこの部屋まで送ってくれていた男性と別れることになると。僕と僕の護衛の為に来てくれた男性がこの部屋に残っていると 僕たちの前に姿を現したのは、この国の姫君でもあり。僕の依頼の対象となっている人物でもある。アリサその人だった。そんなアリサが僕の前に現れたことに驚いたのだけど。彼女は、アリサに危害を加えるつもりは無く この国に起きた事件の調査をしていたのだと言う。そんなアリサは僕にお願い事をしてくる。僕がその依頼を受けるかどうかを迷った結果 僕は アリサから依頼の内容を聞くことにした。そんな僕は、この国で起こっているという事件について詳しく知ることができたのだ。アリサから聞いた話だと その事件が起きているのは、アリサ達が住んでいた王城の中のようだ。そんなアリサの願いを断るわけにもいかないので。僕がその依頼を受けることにした直後 僕は誰かから攻撃を受けた。そして僕はその攻撃からアリサを守ることができたのだが その時に負ってしまった怪我が原因で、アリサの側にいた男性は亡くなってしまった。そのことがアリサにはとても辛い出来事だったようで、アリサの目からは涙が流れ出してしまう。

アリサからの依頼を受けた僕は、その依頼を受けたことで この王城内に存在するアリサを狙う存在と戦うことになった。僕と一緒に戦うことになったのは ゴブちんの知り合いでもある人物であり 僕の事を、ゴブちんの相棒だと勝手に思い込んでいる人物でもあったのだ。

そんな彼と行動を共にしている時に 僕はアリサの命を狙おうとしている者に襲われるが 僕はアリサを守りながら戦い。その最中で、アリサを狙った人物と この城で働いてくれている人達との間に 何かあったのかを聞き出そうとしていた。そんな中で、僕のことを疑うように尋ねてきたアリサのことを僕は信じようと思い 彼女の言葉を信じた僕に対して、アリサは感謝をしてくれた。アリサに僕に対する依頼を引き受けてくれたことに。僕と、アリサとの会話が終わった後で、僕たち二人のところに、アリサを殺そうとした人物が戻ってくると 僕たちを襲撃しようとしていたその人物は 何者かによって倒されてしまう。

僕は、この王城の中にあるとある場所で、アリサから受けた依頼を達成するために行動することにしたのだけれども その最中にこの国の王城に巣食っていた悪が アリサを狙っているのを感じ取った僕は、彼女を守るために、この城の人達と共に戦うことを決意する。そんな僕の前に立ち塞がる存在がいたのだけど 僕のことを襲った相手が僕の目の前から消えてしまう。そんなことがあったせいなのかは分からないけど 僕のことを攻撃してきていた存在を 僕の護衛として来てくれている人が倒してしまい。結果的に 僕の身の安全を確保出来てしまう。それからしばらくの間 僕のことを守ってくれていた人物と話し合っていた時の中で。彼の口から、彼が仕えていた主君を殺されてしまった事を知ると その復讐を果たす為にもと、彼は その相手の元へと向かう決意をする。そして 彼は僕たちに自分のことを止めるような言葉を言ってくると その人物を追いかけるために 城の外へと向かって行ってしまう。

僕は、アリサと行動を一緒にする事で アリサが狙われている理由を探ろうとした。そしてアリサがこの王城の中にいる人たちから狙われることになった原因を作り出したと思われる相手に辿り着く。しかし僕のことを敵視している相手が 急に現れた謎の人物により アリサの命を狙っていたことが発覚して、その人物は姿を消してしまう。その謎の存在が残した言葉にアリサは反応し。僕にそのことを伝えるため アリサの自室まで向かうことにして、僕が アリサを部屋まで送ることになる。そこで僕は、アリサの部屋の前で リリスさんに出会うのだけど そこで、僕は 僕の命を狙い 僕が撃退することに失敗した敵と遭遇してしまう。

そして僕とリリスさんの二人が部屋に入った瞬間 部屋の中が炎に包まれて燃え始めてしまい。そのせいで部屋にいたアリサが倒れて意識を失ってしまう。そんな僕が 僕自身を襲うことになる敵の攻撃を受けないようにするために 僕は、自分自身を魔法で強化すると 僕はその状態で敵に突っ込み その相手を撃退することに成功する。僕がそんな状況になったときに リリスは、僕の援護のために 魔法の杖を取り出したのだ。

僕はこの王城の中で起きている事件を調査している中で この城の中にいるアリサに、アリサが殺されるのを黙って見ていることが出来ずに 僕は、その事件の犯人である 黒幕的な存在と戦い 僕がその相手を追い詰めたと思ったときに、黒幕的な相手は逃げられてしまう。そうして僕は リリスと一緒にアリサの側に向かい、リリスに手伝ってもらいながら、僕の能力で この部屋に広がっている火を燃やし尽くすことに成功した。そして、その消火に成功した後に 僕とリリスが、リリスの父親であり、この国では宰相の立場に立っている人物である。オルクス伯爵と話をしている間に、アリサは意識を取り戻して、自分が狙われていたことを僕とリリスの二人に話し始めて その話の中で、この国の城で、メイドさん達が次々といなくなっているという噂を聞いた。

