13話 ネックレス
翌日の朝。
俺は、いつもより早い時間に目を覚ましカーテンを開けた。外の景色を見ると、曇りで雨が降ってもおかしくないような天気だった。
カーテンを開けた後、机を見た。そこには、昨日買ったネックレスがケースに入って置いてあった。
「このアクセサリー梨里杏にいつ渡すかな...」
独り言を呟きながら、アクセサリーケースを忘れないようバックの中に入れて、リビングに向かうことにした。リビングには、朝食を作っている母さんだけがいて彩春はまだ寝ているらしい。
「あら、碧君おはようっ!いつもより起きるの早いわね」
「おはよー。誕プレのことを考えてしまって、うまく寝付けなかったんだよ...」
「そうだったのね。でも、今考えたってしょうがないでしょ。お母さんも昔、碧君と同じように考えすぎちゃって授業に集中できなかったことあるのよ。だからこういうときは、あまり考えないようにした方がいいわよ」
「母さんも昔そんなことがあったんだな」
「あったわよ。高校生ね...懐かしいわ〜」
母さんは、包丁をまな板に置き高校時代を思い出しているのか上の空だった。
まだ俺は、起きて間もないためか意識がはっきりしていない。上の空にある母さんに何も言わず洗面所に行こうとした。
「あっ!碧君もしかして顔を洗いに行くの?もしそうなら手も洗って来てね。もうすぐ朝食できるから」
「分かったよ」
洗面所で冷たい水を顔に浴びせて、目を覚ました。そして、母さんにも言われたように手も洗いリビングに戻るとさっきまでいなかった彩春がいた。彩春は、俺の顔を見た瞬間とても興味津々な顔になった。
「おはよ〜碧兄っ!どう緊張してる!?」
「おはよ、めちゃくちゃ緊張してる。昨夜からずっと頭の中でいつ渡すか、ずっと考えてる...」
「なるほど〜。そういうのはね、放課後に渡した方がいいよ」
「放課後か...なぁ彩春は、彼氏からプレゼント渡されるってなったらどこがいい?」
「私だったら人がいないところや二人にとって特別な場所とかかな」
「特別な場所か。...分かったありがとう彩春また相談に乗ってくれて」
「いいよ。それよりも相談に乗ってあげたんだから、また何か奢ってよ!」
「彩春あまり調子に乗るなよ。もう俺の今月の小遣い少ないから無理だ」
「ん〜碧兄のケチ...」
彩春は、不貞腐れた顔をしながら俺の顔を見てきたが、奢ることはできない。
小遣いが少ないのは本当だが、梨里杏との初デートの為に服を買い揃えたい。だから少しでもいいから小遣いを残しておきたい。
でも...彩春が言ってた俺と梨里杏にとって特別と思える場所か。
正直あそこしか思いつかないな...
その後、朝食がテーブルに並べられ、三人で食べることにした。食べている間は殆ど会話をせず、俺が先に食べ終わった。キッチンに皿を置いて学校に行く準備をするため部屋に戻った。いつものように制服に着替え、鏡を見て身だしなみを整えた。バックにアクセサリーケースが入っているかしっかり確認した。スマホを手に取って部屋から出ようとした時、あることを忘れていることに気がついてしまった。
「そういえば...プレゼント渡すことに頭がいっぱいで忘れてたけど昨日梨里杏と電話してない...」
昨日の放課後、梨里杏と電話しようと約束したはずなのに一つも着信がきてない。梨里杏のことが心配になった俺は、電話をかけることにした。すぐに梨里杏と電話は繋がったが、少し暗い声音で話してきた。
「もしもし、梨里杏昨日電話できなくてごめんな」
「い...いえ大丈夫ですわ。あ...あの碧斗君、突然で申し訳ないのですが、ごめんなさい今日一緒に登校できませんわ...」
「そっか...まぁーそういう日もあるよな。それならまた学校で会おうな」
「わかりましたわ...後もうひとつ、碧斗君...放課後二人だけで話したいことがあるのですが、よろしいですか?」
「良いよ。丁度、俺も梨里杏と話したいことがあったから」
そして俺は、放課後二人で話す場所を梨里杏に伝えて電話を終わらせた。
梨里杏の声音に元気がないのは一緒に登校できないからだとこの時の俺は思っていた...
♦︎
放課後俺は、梨里杏に告白をしようとした空き教室に来ていた。
「今日の、学校はいつもより疲れた...」
学校で梨里杏と話そうとしても一つも口を聞いてくれないし、最近梨里杏と友達になった子達からは睨まれるし...
授業中、俺が、梨里杏に何か悪いことをしてしまったのかひたすら考えたが悪いことをした覚えはなかった。でも梨里杏がこの教室に来たらまず謝ろうと考えていると空き教室のドアが開いた。
「待たせちゃってごめんね碧斗君...」
「いや、俺が少し早く来てただけだから大丈夫」
梨里杏は、ずっと暗い顔をしたまま視線を俺に向けていた。梨里杏にネックレスを渡したいが、こんなに暗い顔をしている梨里杏が心配だった。
「なぁー梨里杏。何か落ち込んでいるように見えるけど何かあったのか?」
「あったわよっ!単刀直入に聞くけど昨日碧斗君とネックレス店にいた子誰なの!?」
梨里杏は、今まで誰も聞いたことのないような声量で俺に聞いてきた。
俺は昨日、妹である彩春と一緒に梨里杏にあげるプレゼントを買ってただけだ。彩春と一緒にるのを梨里杏に目撃されてしまっていたのか。昨日あったことを正直に話さないと誤解されてしまう...
