春の日
とーま
薄紫のシャツ
あなたはそれに気づいているの?どうしてそれを選んだの?私だけが覚えているの?
私はずっと忘れない。あなたと初めて出会った日のことを、あなたとわたしの始まりを。
春は心細かった。初めて出会う環境に、初めて出会う人々に、私は胸を躍らせつつも心を閉じて、俯いて、怯えていた。周りの人など見ることも出来ず、私はひたすら流れて消える文字を追った。
目に付いたのは前より見かけていた人の文字。同じものを見て感性を膨らませていた人の文字。
あなたは1人で歩いてた。私は心休まる居場所が欲しかった。
私は理解者が欲しかった。私を分かってくれる人、私を支えてくれる人。求めるばかりで与えられない、物言わぬ愚図の、歪んだ欲望。
眩しかった。輝いていた。隣で笑って欲しかった。あなたの隣にいることだけで、あなたの横顔を見るだけで、私は幸せだったのに。
私はあなたを求めてしまった。あなたのことしか見えなかった。他人に取られたくなかった。あなたに愛して欲しかった。
あなたは友を失った。私が奪ってしまった。私が求めなければ、あなたは友を得られたのに。私はあなたが見えていなかった。私のことしか見えてなかった。
あなたは私を見放した。私なんて要らなかった。1人で凜々しく立っていた。周りには多くの人がいた。どこにも私はいなかった。
季節はめぐり、春が来た。あなたは同じ物を選んだ。なんでもないような顔で、誰もそれとは気付かぬ物を。私は忘れていなかった、初めて出会ったあの日のあなたを。
どうしてあなたはそれを選んだの?覚えているのは私だけなの?
もう一度、あなたの友になれたなら。共に笑って、日々を過ごせたなら。無理と分かっていても求めてしまう。そうする内は叶わないと知りながら。
春の日 とーま @Toma7
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