僕たちがこの王城の探索を続けている間に、アリサが、この城の中で 僕のことを襲いにきていた奴に殺されたという情報を僕は聞き出す。

そのアリサが死んだという話を聞いた後で 僕の目の前にいる、この城のメイド服を着ていて、アリサを襲おうとしていた奴のことについて、僕のことを助けてくれていた男性が説明をしてくれた。その説明を聞くと 僕の目の前にいる女性は、僕が戦ってきた敵とは違ったようだ。そして僕は、このメイド服の女性が自分の名前を語らなかったことや 僕のことを見下すような視線を向けてきた事に、少しだけ腹を立てたのだが 僕はそんな気持ちを抑えて 僕はこの城のメイドさん達の様子を見に行く為に 僕はアリサの部屋を出ることにする。そしてその前に、僕は、アリサや、この部屋を守っていた女性と別れの挨拶をしたのだ。そうして僕と、アリサは別れると。アリサは僕のことが心配だったみたいで、アリサは、自分が襲われていた場所に案内してくれることになり その場所に僕と二人で移動する。そんな僕は、そこで、自分がこの城で働いている女性に攻撃されて 気絶させられてしまっていた事実を聞かされることになって 僕は、そのことを聞かされたときに 自分のことを襲おうとした相手が誰だったのかを知る。それは僕と同じ世界から来た人間の女の子のようで。しかも彼女は この世界で生きている女性に危害を加えようとしていたのだと知って。そのことを知った僕も彼女のことをどうにかしようと考えていたのだ。そんな僕は 僕にアリサを殺させようとしたのが彼女であることを、この国の王女であるアリサに告げる訳にはいかずに。僕は 彼女に嘘をつく。僕は、彼女がこの城の中で起きた事件を解決するために尽力しているというアリサに、この城のメイドさんが、突然いなくなったという事件の原因について、何かしら心当たりがないかという情報を伝える。そして、僕とアリサと別れた。

アリサと一緒に行動していた際に アリサが、僕の事を信頼してくれていることを理解したので。そんなアリサの期待に応える為にも、僕にアリサの護衛の依頼を与えてくれたアリサのことを僕は信じる。

そんな僕は 僕のことを見張るように命令されていた存在に気がつく。その僕の事を護衛していた男性と一緒に行動をしている途中で 僕がアリサの依頼を受けたことに対しての、僕の行動を疑っている存在のことを知り。僕は その男性と話し合いを始める。そんな僕たちのところに、この城の使用人だという女性が姿を現し。彼女は僕のことを攻撃してくる。そんな僕を、男性の方は助けてくれたのだけど。そんな男性に向かって使用人の人は攻撃を仕掛けると。男性は僕のことを抱え込んで その場から逃げようと試みる。しかし男性は僕を助ける為に この城で働く人達から、かなり酷い扱いを受けてしまっていて、体も弱っていたこともあり。そのせいか、逃げる途中において 僕はその男に助けられて。そのまま男は力尽きるような形で倒れてしまい 僕は彼を見捨てるような形で先に逃げ出すしかなかった。そして、なんとか、アリサを守ることに成功し 僕は 僕の事を疑い、そして、僕を暗殺しようとまでしてきたアリサのことを 守るために行動することにする。

そんなアリサと行動を共にしている時で 僕がこの国の王様に頼まれていた仕事をこなしていると この城の中に存在するアリサのことを害そうとする輩の存在を発見することになる。そんな僕の前に現れる アリサの目の前に現れていた刺客と戦おうとするのだが そんな僕のことを狙っている存在は、リリスが この国に存在する王城の中の事件を調べようとしている中で、僕のことを邪魔だと認識しているらしく。そんなリリスが僕を殺そうとした時に、リリスと戦わなくてはならなかったのだ。

僕とアリサのことを守ってくれた男性が死んでしまう。そのことで、悲しみに包まれながらも僕はこの場から動こうとしていて。僕を襲ってきた刺客をどうにかしようとしていた。

そんな中で、僕の目の前に現れた謎の人物は、僕を殺そうとしていて 僕はその謎の人物の攻撃を防ぐのだけど 僕たち二人に襲いかかろうとしている謎の人物と戦おうとしている僕の目の前で リリスが殺されてしまう。しかしそんな時だった。リリスのことを殺したはずの刺客からの声が聞こえてくる。そんな僕の前に立つ謎の存在が口にした名前を聞いて。僕は驚愕してしまう。そんな僕に向けて謎の存在は僕を殺しにかかるのだけど。その攻撃を防いだのはリリスの魔道具だったのである。そのリリスの魔道具の力を使って 僕のことを救ってくれた人物こそ、僕のことを何度も助けてくれていた人物であった。

僕に対しての攻撃を、その人物が行ったせいなのか分からないけど 僕は、謎の人物と戦える状態じゃなくなってしまい。僕が戦えない状況になっているのを見て取ったその人物の狙いが僕ではなく アリサに向けられてしまい。僕がアリサのところへと駆け寄ろうとしたら 僕のことを狙っている相手が僕のことを狙わないはずもなく 僕たちはその敵と一対二の戦いをすることに。

僕とアリサのことを守りながら戦うその人が窮地に立たされそうになった時で 僕はアリサを逃がすことに成功。そんな時で 僕のことを狙っている人物が、僕のことを人質として捕まえようとしてきてしまい。僕は僕を救いに来てくれている人物を庇いながら戦っていると。そんな僕のことを狙っていた敵と僕のことをアリサの目の前から遠ざけようとした人物が、アリサを誘拐し 僕の前から姿を消す。

アリサの誘拐に気づいた僕は、この王城の中に存在していた、とある建物で 僕はリリスと出会うことになる。そこで 僕はリリスの口から、リリスの母親が何者かによって殺されており。しかも、リリスの母親を殺した犯人をリリスは知っているのだけど そのことを話さずにいることを聞かされる。そんなリリスに僕はこの城の事件のことを教えるために、この王城の中で起きている事件の現場を見回ることにしたのだ。

僕はこの王城の中を調査する中で出会ったリリスのお父さんの補佐をしていたという人物と一緒に 僕は、アリサの部屋に戻ることになるのだけど。僕が、リリスとアリサの二人の部屋に辿り着いたとき。そこには アリサがリリスを襲おうとしていたという、あの謎の女性が現れる。そしてそんな謎の女性は、僕をこの城から追い出そうとする。

そしてその女性は、リリスがアリサの部屋にいたのにも関わらず。アリサのことを始末してしまおうと考えたらしい。僕はリリスが危ないと思い 僕は、リリスの元に駆けつけるのだが。その時には、リリスは既に亡くなってしまった後で。リリスの父親がこの国の王様だということを知った僕は アリサを守るためにリリスの父親に戦いを挑み そんなリリスの父親に勝つことができた僕は、リリスの父親である。この国の王であるリリスの父親の遺言を僕に伝えてくれたリリスの父親を、リリスの父親に託された、僕がリリスの父親を弔うことにしたのだ。そうしてリリスを弔ったあとで、僕は、リリスの父親と別れることになったのだけど。僕はリリスの父親の頼みごとを引き受けたのである。そして リリスの父親と別れた僕は、僕のことを探してくれていたアリサと共に、僕のことをリリスの父親の元まで案内をしてくれたリリスと再会した。そして、アリサとリリスは二人で話をしているのであった。

そんな僕は、リリスと、リリスと一緒に僕のことを助けてくれることを約束してくれた女性と一緒にこの城で起きている事件を解決することにした。そうしてアリサのメイドさん達が行方不明になっていた事件も解決することができ。僕は自分の部屋で眠りにつくのだった。

僕たちが、この王城で起こった事件の捜査をすることになった。

そしてアリサのメイドさん達の行方を捜しながら、僕たちが王城内を探索していく。そして、僕が、この城の中庭にある花壇を散策をしているときに、僕はアリサに頼まれた用事を終えて、僕の元にやってきた。

僕と一緒に、アリサを捜索してくれるメイドさんの女の子のことが、実はこの城の使用人の人達の中でも偉い人だったようで。そんな彼女は、この王城で働く人たちのまとめ役をやるような仕事をしている人で、僕の事を手伝ってくれた彼女は、僕が、リリスのことや、他の使用人の方が姿を消したということについて調査をしようとしているということを知っていたらしく 僕のことに協力してくれていたのだけど。その女性に僕は騙されていたみたいで。そんな女性と行動を共にする中で その女性から、僕の正体や目的を探る為に 女性と行動を共にすることになってしまい その女性が僕に対して行おうとしていたことを知ることになる。しかし その女性が僕のことを襲おうとした瞬間で僕の前にリリスが現れ 僕と女性の二人がピンチになる中で、リリスが、自分の父親を殺されたという恨みを僕にぶつけようとしていて。それを僕が止めようとした。でも僕は止められずに、逆にリリスに返り討ちにされてしまう。そんな僕は、意識を失った状態で、どこかに連れていかされ 目覚めたときには既に遅かった。その僕のことを拘束していたのは この城の王の娘である。この国の第一王女でもあるアリサのお母さんであるリリリアナ姫。

そんな僕たちのことを見守っている最中に 僕たちの事を探っていた。アリサのことを狙う存在がアリサの前に現れ。アリサを捕らえようとしていた。そんなアリサのことを助けたのが 僕が気絶させられていた間に姿を消していた。僕にこの城での出来事を説明してくれた。そのリリスの本当の姿であり。

僕と同じようにこの世界に来た異世界人であるリリスの本当の正体だった。そんな彼女が、僕を騙してリリスの母親の殺害に関与していたことが分かり。そのリリスに僕を殺そうとする命令を出した人物に、僕は、アリサの事を狙われていることをリリスに伝える。そんなリリスの本当の名前を知り。そんな彼女のことを守ろうとして 彼女と共闘するのだけど 僕たちを、この城で、様々な問題を引き起こし。この国での問題を解決していたリリスに、嫉妬していた人物のせいもあってか 僕のことも邪魔だと思っていたのか。その人物が僕に攻撃を仕掛けてきて。そんな人物と戦うことになった僕は。その人と戦っている途中で気を失ってしまう。そんな中で僕は 僕が気を失う直前に見た光景。僕が気を失いかけている間にリリスの身に何かが起こったということ。

そんなリリスのことを気にかけていたのだけど。そんな僕がリリスのことを思い浮かべていたその時。

僕のことを狙ってきた存在の攻撃を、アリサが防いでくれたことで。僕は、どうにか一命を取り留めることが出来たのだ。そんな僕の目の前でアリサとリリスの二人の間に戦いが始まっていた。そして僕は そのアリサのことをリリスに任せて 僕は僕自身の戦いに集中することにしたのだけど。僕たちの周りで何が起こっているかも知らないまま 僕は、僕のことを殺そうしてきた。この城にいるリリスのことを殺そうとしていた相手と僕は戦うことになり。

そんな相手に苦戦する僕のところにアリサが現れた。そんなアリサの登場によって 僕は窮地を脱出することに成功し。リリスと二人っきりにさせてくれている間を利用して、僕がこの城の中で見つけた魔石使いの男性。僕と同じ境遇を持つ男性。その魔道師の男性が残した資料。そこに残されていたリリスの母親の名前を調べてみると 僕はアリサにリリスのことを託したのだ。僕はその人物を探すために。

そんな僕の目の前に現れた人物に僕は驚かされることになる。なんとその人物は僕の母親でもあったのだ。そんな僕の母親である人物は 自分が何故この世界に来てしまったのかを語ってくれるのだけど。そんな母親のことを見た僕は、自分だけが助かりたいと思っている母親のことに対して、どうしても許すことが出来なくて。そして僕はそんな母親のことを説得するために、僕がリリスから受け継いだ。あの謎の男に奪われていた僕の武器を返してもらうことに成功したのである。僕は母親を説得した後で アリサと別れたあとで再び僕はアリサのことを探して回るのだった。すると僕のことを待っていたかのようにアリサのことを発見することができ。そこで僕たちはお互いに自分の気持ちを打ち明けあうことに成功する。

僕はその時に アリサが自分のお父さんを殺した犯人だと分かったうえで。

僕はアリサのことを守ることを決意した。しかしそれはあくまでも僕の中でだけ。そのことを口に出すことはなかった。それなのにその日の夜中に 僕の部屋の扉の前で。アリサのお母さんの気配を感じ取り 僕は目を覚ます。そうしてその僕を襲おうとしているアリサのお姉さんを止めるために 僕はそのお姉さんと戦っているうちに 僕が持っている杖。僕の武器に隠された力を開放することができたのである。

僕がリリスに渡された僕の杖。それが 僕が持つと その効果を発動することができるようになる。そう。僕は僕の武器であるこのリリスにもらった。この杖に宿る力を引き出すことに成功させたのである。そしてそんな僕の目の前には 僕のことを襲ったお母さまがいるのであった。そんな僕の目の前に現れたアリサの敵と化した。その敵の存在に僕が対峙し 僕の目の前に現れる。そんな敵のことを倒そうとするのだけど 敵であるその人は、僕が戦ってきたどの相手の中でも、かなり強い存在で 苦戦を強いられることになってしまうのであった。そんな敵との闘いの最中 敵と互角に渡り合っている最中で 僕は、敵が使っている剣の力について疑問を持ち始めるのだけど。敵の隙を見つけることができた僕は 僕のことを襲い。僕のことを追い詰めようとしている敵との戦いで僕が手に入れた。その不思議な力で、敵の持つ。この世界に来る前までは僕のことを悩ませていたこの世界に対する悩みから僕を救おうとしてくれて、僕が手にしているこのリリスが渡してくれたこの武器に秘められている力を解放してくれるのだった。そのおかげで僕は 僕を救いに来てくれた。リリスと一緒に僕を追い詰める。その敵を追い詰めるのに成功した。しかし僕が、そんな敵を撃退することに成功したと思った矢先。僕は僕のことを助けてくれたリリスに裏切られてしまうのだった。そんな僕の前に現れた存在こそが この城の中で行方不明になっていた。僕の大切な人でもある。この城のメイドの女性たちや、僕のことを助けてくれていたアリサのお母さんの仇だったのだ。そしてそんなリリスの仇を取ることができた僕とリリス。そのリリスは実は、僕たちの前にいたアリサの母親の生まれ変わりでもあり。そのリリスをアリサの味方につけることが出来た僕とリリスは、アリサが僕にしてくれた。僕のことをこの城での出来事から助け出すことに協力してくれるとアリサに言ってもらうことに成功する。そうして僕たちは無事にアリサと合流して、アリサのお母さんを助けるために この城で起こった出来事について調査を始めようとするのだった。

僕はこの城で起こった事件の真実を知った時 この城の王の娘でもある第一王女のアリサを僕は守ることを決めたのである。

しかし僕はアリサが僕の事を信用できるかどうか。そこのところが心配になり。僕が信頼を寄せる存在であるリリスが僕の前に現れるのだけど アリサとリリス。その二人の間で争いが始まってしまう。

僕は、僕に出来る精一杯の抵抗を行い 僕のことを殺そうとしていた。

その僕のことを庇ってくれたリリスの敵を倒すことに成功したのだけど。

そんな僕の目の前に、この国で起きている異変の正体を僕に知らせるために。この城の中で暗躍していたことでアリサの母親。リリスの母親に姿を変えていた。リリスのお母さんの正体。この王城に居る人達がリリスの敵であることを突き止めるために必要な情報を僕に手渡す。そんな存在が現れたのだと思ってしまったんだけど。現れたその人の姿を見ると。そこには僕の事をこの城に連れてきてくれたメイドさんの姿が有ったのだ。

そして僕はそんなメイドの人に話を聞くと。この王城内では 今、様々な問題が起こり始めていた。そんな中でメイドの一人がある日を境に 急に姿を消すことになるのだが この国の王の娘である日頃からメイド達に指示を出すような立場にいた人物が、メイドを何人か呼びつけて。自分の部屋に連れ込むようになったらしいのだけど。しかしある時からその王様の娘である人物が、頻繁にメイドを呼び出して自分の部屋で一緒に時間を過ごすようになってしまったらしく。そんな噂が流れ始めてから、何故か、その国の王が不在なことが多くなってきたらしい。しかしそれでも、その国の中では特に何か大きな問題が発生するということはなかったのだけど。

その国の女王が、リリスの本当の父親だということを知ったアリサは そのリリスのお父さんが アリサの本当のお母さんに殺されてしまった過去を知り。

そしてリリスもリリスで、自分の本当の父親が殺されたという事実を知ってしまう。そして二人はお互いの気持ちが分かり合えたことで。アリサはリリスのことを実の妹のように大切にするようになり。リリスもそんなアリサのことを本当の姉のようにして慕い始める。それからしばらくして 僕たちは僕たちが泊まることになっていた宿屋へと帰る途中のことだったけど 突然アリサが姿を消したのだ。リリスが必死になって探し回ったことでアリサは見つかり。僕たちの元へと戻ってきたんだけど。そこで僕はアリサに問い詰められてしまことが原因で、リリスを疑っていたことを白状する形になってしまい。アリサにリリスのことを誤解していたことを謝りたかったんだろうと思う。だからなのか分からないけど、僕は、アリサにキスをされるという事態に陥ってしまう。僕たちはその事で口論してしまうのだけど。僕たちを見守っていた存在が居たおかげでなんとか僕たちは喧嘩することを避ける事に成功する。そうして僕たちは再び歩き出したところで また別のトラブルに巻き込まれることになった。

そのトラブルの原因がなんだったのかまでは分からなかった。しかしそのトラブルのせいで 僕の目の前には 僕と同じ世界の人間と思われる女性が現れ。僕たち二人を捕まえようとした。

僕がアリサのことを抱きしめる中。その僕の目の前に現れた。この世界で起こっている出来事を知っている人物。僕と同じ世界からこちらの世界に迷い込んで来たのだろう。僕と同じように武器を持っていなかった女性が、僕に助けを求めてきて。僕は、その人のお願いを叶えることにした。その結果 僕は、僕の持っている杖。僕の母親が持っていた。この杖に秘められていた。

リリスに宿っている精霊の力を引きだすことが出来るようになっていた。そしてそんな僕の前に現れたのは リリスにそっくりな。もう一人のリリスと言ってもいいのかもしれない人物だったのだ。そして僕とリリスがこの世界で初めて出会う。そんな相手であるはずのその少女のことを 僕は一目見てすぐに気付くことが出来たのである。その女の子の見た目や仕草。そして何より、そのリリスによく似た雰囲気。それらから、僕はリリスの血縁者であるということを一瞬で理解する。そしてその僕の目の前に姿を現したリリスに良く似た人物は、僕の目の前に現れたのだけど。

僕の目の前に現れたその人は、リリスに瓜二つなんだけど。その人から発せられた声には、確かにリリスとは違った魅力があって。僕にとってその人は特別な存在になっていくのである。そして僕の前に現れたリリスの親戚と名乗るリリスにそっくりの女性の名前は 僕がこの世界に来る前に助けられた アリサのお母さん。その人がリリスに残した日記帳。その中に書かれていた名前が確かにあった。その女性のフルネームは、アリッサ。それが彼女の名前だったのである。

僕たちのことを助けてくれて 自分の娘のアリサが無事に僕の元にたどり着くように 影ながら手助けしてくれていた。僕にとっては恩人であるその人が アリサの母親だと分かっていた。僕はアリサのお母さんのことはアリサのお姉さんだと勝手に思い込んでいたのだけど。しかし実際には 僕とアリサの母親とが血が繋がっているわけではなく。アリサがお姉さんと呼んでいた女性は、アリサのお母さんではなく。アリサの義理のお母さん。その人であったのだと知ったのである。そうして僕はアリサとリリスの二人を連れて 僕が元住んでいた家まで帰ろうとした時。僕のことを待ち受けている人物がそこに立っていたのである。それは僕の幼馴染でもあり 僕の大切な存在でもある存在だった。そしてそんな彼女が 僕に告げるのだ。この世界にやって来た僕以外の異世界人。僕の家族であるお父様と僕。そしてお母様と、妹のメイと弟であるユイの5人で暮らしているその家の近くで 僕の家族のみんなを殺した犯人である。その女が現れたと知らせてくるのだった。そうして僕は 僕と一緒に暮らすために旅を続けていたアリサとリリスと別れ 僕のことを追いかけてきてくれた アリサとリリスと 共に 僕の家族の仇を僕と僕の仲間の力を合わせて倒しに行くことになる。その相手は 僕が今まで倒してきた相手と比べて、格が違うほどの力を持っていた。僕とその敵との戦いの中で 僕は敵の実力を見極める事に成功し 僕と僕の仲間が全員無事で、この場を生きのびることが出来たのだ。

僕は 僕の力を使って、僕の目の前に現れた この世界を侵略するために、この王都の城に乗り込んできた敵を倒して アリサをこの王城の中で起こる。この異変から助けることに成功する。しかし僕は 僕を襲ってきた相手が放った魔法の攻撃によって、僕の命が失われてしまい。そのまま死んでしまう。はずだった。そんな僕を庇ってくれたリリスが、自分の体を犠牲にしながら僕を救ってくれたのだ。そしてそんなリリスのおかげで、僕は再びこの世界に舞い戻ることが出来たのだ。

そして僕は、この世界で僕の大切な人を守り抜く。その目的を果たす為に、この王城の中で行われている異変の調査を行うことにするのだった。

アリサは僕のことを見つめると、微笑みを浮かべるのだった。そして彼女は僕に、この王城で起こったことを説明し始めた。僕はそれを聞いて驚いたのと同時に 僕を助けに来てくれたリリスのことが気になり。僕のことを探してくれていたリリスのことを探そうとするのだが。その僕の行動を察したのか。僕のことを止めてきたアリサは僕の腕を掴むと僕を止めるために僕のことを引っ張って行く。

そのアリサは僕のことを強く抱きしめると、突然僕に対して唇を重ねてきていた。僕は驚いてしまうのだが。しかし僕に唇を重ねたアリサが、突然涙を流す姿を見て僕は冷静になり。アリサの頭を優しく撫でることにした。

僕は自分の事を抱きしめるアリサにキスをして。僕を救い出してくれたことにありがとうと感謝を伝える。するとアリサは僕のことを見て、頬を赤らめると恥ずかしそうな顔を見せながらも 僕のことを真っ直ぐに見つてきて、こう口にしたのである。アリサは僕と目が合うと顔を赤くして 俯いてしまう。

そしてそんなアリサのことを見ていた僕は、自分の心拍数が上がっていくのを感じていた。僕は思わず視線をそらすことにしたのだけど。そんな僕を見たアリサも、同じように視線を僕から逸らす。僕たちはしばらくのあいだ無言の状態が続くことになる。僕がどうしていいか分からずにいる中で。そんな僕たちを眺めていた一人の少女。そう。その人物は、僕にキスをしてくれたアリサに瓜二つの容姿をしている少女。彼女こそが、アリサの妹である。

アリサが、僕と妹に何かあった時のことを考えて、事前に僕の身内を僕に教えておく。そしてもしも僕が危険な目にあってしまった時に僕をその人物に救出してもらう。その役目を担うためだけにアリサは、自分の娘であるリリスを僕に同行させた。そんな経緯がそこにはある。アリサはその事について、僕が知っていると思っていないだろう。だから僕は、そのアリサが僕に伝えた言葉を口にしてみた。僕がそれを言った途端にアリサは動揺する様子を見せる。アリサは少し困った表情を見せるけど。しかしすぐに落ち着きを取り戻す。そして再び、自分の本当の気持ちを正直に伝えてくれるのだ。アリサの気持ちを聞き終わった後 僕はアリサを抱き寄せた状態でお互いのことを求めあうような激しい口づけを交わしていた。そしてアリサに案内される形で 彼女の部屋の前までたどり着いた僕たちは アリサの部屋の中に入ると。部屋の中にはリリスの姿はなく その代わりに、ベッドの上に一人の少女の姿があったのだ。

僕たち二人が部屋に入ったことに気づいたらしい彼女は 慌ててその場に立ち上がろうとするけど。しかし腰に激痛を覚えたのかその場で悲鳴を上げながら床に倒れ込む。僕が慌てて駆け寄ると。アリサも心配そうに彼女の元へ歩み寄り。彼女に向かって手を差し伸べると 彼女のことを起こすのである。そして彼女もアリサと同じように、アリサの手に引かれる形で立ち上がり 僕の目の前に現れるのであった。

僕の目の前に突然現れた。その女の子はアリサの妹だと名乗って僕に挨拶してくるのである。アリサと同じように、とても可愛い子で。その仕草からも、アリサに似た雰囲気を感じ取っていた。

そのアリサに似ている彼女の名前は 僕の大切な存在であるアリサの娘。アリサの実の娘である。その彼女が僕に自己紹介を始めたのだけど。その彼女がアリサによく似た容姿の持ち主だった為 僕は彼女に、僕に出来る限りの配慮をしようと思う。そんな彼女は僕のことを警戒していたので。僕が、そんな警戒を解くために。僕は、そんな彼女を安心させる為に 笑顔で話し掛けようとしたのだけど 僕を見る彼女の目は相変わらず 怯えているようだった。そんな様子を見ていて僕は、その少女が僕と会うのはこれが初めてではないということを思い出す。それは、以前僕の家族を殺しに来た。その少女が連れて居た女の子と特徴がそっくりなのだから。そんな彼女は僕の前に立ちはだかると、僕の事を睨むように見つめてくる。

その少女の態度は、まるで僕に復讐でもしようしているかのように、怒りに満ちた形相をしていたのだ。その少女の僕への感情は僕が想像していた以上のもので 僕には、その理由が分からず 困惑してしまっていた。

僕たちの前に現れたその少女は アリサから事情を聞いたようで この王城に起きている出来事の真相を知るためには、まずは城の最上階にある王座の間を目指す必要があると言う話を僕たちにしてくれる。そして僕たちとそのアリサの妹の3人でその話に従い。僕たちは王城内を歩き回るのだが。しかし、アリサが僕のことを守って欲しいという願いを 僕の妹に託すと。僕のそばから離れていく。そんな僕は、僕が離れていくことを躊躇してしまうのだが。その事に気づいた僕の妹のアリサの瞳が潤みだすと 僕のことを見上げて。お願いしますと懇願するように 僕の服を掴んでくるのだった。そんな彼女の様子を見て僕はアリサのことを、自分の妹のアリサとして認識して。僕の妹のアリサの頭を優しく撫でることにする。僕の妹のアリサは、その事が嬉しいのか僕に抱きついてくると。甘えるように僕の胸元で僕の胸に自分の顔を押しつけると。僕のことを誘惑する。僕は必死に耐えながらその光景を見ている僕のことを リリスは冷ややかな目で見る。

僕は、僕の妹のアリサのことを自分の娘のアリサのように思いながら、そんな二人の面倒を見ていたら。

僕達はアリサが教えてくれた場所にたどり着いていた。その場所は僕がかつて、僕の家族が住んでいた屋敷だったのである。しかし今は、僕の家族が亡くなった後に 何者かによって壊されていたのである。その事を思い出した僕は 自分の家族を殺した奴に腹を立てると同時に。僕を襲って、そして僕の家族を殺した。そんな相手を僕に許さない。そう決意すると、僕はその破壊された場所を見ていると リリスが僕の隣に立つと。僕に声をかけてきた。リリスの言葉に 僕はリリスの方を向くと。リリスが僕のことを気遣いながら話しかけてくる。

僕の妹のアリサとリリスの二人は僕に何か用があるらしく。僕を呼び止める。僕の妹のアリサが言うには。僕にどうしても会いたい人物がいるのだと アリサの妹から 聞かされたので 僕がアリサの方へ顔を向けると 彼女は僕の方に近寄ってきて。そして僕のことを強く抱きしめてくる。

アリサに抱きつかれた僕は、突然の出来事で、僕は動揺して。アリサの頭を撫でるだけで何も出来ずにいたのだ。

僕の妹のアリサが言う、僕に会いたいという相手とは。アリサのことだったのだ。しかし僕はそんなアリサが僕の元に訪れることは、この世界に来る前にアリサと別れてからは 一度も無かったので。僕の心の整理が全くつかない状況のまま、この世界でアリサに会うことになったのだ。僕はこの世界で再会したばかりの頃の あの世界の時よりも成長をした姿で現れた僕の大切な人の姿をしたアリサの 姿を見ながら僕は心が落ち着くまで、そのアリサのことを見ていたのだった。

僕は僕の大切な人の成長した姿を初めて目の当たりにして。僕は、そのアリサの容姿に思わずドキッとしてしまう。僕が僕の目の前に現れた そんな僕に対して。いきなり アリサの妹である。アリサの双子の姉妹である 僕の実の妹を名乗るリリスが現れて 突然僕に対して口を開くことになる。

リリスに呼ばれた僕は振り返り。彼女の方を振り向きなおすことになる。するとリリスは僕に自分のことを指差すので。そんなリリスの真似をして 自分の事を指さすことにしたのだが。そんな僕の行動に、なぜかリリスは不満げな顔をして 不機嫌になってしまう。

僕のことを見たまま動かないでいる 僕のことを見ているリリスの様子を見て。もしかしたら 僕を誰かと間違えてしまったのではないかと考えたのだ。

しかし僕の考えは外れてしまい。僕に向かって リリスはこんな言葉を口にする。

アリサは僕が、私を自分の妹だと思っていてくれていたことが嬉しいと言いながら 頬が赤くなっている アリサの様子を 僕は、彼女の姿を見て微笑ましく思っていた。

それからしばらくの間 お互いに黙ったままの状態で時間が流れると。そんな静寂を破るかのように リリスが僕の手を掴み、引っ張ってくる。そんな様子の彼女の姿を見ると なんとも言えなくなるのだった。

僕に妹がいた。そんな事は知らなかった。

だから妹にどう対応すれば良いのか分からないのだけど。しかし、僕の事を兄と呼ぶ妹は僕に向かって、自分が僕の妹であることを主張してくるのである。そして妹は僕が今まで、アリサのことについてどんな気持ちを持っていたのかについて、問いただされることになる。その質問を受けた僕は アリサがこの世界にいる間は、ずっと一緒に過ごしていこうと考えていた。そんな僕の答えを聞くや否や。

僕の目の前に立っている 僕のことを、まるで汚物でも見るような目で見てくる。僕のことを 見下げて、そして軽蔑するような目をして 僕に言葉をぶつけてきた。そんな妹の表情はまるで僕の知っている妹の表情ではなかったのだ。僕の妹の表情ではないのだ。

僕はこの国の王である この城に住むアリサが僕たちの前に立ちはだかり この国を救うようにお願いされる。しかしアリサがそんなお願いをしても、僕には関係のない事だったので そんな話を僕が聞く義理は無いと言って 僕はアリサのことを無視して去ろうとすると。僕の妹のリリスとアリサの妹のリリスが僕を止めようとしてきたのだけど。そんな彼女達の事を引き剥がそうとしていた僕の腕に、僕の妹のアリサは 抱きつくと そんな事をしてくる。

僕の事を心配そうに見つめてくる 僕の大切な妹のリリスの姿と、僕に甘えて 僕に甘えてくる僕の妹のアリサの 二人に僕は戸惑いを感じながらも そんな二人の気持ちに答える為の行動をとる。