「昨日は、妹と一緒に買い物に行っただけだよ」
「妹?碧斗君って妹さんいたの?」
「いるよ。彩春っていう名前なんだ。母さんに似ていつも元気なんだよなー」
「そうなんですか...でもなぜ妹さんと一緒にネックレス店なんかにいたんですか?」
「そ...それは...」
多分ここで正直に「梨里杏のプレゼントを買いに行った」といえば解決するだろう。でも俺は、このネックレスをサプライズとして梨里杏に渡したい。
沈黙する時間が長かったせいで、梨里杏は今にも泣きそうな顔をしていた。
「やっぱり。私に内緒で他の女の子と遊んでたんだね...」
「それは違うんだっ!」
「違わないわっ!だって碧斗君さっきの質問すぐに答えてくれなかったわ!もういいっ!碧斗君の顔なんてもう見たくない!」
梨里杏は、俺に怒声を浴びせて反対の方を向いてしまった。
俺は、馬鹿だ。梨里杏にサプライズで渡したいと言ったが、その気持ちのせいで梨里杏のことを悲しませてしまっている。俺は、保健室で先生と約束したんだ。梨里杏のことを大切にするって...
梨里杏に誤解されたままではいたくないと思った俺は、バックからネックレスケースを取り出した。梨里杏は、後ろを向いているためネックレスの存在には気づいてない。ケースから取り出す時、音を立たせないようにアクセサリーを取り出し、忍び足で近づいた。
「梨里杏、誕生日おめでとうっ!!」
「ひゃっ....!!」
少しでも場の空気が和むようにと大声を出した。でも梨里杏は、俺の声に驚いたのか体をビクッとさせた。すぐに、俺の方に体を向き直し何かを言おうとしていたが、ネックレスを見た瞬間梨里杏は固まってしまった。
「えっ...あっ...碧斗君...何このネックレス...?」
「さっきも言ったろ。誕生日おめでとうって」
「ほ...本当に...嘘じゃないよわよね?」
「嘘をついてどうするんだよ。これは、梨里杏のために買ったネックレスだ」
「えっ...それじゃあさっき碧斗君が言ってたのって...」
「全て本当のことだ。昨日俺は、梨里杏のためにネックレスを買いに行ったけど妹とあったのは偶然だ」
「それなら、なんでさっき私の質問に答えてくれなかったの?」
「サプライズで渡したかったから黙ってたんだ...ごめん梨里杏。先に言ってれば梨里杏のこと悲しませずに済んでたのに...」
「いや私の方こそ、ごめんなさい。碧斗君のこと私信じていたはずなのに...」
「梨里杏は悪くない。いや俺の方が悪いんだ!」
「碧斗君は悪くないわ。むしろ私の方が悪いわ!」
「.....プッ!あはははははっ!」「......プッ!うふふっ!」
お互い謝り続けていることが、おかしくなって俺も梨里杏も笑ってしまった。お互いに笑いが収まるまで、そう時間はかからなかった。
「そういえば、碧斗君。私が猫好きってこと言ってたかしら?」
「あぁーそれに関しては、梨里杏が前持ってた財布に猫が描かれてたから好きなのかなって思ってさ」
「そうだったのね。このネックレス可愛くてとても素敵だわ。ねぇ碧斗君このネックレス私につけてくれないかしら?」
梨里杏は、うなじが見えるぐらいに後ろ髪を手で上げていた。
ネックレスをつけるために、梨里杏に近づくと顔がものすごく近くにあった。恥ずかしさから逃げ出したい思いもあったが、逃げ出したりせず梨里杏にネックレスをつけることができた。
「ど...どう...かな...碧斗君?似合ってるかしら?」
梨里杏は、髪を手で少し弄りながら聞いてきた。正直似合うどころの問題じゃない。可愛すぎて梨里杏のことが直視できなくなる。さっき俺は、嘘をつこうとして梨里杏を悲しませてしまった。それなら、もう馬鹿正直に感想を言うしかない。
「似合ってる!!可愛すぎるよ梨里杏っ!!」
「そう言ってもらえると嬉しいわ...初めてもらった彼氏からのプレゼント大切にするわねっ!」
梨里杏は、今日一番の笑顔で喜んでくれた。俺も梨里杏が喜んでくれたなら嬉しい。こんなに喜んでくれたのも、昨日相談に乗ってくれた母さんと彩春には感謝しないとな。
梨里杏は、俺があげたネックレスを眺めていると何か思いついたのか急に俺の顔を見てきた。
「碧斗君!!今から、少しだけでも良いのでデートしませんかっ?!」
「いいよ。えっ...デート...今デートって言った?!」
「言いましたわ。ですが、デートと言っても近くの公園に行くだけですよ」
「それでも行きたい!よし...今から行こう梨里杏!」
「今からですか?でも私、ネックレスつけたままですよ...」
「今の時間帯だと、皆んな部活で忙しくて人少ないだろうし、大丈夫。だから手繋いで帰ろう梨里杏」
俺は、梨里杏に手を差し伸べてた。ゆっくりと梨里杏は、俺の手を取り手を繋いでくれた。
「そうね。行きましょうか碧斗君」
空き教室の扉を閉め、俺たち二人は、肩を並べて校舎を出た...
ーあとがきー
2話連続投稿をするのに時間があまり無く誤字脱字や文脈がおかしい点があるかもしれません。指摘してくれると助かります!!
後、2話連続で投稿しようとおもったのは、12.5話で終わると気持ち的に嫌だったので投稿しましたー。
学校で冷酷姫と呼ばれる彼女が俺に告白した?! 夏帆宮 ツカサ @kahomiya213
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。学校で冷酷姫と呼ばれる彼女が俺に告白した?!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます