第2話
四月。
今日の夜はなんだか寒い。
二回も目が覚めてしまった。
末端冷え性なのに年中Tシャツ一枚で寝ているせいだ。
ボサボサの髪を掻きながら机に置いたままだったエナジードリンクを流し込み、ゴミ袋に捨てた。
私の髪はくせ毛で、それがいい感じにパーマみたいになっている。…という言い訳。面倒臭いのでそれをいい事にいくら怒られても髪を乾かさない。
『髪を染めたりする前にちゃんと乾かしなさい』お母さんに昨日も小言を言われた。
17歳。興味本位で染めた襟足。短めの男の子みたいなウルフカット。襟足だけ金髪になった部分をくるくると手で触る。
エナジードリンクなんて水と同じだ。飲んでたって眠れる。別に飲んだからって元気になんかならない。
でも、この科学的な、いかにも体に悪そうな物を流し込むと私の体は少し落ち着くみたいだった。
寝てしまうと朝が来る。朝が来ればまた生活が始まる。バイトに行って夜間高校に行く。
それだけの事なのに考えただけで消えたくなった。
衝動的に、ガサガサとカッターを取り出す。
痛みはない。ただ爽快感だけが左腕に集まる。
腕から流れ出るそれを見て呼吸が乱れる。生きている実感。どうでもいいのに、ドクドクと脈打つ度に溢れ出る血は私に現実を突きつける。
どうしようもなく、私は、生きている。
太陽が登るのが怖い。
どんな嫌なことが待っているのだろうか。
しばらくすると外は明るくなっていて、
私の腕には固まった血がパリパリになっていた。
果てない暗闇の中で ヤマダサチコ @itiru_yoru
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