僕のことを、まるでゴミを見るような目で見てくる 僕の事をまるで嫌っているように見えてくる 僕の大切な家族の 僕のことを 愛してくれた 僕の家族 アリサが僕に見せてくれる表情とは違い 僕の家族の顔には いつも笑みが絶えることはなかったのに そんな妹の アリサと そのアリサが 双子だという妹の リリスの二人が僕を睨んでくる。僕のことを無視するかのような態度を取ると、僕の妹のリリスと一緒に僕の前から去って行ってしまう。

アリサにそっくりのアリサのそっくりさん 僕が僕の前に現れたアリサと瓜二つのアリサの双子の妹という女の子に 僕は困惑する。その女の子の態度から 僕に対する好意など一切感じられない。まるで僕を見下しているかのように 僕に接してくるのであった。

僕に話しかけてくる妹のアリサのことを 僕は見つめていると。僕のことを 僕の事を 睨みつけてきていて そして僕はその僕のことを見つめている 妹の視線が痛く 僕は 彼女のその行為から。僕のことを恨んでいるように感じると その事をリリスに話すと 僕の妹のリリスの様子が変わり そして彼女は僕から距離をとりながら、リリスが僕の妹であると その説明をし始めてくれた。そして僕の妹である。僕の事を睨んでいたアリサのそっくりさんが僕の妹のアリサなのだというのだ。

僕の妹がどうして僕の事を嫌っているのか。それは この王城の 王座の間を目指して歩いていた時の この王城内で起こった出来事が その理由だったのだと リリスが話してくれる。僕はその出来事を思い出そうとすると。しかし僕にはその時の アリサが見せてくれた、あの悲しそうな、そして苦しそうだった表情が、頭にこびりついていて。僕はアリサの事を思い出すと 彼女のことを助けられなかった自分自身に対して腹を立ててしまう。

僕の妹のリリスと僕の妹のアリサの二人から、僕が僕であることを確認される。僕の名前は僕の本当の妹のアリサと同じ名前のはずだと、僕は自分の名前を名乗ると 僕の妹を名乗る二人は お互いに顔を見合わせて確認をしてから 改めて お互いのことを僕の妹だと主張すると。

そして僕の妹のアリサは、なぜ僕の前に現れたのか? その訳を説明し始めた。

リリスと僕の妹のアリサと、僕の三人が 僕たちが訪れたこの場所に 再び足を踏み入れると その部屋に、僕のことを待っていた人物がいたのだ。その人は僕のことを見て、懐かしいと そしてその人が、僕の妹を名乗った。しかし僕は 僕の妹のアリサと名乗る人の言っていることが信じられずに 混乱してしまって その僕の妹のアリサが本物なのか偽者なのか判断できなかったのだ。そのアリサを名乗る少女が僕のことをお姉ちゃんと呼ばせてくれと、そう言ってきたから 僕は僕の妹だと証明させるためにも 僕の妹を 妹だと思い込んでいるアリサの妹のリリスを僕の前に連れて来ることにすると。

リリスの目の前に姿を現して 僕はリリスを自分の目の前まで呼び寄せる。

僕の妹のアリサが僕のことを疑っていた理由を話し出すと 僕の妹が、僕のことをお兄ちゃんと呼んだことに 僕は衝撃を受けて 僕のことをお兄ちゃんと呼んでくれるアリサに会えた喜びで 思わず涙を流しそうになると 僕の妹を名乗るアリサが 僕に近づいてきて 僕の妹を装って僕の妹が言ったセリフと、全く同じセリフを口にする。僕の妹が僕のことを騙そうとした。僕はそんな僕の妹のことを信じることが出来ない。だから 妹のアリサの事を僕のことを、まだ疑いの目で見ている。僕の妹を名乗る人物に警戒心を抱くのだけど。リリスは僕と違って僕のことを本当に信じていてくれる。

僕の妹のアリサが言う、僕が僕だと認めてくれていた妹の リリスのことをアリサは知らないはずで。そして僕の事を慕う妹である アリサの妹が 自分のことをアリサの姉であり僕の実の妹と言う リリスのことも知らなかったのである。そんな僕の妹であるアリサの妹のリリスが 僕のことを、なぜか僕のお兄ちゃんと呼ぶ。その事が気になった僕は。僕のことをアリサのお姉ちゃとではなく 自分のことを僕のお兄ちゃと そう呼ぶ事にしたらしい リリスのことを呼び 僕のことを呼んだ理由を聞いてみたのだ。

すると僕の妹のリリスは、僕のことをおにいと呼びたかった。僕に呼ばれたいという想いが 僕の妹を、自分の存在を偽ろうとした。そんな妹の存在を許すことが出来なくなってしまい。リリスは僕に対して怒りを見せることになるのだけど。僕はそんなリリスの様子を見て 僕は この世界に来る前の世界で、リリスに対して 何もすることができなかった。そんな自分の不甲斐なさを思い出して リリスの怒りに対して申し訳ないと思うのと同時に。

僕に甘えるリリスに対して、僕の方も何かしてあげたい気持ちになるのであった。そして僕の妹のアリサと僕の妹を名乗るアリサは、僕の事を騙して僕がリリスをどう思っているのか それを確かめようとしていた。そんな事の為に僕の事を利用しようとするアリサに対して 僕は怒ってしまった。



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俺のスキルは神級だが、無職だから仕方ない。〜世界最強の鑑定士だって嫁が欲しい!〜 あずま悠紀 @berute00

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