最終話 その後······
「何でもっと早く······捕まえてくれないんですか。捕まえてさえいれば、こんなに罪を犯すこともなかったのに······」
真壁は悲痛な叫びを、仁科にぶつけてきた。
一旦斎藤から引き離し、真壁を落ち着かせる。気持ちが落ち着いてきたのか、真っ直ぐ仁科の目を見て語りだした。
最初の事件で心が壊れ、別の人格が形成されたこと。残りの二件の事件は、別の人格が行ったこと。
そしてこの事件を引き起こす切っ掛けとなった死神のこと。全てのことを真鍋は、言葉を詰まらせながらも話してくれた。
「辛かったな。だが、どういう理由があろうと君がやったことは許されることではない。それは分かるね?」
仁科の言葉に、真壁は縦に首を振った。それを見て仁科は、更に言葉を続ける。
「取り敢えず一旦署に戻ろう。その時にまた話を聞くから。斎藤君も着いてきてもらうよ。君達が原因でこのような事態になったんだから」
真壁と斎藤を立たせると、後ろの方で足音が聞こえる。桜井の足音だと思い振り向くと、出入口に男が立っていた。見覚えのある男が。
「死神!」
不適な笑みを浮かべて、死神は口を開いた。
「中々見物でしたよ。ですが、まだ物足りない。これではいじめは当分無くならないな」
「何を考えている?復讐をしたところで何も変わらないだろ!」
仁科の発言に死神は飽きれとように、首を左右に振った。
「変えないのはあなた方、大人の方だよ。三年前の事件でいじめは一時的に無くなった。でも、また再発してしまっている。だからもっと必要なんだよ。恐怖が······」
そう言うと、死神は出口方向に身体の向きを変える?
「僕は続けますよ。この世から卑劣ないじめが無くなるまでね······」
「待て!」
仁科の呼び掛けを無視し、死神は出口へと歩き出した。桜井に二人を見ているように指示を出すと、仁科は死神の後を追い掛けた。
廃ビルから外に出ると、もう死神の姿はなくなっていた。
* * * *
その後真壁と斎藤の二人を警察署に連れていき、詳しく話を聞いた。真壁は一連の事件について容疑を認め、頭を深く下げていた。
彼は犯罪を犯した。それと同時にいじめの被害者でもある。いじめによって精神的に追い詰められて犯行に及んでしまったのだろう。
彼の罪は決して軽くはない。未成年ではあるが、しっかり罪を償って残りの人生をやり直してもらいたいものだ。
一方の斎藤は憔悴しきっていて話を聞ける状態ではなく、一旦帰宅させた。
――一応事件は解決したから、まぁ大丈夫だろう。しかし気になるのが死神の行方だ。最後に会って以降、近くを捜索するも死神の姿は見付からなかった。
死神が何故復讐の手助けをするのか、その真意は分かっていない。彼がいる以上、また次の復讐が始まるのかもしれない。
復讐者Ⅱ sho-ta @ishimori
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